山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

Amazon「Kindle Fire HD」(前編)

~基本仕様とKindleストアの使い勝手をチェック

Kindle Fire HD
発売中

価格:15,800円~

Kindle Fire HD(左)とKindle Fire(右)。幅はKindle Fireの方が狭いが、ベゼルの幅が違うだけで、画面サイズは同じ7型。ちなみに本体重量はKindle Fireの方が重い

 Amazonの「Kindle Fire HD」は、Amazon専用の7型カラー液晶タブレットだ。KindleストアやAmazon MP3ストアなど、同社運営のストアで購入したコンテンツに最適化されているほか、アプリを導入してさまざまな用途に利用することができる。

 Kindleストアの日本語版オープンとともに国内発売が発表されたこともあって、電子書籍のための端末というイメージが強いKindle Fire HDと「Kindle Fire」だが、実際には音楽や映像も含めたコンテンツ全般を快適に利用するための製品であり、電子書籍の専用機というわけではない。

 中でも今回紹介する上位モデルの「Kindle Fire HD」は、800×1,280ドットの高解像度ディスプレイやデュアルドライバ・スピーカーの搭載、さらにデュアルアンテナ/デュアルバンド無線LANによる高速転送など、音楽や動画の再生に適した仕様となっている。こと電子書籍のためだけに利用するのであれば、完全にオーバースペックな仕様だ。スピーカーやカメラなどのレイアウトが横向きを基本としているのも、多くの7型タブレットとは異なる点だ。

 動画については、日本ではまだAmazonの動画サービス(Amazon Instant Video)が開始されておらず、Kindle Fire HDの機能をフルに発揮できないが、国内版の画面にも海外版と同じく「ビデオ」という項目があるので、これらの機能が使えるようになるのも時間の問題と思われる。

 なによりKindle Fire HDは上位モデルでありながら16GBで15,800円、32GBでも19,800円と、破格ともいえる安さである。昨年海外でKindle Fire初代モデルが発売された時は199ドルの低価格で大ヒットとなったが、それに勝るとも劣らない破壊力だ。

 今回は、同時に発売されたスタンダードモデルの「Kindle Fire」と合わせ、前編では基本的な仕様周りと電子書籍関連の機能について、後編では音楽再生などそのほかの機能について紹介していく。

解像度、オーディオ周り、通信機能、コストパフォーマンスに優位性あり

 まずはKindle Fire HDとKindle Fireの両製品に、7型クラスのタブレットとして競合に当たる「Nexus 7」、および「iPad mini」を加えて仕様を比較してみよう。

【表】スペック比較

Kindle Fire HDKindle Fire(第2世代)Google Nexus 7iPad mini

AmazonAmazonASUSApple
サイズ(幅×奥行き×高さ、最厚部)137×193×10.3mm120×189×11.5mm120×198.5×10.45mm134.7×200×7.2mm
重量約395g約400g約340g約308g(Wi-Fiモデル)、約312g(Wi-Fi+Cellularモデル)
OS独自(Androidベース)独自(Androidベース)Android 4.1iOS 6
解像度/画面サイズ800×1,280ドット/7型600×1,024ドット/7型800×1,280ドット/7型768×1,024ドット/7.9型
ディスプレイカラー液晶カラー液晶カラー液晶カラー液晶
通信方式IEEE 802.11a/b/g/nIEEE 802.11b/g/nIEEE 802.11b/g/nIEEE 802.11a/b/g/n
内蔵ストレージ16GB(ユーザー利用可能領域:12.6GB)
32GB(ユーザー利用可能領域:26.9GB)
8GB16GB、32GB16GB、32GB、64GB
バッテリ持続時間(メーカー公称値)11時間(無線LANオン)8.5時間(無線LANオン)最長8時間10時間(無線LANオン)
電子書籍対応フォーマットKindle (AZW3)、TXT、PDF、保護されていないMOBI、PRC、DOC、DOCX、JPEG、GIF、PNG、BMP、HTML5、CSS3Kindle (AZW3)、TXT、PDF、保護されていないMOBI、PRC、DOC、DOCX、JPEG、GIF、PNG、BMP、HTML5、CSS3アプリに依存アプリに依存
電子書籍ストアKindleストアKindleストアGoogle Play ブックスなどiBooks Storeなど
価格(2012年12月18日現在)15,800円(16GB)、19,800円(32GB)12,800円19,800円(16GB)、24,800円(32GB)28,800円(Wi-Fi 16GBモデル)
36,800円(Wi-Fi 32GBモデル)
44,800円(Wi-Fi 64GBモデル)
39,800円(Wi-Fi + Cellular 16GBモデル)
47,800円(Wi-Fi + Cellular 32GBモデル)
55,800円(Wi-Fi + Cellular 64GBモデル)"
備考

量販店向けの8GBモデルも用意。国内未発売のHSPA+モバイルデータ通信対応モデルも存在する

 冒頭で述べたように単純に仕様だけで比較できるものではないのだが、それはそれとして、どの機種も特徴があって迷う。解像度についてはKindle Fire HDとNexus 7にアドバンテージがあり、薄さおよび軽量さはiPad miniが有利だ。本体幅のコンパクトさではNexus 7が頭1つ抜けており、オーディオ周りの機能はKindle Fire HDが有利。国内向けに携帯電話回線を搭載するモデルをラインナップしているのはiPad miniだけだ。これらスペック面で全般的に遅れをとっているのはKindle Fireだが、価格は飛び抜けて安い。何を優先するかによって、結論も大きく変わるだろう。

 また、この仕様表に書かれている以外にも見るべきポイントはいくつもある。例えばiPad miniとNexus 7はそれぞれiOS/Androidアプリが利用できるが、専用タブレットであるKindle Fireシリーズも同社のアプリストアが利用できる。アプリの点数は現時点では少ないが、FacebookやSkypeといった主要アプリ、さらにはゲームなどのアプリは数多く用意されており、ラインナップも急激に増えつつある。もちろん個人の用途にもよるが、単純に「iOS/Androidアプリが使えない」という理由で切り捨てるべきかと言われると、ちょっと違う。

 一方、Kindleストアの利用に関してよく耳にするのが「わざわざ専用機を買わなくとも、iPad miniやNexus 7などのタブレットにKindleアプリを入れておけばいいじゃん」という意見だが、これは厳密には正しくない。例えばiOS版のKindleアプリは読むだけなら大差ないが、ストア機能がないため、購入時はブラウザからストアを開き直す必要がある。同じ理由で、読了後に続巻を含む同じ作者の著作ページにジャンプすることもできない。読書機能だけを切り取って独立させたような仕様で、ほかの機能は考慮されていないのだ。

 またAndroid版のKindleアプリは、iOS版と違ってストア機能こそあるが、画面の閲覧性などで専用機であるKindle Fireに明らかに劣るほか、読書周りでも共有機能などの一部機能が使えなかったり、クラウドからのダウンロードが1冊ずつしかできないといった違いがある。シームレスな操作感を求めるのであれば、やはり「ネイティブ」であるKindle Fireシリーズが頭1つ抜けていることになる。

左から、Kindle Fire HD、Kindle Fire、Nexus 7、iPad mini。本体の天地サイズはそれほど差はないが、幅および画面サイズは機種によってかなり違う
Kindle Fire HD(左)とNexus 7(右)の比較。いずれも800×1,280ドット/7型だが、本体幅はかなりの差がある。前面カメラの位置が違うのに注目
Kindle Fire HD(左)とiPad mini(右)の比較。画面は7型と7.9型ということでiPad miniの方が大きいが、本体幅はKindle Fire HDの方が広いという逆転現象が起こっている
Kindle Fire HD(左)とKindle Paperwhite(右)の比較。本体サイズには意外に差がある
厚みの比較。左列はいずれもKindle Fire HD、右列は上から順にKindle Fire、Nexus 7、iPad mini、Kindle Paperwhite。iPad miniが飛び抜けて薄いほかは、違いはわずか
サイズの比較。iPhone 4S(左)、Kindle Fire HD(中央)、iPad(右)。Kindle Fire HDはおおむね中間のサイズということになる
本体背面。横向きを基本としたデザインであることが分かる
本体底面にMicro USBポート、Micro HDMIポートを備える
本体上面に電源ボタンと音量大/小キーを備える。音量キーは大/小どちらか直感的に見分けにくいのが難点だが、電源ボタンに近い側にあるのが小。なお、電源ボタンと音量小キーの組み合わせでスクリーンショットを取得できる

セットアップ手順は標準的。購入済みコンテンツはすぐダウンロード可能

 開封からセットアップまでをざっと見ていこう。設定に必要なのはAmazonのアカウントで、あとは無線LANやタイムゾーンの設定を行なうことになる。すでにKindleストアでコンテンツの購入実績があるアカウントを紐付ければ、購入済みコンテンツをすぐに再ダウンロードできる。詳しい手順は、以下のスクリーンショットを参照してほしい。

製品パッケージ。Kindle Paperwhiteなどと同じく、一片が斜めにカットされた特徴的な形状
本体のほかに、ライセンス情報、電源の入れ方と充電について書かれた2冊の小冊子、USBケーブルが同梱される。ちなみにUSBケーブルはKindle Paperwhiteとは違い黒色
電源の入れ方と充電についての小冊子。小冊子といっても各国語版が一冊にまとまっているだけで、日本語の説明はこの写真の見開き2ページのみ。あとは本体内のヘルプを参照するという割り切った仕様だ
セットアップ開始。まずは電源を入れ、Androidと同様に鍵マークを横方向にスワイプしてスクリーンセーバーを解除する
言語選択。「日本語」を選んで次へ
無線LANのセットアップ。任意のSSIDを選んでパスワードを入力する。ちなみに5GHz帯のIEEE 802.11aにも対応している
Amazonアカウントを入力。今回購入したモデルは到着時点でAmazonアカウントがセットアップ済みというわけではなかった。このあとタイムゾーンの選択と、アカウントの本人確認のステップがある。余談だが海外版では「.com」だった右下の短縮キーが「.co.jp」に変更されている
登録済みのFacebookおよびTwitterアカウントが表示される。確認したら「今すぐ開始」をタップ
7ページにわたって使い方ガイドが表示される
使い方ガイドの表示が終わり、ホーム画面が表示された。最上部のステータスバーにはKindleの名称や時刻、バッテリ残量などが表示される

ホーム画面は「スライダ」と「コンテンツライブラリ」の関係を把握すべし

 ホーム画面上部のメニューバーには、ゲーム/アプリ/本/ミュージック/ビデオといったコンテンツが表示されており、これらをタップすることで、各コンテンツライブラリに移動できる。例えば「本」をタップすると表示されるライブラリは、ダウンロード済みの本が並んでいるほか、Kindleストアへもアクセスが行なえる。Kindle Paperwhiteで言うところのホーム画面がこれだ。

 ほかにもミュージックやビデオなど、さまざまなコンテンツが同列に並んでおり、左右にフリックしてスクロールし、タップして移動できる。また、一番左の「お買い物」をタップすると、Amazon.co.jpで商品を購入することもできる。KindleストアやAmazon MP3のようなデータだけでなく、リアルな商品も購入できるのが、Kindle Fireシリーズの強みだ。

「お買い物」。KindleストアをはじめとするAmazon運営のストアへのショートカットや、Amazon.co.jpへのリンクがまとめられている。Amazon.co.jpで商品が買えるのも本製品の強みだ
「ゲーム」ライブラリ。クラウドもしくは端末上のゲームアプリが表示されるが、初期状態では何もないので、ここではストア画面を表示している
「アプリ」ライブラリ。プリインストールされたアプリのほか、自分でアプリストアから購入したアプリが表示される
「本」ライブラリ。クラウドもしくは端末上にある本が表示される。過去にKindleストアで購入した本は「クラウド」をタップすることで表示できる。詳しくは後述する
「ミュージック」ライブラリ。プリインストールされている2曲のほか、Amazon MP3ストアで購入済みの楽曲(ここでは「桜流し」)があればそれが表示される。なお、初回時は利用登録画面が表示される
「ビデオ」ライブラリ。国内ではAmazonの動画サービス(Amazon Instant Video)がまだ開始されていないため、ここではPCからUSBケーブル経由で自前のコンテンツを転送する方法が記載されている
「ウェブ」ライブラリ。Amazon独自のブラウザ「Amazon Silk」が使用できる。使い方は一般的なブラウザと相違ない。これはおすすめサイトを表示したところ
「写真」ライブラリ。ローカルにある写真やスクリーンショットを表示できるほか、ストレージサービス「Amazon Cloud Drive」にアップロードした写真も表示できる。Facebookにある写真をインポートすることも可能
「ドキュメント」ライブラリ。パーソナルドキュメントにアップロード済みのPDFコンテンツを表示できる。タップするとダウンロードされる。ちなみに海外版のKindle Fire HDではこの「ドキュメント」の隣に「キャンペーン」という画面があるが、国内版では存在しないようだ

 ホーム画面中央はスライダと呼ばれ、左右にフリックして回転させられる。ここには最近使用したアイテムが表示されるようになっており、Kindleストアで購入した本はもちろん、Amazon MP3で購入した音楽やWebページ、アプリ、PCから転送したパーソナルドキュメントなど、あらゆるアイテムがここに並ぶ。詳しくは後述の動画をご覧いただきたいが、iTunesなどのアルバムアートワークに似た動きで、動作はきわめて滑らかだ。

 スライダには最近使ったアイテムが表示される仕組みになっているが、たとえばKindle PaperwhiteなどほかのKindleデバイスで本を購入すると、このスライダの先頭に自動的に表示されるなど、本製品単体で完結するのではなく、ほかのデバイスとも連携していることが特徴だ。なおスライダに表示したくないアイテムは、長押しして「スライダから削除」を選べば表示されなくなる。このスライダと、各コンテンツライブラリの関係(さらにその先にあるストアとの関係)が理解できれば、Kindle Fireシリーズの操作は難なく行なえるはずだ。

スライダは左右フリックで回転させることができる。なおスライダの下段には、スライダ中央にあるアイテムに関連した商品が並ぶ
ホーム画面は横向きに表示することも可能だが、その場合は下段の関連商品が表示されなくなる
【動画】ホーム画面でスライダをスクロールして作品を選択し、コミック、テキスト本の順にページをめくる様子。スライダの中央に来たアイテムは、下段に関連作品が表示されるのが分かる

 また、画面右下には星マークがある。これをタップすると、画面下からお気に入りがポップアップし、お気に入りのアイテムにすばやくアクセスできる。利用頻度の高いアプリなどを登録しておくといいだろう。ちなみに長押ししてのお気に入りへの追加は、上記のホーム画面中央のスライダ上に並んでいるサムネイルに限らず、各電子書籍の表紙や音楽アルバムのジャケット、各コンテンツライブラリ上のサムネイルなど、あちこちから行なえる。

 このほか利用頻度が高いのは、画面上端を下方向にスワイプすることで表示できるクイック設定の領域だろう。「ロック」、「音量」、「明るさ」、「ワイヤレス」、「同期」、「その他」という6つのアイコンが並んでおり、それぞれ設定できる。「その他」は設定画面へのリンクで、使い始めてからしばらくは触れる機会も多いはずだ。ちなみにKindle Fireの場合、Kindle Fire HDと違って音量調節のハードウェアキーがないため、音量を操作する際はここから操作することになる。

画面下部の星マークをタップするとお気に入りが表示される。初期状態では4つだけなので1段表示だが、追加すると2段、3段と増えていく。なお個別のアイテムをお気に入りに追加するには、各アイテムのサムネイルを長押しして「お気に入りに追加」を選ぶ
クイック設定。この画面では表示されていないが、アプリのインストール完了や購入済みアイテムのダウンロード完了などの通知メッセージも表示される。Androidでおなじみの仕組みだ

 OSがもともとAndroidベースということもあって、前述のクイック設定の領域のほか、画面のロック解除方法や設定画面の項目などはAndroidのそれに近い。ちなみにスクリーンショットは「電源ボタンと音量小キーの同時押し」で取得できるが、これもAndroid 4.0以降の操作方法と同じだ。

設定画面。Androidでおなじみの項目が並ぶ。この画面は前述のクイック設定の領域から呼び出せる
音声まわりの機能の豊富さはKindle Fire HDの特徴の1つ。画面の明るさの自動調節がデフォルトではオフになっているので、必要に応じて変更しておくとよい
Kindle Fire HDはBluetoothにも対応している
システムバージョンは7.2.2。セットアップ後に最新版の7.2.3にアップデートされたため、今回のスクリーンショットは基本的に7.2.3をベースにしている
ストレージ容量。16GBモデルでは12.6GB、32GBでは27.0GBが利用可能となっている
セキュリティ。起動パスワードは設定しておく方がよいだろう

クラウドと連携して本をスムーズに出し入れ可能。コミックの見開き表示も実用的

 続いて「本」全般について見ていこう。

 ホーム画面で「本」をタップするとライブラリ画面が表示される。ここには端末にダウンロード済みの本が並んでいるほか、クラウドにある本を表示することもできる。Kindle Paperwhiteで言うところのホーム画面だ。すでにKindleストアの利用経験があれば、クラウド内には購入済みの本が並んでいることだろう。

 画面は本棚を模したグリッド表示になっており、上下にスクロールが可能。リスト表示に切り替えることもできる。また著者順、最近使用した順、タイトル順に並べ替えることができる。タップすると端末にダウンロードが行なわれ、読めるようになる。

「本」のライブラリ画面。最上部でクラウドか端末かを切り替えることができ、ここではクラウド上にある本を表示している。左下の本はダウンロード中のため、サムネイル上に進捗バーが表示されている
ダウンロードが完了するとホーム画面にも表示される

 読書周りの機能についてはiOS/Android版のKindleアプリとほぼ同様で、左右タップもしくはフリックでページめくり、画面中央タップで上下にメニューが表示される。フォントの種類とサイズ/行間/余白/カラーモードが調節できるほか、メモ/ハイライト/ブックマーク機能/辞書機能/共有機能など、一通りの機能が揃っている。著者ページの表示など、オリジナルの機能も備える。

タップすれば本を開くことができる。これはテキストの本で、縦書きに対応している。左右タップもしくはフリックでページめくりが行なえる
画面中央タップで上下にメニューが表示される。iOS/Android版のKindleアプリの挙動に近い
フォントサイズ/行間/余白/カラーモード/フォントの種類を変更可能
フォントはゴシックと明朝が用意される
今のところKindle Fireシリーズ独自の仕様といえるのが、目次内に著者紹介へのリンクが含まれており、このように著者の情報を単体のページで表示できることだ。Amazonの著者ページに掲載されている情報と同一だが、関連作品も合わせて表示されており、なかなか有用である。Kindle Paperwhiteなどでも利用可能になることを望みたい
感想などの共有も可能
メモおよびブックマーク機能も備える。タップして該当の位置No.に移動することも可能
範囲選択した箇所について、辞書機能を使って意味を表示できる。操作性はスムーズで実用性が高い
「全文表示」をタップすると辞書の該当ページにジャンプする。これは大辞泉を使用している
範囲選択した箇所にメモをつけることもできる
メモをつけた箇所には小さなアイコンが付与される
アイコンをタップするとメモの内容が表示できる
さらにWikipediaやWebでの検索も可能
読み終えるとレビューの投稿やシェアが可能。また後述するように関連作品へのリンクも用意される

 ところで本製品の画面サイズは7型ワイドだが、高解像度であることから、見開き表示も可能だ。iPad miniでも見開き表示は可能だが、768×1,024ドットということでやや粗が目立つ場合もある。その点、本製品の方がクオリティは高く、コミックの見開き表示などには適している。

コミックを縦、横それぞれで表示したところ。見開きはサイズこそ小さいものの、解像度は十分に実用的だ
テキスト本を縦、横それぞれで表示したところ。こちらは単純に横長になるだけなので、あまりメリットはなさそうだ

ストア機能はシームレスな操作性。続巻の購入もスムーズ

 続いてKindleストアについて見ていこう。ライブラリ画面右上の「ストア」をタップすると、Kindleストアを表示できる。画面レイアウトはKindle PaperwhiteおよびiOS/Androidでの画面のいずれとも異なっており、上段におすすめコンテンツ、中段以下の左側に「ベストセラー」、「コミック」、「小説・文芸」といった各ジャンル、右側に洋書や先行配信コンテンツにアクセスするためのリンクが用意されている。

 ストアでの購入フローは以下のスクリーンショットをご覧いただきたいが、ワンクリック(1-Click)で購入でき、端末にダウンロードが完了したのちタップすれば開くという挙動は、ほかのKindle端末/アプリと同様。コミックでは、前の巻を読み終えると同じ著者の作品が表示されるので、そこからストアにジャンプして続きを買い求めることができる。また、ホーム画面のスライダ上でも関連作品が表示されるので、そこからジャンプすることもできる。きわめてスムーズだ。

 これらの本は、端末から削除するとクラウド上に保存され、必要になればいつでも呼び出せるので、端末上には必要なものだけを置いておける。とはいえ、ユーザー使用可能領域が1GB程度のKindle Paperwhiteとは異なり、本製品の容量は16/32GBもあるので、保存スペースを節約するために端末から削除するのではなく、どちらかというと目当てのコンテンツを探しやすくするために不要なコンテンツを削除する目的の方が多そうだ。

ホーム画面のスライダの中央位置に表示された本は、下段に「この商品を買った人はこんな商品も買っています」として関連作品が表示されるので、たいていはそこからKindleストア上の次の巻の販売ページに直接ジャンプできる
Kindleストア上の次の巻の販売ページ。購入ボタンをタップすると1-Clickで決済が行なわれる。サンプルのダウンロードやほしい物リストへの追加も可能
決済が完了すると自動的にダウンロードが開始される
ダウンロードが完了すると「今すぐ読む」というボタンが表示される
タップするとすぐに本を開くことができた。手動でホーム画面に戻る必要はなく、きわめてシームレスだ
ホーム画面に戻ると、買ったばかりの本が先頭に表示されている。また、下段には次の巻が表示されているので、読み終えたらすぐに続きを買い求めることができる
Kindleストアのトップページ。Kindle PaperwhiteともiOS/Android版のKindleアプリとも異なる、Kindle Fireシリーズオリジナルともいえるレイアウトだ

 1つネックになるのが、Kindle Paperwhiteにあるコレクション機能がないことだ。多くの本を分類して格納できるコレクション機能は、むしろ容量が大きい本製品にこそ必要な機能だと思うのだが、それがない。iOS/Android版のKindleアプリにも存在しないので本製品だけが仲間外れというわけではないが、購入済みコンテンツが増えてきた時の、何らかの分類方法がほしい気はする。ちなみに本稿執筆時点で筆者のKindleストアのクラウドには本が125冊あるが、それが階層なしでずらりと並んでしまっており探しにくい。

実は最強の「自炊ビューア」。さらにほかの電子書籍ストアも利用可能

 さて、一見するとKindleストアから購入した電子書籍しか読めなさそうな本製品だが、実はそのほかの選択肢もある。例えば電子書籍ストア「eBookJapan」は電子書籍ビューワ「ebiReader」をKindle Fireシリーズ向けにリリースすることを表明しており、(Amazon側が承認さえすれば)今後ほかのストアもこの動きに追従していくものと思われる。Kindle FireシリーズのOSはAndroidベースであるだけに、Android向けのビューワを用意している電子書籍ストアのいくつかは、対応アプリをリリースするのではないだろうか。

 そんな中で注目なのは、自炊データのビューワとしての用途だ。現在アプリストアには、自炊データのビューワとして有名な「Perfect Viewer」(235円)がラインナップされており、これとPDFプラグインを導入することで、PDFデータはもちろん、ZIP圧縮JPGについても表示ができる。しかもローカルに保存したデータにとどまらず、家庭内のNAS上などに保管されているデータを、無線LAN経由で読み込めるのだ。

「Perfect Viewer」の購入画面。Androidアプリとしてはすでにおなじみだ
「Perfect Viewer」を起動したところ。タップ位置による機能の割り当てが明示されている
ローカルドライブ内のファイルを選択できる以外に、LAN上のファイルも選択できる。ここでは「LAN」を選ぶ
サーバーを追加する。「サーバー」にはNASもしくはコンピュータ名、ユーザー名とパスワードにはNASもしくはコンピュータにログインする際のID/パスワードを入れる
NAS内の自炊データ(これはZIP圧縮JPG)がずらりと表示された。あとはタップして開くだけ
ページが表示された状態。LAN上であればデータをローカルにコピーしなくとも読めるのでありがたい
設定項目の多彩さは「Perfect Viewer」の人気の秘訣。今回試用した限りではハングアップなどは起こらなかったが、メモリはそこそこ食うアプリなので、必要に応じてキャッシュサイズなどを調節してやろう

 機能の豊富さで定評のある「Perfect Viewer」と、HD解像度でコストパフォーマンス抜群の「Kindle Fire HD」の組み合わせ。そして、もちろん右綴じのファイルにも対応しており、非のうちどころがない。はっきり言ってしまうと最強である。これまで大量に自炊データを保有しているユーザーも、本製品さえあれば、過去の資産を活かしつつ、さらにKindleストアで新規に電子書籍も購入できる。おすすめだ。

 ちなみにPDFを表示するには、パーソナルドキュメント経由で読み込む方法もあるが、こちらは右綴じにしか対応しないデフォルトのPDFビューワが起動するので、自炊データの表示には不向きだ。名前の通り、あくまでもドキュメントを表示するための機能ということで、上記のアプリとはまったく別物と考えた方がよい。

動きはきびきび、初心者からヘビーユーザまで幅広くおすすめできる製品

 以上、基本的な仕様周りと電子書籍関連について紹介した。筆者は海外版のKindle Fire HDも所持しているが、それと比較しても、全般的に堅実に日本語化してきた印象が強い。海外ではすでに発売から3カ月が経ち、その間に何度かファームアップして信頼性が向上している。その状態で日本語化されているが故に、新製品でありながらかなり「枯れて」いる印象だ。

 動作に関しても海外版と同様、全般的にきびきびとしており、不明瞭な動きもない。スライダを中心としたホーム画面周りの構造と、お気に入りの使い方などは特殊といえば特殊だが、使っていればすぐに慣れる。国内でサービスインしていないビデオ機能が実質的に使えないのがやや残念だが、初心者からヘビーユーザーまで、幅広くおすすめできる端末だと言えるだろう。

 次回の後編では、今回紹介できなかった音楽再生やアプリ周りなどを紹介していきたい。

(山口 真弘)