トピック
下り258Mbpsの回線速度が一気に724Mbpsに!
~transix/v6プラスに効くアイ・オー・データ機器の「IPv6ブースト」を試す
- 提供:
- 株式会社アイ・オー・データ機器
2019年12月6日 11:00
アイ・オー・データ機器から、同社製の一部既存Wi-Fiルーター向けに「IPv6ブースト」と呼ばれる機能に対応した新ファームウェアがリリースされた。transixやv6プラス、v6オプション、OCNバーチャルコネクトといったサービスを利用している環境で、IPv4による通信速度が3~4倍に向上する機能だ。実際にtransixの回線でテストしてみた。
IPv6サービスが思ったより速くない?
昼間は問題なく使えるのに、平日夜のゴールデンタイムになると極端にインターネット接続の速度が遅くなる……。
こうした悩みを解消するために、ここ数年に急速に加入者を伸ばしてきたのが、transixやv6プラス、v6オプションと呼ばれるIPoE方式のIPv6接続を提供するインターネット接続サービスだ。
NTT東西のフレッツ光サービスに対応するISP各社がサービスを提供しており、プラン変更などで手軽に利用できることから、すでに加入済みという人も少なくないことだろう。
しかしながら、こうしたサービスに加入しても、思ったほど回線速度が速くならないと感じていないだろうか?
確かにゴールデンタイムの混雑は解消されたし、Webページのアクセスや動画の視聴に不満は感じない。しかし、速度計測サイトで速度を測ると1Gbpsの回線なのに、速度が200~300Mbpsくらいしか出ない……。
こうしたケースが、なせ発生するかというと、家庭とインターネットの間の通信を中継するWi-Fiルーターが、transixやv6プラスで使われる通信を高速に処理できない場合があるからだ。
IPoE方式を採用したIPv6インターネット接続サービスは、大きく分けて次の3種類がある(これ以外にBBIXなどのサービスもあるが、ここではフレッツ系のサービスのみを取り上げる)。
サービス名 | サービス提供事業者 | 方式 |
---|---|---|
v6プラス | 日本ネットワークイネイブラー | MAP-E |
transix | インターネットマルチフィード | DS-Lite |
IPv6オプション | BIGLOBE | MAP-E |
注目したいのは、それぞれのサービスで利用されている方式だ。DS-Lite(Dual-Stack Lite)やMAP-E(Mapping of Address and Port Encapsulation)といった方式があるが、これらはIPv4 over IPv6、つまりIPv6ネットワーク上でIPv4通信を実現する技術だ。
IPoE方式のIPv6接続サービスは、IPv6の通信を提供するが、現状、インターネット上のサービスのすべてがIPv6で提供されているわけではない。たとえば、YouTubeやGoogle、FacebookはIPv6でアクセスできるが、インプレスが提供するWatchシリーズはIPv6ではアクセスできない。
このため、これらのサービスでは、IPv4の通信も合わせてできるように提供している。それが、前述のDS-LiteやMAP-Eというわけだ。
ちなみに、DS-LiteとMAP-Eは、提供する事業者も異なるが、技術的にも違いがある。簡単に説明すると、NATによるアドレスとポートの変換をどこで提供するかの違いで、DS-Liteは事業者側のネットワーク、MAP-Eは家庭に設置した通信機器で提供する。DS-Liteはポートの解放などができないが、MAP-Eはある程度の制限はあるもののユーザーの手によるポート解放が可能だ。
少し話が逸れたのでもとに戻そう。
要するに、transixやv6プラスに加入したのに、200~300Mbpsほどで転送速度が頭打ちになるのは、こうしたDS-LiteやMAP-Eをルーターが処理するのに時間がかかっているためとなる。速度測定サイトはIPv4で提供されていることが多いため、この影響が顕著に表れるわけだ。
「IPv6ブースト」で高速化を果たしたアイ・オー・データ
と言うわけで、ルーターの開発・販売を手がける各メーカーは、それぞれDS-LiteやMAP-Eの高速化に取り組んできたわけだが、今回、紹介するアイ・オー・データ機器も11月6日付けのリリースで「IPv6ブースト」と呼ばれる高速化機能を発表した。
現状、対応する機種は、以下の製品となる。本稿執筆時点で実動可能なのはWN-AX1167GR2のみだが、今後、さまざまな機種に適用されていくことだろう。
機種名 | 対応状況 |
---|---|
WN-AX1167GR2 | 対応ファーム(1.31)で利用可能 |
WN-AX2033GR2 | 2019年冬配信予定 |
WN-DX1167R | 2019年冬配信予定 |
WN-DX2033GR | 11下旬発売。初期ファームより対応済み |
IPv6ブーストについては、同社のWebページでも「IPv6(IPoE/IPv4 over IPv6)通信でのデータ処理プログラムを見直し、ハードウェアの性能を最大限に発揮できるようチューニングを施した当社独自の技術です」としか紹介されておらず、具体的にどのような技術なのかは明らかにされていない。
しかしながら、一般的な解釈で考えれば、今までパケットの宛先などをすべてチェックしていたのを、先頭だけチェックし、同じ宛先はCPUを介さずにネットワークインターフェイスで直接転送してしまうといった方法を使っていると推測できる。
DS-LiteやMAP-Eでは、IPv6上でカプセル化されたIPv4通信を扱うので、このカプセル化されたパケットを高速に扱えるようにした技術と言えそうだ。
実際の通信速度をチェック
それでは、実際にIPv6ブーストの実力を検証してみよう。
今回、テストに利用したのは1Gbpsのフレッツ光ネクスト回線で、プロバイダはIIJmioのFiberAccess/NFサービス(DS-Liteのtransix)のものとなる。
筆者宅はひかり電話契約のプランなので、ホームゲートウェイの配下に前述したWN-AX1167GR2を接続してIPv6を割り当て、WN-AX1167GR2のDS-Liteを使ってIPv4接続を実現した。
WN-AX1167GR2は、最大867Mbpsの通信に対応したIEEE 802.11ac(Wi-Fi 5)対応のWi-Fiルーターで、全方位に電波飛ばす360°コネクトに対応した製品だ。ネットフィルタリングやWi-Fiマモルといったセキュリティ機能も搭載しており、実売価格を考えるとひじょうにコストパフォーマンスの高いモデルになっている。
ファームウェアを書き換えながらのテストは時間がかかるため、WN-AX1167GR2を2台用意し、1台は旧ファームの1.22、もう1台はIPv6ブースト対応の最新ファーム1.31で利用した。
WN-AX1167GR2 | |
---|---|
CPU | デュアルコア880MHz |
RAM | 非公開 |
無線LANチップ | 非公開 |
対応規格 | IEEE 802.11a/b/g/n/ac |
バンド数 | 2 |
最大速度 | 2.4GHz=300Mbps、5GHz=867Mbps |
チャネル | 2.4GHz=1~13、5GH-1=W52/W53/W56 |
ストリーム数 | 2 |
アンテナ | 内蔵(2本) |
IPv6接続サービス対応 | DS-Lite、MAP-E |
WAN | 1000Mbps×1 |
LAN | 1000Mbps×4 |
USB | - |
動作モード | RT/AP/リピーター |
実売価格 | 4,240円 |
このような環境で、有線LANでの接続時とWi-Fiでの接続の両方で、Speedtest.netを利用して計測した速度が次のグラフだ。クライアント構成は、Core i7-7700K、メモリ16GB、SSD(Samsung 970 EVO)、Intel I219-V(1Gbps)、Wi-Fi(Intel Wi-Fi6 AX200、PCIe接続)。
旧ファームでは、有線LANの下り258.55Mbpsが最速で、150~250Mbpsあたりが上限で、いつ計測してもこれ以上の速度が出なかったが、新ファームでは有線LANで下り724.06Mbps、上り823.85Mbpsと一気に速度が上がった。下りで2.8倍、上りでは4.29倍だ。同じハードウェアとは思えないほどの高速化だ。
電波を使うWi-Fi経由では、有線ほど高い値は出なかったが、それでも143.94Mbpsだった下りが386.95Mbpsと2.6倍になっているので、効果は大きい。上りはさほど差が出なかったうえ、長距離になるとこの差が縮まってしまう可能性が高いが、やはりIPv6ブーストの効果は絶大と言って良さそうだ。
上り | 下り | Ping | |
---|---|---|---|
旧ファーム有線LAN | 191.69Mbps | 258.55Mbps | 4 |
旧ファームWi-Fi | 161.12Mbps | 143.94Mbps | 4 |
新ファーム有線LAN | 823.85Mbps | 724.06Mbps | 4 |
新ファームWi-Fi | 225.99Mbps | 386.95Mbps | 4 |
IPv6ブーストを目安にルーターを選ぼう
以上、アイ・オー・データ機器が新たにリリースした「IPv6ブースト」対応ファームウェアをWN-AX1167GR2で実際にテストしてみたが、その結果は優秀だ。
今回は、transixの回線のみでのテストだったが、v6プラス、v6オプション、OCNバーチャルコネクトでも十分な効果が期待できるだろう。これらのサービスを利用しているユーザーには強くおすすめできる機能と言えそうだ。今回検証したWN-AX1167GR2は、発売から1年以上が経過しているが、そういった古めの製品にも新しい技術に最適化されたファームを提供する同社の姿勢もすばらしい。
これからtransixやv6プラス、v6オプション、OCNバーチャルコネクトといったサービスへの加入を考えている場合は、IPv6ブースト対応を目安にルーターを選ぶといいだろう。すでに対象機種を持っているユーザーは、ユーザーがオフにしていない限り自動アップデートで対応ファームに更新されていくので、その点も安心だ。
また、同製品の現在の実売価格は4千円程度であり、IPoE IPv6用に新規に購入する人にもおすすめしやすい。PCだけでなくゲーム機やスマートフォンなど、配下につながる多くの機器でその恩恵を受けられる。