山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

Amazon「Kindle Fire HD 7」

~コストパフォーマンスに優れた新Kindle Fireシリーズの下位モデル

「Kindle Fire HD 7」。発表時点では後ろに数字の付かない「Kindle Fire HD」となっていたが、後日「7」という数字が末尾に追加されたため、本稿ではこの表記に則る
11月5日 発売

直販価格:15,800円(8GB)、17,800円(16GB)

 Amazonの「Kindle Fire HD 7」は、KindleストアやAmazon MP3ストアなど、Amazonが運営するストアで購入したコンテンツを楽しめる7型タブレットだ。E Ink電子ペーパーを採用した読書専用の「Kindle Paperwhite」シリーズとは異なり、メディアタブレットの性格が強い製品だ。

 2013年モデルとなる「Kindle Fire」シリーズのうち、もっとも安価なローエンドモデルの位置付けとなる本製品について、今回は一足先に発売された海外版を用いてレビューする。ハードウェアについては相違はなく、日本語にも対応しているが、国内で発売されるモデルとは若干異なる可能性はあるのでご了承いただきたい。

新設計の筐体を採用している。カラーはブラックのみ
今回は海外版モデルを試用する。技適マークは本体背面にシルク印刷されている

新しいKindle Fireシリーズのローエンドモデル

 まず最初に、2013年モデルとなる新しいKindle Fireシリーズの概要を確認しておこう。

 昨年(2012年)、日本市場に初めて投入された「Kindle Fire」シリーズは、ローエンドモデルの「Kindle Fire」(以下旧Fire)と、ハイエンドモデルの「Kindle Fire HD」(以下旧Fire HD)の2ラインナップが存在していた。後者には画面サイズが大きい8.9型モデルも存在しており、ローエンドモデルは7型のみ、ハイエンドモデルが7型と8.9型というラインナップだった。

 今回新たに発表された2013年モデルの「Kindle Fire」シリーズでは、ローエンドモデルの「Fire」がなくなり、リニューアルされた「Kindle Fire HD 7」の上位に新しく「Kindle Fire HDX 7」、「Kindle Fire HDX 8.9」が追加された。つまりラインナップが1つずれ、新しい「Kindle Fire HD 7」がローエンドモデル、「Kindle Fire HDX 7」、「Kindle Fire HDX 8.9」がハイエンドモデルという位置付けになったわけだ。

 今回取り上げる「Kindle Fire HD 7」は旧「Fire HD」ではなく旧「Fire」の後継であり、Amazonも製品ページ上で「新しいKindle Fire HDは前世代機Kindle Fireのアップグレード版」と明言している。これを見落として本製品を旧「Fire HD」と比較すると、スペックダウンしたかのように誤解しがちなので注意したい。

Kindle Fireシリーズの新旧対比。「Fire HD」の位置付けが変更になっている。なお「ローエンド」「ハイエンド」という呼び名は便宜上のものでAmazon公式というわけではない
Amazonの製品ページにも説明がある

 しかしながら現実問題として、旧「Fire」よりも旧「Fire HD」の方が販売数が圧倒的に多い(具体的な販売数は公表されていないが、本稿執筆時点のAmazonのカスタマーレビューは前者が100件ちょっとに対し後者は1,800件あるので、販売数でも相当の開きがあると思われる)ほか、ハードウェアとしては旧「Fire HD」に比べて進化している点も多いため、本稿ではおもに旧「Fire HD」と比較しつつ、場合によっては旧「Fire」との相違点にも触れる形で進めていく。

旧「Kindle Fire」の仕様に準拠しつつ高解像度化、軽量化

 以上を踏まえて、旧「Kindle Fire」および旧「Fire」と比較したのが以下の表だ。7型タブレットとして競合になるNexus 7(2013)も合わせて掲載する。

【表】仕様比較

Kindle Fire HD 7 (2013年モデル)Kindle Fire (2012年モデル)Kindle Fire HD (2012年モデル)Google Nexus 7(2013)

AmazonAmazonAmazonASUS
サイズ(幅×奥行き×高さ、最厚部)128×191×10.6mm120×189×11.5mm137×193×10.3mm114×200×8.65mm
重量約345g約400g約395g約290g
OSFire OS 3.0独自(Androidベース)独自(Androidベース)Android 4.3
画面サイズ/解像度7型/800×1,280ドット(216ppi)7型/600×1,024ドット(169ppi)7型/800×1,280ドット(216ppi)7型/1,200×1,920ドット(323ppi)
通信方式IEEE 802.11a/b/g/nIEEE 802.11b/g/nIEEE 802.11a/b/g/nIEEE 802.11a/b/g/n
内蔵ストレージ8GB(ユーザー利用可能領域は4.8GB)
16GB(ユーザー利用可能領域は11.9GB)
8GB(ユーザー利用可能領域は5.5GB)16GB(ユーザー利用可能領域は12.6GB)
32GB(ユーザー利用可能領域は26.9GB)
16GB、32GB
バッテリ持続時間(メーカー公称値)10時間9時間11時間約10時間
カメラなしなし前面前面+背面
電子書籍ストアKindleストアKindleストアKindleストアGoogle Play ブックスなど
価格(2013年10月18日現在)15,800円(8GB)
17,800円(16GB)
12,800円(8GB)15,800円(16GB)
19,800円(32GB)
27,800円(16GB)
33,800円(32GB)
備考


LTEモデルも存在

 要点をまとめると以下のようになるだろう。

  • 旧Fireおよび旧Fire HDより50gほど軽量化。
  • 幅は旧Fire HDよりは狭くなった。ただし、旧Fireほどスリムではない。
  • 解像度は旧Fire HDと同等にアップ。
  • 旧Fireが8GBのみだったところ、16GBが追加された。

 本製品をはじめとする2013年モデルの「Kindle Fire」シリーズはいずれもOSが「Fire OS」となっているが、従来と同じOSに名称がついただけで、中身はバージョンだけが上がった程度と考えられる。詳しくは後述するが、実際に使ってみてもOSレベルで大きな変更が加わったようには感じられない。ちなみにこのFire OS 3.0は「Mojito」という愛称が付けられている。

 なお、国内での販売価格(8GBモデル)は旧Fireと比べると12,800円→15,800円と上がっているが、海外では159ドル→139ドルと値下がりしているので、実は値上げでも何でもなく、円安が影響しているだけ、と見るのが正しい。先日モデルチェンジしたNexus 7などにも言えるが、新モデルの価格を見ると、従来モデルがいかに円高の恩恵を受けていたかがよく分かる。

パッケージ。海外仕様なので、動画サービス(Amazon Instant Video)がサービスインしていない国内版では仕様が異なる可能性がある。ヘッダ部の製品名は「7」が付かない「Kindle Fire HD」となっている
スリーブを外して開封。ビニールで覆われた本体が封入されている
同梱物一覧。これまで別売だった充電用のUSB-ACアダプタが標準添付されるようになった

 注意したいのはカメラだろう。旧Fireもカメラは非搭載だったが、旧Fire HDは内側カメラを搭載していたので、旧Fire HDのユーザーが本製品に買い替えると用途によっては困る可能性がある。またマイクもないのでビデオチャットには不向きなほか、HDMI端子も搭載しない(上位のFire HDX 7ではインカメラ、マイク、HDMI端子は変わらず搭載されている)。メモリカードスロットはこれまで通り非搭載のままだ。

 一方、Bluetoothのように、旧Fireには非搭載だったにもかかわらず新たに追加された機能もある。このほか充電用のUSB-ACアダプタが新たに付属するようになったのも相違点だ。従来モデルでは別売だったので、その分お得ということになる。

新設計の筐体は手に持った際のバランスも良好

 外観については、旧Fireとも旧Fire HDとも異なる、新設計の筐体が採用されている。全体的に丸みを帯びていた旧Fire HDと異なる鋭角的なデザインで、寸法上の厚みの差がそれほどないにもかかわらず、持った際にはかなり薄く感じる。従来比で50g軽いことも、持った際の感覚に少なからず影響を及ぼしていそうだ。

 ベゼル幅は、昨今の7型タブレットと比較して極端に狭いわけではないが、旧Fire HDに比べるとずいぶんとスリムになり、野暮ったさがなくなった。スピーカーの配置、および背面ロゴは横向きを基本としている。

 また、電源ボタンと音量調節ボタンの形状が丸型になり、配置もボディ背面側に移動したことで操作が容易になった。背面と言っても、側面から背面へと連なるナナメにカットされた面なので、テーブル上に置いた際に接地することはない。この電源ボタンと音量調節ボタンは形状が異なるため、目視しなくても指先で種類を判別できる。目視でも見分けにくかった従来からすると大きな進化で、個人的にはかなりポイントが高い。

 スピーカーはこれらボタンと同じ面にレイアウトされており、テーブル上に置いた際もわずかに浮いた状態で音を出す。音が正面ではなく後ろ向きに出る点は従来のままなのだが、実際に音楽などを聴く限りでは多少は改善されたように感じる。

左から、本製品、旧Fire、旧Fire HD。幅は旧Fireがもっとも狭いが、ベゼルが狭いことに加えて400gと重いため操作しにくく、その点で今回の製品はバランスがよい
背面の比較。上が旧Fire HD、下が本製品。横向きを基本としつつもデザインはまったく異なる。指紋はかなり付きやすい
背面右側のアップ。ナナメにカットされた面が向かって下に行くほど幅が広くなっており、そこにスピーカーが配置されている。複雑な面取りは初代Kindleを彷彿とさせる
テーブル上に置いた際も、ボタンやスピーカーは接地せずにわずかに浮くようになっている
側面がまっすぐカットされていないため、USBケーブルを挿すとやや上方に持ち上がってしまう。抜き挿ししやすいと感じる人と、上に物を置いた際にコネクタが曲がりかねないと懸念する人、好き嫌いが分かれそうだ
電源ボタンは丸型
音量調節ボタンは長円形。目指しなくとも、指先の感触で電源ボタンと区別できるのがよい
旧Fire HD(下)との幅および厚みの比較。幅はやや狭くなった。厚みはほぼ同等だが、面取りのせいか実際に持つと薄くなったように感じる
旧Fire(上)との幅および厚みの比較。幅は及ばないが薄くなっている。また50g近く軽くなっており持ちやすい

 旧Fire HDの欠点も一部受け継いでいる。具体的には、充電のステータスを示すLEDが搭載されておらず、充電が続行中なのか完了しているのか、ロックを解除しないと確認できないことだ。また画面はかなり光沢が強く、背景から光が差し込む場所では、画面の反射がきつく角度の調節に苦労する。ベッドの枕元でライトをつけて本製品を使用するなら、サードパーティ製の非光沢シートを用いるのも一考だろう。

セットアップ手順や画面構成は従来とほぼ同様も、操作性は向上

 セットアップの手順は従来と特に変わらず、Wi-Fiを設定してAmazonアカウントを入力することで完了する。とくに奇をてらったところはない。

 ホーム画面は、さまざまなアイテムを左右フリックでスクロール表示できる「スライダー」が中央にあり、ゲーム/アプリ/本/ミュージック/ビデオといった「コンテンツライブラリ」が上部に並ぶレイアウトは、従来と同様だ。中でもスライダーについては、最近ではiOS/AndroidのKindleアプリにも採用されているので、利用者にとっては馴染みが深い。

 もっとも、このホーム画面およびコンテンツライブラリの細かいデザインおよび文言の配置は、従来とはかなり異なっている。画面の比較でご覧いただいた方が早いので、以下スクリーンショットで紹介する。

 なお前回のKindle Paperwhiteと同様、あくまで本稿執筆時点での比較であり、従来モデルも今後新ファームがリリースされて手順が統一される可能性があるので、予めご了承いただきたい。ちなみに本製品のソフトウェアのバージョンは「11.3.0.3」である。

ホーム画面。左が本製品、右が旧Fire HD(以下同じ)。これまでは右下の星マークをタップした時だけ表示されていたお気に入りが、初期状態では画面下に8つ表示されており、さらに下から上へのスワイプで表示されるようになった。それに伴い、おすすめ商品の表示が小さくなっている
ホーム画面を横にした状態(この画像のみ、上が本製品、下が旧Fire HD)。縦の状態では表示されていたおすすめ商品が表示されなくなる
「お買い物」。KindleストアをはじめとするAmazon運営のストアへのショートカットのほか、Amazon.co.jpで買い物をするためのリンクがまとめられている。画面下部にスライダーが表示されるようになった
「ゲーム」ライブラリ。クラウドおよび端末上のゲームアプリを切り替えて表示できるほか、ストアに移動することも可能。ちなみにこの「ゲーム」は「アプリ」内の1カテゴリを表示しているだけで、単体のストアというわけではない
「アプリ」ライブラリ。こちらもクラウド/端末を切り替えて表示できるほか、アプリストアにも移動可能
「本」ライブラリ。こちらもクラウド/端末の切り替えができ、Kindleストアへも移動可能。画面はリスト表示とグリッド表示に切り替えられる
「ミュージック」ライブラリ。こちらもクラウド/端末の切り替えができ、Amazon MP3ストアへも移動可能
「ビデオ」ライブラリ。従来モデルと同様、国内ではAmazonの動画サービス(Amazon Instant Video)がまだ開始されていないため、自前の動画コンテンツを取り込む方法が記載されている
「ウェブ」ライブラリ。Amazon独自のブラウザ「Amazon Silk」が使用できる。使い方は一般的なブラウザと変わらない
「写真」ライブラリ。ローカルにある写真やスクリーンショットを表示できるほか、ストレージサービス「Amazon Cloud Drive」にアップロードした写真も表示できる
「ドキュメント」ライブラリ。パーソナルドキュメントにアップロード済みのPDFコンテンツを表示できる。タップするとダウンロードされる
画面上部を下にスワイプすると基本機能にアクセスするためのクイック設定メニューが表示される。後述する新機能「おやすみモード」が追加されている
設定画面。多少の階層構造の見直しはあるが、大きな相違はない

 全体に共通する大きな変更点として挙げられるのは「お気に入り」の呼び出し方だ。気に入ったコンテンツやアプリを登録してすばやく起動できるお気に入り機能は、従来モデルでは画面右下の星マークをタップすることで表示できたが、本製品では画面の下から上へのスワイプで表示されるようになった。iOS 7のコントロールセンターと同じ呼び出し方だが、常時非表示というわけではなく、初期状態で8つのアイコンが表示されている点が異なる。

 またこれに伴い、ホーム画面のスライダー直下に表示される、おすすめ商品の表示が小さくなった。バランスを考慮した結果かもしれないが、画像を小さくすることでデータ量を減らしてスムーズに読み込ませようという配慮かもしれない。

 また各ライブラリでは、画面端を左→右にスワイプ(または左上の「三」マークをタップ)することで、従来の「移動」メニューの内容が表示されるようになった。例えば本であればライブラリやストアの主要カテゴリへの移動メニュー、読書中であれば目次を表示するといった具合に、内容に応じた移動先が表示される。メニューの表示方法として昨今のアプリでよく用いられており、どのカテゴリも原則として同じ操作方法で統一されているので、直感的に操作しやすい。

画面端を左→右にスワイプするか、左上の「三」マークをタップすれば、従来の「移動」メニューの内容が表示される。これは端末上にある「本」の画面で表示したところ。ストアのカテゴリに直接移動できるメニューが並ぶ。Kindleストアを表示した状態でも同様のメニューが表示される
これはアプリストアにおけるメニュー表示。こちらもカテゴリへのリンクのほか、アップデート情報などへのアクセスが行なえる
ブラウザ(Silk)でのメニュー表示。ブラウザとしては一般的なメニューが並ぶ
こちらは読書中に同様の操作でメニューを表示したところ。こちらはストアへの移動メニューではなく、コンテンツ内への移動メニュー、つまり目次が主になっている

読書関連はメニューのデザイン変更が中心

 読書関連の機能も、基本的な操作性については従来モデルを踏襲しながらも、メニューについてはかなりの改良が加えられている。ざっとチェックしていこう。

 全体的に感じられる傾向は、画面のファーストビューになるべく多くの情報を詰め込もうとしていること。例えば見出しのフォントサイズが小さくなったほか、ページ上部にあった検索機能が目立たなくなり、その分全体的に要素が上に詰まるといった具合だ。機能の利用頻度などを分析し、調整を行なったのではないかと考えられる。

 また、本棚を模したデザインが廃止されてフラットデザインに近くなったほか、基調色が黒から白に改められるなど、デザインが全体的にシンプルな方向に寄っている。フラットデザインというトレンドを露骨に意識しているわけではなく、画面のコントラストなどを突き詰めた結果としてこうなった……という印象だ。後述するストア画面でも、立体的だったボタンがフラットになるという変更が見られて興味深い。

 機能面で面白いのが、本やミュージックなどの各ライブラリ、もしくはコンテンツを表示している最中に画面を下から上にスワイプすると、ホーム画面のスライダーと同じ内容を画面下部に表示できるようになったことだ。この機能は「クイックスイッチ」と呼ばれ、いちいちホーム画面を経由しなくてもスライダーに表示されているコンテンツに移動できるようになった。「nook」にも近い機能はあるが、利便性は高い。

 もう1つ、本や音楽、映画を楽しんでいる際に通知をオフにしてコンテンツに集中できる「おやすみモード」も面白い。読書時や動画再生時は自動的にお休みモードに切り替えて通知をオフにするなど、コンテンツごとにお休みモードを設定できる。Kindle による読書では自動的に通知バーなどが隠れるため従来もこうした心配は不要だったが、機能として搭載されるとまた小回りが利いて便利だ。

 残念なのは、Android版のKindleアプリに実装されている、ページめくりを音量調節ボタンで行なう機能が搭載されていないこと。タッチ操作ではなくハードウェアキーでページをめくれるこの機能は、本体の持ち方によっては非常に便利に使えるのだが、本製品ではサポートしていない。本製品は音量調節ボタンの位置が側面でなく背面なのでいざ実装されても使いにくいという問題もあるだろうが、とくに難易度は高くないはずで、今後の搭載を望みたい。

「本」のライブラリ。左が本製品、右が旧Fire HD(以下同じ)。フォントサイズの見直しやヘッダ部のコンパクト化などで要素が詰まり、その分1ページに多くの本が表示できるようになっている
テキストコンテンツ(太宰治著「グッド・バイ」)を表示したところ。とくに大きな違いは見られない
タップしてメニューバーなどを表示したところ。テキストラベルが省かれてアイコンによる表示が主体になっているのが興味深い。なお、画面左から右へのスワイプで移動メニューが表示できるようになったため、従来あった「移動」ボタンがなくなっている
フォントは新たに「筑紫明朝」が追加された。これはKindle Paperwhiteの新モデルも同様
移動メニューの比較。内容は基本的に同じだが、従来モデルでは「移動」をタップして表示していたのに比べて、本製品は画面を左→右にスワイプするか、左上の「三」マークをタップして呼び出す方式に改められている
単語選択による内蔵辞書のポップアップ表示。大きな変化はないが、「コメント」だった部分が「シェア」に置き換わっていたりと細かい相違はある
辞書のポップアップメニューには、新たに「翻訳」が追加された。もともと他画面から呼び出せた機能がこちらに統合された形
コミックコンテンツ(うめ著「大東京トイボックス 1巻」)を表示したところ。とくに大きな違いは見られない
タップするとメニューバーが表示されるようになった
コンテンツの表示中に画面を下から上にスワイプすると、ホーム画面のスライダーと同じ内容を画面下部に表示できるようになった(クイックスイッチ機能)
新機能の「おやすみモード」。時間帯指定もしくはコンテンツを指定して通知を非表示にできる。なお手動で切り替えるには通知バーから行なう
Kindleアプリを入れたNexus 7とテキストコンテンツの表示を比較したところ。一般的にAndroidアプリでは画面上のステータスバーおよび画面下のボタンの分、表示領域が狭くなるので、同じテキストコンテンツを比較した場合、同じ7型でも本製品の方が広く表示できる
一方、リフロー型ではないコミックコンテンツは、もともとの画面比率の関係もあって上下に余白ができるため、Androidアプリと比較してもページサイズに差はない

ストアのデザインがマイナーチェンジ。購入フローは変化なし

 Kindleストアの画面および購入フローも、ホーム画面などと同じくレイアウトに変更が見られる。特に違いが大きいのはKindleストアのトップページで、これまでは「おすすめ」がページ最上部にあり、以下、日替わりや月替わりの「セール」が下に並んでいたのが、最上部に「本の新着」「コミックの新着」が切り替えで表示されるようになり、以下「おすすめ」「ベストセラー」「セール」と並ぶ順になった。新着本をいちばん目立つ位置にレイアウトしたのは、タイムリーな購入を促すという狙いだろう。

 一方で「セール」はファーストビューから押し出され、スクロールしないと見えない位置へと移動されているが、Kindleユーザーにとってセールは利用頻度の高いカテゴリであり、おそらくどこに配置しても利用されるであろうことから、画面のスクロールを促すためにわざとファーストビューの外に出した、という解釈の方が妥当に思える。なお、従来は画面右にテキストで羅列されていたカテゴリーについては、画面を左→右にスワイプするか、左上の「三」マークをタップして表示する方式に改められたため、このファーストビューからは消滅している。

最上部に「本の新着」「コミックの新着」が表示されるようになった。数秒ごとに横にスライドして切り替わる方式で、少々せわしない
検索画面。さきほどのホーム画面と同じく、フォントサイズの見直しなどによって若干要素が詰まってはいるが、大きな変更はない
購入画面。こちらも要素が詰まり気味になったことで、下部に「こんな商品も買われています」が一部見えるようになったほか、背景にある表紙画像がなくなり全体的にスッキリした印象になっている。ボタンは立体感がなくなりフラットなデザインになっている
購入完了時の画面。余談だが本稿執筆時点ではダウンロードの進捗表示が1%のまま進まない(ただし通知バー上ではきちんと進行している)という不具合があるようだ

動画再生などのパフォーマンスも良好。背面の熱に注意

 話が前後するが、性能についても触れておこう。操作は全体的にきびきびしており、下位のモデルという印象はまったくない。CPUがデュアルコアとなり、旧Fire HD(旧Fireではなく上位の旧Fire HDの方だ)に比べて60%も高速化されているとのことなので、それも納得である。

 動画関連の性能もかなり高い。旧Fire HDでは動画と音声のずれやコマ落ちが頻発していたフルHD動画もスムーズに再生でき、再生位置をジャンプした際の追従性も良好だ。無線LANについては、本製品はデュアルアンテナを搭載していないため旧Fire HDと比べて不利なはずなのだが、まったくそれを感じさせない。ゲームなどを行なうとまた違った結果になるかもしれないが、動画再生程度であれば、旧Fire HDを上回るパフォーマンスだ。

 2週間ほど使っていて多少気になったのは、背面の「Amazon」ロゴ上部付近が熱を持つことだ。読書や音楽鑑賞など通常の使い方では手で触れないほど熱くなることはないが、Wi-Fi機能を連続して使っているとそこそこ熱を持つ。そのため、Kindleストアから本のダウンロードをまとめて行なったり、Webを長時間閲覧している場合は要注意だ。とはいえあくまで背面の一部分だけの問題なので、熱くなってきたら反対の手で持つか、上下を反転させて持てば特に問題はない。カバーを付ければ気にならなくなるだろう。

下位モデルとは思えない出来で、コストパフォーマンスの高い1台

 従来のKindle Fireは、12,800円という安さは魅力だったものの、7型タブレットとしてはかなり重い約400gという重量のほか、本体に音量調節ボタンがないためボリューム調整のたびにいちいちメニューを呼び出す必要があったりと、明らかにコストの前に犠牲になっている部分があった。前述のカメラ機能やHDMI端子のようにラインナップ上あえて機能を省いたというレベルではなく、実用面で苦になる点が多く、販売数でFire HDに大差を付けられる要因になっていたように思う。

 後継となる本製品は、旧Fireにあったこれら欠点をカバーしつつ、電源ボタンや音量調節ボタンの押しやすさといったハード面の改善、CPUの強化や高画質化、さらに約50gの軽量化など、さまざまな面で改良が施されており、従来のFire HDと比較しても使い勝手や性能においてはまったく遜色がない。カメラやHDMIなどラインナップの関係で実装されていない機能を除けば、旧Fire HDの後継と言われても納得してしまいそうなレベルだ。

 これに加えて、他の端末と同期できるコレクション機能や、しばらく使っていないコンテンツを1タップでクラウドに退避させるインスタントクラウド機能の近日中の追加が予告されており、Kindleストアの利用者にとっては魅力的な1台といえる。昨年(2012年)の時点では19,800円のNexus 7など、数千円の価格差の範囲で対抗馬が目白押しだったが、今年はそれら競合製品が値上がりしたこともあり、本製品は頭1つ抜けて安価に見えるのもプラス要因だ。

 個人的にはここ1年でAmazon アプリストアのラインナップがあまり拡充されていないこと(とくにユーティリティ類の少なさは個人的につらい)、また動画配信に相変わらず対応していない現状からして、昨年末に比べるとKindle Fireシリーズに対する評価はやや低下しているのだが、それでも作り込みの手堅さはさすがといった感はある。旧Fire HDのユーザーが買い替える必要はあまり感じないが、新規に購入するユーザーにとってはコストパフォーマンスが高く、満足の行く1台と言えるだろう。

 こうなると気になるのが、一足遅れて登場する本製品の上位モデル「Kindle Fire HDX 7」だろう。旧Fire HDのユーザーにとっては、本製品よりも軽く、薄く、さらに1,200×1,920ドット(323ppi)という高解像度に対応したFire HDX 7こそが、買い替えの本命となるはずだ。次回はこのFire HDX 7について、今回のFire HD 7とも比較しつつ、じっくりと紹介することにしたい。

初期状態では「バッテリ残量を数値で表示」がオフになっているので、オンにしておいた方が利便性は上がる
外部アプリをインストールする際は「不明ソースからのアプリ」をオンにする
Amazonアプリストアにはないが、Dropboxは配信元がダウンロード提供しているので、入手しておけばデータのやり取りに活用できて便利だ。本製品のスクリーンショットを自動アップロードする用途にも重宝する

(山口 真弘)