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漫画、イラスト製作にも使ってほしい高画質4K液晶BenQ「PD2725U」を漫画家ざら先生が試した

~ざら先生の特典イラスト&漫画も!

 PCで作画を行なう漫画家やイラストレーターの作業環境として、液晶ディスプレイは欠かせないものと言える。それは液晶一体型のペンタブレットを使う場合でも同じだ。

 単に映ればよいという話ではない。作画の途中や作品が一通りできあがった際に細部までチェックする必要もあれば、印刷所に納品する前や電子書籍、Webページなどに掲載される前に、作者の思い通りの色になっているか確認する必要もある。

 そうなると、やはり信頼のおけるディスプレイが必要だ。色の精度、明るさが均一であることなどの画質面、さらに細かな作画作業を長時間行なう際の作業性や快適性、使用する描画ソフトとディスプレイの解像度の親和性などもポイントになってくるだろう。

 BenQの「PD2725U」は、高い色精度と製作作業の効率化を実現したクリエイター向けの27型4K液晶ディスプレイ。CalMAN認証およびPANTONEカラー認証を取得しており、色域はsRGB/Rec.709 100%、DCI-P3/Display P3 95%をカバー。製品出荷時にはカラーキャリブレーションを個別に実施しているため、色にこだわるプロクリエイターも箱から出してすぐに使える仕様となっている。

本製品は出荷前に画質の調整が済んでおり、製品個別にキャリブレーションレポートが添付されている。色が大事なのは分かっているけど、自分でキャリブレーションするのはめんどうという方や、キャリブレータに追加コストをかけられないという方にピッタリ

 使い勝手の面では、豊富なカラーモードを手軽に切り替えできる外付けコントローラ「Hotkey Puck G2」が付属することに加えて、65W給電対応のThunderbolt 3ポートの搭載、接続した2台のPCでキーボード/マウスを共有できるKVM機能なども備えるなど、リアルなクリエイターの作業を意識した工夫が光る。

 今回はDOS/V POWER REPORTに「わがままDIY」を連載している漫画家のざら氏(以下、敬称略)に、この「PD2725U」を試用していただき、漫画、イラスト作成者視点から実際の使い勝手をチェックしてもらった。

キーボード、マウスに加えてペンタブレットなども併用するユーザーはなにかと机の上が煩雑になりがち。PD2725Uは安定感を確保しつつ作業スペースのジャマにならないよう、薄くて面積の広い台座になっているところからして“分かっている”感がある

フルHDで作業している方、まだ多いですよね? 4K画面になるとこんなに……

――ざらさんが現在使用しているメインディスプレイは1,920×1,200ドット(フルHDより縦に少し広いWUXGA)の24型液晶ですね。何年も使っていてそろそろ買い換えを考えているとのことですが、今回、PD2725Uに置き換えてみてどうでしたか。

ざら:箱から出して、PCに接続してWindowsが立ち上がった瞬間、「あ~、これはいいな」と思いました。出荷時に校正証明(キャリブレーションレポート)まで付いてくるディスプレイというのは初めてだったのですが、これが間違いのない色だと言われたら、めんどくさがりの自分としてはもうすべておまかせで信じるよ、と(笑)。

――確かに、キャリブレーションという作業はコストも手間もかかるので、ユーザーがこのプロセスを省けて、買ってすぐに安心して使えるというのはいいですよね。全体のサイズ感などはどうでしょう?

ざら:24型液晶が縦横比16:10タイプだったので、16:9タイプのPD2725Uに入れ換えると縦が狭く感じるのではないかとちょっと心配でしたが、縦解像度は1,200ドットから2,160ドットに増えてパネルサイズが24型から27型に上がったので、狭くは感じませんでした。それどころか、狭額縁なのでスペース的にも圧迫感がないのは意外でした。

 スタンドの足の部分がほぼ平らなプレートなので、ディスプレイの下にキーボードなど置きやすいのもいいですね。組み立ても簡単で、シンプルな見た目なのにどっしりと安定しているのもいいです

普段使っている24型液晶(左)とRD2725U(右)。この24型液晶は16:10のタイプのため、縦幅はほぼ同じだが、横幅は一回り大きいのが分かる。明らかに作業スペースが広くなったのに思ったほど違和感がなくて不思議、とざら氏
スタンドの組み立てにドライバーなどは不要。本体固定部ははめ込むだけで、底面のネジはコイン1枚あれば締め込める。本体固定部は100×100mmのVESAマウントにも対応しているので、ざらさんの作業机ならアームマウントを使用するのもよさそうだ

――4K解像度自体の作業感はいかがですか。

ざら:操作パネルをたくさん表示できるのがいいですね。今仕事で使っているソフトは「CLIP STUDIO PAINT EX」と「Sai」がメインです。どちらも4K環境でも使えるインターフェイスになっていて、とくにCLIP STUDIOだとカスタマイズしたブラシやサブツール(集中線のような効果図形のこと)をたくさん登録している人なら間違いなく4K解像度のほうが便利に感じると思います。

 自分が今もときどき使っているPhotoshop CS5は4Kにするとメニューが小さくなり過ぎて使うのが厳しいのですが……、いいかげん、(高解像度対応のメニューを使える)最新版にしないとダメですね。

――ざらさんが作画に使用しているペンタブレットは、液晶一体型の“液タブ”ではなく、PCのディスプレイを見ながら描く“板タブ”ですね。ディスプレイが変わって違和感はありませんでしたか。

ざら:タブレット側の検知エリアはなにも変わらず、画面内の描画ウィンドウの縦横比も変わらないのですぐに慣れました。

漫画・イラスト作成では標準ツール的存在のCLIP STUDIO。27型の4K解像度であれば、多くのツールを表示しながらでも作業エリアに余裕がある

色の確認はこれ1台でOK

――ざらさんが今使っているディスプレイも色には気を使って選んでいるとのことですが、普段からキャリブレーションをしているのでしょうか。

ざら:キャリブレーションは行なっていません。雑誌や単行本用のカラー原稿を納品する際には最終的に紙の種類や印刷の状態などで色味が変わってきます。自分で色校正(テスト印刷)を確認することもあるのですが、最終的な色調整は基本的は出版社さんにお任せというスタンスです。

 ただ、ディスプレイの色味をそれほど気にしていなかった頃に大失敗した経験があるんですよ……。自分の作業環境で見ている色と出版社側で見ている色がかなり違っていることに気付かないまま、おまかせで進めてしまって、後になって関係者一同が混乱しました(本記事末尾の漫画参照)。それ以降、色が信用できないディスプレイは選ばなくなりました。

 それから、最近は電子版でスマホやタブレットで読むのも当たり前になって、読まれる環境が多様化しています。私としても読者の見え方を意識して、納品前にPC以外の環境、たとえばiPadなどでも色を確認するようにしています。

――PD2725UはsRGBカバー率100%ですが、さらに広い色域の「DCI-P3」や「Display P3」のカバー率95%というに高い色表現力に加えて、MacBookシリーズに近いカラーになるという「M-book」モードなども備えています。画面の左右をそれぞれ違うカラーモードで表示して比較できる「デュアルビュー」機能もありますが、試してみてどうですか。

ざら:Macユーザーじゃなくてすみません(笑)。(sRGB色域で製作した画像を見て)Display P3の色域はsRGBの色域もカバーしたものということなので当然なのかもしれませんが、sRGBモードでもDisplay P3モードでも、デュアルビューでどんなに目を凝らして比較しても私の原稿の色は同じに見えました。

 M-bookモードにするとsRGBとはわずかにトーンというかコントラストが違うのが分かりますが、デュアルビューで比較しなかったら気が付かないレベルだと思います。

 私が使っている24型液晶はPD2725Uと比べると全体的にやや暖色寄りで、手持ちのiPad Pro 12.9インチ(第4世代)の画面と並べても明らかに色味が違うのですが、PD2725UのM-bookモードは確かに近い色に見えました。

デュアルビュー機能を使用すると、画面左右で違うカラーモードを比較することができるので確認にはとても便利。左が目に優しい「ブルーライト軽減(オフィス)」、右が広色域な「Display P3」
Display P3モード(左)とM-bookモード(右)をデュアルビューで並べてみたが、写真ではほとんど違いが分からない。肉眼ではM-bookモードの方がほんのわずかにコントラストが高いことが分かる
iPad Pro 12.9インチ(True Toneオフ)と、M-bookモードのPD2725Uに同じイラストデータを表示。完全に同じではないものの、近い色合いと言ってよいだろう

――iPadは光沢のあるグレア画面で、PD2725Uはノングレア画面。加えて、ざらさんのiPad Proは2年近く使用したものであることを考えると、見え方が完全に同じにならないのは仕方のないところだとは思いますが、作業環境のディスプレイで複数の読者の環境を再現できるのは便利ですよね。

ざら:このレベルなら締め切り間際に慌ててクラウド経由でiPadに送って確認、とかもうしなくてもいいですよね。

 現実的にはiPadやiPhoneはシーンに合わせて色や輝度を自動調整するTrue Tone機能を使っている方が多い印象でして、そうなると見え方は状況に応じて変わってきます。Android端末も機種ごとに色は違うでしょうし、応答速度に重きを置いているゲーミングディスプレイは製品によって色が結構違います。

 だから今はもう、厳密にどれに合わせれば正解とは言えないんじゃないでしょうか? その点、このPD2725Uなら、まず基準となり得る画質で追い込んで、各カラーモードで確認できます。いろいろなモードを1台で試せるわけですから、どのモードで見ても破綻していなければまず安心と言えそうなので、自信を持って納品できます

――SNSで「うちの環境で見るとだとなんだか色味がおかしいような気がするんだけど……」、みたいなコメントを見かけてドキドキすることもなくなりますね。“それは読者様の環境が原因かもしれませんね”みたいな判断ができます。実際に作業で使用するカラーモードはどれを選ばれたのでしょうか。

ざら:普段モノクロ原稿の制作で長時間作業するときは、目が疲れないようにディスプレイの輝度を60%くらいに落として使っています。PD2725Uも全体の輝度調整ができますが、それだとどのカラーモードで見ても輝度が下がった状態になってしまうので、何かいいモードはないかと探したら、「ブルーライト軽減(オフィス)」モードがしっくりきました。

 なので、今回線画はこのモードで描いて、色塗りは「Display P3」モードに切り換えて行ないました。付属の「Hotkey Puck G2」(後述)で操作が気楽にできるのもいいですね

――疲れ目対策としてのフリッカーフリー機能も備わっています。標準で有効になっているのでこれも効いているのでしょうね。

汎用的なsRGBから、動画編集向けのDCI-P3、コントラストが強調されるCAD/CAMなど、さまざまなカラーモードが選べる。メニューの操作法も分かりやすく、イラストや写真好きならばあれこれ色を試すだけでもおもしろいはず

直感的に扱えるOSDメニューと操作デバイス

――本製品のもう1つの特徴と言えるのが、豊富な外部入力ポートとそれらを直感的に扱えるインターフェイス。専用OSDコントローラの「Hotkey Puck G2」も付属していますが、これはどうでしたか。

ざら:まず、OSDのメニューがいいです。今までボタンが額縁の端にあるディスプレイしか使ったことがなく、メニューの並びを確認しながらおそるおそる操作するイメージがあったのですが、PD2725UはOSDメニューが階層表示になっていてとても分かりやすいです。背面にあるスティックでも十分快適に使えます。

OSDメニューの基本操作は本体背面にあるスティックで行なう。スティックの右にある2つのカスタムボタンも、Hotkey Puck G2のボタンと同様に任意の機能を割り当てることができる

――背面スティックはすぐ隣に電源ボタンがあって誤操作しそうな気がしたのですが。

ざら:これ、指で触ると分かるのですが、電源ボタンは表面にマークが彫ってあるので感触で分かりますよ。

――なるほど。専用外部コントローラのHotkey Puck G2はいかがですか。

ざら:Hotkey Puck G2のダイヤルをカスタム設定で音量調節に設定すると便利だと思いました(デフォルトは輝度調整)。あとは1、2、3のコントローラーキーに「ブルーライト軽減」、「Display P3」、「M-book」のカラーモード、ローテーションキーは音量の「ミュート」を割り当ててみました。本体背面のスティックの隣にあるカスタムキー1と2には、入力切り換えで「DisplayPort」と「HDMI」を割り当ててみましたが、機能の利用頻度によってHotkey Puck G2側と本体側のキー割り当てを変えるというスタイルがまた便利です。

――ディスプレイのカラーモードや入力の切り換えと言えば、ボタンを押してメニューを出して、選んで、決定して、というものが多いように思いますが、これならディスプレイ切り換え器を操作しているような手軽さです。

ざら:すごく分かりやすいのでフットワークが軽くなると言うか、ポンポン押すだけで切り換わるので色確認もやる気になります(笑)。

 何よりこのカスタム設定のやり方が分かりやすい! マニュアルを読まなくても設定できるって重要ですよ。PIP(ピクチャーインピクチャー)機能を、よく使う人は各ボタンをそちらに設定すればおもしろそうです。Hotkey Puck G2のコントローラーキーは3つ用意されていますが、もっとカスタマイズしたくなったので4か5まであってもいいなと思いました(笑)。

3つのコントローラーキーとダイヤルキーを備えた「Hotkey Puck G2」。右上のローテーションキーも含め、ユーザー次第でさまざまなカスタムバリエーションが考えられる。OSDメニューはこの押しボタンになっているダイヤルと左上の“戻る”キーだけでも操作可能だ
各カスタムキーの設定もOSDメニュー上で行なう。ディスプレイ最大4系統入力に対して、3つまでしかキーに登録できないといった仕様もあるが、OSDメニューでの切り換えも簡単なので実用面で不足はないはず。なお、これらのOSDメニューの設定は「Display Pilot」というユーティリティソフトをインストールすることで、Windows 7/8/10およびIntel CPU搭載Mac上からも操作が可能となっている。これに関してはこちらの記事を参考にしていただきたいが、各カラーモードとWindows側のICCプロファイルとの連動などもできるので、さらにカラーマッチングを追い込むことができるだろう。

――せっかく色々機能があるのに操作がしづらくて結局使われない、という機器はディスプレイに限らず多いですから重要なポイントですね。

ゲーム機もタブレットもディスプレイが中心に

――ところで、作業机の下にPS4が見えるんですが、カスタムキーにHDMI切り換えが割り当てられているのは、これのためですよね。PS4を使った感じはどうですか。

ざら:もちろん普通に使えますよ! たぶん、ゲームの色も製作者のイメージとおりに表示されているはずです。

 さらに、PD2725UにThunderbolt 3でiPad Proを接続してそちらでSNSを見ながらゲームをプレイしています。iPad Pro用に別途USB Type-Cの給電器を用意しなくていいので、机の上がさらにスッキリしました。

――その状態だとディスプレイ側をThunderbolt 3入力に切り換えたらiPadの画面を写すことができますよね。

ざら:そうなんです。Thunderbolt 3のケーブル1本で給電もディスプレイ出力もできるなんて便利な時代だなあと。なんとPIP機能を使えば、PS4とiPadの画面を両方表示しつつ、ディスプレイにUSB接続されているPCキーボードをiPadのキーボードとして使うこともできるんです。

 当然のことながらKVM(PC切り換え)機能で完全にHDMI入力側(PS4)に切り換えてしまうと使えないのですが、イメージ的にはバックミラーを見ながら運転しているような感じになって新鮮です。

――仕事環境だけじゃなく、エンタメ環境までアップデートできちゃいますね(笑)。

ざら:今使っている24型ディスプレイは購入当時10万円くらいで、私としては昔からこのくらいのお値段のディスプレイを選ぶことが多いのですが、PD2725Uもちょうどこの価格帯です(11月下旬現在 ベンキューダイレクトショップ価格:11万5,000円)。もうこれに乗り換えていいんじゃないかと思い始めています。

 このPD2725Uは、色再現性や機能はもちろんなのですが、本当にOSDメニューが分かりやすくて親近感が湧きました。ディスプレイってあれこれ設定を変えないで使うので、いつも見ているのに脇役みたいなイメージがあるのですが、これは主役になる1台だと思います。

ディスプレイ入力にはHDMI 2.0×2、DisplayPort 1.4×1に加え、2つのThunderbolt 3ポート(USB Type-C)も使用可能。Thunderbolt 3は2つ備えており、1つは65W給電、もう1つは15W給電に対応する。また、USB Type-BのアップリンクポートをPCと接続すれば、USB Type-AポートをUSB HUBとして使用可能だ。2.5W×2スピーカーやヘッドホン出力も内蔵しているので、ディスプレイ周りがスッキリすること間違いなし
リフレッシュレートは標準的な60Hzとなっているが、もちろんゲーム機なども接続可能。先生、そろそろPS5が欲しい、とか言ってないで、先にディスプレイ買いましょうね!
本製品はKVM機能も備えており、Thunderbolt 3対応のノートPCなどを接続した場合は、デスクトップPCとキーボード、マウスの共用が可能となる
Thunderbolt 3対応のiPadなら、ケーブル1本で繋ぐだけで充電だけでなく、ディスプレイ出力もできる(複製表示のみ)。PIP機能に加えて、KVM機能によってPCキーボードが使用できるのもポイントだ
ざら先生×BenQコラボ記念!?PD2725Uで漫画を描いてもらいました
さらにムチャ振り! 「プロ漫画家が考えた色見本になりそうなイラスト」を描いてください
作品名は「RGBレンジャー VS CMYKレンジャー」です。マゼンタピンクレンジャーはともかくとして、ブルーとシアンが出てくる戦隊はなかなかないと思いました(ざら)
ざら:漫画家
芳文社『まんがタイムきらら』、講談社『good!アフタヌーン』などで連載歴がある。代表作に「ふおんコネクト!」、「ふたりでひとりぐらし、」、「しかくいシカク」など。インプレスDOS/V POWER REPORTにてPC自作漫画「わがままDIY」を長期連載中。