トピック

軽さを求め、デル・テクノロジーズが見出したのは「弓」の設計

~Dell Latitude 7330 Ultralightは、日本ユーザーのために開発された1kg切りのノート

「Latitude 7330 Ultralight」

 一般コンシューマ、ゲーマー、クリエイター、ビジネスパーソンと幅広いターゲットに向けたPCを手がけるデル・テクノロジーズ株式会社(以下、デル)のビジネス向けノートPCとして「Latitude」がある。コンシューマ向けのプレミアムノートPCはXPS、エントリー/メインストリームはInspironと分けられているように、ビジネス向けも中小企業向けのVostro、中小企業から大企業まで全ての企業で求められる性能や品質を提供しつつ、新しいPCの使い方を提案するのがLatitudeとなる。

 そのLatitudeの中で特にモビリティ向けなのが7000シリーズである。最新モデルとなるのが、「Latitude 7x30シリーズ」で、13.3型の7330、14型の7430、15.6型の7530という3つのシリーズが用意されている。13.3型のLatitude 7330には、末尾に「Ultralight」が付く構成が用意されている。本構成は最小構成で0.967kgと、同社の法人向けノートPCとして初めて1kgを切る軽量さを実現。そして、この製品は日本市場のために開発された製品だという。

 今回、Latitude 7330 Ultralightの開発を主導したDell Technologies Mobility Product Marketing Directorのマット・マクゴワン氏にお話しを伺う機会を得たので、本製品開発の経緯や特長などについてお伝えする。

Latitude 7330 Ultralightを手に持つ米Dell Technologies Mobility Product Marketing Directorのマット・マクゴワン氏

 なお、製品の詳細な仕様などは、下記の記事を参照されたい。

日本の「もっと軽いノートPCが欲しい」という以前からの要求とグローバルでのニーズの盛り上がりが合致

Dell Latitude 7330 Ultralightの概要

 前述の通り、Latitude 7330 Ultralightは、最小構成で0.967kgという軽量さを実現している。日本では1kg切りの製品はそこまで珍しくはないが、デルなどのグローバルのPCメーカーでは珍しい。というのも、他国では、日本市場ほどは軽量さへのニーズがないからだ。

 マット・マクゴワン氏によると、今回の製品を計画するにあたり、日本のチームや顧客から多くのフィードバックを得たことは事実だ。ただ、軽さへのニーズは、実は日本市場だけでなく、アジア太平洋地域の他の地域からも出始めていたという。さらに、コロナ禍になってテレワーク、リモートワークが当たり前になったことで、北米や欧州などでも可搬性の高い製品への需要が増えてきた。

 そこで、Latitude 7330 Ultralightでは、耐久性、フルHD解像度、1.5mmのキーボードストロークなどビジネスに必要なポートなどとのバランスに配慮しながら、軽さを追求した設計を行なったという。

 マクゴワン氏は「今後こうした軽量なノートPCは成長ジャンルだと考えている。これからもハイブリッドワークのような働き方は続くと考えており、気軽に持ち運べる製品が当たり前になりつつある。つまり、日本市場での使い方が、グローバルに広まっていくだろう。そういう観点で、本製品は日本ユーザーを念頭に開発した製品になっている」と語る。

筐体カバー素材にアルミよりも軽量なマグネシウム合金を採用

Latitude 7330 Ultralightの内部構造

 PCの軽量化は思った以上に大変だ。単に軽量さを実現すること自体はさほど難しいことではないのだが、軽量にした結果、耐久性が失われたのでは意味がなく、堅牢性も確保しなければならないからだ。今回デルでは、正しい素材の選択を行ない、そして構造に工夫を盛りこんだ。

 まず、筐体素材としてマグネシウムアロイ、つまりマグネシウム合金が採用された。これにより、デルが規定する強度を実現しつつ、従来よりも軽くできた。具体的には、ディスプレイ天板(A面)、ディスプレイ面(B面)、キーボード面(C面)、底面(D面)のうち、B面を除く3面にマグネシウム合金が利用されている。

 一般的にノートPCに利用されている素材は、プラスチック、アルミニウム、カーボン、そして今回のLatitude 7330 Ultralightに採用されているマグネシウム合金などがある。この中で、ハイエンドノートPCによく採用されているのはアルミニウムで、見た目の質感の高さなどが採用の大きな理由になっている。

 だが、アルミニウムは強度あたりの重さという点で見ると、カーボンやアルミニウム合金に劣っており、どうしても重くなりがちになってしまう。対してマグネシウム合金の重量は、同じ強度であればアルミニウムに比較して3分の2程度で済む。

天板
※キーボードは英語版のもの
背後から

「弓」からインスパイアされたデザイン

マクワゴン氏が手に持つ天板

 以下のスライドはLatitude 7330 Ultralightの天板(A面)カバーについてのもの、全体が同じ厚さではなく、中央から端にかけて厚さが33%そぎ落とされている。図で言うと、緑になっている部分がその33%そぎ落とされている部分で、ピンクの部分が通常の厚さの部分となる。

弓の形状を採用しているA面カバー、緑の部分は肉厚が33%そぎ落とされた部分

 マクワゴン氏によれば「軽量化のためにA面を薄くしながらも、剛性は維持する必要があった。当初、天板を薄くしていったら、負荷をかけた際にヒビが入ってしまった。そこで、剛性を維持しながら薄くするために、“弓”にインスパイアされたデザインを採用し、軽さと剛性のバランスを取ることに成功した」という。実際、弓構造により、前世代のDell Latitude 7000シリーズと比べ、ディスプレイのヒビ割れ耐性は80%増しつつも、A面と液晶の合計重量は84g軽くなっているというから驚きだ。

 結果、耐久性に関しては、2万回の開閉テスト、ディスプレイへの加重テスト(15kg)、1千万回のキーストロークテスト、さらには高熱テストなど様々な試験を行ない、パスしている。

いわゆる拷問テストのリスト、これだけのテストをすることで、頑丈なノートPCができあがる

 熱設計に関してもシステムの最大性能が発揮できるよう設計されている。採用されているCPUは最新の第12世代CoreプロセッサーUシリーズ(TDP 15W版)。メモリを最大32GBまで増やすことが可能になっているのもうれしいところだ(モデル構成による。Ultralightは最大16GB)。

CPUクーリングユニット

 ポートの構成がUSB Type-C(Thunderbolt 4)×2だけでなく、HDMI、USB Standard A(いわゆるUSB-A端子)がそれぞれ1つずつ用意されているのも、ユーザーニーズを“分かっている”のが伝わってくる。

右側面に、Thunderbolt 4、USB 3.0、HDMI、セキュリティスロット
左側面に、Thunderbolt 4、音声出力

 マクゴワン氏は、軽量さを実現しつつも、Latitudeが持つビジネスパーソン向けの基本的な機能、長期間保証やオプションの保証期間延長サービス、さらには追加の拡張保証などを継承していると強調する。

CPUに負荷をかけないノイズ低減機能などDell Optimizerの強化

 Latitude 7330 Ultralightでは、ハードウェア的な仕様だけでなく、機能面でも強化が実現されている。近年のLatitudeシリーズには「Dell Optimizer」と呼ばれる最適化ツールが提供されている。Dell OptimizerはマシンラーニングベースのAIを活用して、PCを自動的に最適化するツール。以前から提供している機能としては、ユーザーのアプリケーションの使い方などを解析し、より効率の良いバッテリ設定などを自動化する。

 これに加え、昨今のWeb会議のニーズを踏まえ、新たにAIを利用したノイズ低減機能が搭載された。CPUに搭載されているGNA(Gaussian & Neural Accelerator)3.0というニューラル処理アクセラレータを利用して、オーディオ入力をCPU負荷を最小限に抑えて解析し、スマホの通知音や、自動車の排気音、救急車のサイレンといった人間の声以外のノイズだけを低減してくれる仕組みになっている。この機能は自分のマイクだけでなく、相手の音声にも適用できる。

 なお、学習はあらかじめ用意されたデータを利用して行なわれており、実際のユーザーの音は一切使用しないということなので、プライバシーの観点からも安心して利用できる。

Dell Optimizerの機能となるノイズ低減機能

 そしてもう1つ、ExpressConnectと呼ばれる機能が追加された。これは、有線と無線のネットワークに同時に接続して、データの送受信を行なうことで帯域を引き上げる機能。例えば、自宅でテレワークしている時に、Wi-Fiだけで接続していると、家族が同じくテレワークで電話会議を始めたり、子どもがネットゲームを始めた時に、帯域がそちらに取られて自分の電話会議が不安定になったなどの経験をしている人もいるだろう。

 ExpressConnectを有効にすると、Web会議に帯域が優先されるほか、有線と無線につないでいる場合、より高速に使える方に自動的に切り替えられる。

ExpressConnect

サステナビリティについても高いレベルの取り組みを実施

 PCの製造には様々な素材が利用されているが、性能やユーザーの使い勝手に影響を与えない部分から再生素材の導入が始まっており、多くの産業で目標として掲げられているカーボンニュートラル実現に向けてPC産業でもメーカーが取り組みを強めている。

 デルもサステナビリティへの取り組みを積極的に行なっており、近年のデル製品は、環境に配慮した製品作りが行なわれている。今回のLatitude 7330 Ultralightでも、ゴム足の最大39%が、バッテリのプラスチックのフレームのうち最大50%がバイオ再生由来の素材になっているなど、積極的に再生素材を利用している。

 パッケージに関しても再生素材の導入を進めており、プラスチックやケーブルラップなどを撤廃し、パッケージの全ての素材がリサイクル素材/再生可能素材になっているほか、パッケージのサイズ自体を小さくすることで輸送時のCO2削減を実現するなど環境に配慮されたデザインになっている。

Latitudeで行なわれているサステナビリティの取り組み
バッテリのフレームも50%が再生素材
Latitude 5000シリーズでの再生素材の利用具合
パッケージ素材も再生素材に

軽さと性能などのバランスを突き詰めた仕上がり

 以上の通り、Latitude 7330 Ultralightは、日本ユーザーの声を大きく反映させて軽量化を図った製品だ。世界最軽量レベルでこそないものの、1kgを切っていることで日常的に持ち運べる軽さとなっている。

 同時に、独自の熱設計でCPUの性能を最大限発揮でき、環境にも配慮するなど、ビジネスモバイルノートに求められるものをバランス良く突き詰めていった仕上がりとなっている。

 こういった、スペックシートには現れない取り組みや開発思想が製品選択の参考になれば幸いだ。