Hothotレビュー
レノボ・ジャパン「ThinkPad Tablet 2」
~重量570gのWindows 8搭載10.1型タブレット
(2013/2/28 00:00)
レノボ・ジャパンから登場した「ThinkPad Tablet 2」は、OSとしてWindows 8を搭載した10.1型タブレット製品である。Windows 8搭載機としては、液晶ヒンジが360度回転するなどの機構を備えることで、1台でノートPCとしてもタブレットとしても使えるハイブリッドタイプの製品も登場しているが、ThinkPad Tablet 2は、キーボードや変形機構を搭載しない、いわゆるピュアタブレット端末である。
初代ThinkPad Tabletは、OSとしてAndroidを搭載していたが、ThinkPad Tablet 2は、OSがWindows 8に代わり、ハードウェア構成も一新されている。ThinkPad Tablet 2は、主にビジネス向けとして開発された製品であるが、スリムで軽く、堅牢性も高いことから、在庫切れで一般向け発売が遅れるほどの人気を集めた。今回は、ThinkPad Tablet 2を試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。
液晶保護に一般的なガラスの6倍の強度を持つドラゴントレイルを採用
現在販売されているWindows 8搭載タブレットは、搭載CPUによってCore iシリーズ搭載機とAtom Z2760搭載機に大別できる。ThinkPad Tablet 2は、後者に属する製品であり、Core iシリーズ搭載機に比べて、純粋なCPUパフォーマンスでは見劣りするものの、消費電力が小さく、バッテリ駆動時間や本体サイズ、重量などの面では有利だ。
本体のサイズは、262.6×164×9.8mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は最軽量時構成で約570gである。10.1型タブレットとしては最軽量クラスであり、気軽に携帯できる。液晶保護材として、旭硝子が開発した「ドラゴントレイル」でカバーされていることも特徴だ。ドラゴントレイルは、一般的なガラスの6倍の強度を持つ化学強化ガラスであり、落下や外部からの衝撃に対しても安心できる。
視野角の広いIPS液晶を搭載
ハードウェアスペックについて見ていこう。CPUには、Atom Z2760(1.80GHz)を搭載しており、メモリは2GB(増設は不可)。ストレージは64GBフラッシュメモリである。液晶は、10.1型IPS液晶を採用。解像度は1,366×768ドットで、5点同時検出対応のタッチパネルを装備している。IPS液晶は視野角が広いため、斜めから見ても視認性は高く、発色も美しい。光沢タイプの液晶だが、表面には反射防止のARコーティングが施されているため、映り込みも比較的少ない。
インターフェイスとしては、USB 2.0とMini HDMI出力、マイク/ヘッドフォン端子が用意されているほか、microSDカードスロットも用意されている。なお、左側面には、Micro USBポートが用意されているが、このポートは充電専用であり、USBデバイスを接続することはできない。また、本体前面に200万画素カメラ、背面には800万画素カメラが搭載されているほか、デュアルスピーカーやデュアルノイズキャンセリングマイクも備えており、ビデオ会議なども快適に行なえる。
ワイヤレス機能としては、IEEE 802.11a/b/g/n対応無線LANとBluetooth 4.0を搭載。センサー類も充実しており、GPS、電子コンパス、照度センサー、近接センサーを搭載する。OSは、Windows 8 Pro(32bit)を搭載している。
Atom Z2760搭載のWindows 8タブレットとしては、標準的な構成といえる。
デジタイザペンが電池不要になり、使い勝手が向上
ThinkPad Tablet 2は、指でのタッチ操作だけでなく、デジタイザペンでの操作が可能なことも魅力だ。デジタイザペンが付属するモデルと、付属しないモデルがあり、後者には液晶にデジタイザ機能が搭載されていないため、後からオプションで販売されているデジタイザペンを買っても、ペン操作を行なうことはできない。
初代ThinkPad Tabletでは、デジタイザペンにやや特殊な電池が使われていたが、ThinkPad Tablet 2では電池不要になり、ペンがより細く軽くなった。1,024段階という、高精度な筆圧感知に対応していることも特筆できる。ペンはワコムの電磁界共振技術が使われており、近づけるだけでポインタが反応するほか、右クリックなどの役割を果たすサイドボタンも用意されている。
ペンの反応や書き心地もよく、筆圧感知対応アプリを使えば、紙にペンで書くのに近い感覚で、メモを取ったり、画を描いたりすることが可能だ。ペンは、本体に収納できるようになっているので、持ち運びの際にも便利だ。
無線LAN有効で約10時間の長時間駆動を実現
バッテリ駆動時間が長いことも魅力だ。バッテリは、2セルのリチウムポリマー電池で、無線LAN有効時の公称バッテリ駆動時間は約10時間とされている。実際に、バッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとに無線LAN経由でのWebアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ、公称を上回る12時間22分もの駆動が可能であった(電源プランは「バランス」、液晶輝度は「中」)。バッテリの持ちは非常に優秀であり、バッテリの残りを気にせずに、1日たっぷり使うことができる。ACアダプタもコンパクトで軽く、携帯性は高い。
なお、従来のThinkVantageテクノロジー関連ユーティリティの多くは、Windows 8では利用できないが、代わりにModern UIに対応した新ユーティリティ「Lenovo Settings」や画面キャプチャツールの「Lenovo QuickSnip」などが搭載されている。
ドックやBluetoothキーボードなど、専用オプションが充実
ThinkPad Tablet 2は、ドックやBluetoothキーボードなど、専用オプションが充実していることも魅力だ。ThinkPad Tablet 2 ドック(以下ドック)は、ThinkPad Tablet 2の下部に取り付けるドッキングステーションであり、装着することでUSB 2.0×3やHDMI出力、有線LANが利用できるようになる。また、ドックには65WのACアダプタが付属しており、本体バッテリの急速充電が可能だ(ACアダプタを接続しないとドックは認識されない)。
ThinkPad Tablet 2 Bluetoothキーボード(以下Bluetoothキーボード)は、ThinkPad Tablet 2とBlueooth経由で接続されるワイヤレスキーボードで、ポインティングデバイスとしてオプティカル・トラックポイントを搭載する。
Bluetoothキーボードは、ThinkPad Tablet 2のスタンドとしての役割も果たすようになっており、スタンド部分を持ち上げ、キーボードの奥側の溝に本体をはめ込んでスタンドに立てかけることで、本体が見やすい角度で保持される。キーボードの配列は標準的で、キーピッチは約18.5mmだが、右側の「ほ」や「へ」などのキーのピッチは最小約12.5mmと狭くなっている。
オプティカル・トラックポイントは、光学式マウスを裏返したようなデバイスであり、上に載せた指を滑らせることで、ポインティング操作が可能だ。Bluetoothキーボードのスタンドに本体を立てかければ、ノートPCと同じような感覚で利用することができる。また、BluetoothキーボードとThinkPad Tablet 2のフットプリントはほぼ同じであり、両者を重ねれば、カバンの中などでも場所を取らずに収納できるので便利だ。Bluetoothキーボードは、内蔵バッテリで動作し、バッテリの充電はMicro USBポート経由で行なう。
視野角を制限し、覗き見を防ぐプライバシーフィルター
ビジネスで利用する場合は、覗き見などによる情報漏えいにも注意が必要だ。ThinkPad Tablet 2はIPS液晶を採用しているため、視野角が広く、斜めから覗かれてしまう恐れがあるが、オプションのプライバシーフィルターを装着することで視野角が制限され、覗き見を防ぐことができる。
また、プロジェクターを利用してプレゼンテーションを行なう場合、ミニD-Sub15ピンのVGA出力が必要なことも多いが、オプションの「ThinkPad Tablet 2 VGAアダプター」を本体下面のコネクタに装着することで、ミニD-Sub15ピンのアナログRGB出力を利用できるようになる。
Windows 8の動作も十分快適
参考のためにベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークプログラムは「PCMark05」、「PCMark Vantage」、「PCMark 7」、「3DMark03」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark」だ。 比較用として、レノボ・ジャパン「IdeaPad Yoga 13」、ソニー「VAIO Duo 11」の値も掲載した。
ThinkPad Tablet 2 | IdeaPad Yoga 13 | VAIO Duo 11 | |
---|---|---|---|
CPU | Atom Z2760 (1.80GHz) | Core i7-3517U (1.9GHz) | Core i5-3317U (1.70GHz) |
ビデオチップ | PowerVR SGX 545 | Intel HD Graphics 4000 | Intel HD Graphics 4000 |
PCMark05 | |||
PCMarks | N/A | N/A | N/A |
CPU Score | 2119 | 8823 | 7885 |
Memory Score | 2029 | 7159 | 7825 |
Graphics Score | 537 | 2464 | 2527 |
HDD Score | 6124 | 38063 | 48050 |
PCMark Vantage 64bit | |||
PCMark Score | 非対応 | N/A | N/A |
Memories Score | 非対応 | 6642 | 7951 |
TV and Movie Score | 非対応 | Failed | Failed |
Gaming Score | 非対応 | 8237 | 10248 |
Music Score | 非対応 | 14338 | 14890 |
Communications Score | 非対応 | N/A | N/A |
Productivity Score | 非対応 | N/A | N/A |
HDD Score | 非対応 | 28358 | 45577 |
PCMark Vantage 32bit | |||
PCMark Score | N/A | N/A | N/A |
Memories Score | 1012 | 6423 | 7609 |
TV and Movie Score | Failed | Failed | Failed |
Gaming Score | 1764 | 7207 | 9199 |
Music Score | 3019 | 13721 | 14047 |
Communications Score | N/A | N/A | N/A |
Productivity Score | N/A | N/A | N/A |
HDD Score | 5489 | 28508 | 45380 |
PCMark 7 | |||
PCMark score | 1436 | 4644 | 4648 |
Lightweight score | 946 | 3143 | 2818 |
Productivity score | 593 | 2299 | 1977 |
Creativity score | 2989 | 8598 | 9178 |
Entertainment score | 1044 | 3264 | 3232 |
Computation score | 3815 | 14847 | 16495 |
System storage score | 3000 | 4877 | 5171 |
3DMark03 | |||
1,024×768ドット32bitカラー (3Dmarks) | 2023 | 9153 | 12635 |
CPU Score | 354 | 1553 | 1658 |
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3 | |||
HIGH | 860 | 4224 | 4206 |
LOW | 1501 | 6372 | 6190 |
ストリーム出力テスト for 地デジ | |||
DP | 42.7 | 99.97 | 100 |
HP | 99.93 | 100 | 100 |
SP/LP | 100 | 99.97 | 99.97 |
LLP | 100 | 99.97 | 100 |
DP(CPU負荷) | 32 | 22 | 14 |
HP(CPU負荷) | 34 | 9 | 6 |
SP/LP(CPU負荷) | 21 | 4 | 3 |
LLP(CPU負荷) | 29 | 5 | 2 |
CrystalDiskMark 2.2 | |||
シーケンシャルリード | 80.41MB/s | 253.1MB/s | 458.0MB/s |
シーケンシャルライト | 34.17MB/s | 238.4MB/s | 260.3MB/s |
512Kランダムリード | 77.49MB/s | 196.5MB/s | 315.3MB/s |
512Kランダムライト | 28.49MB/s | 204.9MB/s | 240.1MB/s |
4Kランダムリード | 8.660MB/s | 13.68MB/s | 19.67MB/s |
4Kランダムライト | 2.098MB/s | 30.89MB/s | 40.69MB/s |
BBench | |||
Sバッテリ(標準バッテリ) | 12時間22分 | 6時間12分 | 5時間18分 |
Lバッテリ | なし | なし | 9時間57分 |
IdeaPad Yoga 13やVAIO Duo 11は、Core i7やCore i5を搭載しているため、ベンチマークスコアを比べると、ThinkPad Tablet 2はかなり低く見えるが、Windows 8のModern UIは快適に動作しており、Windowsストアアプリ中心に使う場合は、パフォーマンス面で大きな不満は感じない。もちろん、絶対的なパフォーマンスはやはりCore iシリーズよりは低いため、デスクトップアプリはやや動作が重く感じる場合もあり、動画エンコードなど、CPU負荷の高い作業を行なわせるには向かない。しかし、高い携帯性を活かして、コンテンツビューア的に使ったり、インターネット端末として使うには十分であろう。
Windows 8タブレットとしての完成度は高い
ThinkPad Tablet 2は、レノボ・ジャパンがこれまでThinkPadシリーズで培ってきた技術が注ぎ込まれた、完成度の高いWindows 8タブレットである。堅牢かつ軽いので、気軽に持ち歩け、実測で12時間を超えたバッテリ駆動時間の長さはまさに驚異的である。主にビジネス向けとしてリリースされた製品ではあるが、Windows 8が快適に動く、軽くて薄いタブレットが欲しいというコンシューマーユーザーは決して少なくないだろう。1,024段階の筆圧検知に対応したペンをサポートしているので、タブレットで画を描きたいといった人にもお勧めできる。現在でもまだ品薄のようだが、一刻も早く需給が改善されることを望む。