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日本語入力がラクになる必殺技。長ったらしいワードも“IME短縮登録”で時短が加速!
2025年4月1日 06:11
キーボードで入力したアルファベットやひらがなを、漢字や記号に変換する役割を担っているのがIME(Input Method Editor)だ。歴代のWindowsであれば、「Microsoft IME」(MS IME)が標準搭載されている。PCに詳しくない、IMEの存在をあまり意識したことがない方でも、日本語入力するなら間違いなくIMEを使っている。それくらい重要な機能である。
このIME、とにかく利用頻度が高いだけに、どうすればもっと効率的に文字入力できるか、省力化できるか、多くのユーザーが試行錯誤を続けてきた。その中でも定番的な手法が、ユーザー辞書機能の活用だ。
たとえば「東京都千代田区神田神保町」という住所表記は漢字にして12字分。これをローマ字変換入力をしようとすると「toukyoutotiyodakukanndazinboutyou」と、キー入力は実に33回分。ただ実際には、変換操作を行なわなければならない。これが会社の住所だったとして、書類作成のたびに毎回入力するのは大変だ。
ここでユーザー辞書機能の出番だ。設定次第で、たとえば「じ」(じゅうしょの“じ”)と入力して変換すれば、「東京都千代田区神田神保町」と一発変換させることができてしまう。言わば、単語の“短縮登録”だ。
応用例はさまざま。「めあど」で「○○○○○○@impress.co.jp」のような数十字分の英数字を入力してもいいし、「へいそ」に対して「平素より弊社の事業にご尽力いただき、ありがとうございます。」のような挨拶文を登録するのもアリだ。
辞書登録は画面右下の「あ」「A」「カ」アイコンから
では、実際の操作方法を見ていこう。今回はWindows 11のバージョン「24H2」を適用させ、極力最新の状態のMS IMEを使用している(旧バージョンのMS IMEを使う設定はオフにした)。
通常であれば、画面右下に表示されているシステムトレイ内に、「あ」「A」「カ」と表示されたアイコンがどれか1つあるはずだ。これがMS IMEの動作状態を示すアイコンなので、これを右クリックすると「IMEメニュー」が表示される。
なお、Ctrl+F10キーの同時押しでも同メニューが立ち上がるが、どのアプリを利用しているか、IMEがオンになっているかによっても挙動が変わる(機能しないときがある)ので、確実性を求めるならアイコン右クリックのほうがいい。
IMEメニューからは「単語の追加」を選ぼう。続いて「単語の登録」ウィンドウが表示されるので、実際にここで登録作業を行なう。短縮登録したい言葉を「単語」の欄に、その単語の呼び出しに使いたい言葉を「よみ」の欄に入れる。手入力でもコピー&ペーストでも構わない。後はウィンドウ下部の「登録」を押せば、作業は完了だ。
実際に試した方ならお気づきの通り、オプション設定がある。まず「ユーザーコメント」は、変換候補の一覧表示時に、合わせて表示するための注記にあたる。仮に人名を登録するなら「高の字ははしごだか」「裕ではなく祐」だったりと、留意すべき内容を書いておくのがいい。
もう1つが品詞。登録する単語の性質を名詞、人名、地名など6つの項目から選べる。標準では「名詞」が選択されているので、適宜変更するといいだろう。ただ、後からでも変更できるので、いったんスルーしても問題はない。
MS IMEはWindowsのあらゆる場面で使われるので、テキストファイル、オフィススイート、さらにはWebブラウザでの検索やフォーム入力時など、さまざまな場所で辞書登録の恩恵が生きる。「必要な時だけ、どこからかコピペすればいいじゃないか」という声もあるだろうが、それには参照元のファイルなりWebサイトを開かなければならない。ウィンドウ間を往復する手間が減るのも、ユーザー辞書機能のいいところだ。
なお、MS IMEの旧バージョンでは、登録したい単語を範囲指定して「Ctrl+F7」キーと押すと「単語の登録」ウィンドウがダイレクトに立ち上がっていたが、新バージョンではその機能はないようだ。
「何を登録するか」で迷う?だったら、こんな言葉はどうですか?
使いこなすと便利な辞書登録だが、「そもそも何を登録していいのか分からない、迷う」という方もいるだろう。そこで例として、筆者が登録しているものをご紹介しよう。これをヒントに、自分なりの項目を編み出してほしい。
個人・組織識別情報系
自分個人だったり、勤務する会社、関連する組織の名前や住所は、短縮登録と特に相性がいい。全国に支店があるような会社だと、自分が日々通う場所はともかく、遠方の支店の住所を全部覚えるのは難しい。ならば東京本店は「と」、大阪支店は「お」などと登録しておくのも1つの手段。電話番号やメールアドレスなども同様だ。
ただし、あまりやりすぎると、たとえばWeb会議中に画面共有していて、自宅の住所が表示されてしまう、なんてこともあるかもしれない。個人の辞書とはいえ、企業名など広く公開されているものだけにとどめておくのが、まずは無難だ。また部署名などが変更された際は、辞書のほうもしっかりメンテナンスを。
単語 | 読み(一例) |
---|---|
山田太郎(名前) | な |
株式会社インプレス(会社名) | い |
マーケティング本部マーケティング課(部署名) | ま |
東京都千代田区神田神保町(住所) | じ |
090-xxxx-xxxx(電話番号) | で |
https://pc.watch.impress.co.jp/ (URL) | ゆ |
xxx@impress.co.jp(メールアドレス) | めあど |
「あ」とか「せ」のような1文字で単語登録すると、誤変換の恐れがあるのではないか?そんな心配をする方もいるかもしれない。
たとえば「マーケティング本部マーケティング課」を「ま」の1文字読みに登録する。その状態で「魔が差す」と一気に変換しようとすると「マーケティング本部マーケティング課が差す」が常に第1候補に出てしまう……なんてことは基本的にはない。このあたりの変換・学習処理はよくできていて、一般的な日本語表現がまずは優先されると考えていい。
同様に、「マダム」と入力しようとして「マーケティング本部マーケティング課ダム」、「快刀乱麻」で「快刀乱マーケティング本部マーケティング課」になってしまうこともない(文節変換を駆使して意図的に変換しようとすれば別だが)。
ただ、登録した単語数が膨大になったりすると不都合が出てくるかもしれない。その際は、後述する「Microsoft IME ユーザー辞書ツール」で関連する項目を削除したり、短縮読みを修正しよう。それでも不安なら、最初から「#1」「#8」のような記号風の読みを登録し、重複を絶対に避けるという方法もアリだ。
このほかの注意点として、最近のMS IMEには推測変換機能がある。一度確定した変換語は、推測変換候補の上位に表示されやすくなるが、その頻度はほかの変換状態に応じても調整される。それでももし毎度毎度表示されるのが煩わしい場合は、マウス操作で候補を消せる。消したい候補にマウスカーソルを合わせた時に表示される「×」アイコンをクリックすればOKだ。
記号・定型文系
記号入力も近年は簡単になった。「やじるし」で「→」「↑」、「おんぷ」で「♪」、顔文字なら「げっつ」で「(σ・∀・)σゲッツ!!」などなど、大概の入力を通常の変換で賄える。
ただ、それでも足りないものはある。筆者が多用するのは「…(三点リーダー)」を「・(なかぐろ。日本語キーボードなら『め』が刻印されているキーで入力)」で変換できるように登録すること。インタビューの文字起こしだったり、簡易的な表を作る場合に重宝する記号だ。一応「さんてん」の4字からでも変換できるのだが、「・」の1字入力で済むようにしている。
ほかにも、社内・組織内限定で使う特殊な記号──たとえば、Webサイト作成時に使うHTMLタグのような──もあるだろう。そうした類の記号は、辞書登録の価値が特に高い。
単語 | 読み(一例) |
---|---|
…(三点リーダー) | ・(なかぐろ) |
――(ダッシュ記号2字分) | せん |
─────────(罫線8文字分) | せん |
■■■■■■■■■■■■■■■■(四角記号16個分) | くぎり |
(月) | げつ |
<!--(HTMLのコメントタグ) | こめ |
平素より弊社の事業にご尽力いただき、ありがとうございます。 | へいそ |
ご検討のほど、よろしくお願いいたします。 | ごけんとう |
固有名詞・専門用語系
新語、あるいは特定業界の専門用語などは、やはりIME標準の辞書では一発変換できないケースが大半だ。本稿では“短縮登録としての辞書”をクローズアップしたが、過去に存在しない・認知されていない語を登録するのが、むしろ辞書機能の王道と言える。たとえば、CPUのコードネーム名や技術規格名を日本語読みから変換できるようにしておくのは、かなり利便性が高い(タイプミスを防ぐ効果が大きい)。
そして人名だ。難しい字を組み合わせた名前は近年多いので、同僚だったりクラスだったり、入力頻度が高い方の名前は辞書登録しておくと話が早い。またフィクション作品に登場する独特の専門用語なども、SNS上での推し活には必須だ(?)。
単語 | 読み(一例) |
---|---|
Raptor Lake | らぷたーれいく |
3840×2180 | よんけー |
1000BASE-T | せんベーす |
香貫花(アニメのキャラクター名) | かぬか |
刻 | とき |
仲魔 | なかま |
夜露死苦 | よろしく |
単語の登録・修正・削除・バックアップが丸々できる辞書ツール
登録した単語を一覧表示したり、修正するには「Microsoft IME ユーザー辞書ツール」を利用しよう。単語登録に用いた「単語の追加ウィンドウ」から遷移できる。
またWindowsの「設定」からは階層がかなり深くなるものの、時刻と言語→言語と地域→日本語(のサブメニュー)→言語のオプション→Microsoft IME(のサブメニュー)→キーボードオプション→学習と辞書→ユーザー辞書ツールを開く、と進んでもたどり着ける。
このツールを開くと、これまでに登録した単語の一覧が表示される。各項目をダブルクリックすれば直接修正できるし、メニュー画面からは新規登録・修正・削除がそれぞれ実行可能。操作のベースとなるのは、前述の「単語の追加」ウィンドウそのものである。
なお、登録単語が30語や50語というレベルになると、バックアップを取りたくなるというのが人情だろう。「ツール」メニューから「一覧の出力」を選ぶと、登録単語がリスト化されたテキストファイルが出力される。これがあれば、複数台のPCの間で辞書を流用したり、万一辞書が破損したときのバックアップになる。復元も、同じく「Microsoft IME ユーザー辞書ツール」から実行できる。
出力されたテキストファイルの中身は、タブ区切りの単純なリストだ。この仕組みを応用すれば、複数の単語を一気に新規登録することもできる。今回は詳しくは紹介しないが、興味のある方は(しっかりとバックアップを取った上で)チャレンジしてみてほしい。
推測変換は便利だが完璧ではない。うまく使い分けを
以上、MS IMEのユーザー辞書の活用法をお伝えした。ユーザー辞書機能は、IMEにおける基本中の基本機能であり、Windows向けの競合であるATOKやGoogle 日本語入力にも同等の機能が用意されている。これはiOSやAndroidといったスマートフォンの日本語入力環境でも例外ではない。
近年は推測変換機能の進化が著しく、大谷翔平選手のような時の人の正確な氏名をスムーズに入力できるし、「まいな」と入力すれば「マイナンバー」を変換候補に挙げてくれる。その意味で、ユーザー辞書機能の出番は減っている。
ただ、本稿で主題にした“短縮登録”──特にユーザー個人の環境に依拠した言葉については、推測変換機能でも対応しきれない領域だ。「じゅうしょ」と入力して自宅住所が番地単位まで自動で変換されたら、それはもう恐怖の世界になってしまう。重要なのは、用途の異なる2つの変換機能の使い分け。辞書登録未体験の方は、ぜひ一度試してみてほしい。