レビュー
第5世代AシリーズAPU「A10-7870K」をベンチマーク
(2015/6/1 13:01)
AMDは5月28日、Socket FM2+対応のAシリーズAPU「A10-7870K」を発売した。今回はこの新APUのパフォーマンスをベンチマークでチェックする。
動作クロックが向上したデスクトップ向けAPU最上位モデル
A10-7870Kは、第4世代AシリーズAPU「Kaveri」をリファインした新コア「Godavari」を採用するAPUだ。SteamrollerアーキテクチャのCPUコアを4基と、Graphics Core Next(GCN)アーキテクチャの8 GPU Compute Unit(512 Stream Processor)を備える。CPUクロックは3.9GHz(Turbo CORE時最大4.1GHz)で、GPUクロックは最大866MHz。
CPUとGPUのほかには、4MBのL2キャッシュ、メモリコントローラ(DDR3-2133対応)、PCI Express 3.0などを備えている。TDPは95Wで、製造プロセスは28nm。また、型番末尾に「K」のサフィックスが付与されたA10-7870Kは、CPU倍率やGPUクロックを上方変更可能なアンロックモデルである。
新コアのGodavariを採用するA10-7870Kだが、そのスペックはKaveriの最上位モデルである「A10-7850K」の動作クロックを向上させたものだ。MantleやTrue Audioなど、Kaveriがサポートしていた機能はA10-7870Kでも利用できるが、CPUやGPUのアーキテクチャ変更、新機能の追加などは無い。
APU本体以外の部分では、従来のAPUでは全てアルミ製だった純正CPUクーラーのヒートシンクが、ヒートパイプや銅板を用いた高性能版に変更された。これに伴い、製品パッケージが一回り大きくなっている。
A10-7870K | A10-7850K | |
---|---|---|
製造プロセス | 28nm | 28nm |
開発コードネーム | Godavari | Kaveri |
コア数 | 4 | 4 |
CPUクロック(定格時) | 3.9GHz | 3.7GHz |
CPUクロック(Turbo CORE時) | 4.1GHz | 4.0GHz |
GPUコア | Radeon R7 | Radeon R7 |
SP(Radeonコア) | 512基(64基×8GPU CU) | 512基(64基×8GPU CU) |
GPUコアクロック(最大) | 866MHz | 720MHz |
TDP | 95W | 95W |
倍率アンロック | ○ | ○ |
対応ソケット | FM2+ | FM2+ |
クロック向上分だけスコアも上がったベンチマーク結果
それでは、ベンチマークテストでA10-7870Kのパフォーマンスをチェックしていこう。
テスト環境には、A10-7870K対応版UEFIを適用したAMD A88Xチップセット搭載マザーボードASUS A88X-PROとDDR3-2133メモリを用い、比較対象として、Kaveriの最上位モデルにして、A10-7870Kの1つ下位に位置することとなったA10-7850Kを用意した。
テスト環境 | ||
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CPU | A10-7870K | A10-7850K |
マザーボード | ASUS A88X-PRO(UEFI: 1902) | |
メモリ | DDR3-2133 4GB×2 (11-11-11-31、1.65V) | |
ストレージ | Transcend TS512GSSD370(512GB/SSD) | |
ビデオメモリ | 2GB割り当て | |
電源 | Antec HCP-1200(1200W 80PLUS GOLD) | |
グラフィックスドライバ | 14.502.1028 | Catalyst Omega 14.12 |
OS | Windows 8.1 Pro Update 64bit |
まず測定したのはPCMark 8とPCMark 7。PCMark 8では、OpenCL対応デバイスを利用する「Run Accelerated」でテストを実行している。
PCMark 8では、「Home」で約4%、「Work」で約1%、「Creative」で約9%、それぞれA10-7870KがA10-7850Kを上回った。他のテストよりもOpenCLを活用するCreativeでA10-7850Kを引き離していることから、GPUクロックの大幅な向上がパフォーマンスに影響していることが伺える。
一方、PCMark 7に関しては「Entertainment」と「Computation」で2~3%ほどA10-7870Kが優位である以外、両APUの間に目立ったスコア差はついていない。
続いて、3D系ベンチマークの結果を見てみよう。
まずは定番の3DMarkのスコアだ。Fire Strikeは約7%、Sky Diverは約9%、Cloud Gateは約4%、Ice Storm Extremeは約5%、それぞれA10-7870Kが優位なスコアを記録した。GPU性能が問われるGraphicsスコアに関しては、各テストとも総合スコアより大きな差をつけている。
「ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク」では、描画品質を「標準品質(デスクトップPC)」に設定し、グラフィックスAPIをDirectX 9とDirectX 11にそれぞれ設定した際のスコアを測定した。結果、DirectX 9では約6%の差をつけたA10-7870Kだが、DirectX 11でのスコア差は3%弱に留まった。
その他、PSO2ベンチマークでは約8%、MHFベンチマークでは約9%の差をつけて、A10-7870KがA10-7850Kを上回った。
スペック上、最大GPUクロックでA10-7850Kを20%ほど上回るA10-7870Kだが、DDR3-2133メモリと組み合わせた場合では、3Dベンチマークでのスコア差は、概ね10%弱程度となるようだ。
最後に消費電力の比較結果を紹介する。消費電力については、サンワサプライのワットチェッカー(TAP-TST5)を用いて、ベンチマークテスト実行時にPCが消費した最大電力を測定している。
アイドル時の消費電力はほぼ横並びと言える結果となったが、ベンチマーク実行時の消費電力については、A10-7870KがA10-7850Kより10%前後高い数値を記録している。先に紹介したベンチマークスコアでの優位性が10%弱であることを考えると、性能が向上した分だけ消費電力も増加していると見て良いだろう。
クロック向上版Kaveriとして順当な性能を持つA10-7870K
以上の通り、A10-7870KのパフォーマンスをA10-7850Kと比較してみた。結果としては、性能的にも消費電力的にも、A10-7850Kのクロック向上版として順当なものであると言えるだろう。
19,000円前後で販売されているA10-7870Kは、既にA10-7850Kを所有しているユーザーにとって、魅力的なアップグレードパスとは言い難いが、これからAPU環境を構築しようというユーザーにとっては、APU最上級製品として検討に値する。
なお、GodavariであるA10-7870Kを動作させるには、マザーボードが対応UEFIにアップデートされている必要がある。新たにA10-7870Kを購入するのであれば、組み合わせるマザーボードのUEFIがGodavariに対応していることを忘れずに確認したい。