■西川和久の不定期コラム■
ASUSTeKの2スピンドルモバイルノートPC「U30」シリーズが約1年ぶりにモデルチェンジ。NVIDIA Optimus Technology対応はそのまま、第2世代Coreプロセッサ(Sandy Bridge)を搭載しアーキテクチャを一新している。実機が送られて来たので早速試用レポートをお届けする。
●NVIDIA Optimus Technology対応の13.3型ノートPC同社のU30シリーズは、「U30SD」、「U30Jc(Core i3+Office)」、「U30Jc(Core i5)」、「U30Jc(Core i5+Office)」の計4モデルがあり、ハードウェアの区別では「U30SD」と「U30Jc」の2種類となる。共通の特徴としては、13.3型液晶パネル、2スピンドル、そしてNVIDIA Optimus Technology対応となる。
U30Jは、第1世代Coreプロセッサ搭載機で約1年前に出荷されたモデルで、今回ご紹介するU30SDは、U30シリーズとして初の第2世代Coreプロセッサ搭載機となる。主な仕様は以下の通りだ。
CPU | Intel Core i5-2410M(2コア/4スレッド、2.13GHz/TB 2.9GHz、キャッシュ3MB) |
チップセット | Intel HM65 Express |
メモリ | 4GB PC3-10600 DDR3-1333 (最大8GB)/2スロット(空1) |
HDD | 640GB(5,400rpm) |
OS | Windows 7 Home Premium(64bit) |
ディスプレイ | 13.3型液晶ディスプレイ(光沢)、1,366×768ドット |
グラフィックス | 内蔵Intel HD Graphics 3000、NVIDIA GeForce GT 520M/1GB(Optimus Technology対応)、HDMI出力、ミニD-Sub15ピン |
ネットワーク | Gigabit Ethernet、IEEE 802.11b/g/n、Bluetooth v3.0+HS |
光学ドライブ | DVDスーパーマルチドライブ |
その他 | USB 2.0×3、メディアスロット、マイク入力、ヘッドフォン出力、Webカメラ |
サイズ/重量 | 328×238×20-29.9mm(幅×奥行き×高さ)/約2kg |
バッテリ駆動時間 | 最大約10.7時間(8セル) |
直販価格 | 89,800円 |
CPUはIntel Core i5-2410M。第2世代Coreプロセッサで、内蔵GPUがIntel HD Graphics 3000へとパワーアップ。Turbo Boostも2.0となり、短時間ならTDPを超えたクロックアップが可能となるなどの特徴を持つ。2コア/4スレッド、クロックは2.13GHzでTurbo Boost時2.9GHzまで上昇する。キャッシュ3MBだ。OSは64bit版Windows 7 Home Premium。
チップセットはSandy Bridge搭載ノートPCでお馴染みIntel HM65 Express。メモリスロットは2つあり、4GB×1の計4GB。1スロット空きとなる。HDDは5,400rpmの640GB、光学ドライブはDVDスーパーマルチドライブを搭載する。
液晶パネルは13.3型HD(1,366×768ドット)解像度。外部ディスプレイ出力は、HDMI出力、ミニD-Sub15ピンとなる。それぞれ最大解像度は1,920×1,080ドットだ。
グラフィックスはCPU内蔵のIntel HD Graphics 3000に加え、DirectX 11に対応したNVIDIA GeForce GT 520M/1GBを搭載。NVIDIA Optimus Technologyによって、ユーザーは意識せず、アプリケーションによって、自動的にそしてシームレスにGPUが切り替わる仕掛けになっている。一般的には通常は内蔵GPUで動作し消費電力を抑え、3D/CUDA/DirectX/DXVAなど、よりGPUのパワーが必要な時、外部GPUに割当てられると思えばいいだろう。
ネットワークは、有線LANがGigabit Ethernet、無線LANがIEEE 802.11b/g/n、加えてBluetooth v3.0+HSにも対応している。
その他のインターフェイスは、USB 2.0×3、メディアスロット、マイク入力、ヘッドフォン出力、Webカメラなど。USB 3.0に非対応なのは残念であるが、ノートPCとしては標準的な構成だ。
サイズ328×238×20~29.9mm(幅×奥行き×高さ)。重量約2kg。最薄部は20mmと、このクラスのノートPCとしてはスリムと言えよう。
バッテリは8セルで、最大約10.7時間駆動可能となっている。この点については、後半のベンチマークテストの結果を見たい。直販価格は89,800円。Intel Core i5-2410M搭載、そしてNVIDIA Optimus Technology対応機と考えると、妥当な価格ではないだろうか。
天板はヘアライン仕上げのシルバーで、少し前にご紹介した「N53SV」から液晶パネルのサイズ分小さくなるものの瓜二つ。パームレストも同じ仕上げで、キーボードの周囲はヘアライン仕上げ無しの明るめのシルバー、液晶パネル周囲は黒となる。なかなかシャープなデザインだ。指紋も目立たず神経質になることも無い。
13.3型の液晶パネルは、15.6型の「K53E」の小型版と言うより、「N53SV」の小型版の印象で、明るくて発色も良く、視野角も比較的広い。画質調整ソフト「ASUS Splendid」によって発色の傾向を変更できるが、このパネルならノーマルの状態が調度いいだろう。
パームレストは本体自体が小さい分、面積が狭くなっているものの、操作上は特に問題は無く、タッチパッドの面積も十分確保されている。タッチパッドは段差があり、表面は少しザラザラ。ボタンは1つのシーソータイプとなっている。この辺りも「N53SV」がそのまま小さくなった雰囲気だ。
キーボードは10キー無しのアイソレーションタイプ。若干たわむが、筆者としては許容範囲内。キーピッチも約19mm確保され、ストレス無く打鍵できる。
発熱や騒音、振動などは、操作した範囲では気になる事はなかった。むしろパームレストとタッチパッドがヘアライン仕上げなので、少し冷たい感じがするほどだ。
側面に配置されたスピーカーは、中域を中心とした音質であっさり鳴る感じのサウンドだ。ただしパワー不足で、最大音量は小さめ。近くで聞くにしても迫力に欠ける。この点だけは残念だが、全体的には過不足無く、うまくまとめられたノートPCに仕上がっている。
●6時間越えのバッテリ駆動OSは64bit版のWindows 7 Home Premium。デスクトップは左側に同社のツールを中心としたショートカット、右側に「Power4Gear Hybrid」と「Intel Turbo Boost」のウィジェットが並ぶお馴染みのものだ。
HDDは640GB/5,400rpm/キャッシュ8MBの「ST9640423AS」、光学ドライブは「DS8A5SH」。ディスプレイアダプタはIntel HD Graphicsファミリー(本機ではIntel HD Graphics 3000)とNVIDIA GeForce GT 520Mが並ぶ。ネットワークアダプタは「Atheros AR8151 PCI-E GbEコントローラ」と「Atheros AR9002WB-1NG」が使われていた。
HDDは、Cドライブ約149GB、Dドライブ約425GBの2パーテーションで、初期起動時Cドライブは約126GB空きがある。Dドライブは未使用だ。
プリインストール済みのソフトウェアは同社製として、リカバリDVD作成ソフト「ASUS AI Recovery」、BIOS起動カスタマイズソフト「ASUS FancyStart」、起動時間短縮ソフト「ASUS Fast Boot」、Webカメラ活用ソフト「ASUS LifeFrame3」、PC自動更新ソフト「ASUS Live Update」、省電力ソフト「ASUS Power4Gear Hybrid」、音質調整ソフト「HD VDeck」、 画質調整ソフト「ASUS Splendid」、無線ソフト「ASUS Wireless Console 3」など、N53SVとは、サウンド系そして動画系のツールが若干異なったり無かったりしている。
他社製としては「Power2Go」、「Nuance PDF」、「i-フィルター5.0 30日間無料試用版」、「Titanium 無料体験版」など。
先に書いたように、NVIDIA Optimus Technologyはアプリケーションによって、自動的にそしてシームレスに内蔵Intel HD Graphics 3000とGeForce GT 520Mを切り替えるが、意図的に操作したい場合は、「NVIDIAコントロール/3D設定の管理・プログラム設定」で、アプリケーションを登録し、どちらのGPUで動かすか設定すれば良い。
HD VDeck | ASUS Scene Switch | Elanスマートパッド |
NVIDIAコントロール/3D設定の管理・グローバル設定 | NVIDIAコントロール/3D設定の管理・プログラム設定 | Windows Media PlayerをGeForce GT 520Mで実行中 |
ベンチマークテストはWindows エクスペリエンス インデックスとCrystalMark、BBenchの結果を見たい。
Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 4.7。プロセッサ 6.9、メモリ 5.9、グラフィックス 4.7、ゲーム用グラフィックス 6.4、プライマリハードディスク 5.8。同クラスのノートPCのゲーム用グラフィックスは6.1~6.2なので、GeForce GT 520Mの方が少しパワフルなのが分かる。
CrystalMarkは、ALU 38971、FPU 40188、MEM 24432、HDD 7547、GDI 13373、D2D 1813、OGL 31249。OGLを除くと一般的な第2世代Coreプロセッサ搭載機と同じ傾向だ。OGLに関してはIntel HD Graphics 3000と比較して桁違いに速く、Optimus Technologyによって、GeForce GT 520Mに切り替わっていると思われる。ただMEMに関しては、シングルチャンネル動作の影響か、同プロセッサを使い2GB×2の計4GBでデュアルチャンネル動作になっている他の機種より1万ほど低い値だ(これはWindows エクスペリエンス インデックスには現れずどちらも5.9となる)。
BBenchは、「Power4Gear Hybrid」の設定を「Battery Saving」、バックライトOFF、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、WiFi/ON、Bluetooth/OFFでの結果だ。バッテリの残5%で23,678秒(6.5時間)。仕様上の最大約10.7時間には届かなかったが、それでも6時間は越えとなかなか優秀。
以上のようにU30SDは、13.3型HD液晶パネルを搭載した2スピンドルで、加えて、NVIDIA Optimus Technologyに対応。バッテリは、実測でも6時間越えを実現している。
第2世代Coreプロセッサ搭載機でパワフルなバッテリ駆動時間が長いノートPCを探している人にピッタリな1台と言えよう。