山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ
BookLive「BookLive!Reader Lideo」
~WiMAXを搭載したBookLive専用E Ink端末
(2012/12/19 00:00)
BookLiveの「BookLive!Reader Lideo(リディオ)」(以下Lideo)は、電子書籍ストア「BookLive!」専用のE Ink電子ペーパー端末だ。WiMAXを搭載しており、ネットワークのセットアップ不要でストアに接続して本を購入できることが売りの製品だ。現時点では家電量販店では取り扱われず、同社ウェブサイトおよび三省堂書店などの書店ルートで販売される。
Kindle Paperwhiteの国内リリースから3週間遅れての登場となったLideoだが、UQ WiMAXが提供するモバイルWiMAXの接続費込みで8,480円という価格はコストパフォーマンスが高い。Kindle Paperwhiteの場合、Wi-Fiモデルこそ7,980円だが、3Gモデルは12,980円と、5,000円もの価格差がある。その点、このLideoはKindle Paperwhiteにプラスわずか500円という価格で3Gモデル相当のネットワーク接続機能が利用できるため、機能と価格のバランスだけで言うと、かなりお買い得であることが分かる。
また、BookLive!のコンテンツ数は現時点で約95,000点と、Kindleストアをはじめとする競合ストアの5~7万点というコンテンツ数を大きく上回っているほか、独自のポイントを利用することでコンテンツを割安に購入できるなど、見どころは多い。それだけに読書端末としての出来および使い勝手は気になるところだ。さっそくチェックしていこう。
個別の回線契約なしでWiMAXが利用可能。解像度などのスペックはやや低め
まずは恒例の仕様比較から。
BookLive!Reader Lideo | Kindle Paperwhite | kobo glo | PRS-T2 | |
---|---|---|---|---|
発売元 | BookLive | Amazon | 楽天 | ソニー |
サイズ(幅×奥行き×高さ、最厚部) | 110×165×9.4mm | 117×169×9.1mm | 114×157×10mm | 110×173.3×10mm |
重量 | 約170g | 約213g(3Gモデルは約222g) | 約185g | 約164g |
解像度/画面サイズ | 600×800ドット/6型 | 758×1,024ドット/6型 | 758×1,024ドット/6型 | 600×800ドット/6型 |
ディスプレイ | モノクロ16階調 E Ink電子ペーパー | モノクロ16階調 E Ink電子ペーパー | モノクロ16階調 E Ink電子ペーパー | モノクロ16階調 E Ink電子ペーパー |
通信方式 | IEEE 802.11b/g/n、WiMAX | IEEE 802.11b/g/n、3G(3Gモデルのみ) | IEEE 802.11b/g/n | IEEE 802.11b/g/n |
内蔵ストレージ | 4GB | 約2GB(ユーザー使用可能領域:約1.25GB) | 約2GB(ユーザー使用可能領域:約1GB) | 約2GB(ユーザー使用可能領域:約1.3GB) |
メモリカードスロット | - | - | microSD | microSD |
内蔵ライト | - | ○ | ○ | - |
バッテリ持続時間(メーカー公称値) | 約1カ月 | 8週間(無線LANオフ) | 約1カ月、約30,000ページ(無線LANオフ) | 約30,000ページ、最長2カ月(無線LANオフ、1日30分読書時)、最長1.5カ月(無線LANオン) |
電子書籍対応フォーマット | XMDF、.book、EPUB | Kindle (AZW3/AZW)、 TXT、PDF、unprotected MOBI、PRC natively; HTML、DOC、DOCX、JPEG、GIF、PNG、BMP through conversion. | EPUB、PDF(同社ストアで販売しているPDF書籍のみサポート) | XMDF(mnh/zbf).book、EPUB、PDF、TXT、JPEG、GIF、PNG、BMP |
電子書籍ストア | BookLive! | Kindleストア | koboイーブックストア | Reader Store、紀伊國屋書店BookWeb |
価格(2012年12月17日現在) | 8,480円 | 7,980円、12,980円(3Gモデル) | 7,980円 | 9,980円 |
他社のE Ink端末3製品に比べると、本体の大きさはほぼ同等。重量は最軽量であるソニーPRS-T2よりもわずかに重い程度で、かなり軽量な部類だ。画面サイズはほかと同じ6型だが、解像度はKindle Paperwhiteおよびkobo gloの758×1,024ドットよりも低い600×800ドットで、スペック的には1世代前ということになる。昨今のE Ink端末のトレンドであるフロントライト機能も搭載しない。
内蔵メモリは4GB。ユーザー使用可能領域は説明書およびホームページ上には明記されていないが、数冊をダウンロードしたあとデバイス情報を見ると空き領域が2.87GBだったため、実質3GB程度と思われる。外部メモリスロットは搭載せず、またPCとUSBで接続してもストレージとして認識されない。フォーマットとしてPDFなどにも対応しないので、自炊ビューアとして利用することは不可能だ。
購入時点でWiMAXが利用可能になっており、個別の回線契約なしにストアに接続できることが大きな特徴。ただし、ブラウザは搭載しないため、ウェブページの閲覧は行なえない。FacebookやTwitterなどソーシャル連携機能もないので、これら通信機能は、ストア周りや同期機能の利用に限られる形になる。完全にBookLive専用機という扱いだ。
バッテリ持続時間は約1ヵ月とされるが、通信機能オンで数日使った限りでは、同一条件のKindle Paperwhite 3Gはもちろん、kobo Touch/gloよりもはるかに減りが速いように感じる。ちなみに電池の残量表示は、スリープからの復帰直後は残量表示が「2」なのに数分経つと「3」に増えたりと、意外にアバウトである。充電中は青色LEDが点灯するのだが、どのくらい充電されたかは画面をオンにしないと分からないなど、こと電源周りは少々不親切に感じられる。
セットアップはスムーズ。紙のマニュアルも付属するなど「日本の家電基準」
セットアップの手順を見ていこう。今回はすでに取得済みのBookLiveアカウントを使ってログインすることを前提に説明する。セットアップ時にBookLiveのアカウントを登録せずに独自の数字4ケタのパスワードを用いて登録し、あとから既存アカウントと統合することもできるとされているが、今回は試していない。
流れとしては、利用規約に同意したあとでBookLiveアカウントを持っているか尋ねられるので、今回のケースでは「はい」を選択。メールアドレスとパスワードでログインすると、セットアップ完了だ。購入時点でWiMAXが接続状態にあるため、ネットワークへの接続プロセスが一切ないのは利点だ。なお、BookLiveは1アカウントあたりの登録可能台数が、最近になって5台に変更された(従来は3台だった)ので、この時点で台数超過でひっかかるケースはまずないだろう。
セットアップの完了後、15ページにわたる利用ガイドが表示される間に、購入済みの本の一覧がバックグラウンドで同期される。利用ガイドを見終わった頃には、ホーム画面にあたる「本棚」が表示され、購入済みの本が並んだ状態になっている。あとは購入済みの本をダウンロードして読んだり、ストアへアクセスして新しい本を探せる。きわめて簡単だ。
上記の画像のように、マニュアルなしでも問題なくセットアップできる。さらに本製品には、紙の取扱説明書(冊子)とクイックスタートガイド(8つ折)が添付されており、これらを参照しながらのセットアップも可能だ。日本製の家電やPCなどによくある「最初は要点が書かれたペラの紙で、あとで使い方を含めて分からなくなれば詳しい取説で」というスタイルだ。このような電子書籍端末などに不慣れな人も安心だろう。
上記の設定時に少し気になるのが、ソフトウェアキーボードの使い勝手だ。PCの利用経験がないユーザーをターゲットに含めていることもあってか、文字入力に利用するソフトウェアキーボードは日本語が50音順、アルファベットはQWERTY配列ではなくA~Zが順番に並んだ仕様になっている。一応QWERTY配列にも切り替えられるのだが、むしろ50音/A~Z配列のキーボードを非表示にする設定もほしいと感じる。
操作方法や画面フローは標準的。文字サイズなどはシニア向けの仕様
E Ink端末としての操作方法や画面フローはいたって標準的である。ホーム画面に相当する「本棚」は表示が3段に分かれており、最上段が「最後に読んだ本」、中段と下段が「購入済みの本」が表示される。ダウンロード済の本は、タップするだけで開いて読むことができる。未ダウンロードの場合はタップすることでダウンロードが開始され、完了すると読めるようになる。
これらは基本的にタッチスクリーンで操作するが、全ての操作をタッチで行なうKindle Paperwhite/kobo gloと異なり、この本棚画面に戻る際やストアの表示、メニューの表示などは画面直下にある5つのボタンを利用する。ボタンは左から順に本棚、書店、メニュー、戻る、文字となっており、同じく画面下部に5つのボタンを備えるソニーReaderは左2つのボタンをページめくりに割り当てており、コンセプトの違いを感じる。
ページめくりはタップもしくはフリックで行なう。面白いのはタップの割り当てで、一般的には画面の右端をタップすると「送る」、左端だと「戻る」(左綴じだと逆)になるが、本製品では画面の下半分が「進む」、上半分が「戻る」に割り当てられている。こうすることで右綴じ左綴じに関わりなく挙動が統一できるわけだ。ほかの端末やアプリでの操作に馴染んでいると違和感があるが、分かりやすいといえば分かりやすい。ちなみにソニーReaderと同様、長押しフリック(フリックしたまま指を離さず押しっぱなしにする)で、ページを早送りする機能もある。
本棚の画面デザインはやや息苦しい。少しでも文字を大きくして見やすくしようとしたのだと推測されるが、画面全体に文字や画像をびっしりと並べた結果、余白がほとんどなくなってしまっており、むしろ必要な情報が目に入りにくい。文字が大きいことから、相対的に画面が小さく感じられるのもネックだ。
また、本のタイトルが最大で6文字しか表示されず、例えば「【カラー版】ジョジョの奇妙な冒険 第1部 1」であれば「【カラー版…」とだけしか表示されないため、タイトルで見分けがつかず、結局サムネイルで見分けなくてはいけないことが多い。画面のデザインが洗練されているソニーReaderや、情報量を削って視認性を高めているKindle Paperwhiteとは対照的だ。文字サイズを大きめにすることを優先したということなのだろう。
本文の文字サイズは5段階で変更できるが、最小値にしてもそこそこ大きい。このあたりもシニア向けということになりそうだが、もう少し縮小側の選択肢を増やして欲しいところである。デフォルト値を大きめに設定しておくことと、そもそもの選択肢をなくしてしまうことは別の問題である。
また、ページを移動するメニューもやや癖があり、例えば「巻末へ」「巻頭へ」の移動にあたっては、それぞれのボタンをタップしたあと「決定」「閉じる」を押さなくてはいけない。それぞれのボタンを押した段階でジャンプするのと同時に画面を閉じればよいと思うのだが、余計なアクションが2段階必要になってしまっている。このあたりはシニア向けうんぬんではなく、いまいちこなれていない感がある。
いわゆる読書機能としては、しおりのほか、辞書/マーカーメニューも用意されている。辞書は内蔵辞書のみで、Wikipediaなどとは連携しないが、選択範囲を1文字ずつ変更できるので、他社の端末のようにうまく範囲選択できずにイライラすることもない。本製品はKindle Paperwhiteほどレスポンスがよくないわけだが、それをインターフェイス側できちんと補っているのは秀逸である。
なおマーカー、しおりは20個までとなっており、本格的に使うには物足りないが(筆者はビジネス書などでは一冊に50カ所ほど付けることもざらにある)、そこまでヘビーな用途は想定していないというだけで、一般的にはこれで十分だろう。なお、FacebookやTwitterなどのソーシャル連携機能はない。
画面の切り替わりの遅さがネック。画質もやや低め
さて、本製品をしばらく使っていて感じるのは、「画面の切り替わりが遅い」ことと、「画面が濃い」ことだ。
前者についてはコミックで顕著で、パッと消えてパッと表示されるのではなく、前の画面がフェードアウトして白黒反転しつつ次の画面が現れるという、ややねっとりとした動きなので、余計に動きが遅く見えてしまう。筆者が知る範囲で敢えて似た挙動の端末を挙げるならKindle 2で、言い替えればそれだけ古い世代のE Inkの挙動に近いということだ。
また、書店に接続する際、「しばらくお待ち下さい」という画面が表示されたまま、10秒近く固まったままになることも多い。WiMAXの接続確立に時間がかかっているのかと最初は思っていたのだが、本を開く際にも同様の症状が起こるので、CPUの処理が遅いのではないかと思われる。このほか、本のページを開いた状態からいったん本棚に戻り、別の本を開こうとすると、10秒以上待たされることがある。どちらかというと、こちらの問題の方が深刻だ。
画面がかなり濃いのも特徴だ。単に黒に深みがあるだけならメリットなのだが、中間調もかなり濃く、ディティールがつぶれてしまっていることもしばしばだ。とくにコミックの表紙や巻頭カラーなど、データ上はカラーのページを白黒で表示している場合は、ほかのE Ink端末よりも濃い部分の階調がつぶれやすく、ベタ塗りのようになることもしばしばだ。
本製品には明るさとコントラストの調整機能が搭載されているので、濃さについては設定を調整してやれば解決するのだが、そうすると中間調が薄くなってしまうため、文字のアンチエイリアスが薄くなりエッジが目立ってしまったり、細い文字がかすれ気味になったりする。また、見出しなどの太文字は細部がつぶれるほど太かったりと、濃度に関連して気になる箇所はあちこちにある。詳細はスクリーンショットをご覧いただきたいが、同じ解像度であるソニーPRS-T2と比べても明らかに目立つ。
使用しているフォントの関係もあるかもしれないが、可読性はソニーPRS-T2の方が上で、滑らかさに関しても解像度が高いKindle Paperwhiteの方が上である。またグラデーションについても、ほかの端末では滑らかに表示されるにもかかわらず、本製品でははっきりと何段階かに分かれてしまうことがある。
というわけで、ハードウェアのスペック不足が疑われるところが随所に見られるのだが、筆者の評価はそう低いものではない。というのも、これらは既存のE Ink端末と比較した際には目立つものの、製品の品質に疑念を抱かせるようなレベルの問題ではなく、先入観のない状態で単体で見た場合は、あまり気にならない可能性が高いからだ。
10秒ほど無反応になる症状はさすがに改善されるべきだと思うが、原因不明で突然動かなくなったり、エラーが出たりするのとは次元が違う。ランダムに起こるのではなく常に起こるので、傾向として頭の中で理解しやすく、良くも悪くも慣れやすいのだ。筆者の場合、1週間ほど使っているうちにすっかり気にならなくなってしまった(もっともその後Kindle Paperwhiteをしばらく触り、またそのあと本製品を触ると、遅さを感じるのは事実なのだが)。そうした意味では、他端末の利用経験の有無によって、それなりに評価が変わる端末と言えそうだ。
ストアはまとめ買いが可能。シリーズ単位での表示で検索画面も見やすい
さて、挙動があまり速くないにもかかわらず、本端末に対する筆者の評価が必ずしも低くないのは、前述の理由に加えて、ストア機能が秀逸であることも理由の1つである。ここからはストア機能と、それにまつわる本の管理機能について見ていこう。
本製品が連携する電子書籍ストア、つまり「BookLive!」には、画面下の「書店」ボタンを押してアクセスする。ストアのトップページは(本棚と同様に)所狭しとアイコンやテキストが散りばめられており、どこがクリックできてどこができないのか、少々分かりにくい。白抜き文字の箇所はタップできるのかと思いきや、「人気ワード」の吹き出しはそうではなかったりするので、余計戸惑う。個人的にはもう少し要素を整理して減らすべきではないかと思う。
ただ、ストアとしての仕組みは一般的であり、適当にポチポチとタップしていけば、なんとなく本が探せて買えてしまう。いったり来たりの操作にはなるものの、説明書いらずで使えるという意味で、未経験者にもやさしい。検索軸も多く、ジャンルのほか特集など、未知のコンテンツと出会う方法も多く用意されているので、明確に買いたい本がある場合も、そうでない場合もきちんと使える。前述したように画面の切り替わりに時間がかかるので、やや待たされることがあるくらいだ。
ところで本製品(というよりもBookLive!自体)が優れているのは、コミックなどのシリーズものが単巻ではなく、シリーズごとにまとまって表示されること。そして、購入時も単品買い/まとめ買いを選べることだ。しかもまとめ買いの際は、たとえば1巻と2巻を購入済みの時点でまとめ買いを選択すると、残りの3巻から最終巻までがまとめてカートに追加されるといった具合に気が利いている。もちろん個別にカートから削除することもできる。
これがKindle Paperwhiteやkobo gloの場合、コミックをはじめとするシリーズ作品は1冊ずつしか買えないため、たとえば100冊買うには購入フローを100回繰り返す必要がある(ちなみに前回レビューしたkobo gloではクレジットカードの明細も100行に分かれる)。しかし本製品では、同じシリーズは一括で購入でき、しかも1つずつポチポチ押してカートに追加するのではなく「全巻カートに入れる」を押すだけで済むので、余計な手間がかからない。
例えば「こち亀」や「ゴルゴ13」のように100巻を超えるコミックや、先日全巻が電子書籍化された「グイン・サーガ」全130巻などでも、本製品であればまとめてカートに入れることができる。これがKindle Paperwhiteやkobo gloだと、1冊ずつしか買えないわけで、手間の違いは明らかだ。そのぶん衝動買いが多くなって財布にはやさしくないわけだが、コミックなどシリーズ作品の割合が多い日本の電子書籍ストアに求められる姿であることに異論はないだろう。
さらに、共通タイトルを持たないために、ほかの電子書籍ストアではシリーズとして検索が難しい作品でも、BookLive!ではシリーズ作品としてまとめ買いできるようになっていることが多い。例えば「氷菓」は、俗に「古典部シリーズ」と呼ばれる既刊5冊がシリーズ作品として登録されており、続けて買うのも容易だ。もちろんこれはデータが登録されている必要があり、例えば「S&Mシリーズ」として知られる森博嗣著「すべてがFになる」はシリーズとして登録されていない(ただし外伝の「四季」シリーズは登録されていたりする)など、作品によっても扱いに違いがある。とはいえ、ユーザーニーズをきちんと理解した、ありがたい仕様である。
なお、シリーズがまとまって表示される仕様は本棚画面や検索画面でも同様なので、Kindle Paperwhiteやkobo gloのように、シリーズ作品が本棚や検索画面を埋め尽くすことがない。本製品のこの仕様に慣れてしまうと、Kindle Paperwhiteで作品を並べた画面が見にくく感じられるほどだ。
さらに本製品では、続きの巻がある本を読み終えると、次巻のページヘのリンクが表示されるので、スムーズに次の巻を買うことができる。まとめ買いの機能と合わせ、このあたりのシームレスさは特筆できる。実質的に割引で本が買えるポイントと併用すると、多くの作品を割安に読めるだろう。
今回試用して多少気になったのは、冒頭部分のサンプルを無料で読める「立ち読み」を行なったあと、その作品を購入した場合、立ち読みした続きから読むことができず、1ページ目から表示されること。Kindleであれば続きにあたるページに自動遷移してくれるので、ここはKindleの方が親切だ。
また、シリーズ作品をまとめてカートに入れたあとで解除しようとすると、3巻単位でしか解除できないので、例えば10巻を解除しようとすると「チェックを入れて解除をタップ」の操作を4回繰り返さなくてはいけない。PC向けのサイトでアクセスすると「すべてにチェックを入れる」ボタンがあるが、それでも一度に20件しか削除できない。カート内をまとめてクリアできる機能がほしいところだ。
もう1つ、定期配信コンテンツにも触れておきたい。本製品では朝日新聞と福井新聞の厳選記事を先行配信する「朝日新聞 for booklovers」と「福井新聞SIESTA」ががプリセットされており、毎日新しい記事が新着として表示される。シャープのGALAPAGOSと似た仕組みだが、E Ink端末としては、Kindle Paperwhiteが国内ではいまだ定期配信の仕組みを実現できていないだけに、今後に期待が持てる機能である。
一長一短あるがKindleと甲乙つけがたい出来。コミックなどシリーズ作品の読書に向く
以上ざっと使ってみたが、フロントライトや高解像度E Inkパネルを搭載する他社の最新ハードには劣るものの、トータルの完成度はかなり高い。前述のように動きの遅さや拡張性のなさを不満に感じる場合もあるだろうが、シリーズ作品をまとめ買いできる機能、さらにストアのラインナップの多さを考慮すると、一長一短はあるもののKindleと甲乙付けがたい。これで価格が高ければ話は別なのだが、個別契約不要なWiMAX回線を搭載しながら8,480円と、価格面でのメリットも大きい。
とくにまとめ買いとシリーズ管理の機能においては、本製品に慣れてしまうと、Kindleやkoboでシリーズ作品を買うのが億劫になってくる。コミックは文芸書に比べると読了までのスピードが短く、また巻数も多いだけに、このことは非常に重要だ。「コミック向け」を名乗るとすれば、kobo gloではなくむしろこちらだろう。今後のモデルで動作速度の向上を図りつつ、解像度やフロントライトといったトレンドを押さえてくると、ますます甲乙付けがたくなってくることが予想される。
ともあれ同社の場合、これまでiOS/Androidアプリのノウハウがあったとはいえ、専用端末はこれが初である。Kindleよりも遅れての投入となったが、十分に合格点がつけられる出来であり、現時点でも普通に「買い」といえる。販路の狭さなど、台数の普及という意味では不安要素もあるが、国産端末の雄として、これからにおおいに期待したいところだ。