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なぜEIZOのモニターは壊れにくいのか?「7年間保証」にまでいたった最強の品質とその理由を解明

今回の「7年間保証」の実現に深く関わっているEIZOの4名。中央にあるのは新製品の「FlexScan EV3451X」だ

 日本国内はもちろん海外ユーザーからも個人・法人を問わず高い評価を受けているEIZOのモニター。 そのEIZOの一部モデルが、6月から標準で「7年間保証」となる。これまででさえ5年と長かったのに、7年は驚異というほかない。

 EIZOが標準で5年間保証を提供する一方で、他社も機種・地域・期間などに限定した形ではあるものの、同様の保証期間を用意している。しかし、今回はそれをさらに2年も延長する。ほかに類を見ない7年間保証を提供するわけだが、なぜそんなことが可能なのだろうか。ユーザーとしてはうれしいが、メーカーとして本当にメリットがあるのか気になるところでもある。

 その秘密を探るべく、我々PC Watch取材班は石川県にあるEIZO本社へ向かった。企画・設計・製造・カスタマーサポートの各担当者に7年間保証を決めた背景をうかがうとともに、それを可能にする技術面の「裏付け」を知るべく、評価設備や工場も見て回ることになった。そこで分かったのは緻密なデータをもとにした耐久性への深い理解と、自社の品質・技術に対する圧倒的な矜持だった……。

EIZO驚異の7年間保証始まる。既存製品も対象に

 先にどの製品が7年間保証の対象になっているか、簡単に紹介しておこう。7年間保証が適用されるのは、過去に発売済みのものを含めた以下の5機種だ。

  • FlexScan EV3451X(34.1型 3,440×1,440ドット)
  • FlexScan EV2740S(27型 3,840×2,160ドット)
  • FlexScan EV2720S(27型 2,560×1,440ドット)
  • FlexScan EV2410R(24.1型 1,920×1,200ドット)
  • FlexScan EV2400R(23.8型 1,920×1,080ドット)

 一番上の「FlexScan EV3451X」は今秋発売予定の新型で、最近人気となりつつあるウルトラワイドモニターだ。画面が横に長いウルトラワイドモニターは、本来デュアルモニターで構成する必要があった横長の画面環境を1台のモニターで実現できる魅力がある。

 なお、EIZOの34.1型ウルトラワイドモニターにはカメラとマイクを内蔵するEV3450XCもあるが、EV3451Xはそれらを省いてコストを抑制したものになる予定。とはいえ、新機能として、EV3451Xではソフトウェアを使用せずキーボードで明るさや音量の調整、カラーモードの切り替えができる「ホットキー機能」などを搭載しており、それぞれ特長を備えた製品展開となる。

新モニター「FlexScan EV3451X」
7年間保証に対応する新型ウルトラワイドモニター「FlexScan EV3451X」(今秋発売予定)。解像度は3,440×1,440ドット、リフレッシュレート最大100Hz。写真はホワイトモデルだが、ブラックモデルも用意されている。
EIZOらしく発色もきれいだ
細身に見えながら可動範囲の広いEIZOの独自スタンド
USB Type-C接続に対応し、USB Type-AやLANポートも装備。ドッキングステーションとしての機能を備えている

 なお、上記機種ですでに絶賛稼働中のものであっても、過去にさかのぼって保証が延長されるかたちだ。すでに2年使っていたとしても、あと5年間の保証が適用されることになる。既存ユーザーにはうれしい配慮だろう。

 この7年間保証だが、使用時間としては3万時間以内が保証の範囲で、これは従来の5年間保証と同様となる。とはいえ、3万時間というのは1日12時間以内のビジネスユースを想定しても、7年で十分に余裕がある時間設定となっているので安心してほしい。1日12時間、週5日使用したとして、3万時間に達するのは約9年7カ月かかる計算だからだ。

設計上も実使用上も、7年は「必ず持つと確信」

 ここからが本題。そもそも今回の7年という長期保証を実現しようと考えたのはなぜなのか。

 7年間保証プロジェクトを推進してきた企画部の中島氏は、理由として「 昨今の経済状況からデバイスの使用期間を長くしたいトレンドと、特に欧州におけるサステナビリティの潮流、そして環境負荷を低減できる製品を長く使うニーズが高まっている 」ことを挙げる。

EIZO株式会社で企画部次長を務める中島賢人氏

 そのうえで、新たな保証期間となる「7年」の根拠について、「 FlexScan EVシリーズは法人ユーザーが長期間・長時間使用されることを前提に設計評価を行なっていました。これまで20年以上にわたり5年間保証を継続してきましたが、部品選定や製品の設計上はもともと7年間安心して使えることを基準に評価を行なってきたんです 」と明かす。

 しかも「 サステナビリティの意識が浸透している欧州ユーザーからは、EIZO製品を7年以上問題なく使っているとの声もたくさんあった 」とのこと。設計上も実使用上も「 7年は必ず持つと確信している 」というレベルにすでにあることが7年間保証実現に向けた根拠の1つとなった。

 「 実態として製品が7年間使われている。その品質を正式にお客様にお約束できる期間として見える化したいと思いました 」と中島氏。「 短期間の買い替えを前提としない設計、長期の使用実績データ、世界各地での修理やサポートの実績。これらを踏まえ、7年間を標準保証にしても責任を持てると判断したんです 」とのことだ。

設計・製造への飽くなき品質追及が7年間保証を可能に

 7年間保証を社内提案した際には「少なからず反発があった」と中島氏は振り返るが、そんな中で各部署の協力が実現の大きな後押しになった。

サステナブルデザイン&開発プロセス統括部設計品質管理課グループリーダーの巣組将広氏

 製品設計を担う巣組氏は、「 7年間保証の話が出たときに、品質や信頼性などに関するさまざまな基準について改めて精査し、ギリギリではなく十分なマージンを持って開発できるのかどうかを確認しました 」と語る。

 精査した結果は、「 7年間保証に向けて足りない部分はない 」というもの。その背景には、「 EIZOがオフィス向けモニター以外に、船舶向けや航空機向け、鉄道向けなどのミッションクリティカルな領域で用いるモニターも開発し、過酷な試験を通じて性能を担保していることがあります 」と巣組氏。

過酷な温湿度環境での動作試験
モニター製品の動作検証を過酷な温湿度環境で行なう「恒温室」

 「 劣悪な環境でも問題なく動作するように、設計、試作、検証を行ない、問題が出たときは再度試作からやり直してきました。そうした製品づくりの中で得たノウハウは、一般のオフィス向け製品の検証基準にも反映させてきました 」と、同社ならではの開発体制をアピールする。

 「 量産時の品質上のばらつきを考慮しても、もともと当社のモニターは7年以上使える設計になっていました。7年間保証をうたえる確証は得ています 」と巣組氏は自信を見せる。

振動・落下試験
振動試験の様子。縛られたモニター入りのダンボールパッケージがガタガタと揺らされている
高く釣り上げたパッケージを落とす自由落下試験の一瞬。このあとすごい音が響き渡ったが、中のモニターは何事もなく使用できていた
電波試験
巨大な電波暗室も備えており、モニターを設置して電波による影響を解析している

 製造現場においても、7年間保証を自信を持ってうたえる体制が整っているようだ。同社製造部の小林氏は「 品質は急に上がるものではなく、徐々に積み上げるもの 」だとし、「 EIZOには液晶モニターを国内で約30年製造し続けてきた経験値と、品質を追求し続ける企業文化がバックボーンにあります 」と話す。EIZOには長期保証に耐え得る製造体制がすでに備わっているのだ。

製造部生産技術1課長の小林純平氏

 また、人材育成にも力を入れており、七尾市にある工場と白山市の工場とで人材交流、情報・スキル共有などを定期的に行ない「 製造工場全体のレベルアップを図っているほか、配属時における一定期間の研修、その後の定期的な認定試験などで製品の品質を継続的に高いレベルで維持する体制にしている 」とも語る。

EIZOモニターの生産現場
白山工場内の様子。人とロボットが協働して製品を組み立てている
工場内のオートメーション
AIによる画像処理やロボットを使った作業など、オートメーション化により製品の品質と作業の安全性を高めている
アームロボットがモニターをつかんで運んでいる様子
ロボットと人間の目による全品チェック
組み立てたモニターは、全数、計測器での定量的な調整・検査を実施している
ロボットだけでなく、人の目を使った定性・官能検査も全台実施。ロボットと人のハイブリッド体制が高い品質を維持する上で重要のようだ

 そうした体制のもと、多くの従業員が、厳格な品質が求められるヘルスケア向けや産業向けなどのミッションクリティカル領域の製品の製造、検査に携わっている。「その目でFlexScanシリーズのような一般向け製品を検査できるのも強み」というわけだ。

蓄積されたデータから見る7年間保証の妥当性

 ただ、7年間保証にすることで、EIZOの側では「ユーザーの買い替え頻度が下がる」「保証期間内に修理すべき台数が増える」といった売上減少とコストアップのリスクは避けられないように思える。

 先ほども触れたように、そういった懸念から社内でも反発はあった。それでも、「 製品自体に7年間保証を可能にする力があることは分かっていました。コストはかかるとしても、それを補える価値があるはずだとも思っていました 」と中島氏。

 そこで説得力のある根拠となったのが、カスタマーサポートを担う品質保証部の土田氏がまとめたデータだ。同社では、いつ何をどれだけ生産し、それらにどの部品を使い、どの出荷先に何台納入したのか、といった生産・顧客に関する詳細なデータを何十年と蓄積してきた。

品質保証部カスタマーサポート課主任の土田江一郎氏

 また、修理のために送られてきたモニターについては稼働時間のほか、不具合内容なども詳細に記録している。

 蓄積された生産・顧客・修理に関するデータは、製品開発へのフィードバックだけでなく、迅速・的確な顧客対応・修理対応に活用されている。

修理解析作業を行なう「EIZOメンテナンスセンター」
修理作業の様子。技術者が丁寧に作業し、故障情報の取得・分析や品質保証部門等へ情報共有を行なう

 土田氏がこうした膨大なデータを分析したところ、保証期間が長いと修理すべき台数が増えるのかという疑問については、有意には「増えない」ことが明確に分かった。

 「 修理のために送られてきたものの8割以上が、使用時間1万時間以内に集中しています 」と土田氏。言い換えると、1万時間以上問題なく稼働しているモニターは、保証期間後までほとんどがノートラブルで使い続けられることを意味している。

膨大な蓄積データから7年間保証の妥当性を分析
説明用サンプルデータを用いて説明する土田氏。修理対応が必要となる8割以上が使用時間1万時間以内に集中しているという

 初期の1万時間以内に発生する動作不良についても、最大の要因は液晶パネルであることが判明している。ここは「液晶パネルの特性上、不具合をゼロにするのが難しい部分」とのことで、仕入先である液晶パネルメーカーとも情報共有・連携して継続的な対策を図っていくことでリスクを最小化していけるところでもある。

 また、モニターの使用時間について土田氏は、「 1日あたりの平均で、全体の8割以上が12時間以内だったため、これであれば保証期間が5年から7年になったとしてもほとんどのユーザーが3万時間には到達しません。不具合が初期的に出やすいことも合わせて考えると、7年間保証というユーザーに寄り添った提案は理にかなっていました 」と結論付けた。

長く使える安心が得られ、コスト・環境負荷の低減が可能に

 ところで、7年間保証によるユーザー側のメリットはどういったものになるだろうか。「同じ製品を長く使えることによる安心感」はもちろんあるとして、中島氏は「 製品を買ってから廃棄するまでのTCO(総保有コスト)を最小化できること 」と、「 購入・廃棄時の輸送や梱包資材などに関連する環境負荷の低減につながること 」も挙げる。

室内を高温に保ち製品を稼働し続ける
量産開始後は高温環境で長期にわたるライフ試験を実施。過酷な環境での使用も検証しており、保証期間よりはるかに長く使える可能性は高い

 モニターという仕事用のツールが頻繁に入れ替われば、当然ながら生産性は一時的に低下する。数十台~数千台単位で導入する企業の場合は、導入から廃棄までのコスト、環境負荷の大きさも無視できないものとなるはずだ。

 保証期間が3年程度のモニターでも、実際にはそれ以上使える場合があるだろう。とはいえ、どこかのタイミングでモニターは壊れるもの。急遽新しいモニターが必要になったとして、企業では予算化していないものをすぐに調達するのは難しい。昨今の経済情勢を考えると、あらかじめ予算取りして計画的に入れ替えるより調達コストが上振れする可能性も高い。

7年間保証は利用者のメリットが大きい
7年の間、入れ替えに必要なコストや作業が発生しないのは大きなメリット

 それに対して、7年の保証期間があるEIZOのモニターなら、入れ替えの手間・コストを削減でき、それによる生産性低下に悩まされず、故障トラブルも考えずに済む。余計な管理業務を削減し、安定的に業務を継続できるのは、企業にとって大きなメリットであることは間違いない。

「販売台数」に縛られず品質を追求していける体制

 ただ、コスト削減はユーザー側のメリットとなるものの、買い替えが発生しないことでEIZOとしてはデメリットになりうる。ところが、これについては同社のビジネスモデルがそもそも「台数」に依拠していないところがポイントとなりそうだ。

1台1台組み立てられていくモニター
組み込み前の液晶パネル
現場の作業員が丁寧に組み立てている

 中島氏によると「 コンピュータ用のモニター市場は全世界で見ると微増で、急激に伸びてもいないが減ってもいない状況」 だそうだ。そのうえで「 EIZOは、世界で大半のシェアを占めるとか、そういう立ち位置ではない 」と付け加える。

 「 ほかにはない質の高さを求めるユーザーを1人でも2人でも増やしていくことが最重要 」と捉えているEIZOにおいては、「 7年間保証でEIZO製品の価値をさらに高めることがプラスに働く 」というのが同氏の考えだ。

 サステナブルのトレンドを背景に、1つの製品を長く使い続けることが今の世の中の流れとなっている中、むしろ保証期間を短いままにしておくことは得策ではない、といった判断もあるのだろう。

 土田氏も「 保証期間が長くなる分、確かにサービスを提供する期間は長くなりますが、そこでEIZOのモニターを買って良かったという成功体験が得られれば、次もEIZO製品を購入していただける。そういったサイクルにつながると考えています 」と語る。

 加えて、ユーザーからのフィードバックが得られる機会が増えることで、「 それを蓄積して次の製品作りや顧客対応に生かしていける好循環も生まれます 」と同氏。「 7年間保証は、我々の“良い製品をつくり続ける”という考え方にもマッチした取り組みなんです 」。

新棟が完成し、複数部門が緊密・迅速に連携

 EIZOは2025年、本社敷地内に新棟を増築し、これまで別々の棟にあったカスタマーサポート窓口部門、修理サポート部門、品質保証部門など、顧客との接点が近い部門を集約した。隣接する設計部門や製造部門と緊密に連携し、自社一貫体制を強みにした顧客対応力をより一層高めている。

EIZO本社
EIZOの新棟。今回はここでインタビューを行なった
EIZO本社工場の敷地。新棟は本棟の左側に位置している

 土田氏は以前の体制と比較して「 顧客からの問い合わせ内容が品質保証部に届いた際に、新棟配置部門での共有がよりスムーズになった 」と語る。

広々として明るい新棟
新棟に配置されたカスタマーサポート窓口「EIZOコンタクトセンター」の一部。外部委託はせず、自社で運営している。これにより、過去の経験を踏まえた迅速な顧客への回答や、社内の関連部門への迅速なフィードバックが可能
空間が広く使われていて、光をふんだんに取り入れた開放感を感じさせる作りだ
コミュニケーションを取りやすい構造
社内建屋は、吹き抜け・風通しの良いレイアウトなど、フロア・部門の垣根を取り払うオープンな雰囲気がある
この1階の吹き抜けのすぐ隣には、EIZOメンテナンスセンターがある。EIZOメンテナンスセンターでは、温湿度・静電管理された環境で、安定した修理サービスを提供する

 こうした拠点の刷新も、7年間保証の安定的なサービス提供に貢献するものと思われる。「 カスタマーサポートといえば顧客の問い合わせを起点にした受動的なイメージですが、7年間保証はサポートを能動的に提供していく新しい挑戦になります 」と土田氏。そうした言葉からも、7年間保証がこれからのEIZOらしさを特徴付ける新たな価値になりそうだ。