レビュー
399ドルのハイエンドGPU「Radeon R9 290」をベンチマーク
(2013/11/5 14:01)
HawaiiベースのハイエンドGPU
Radeon R9 290(以下R9 290)は、先に仕様が公開となったRadeon R9 290X(以下R9 290X)の下位に位置するハイエンドGPUで、R9 290Xと同じく、28nmで製造された、改良版GCN(Graphics Core Next)アーキテクチャ採用GPUコア「Hawaii」を搭載する。
R9 290のHawaiiコアは、最大947MHzで動作し、2,560基のSP(Stream Processor)と、160基のテクスチャユニットを備える。上位モデルのR9 290Xと比較すると、128基のSPと16基のテクスチャユニットが削減され、最大動作クロックは53MHz引き下げられたことになる。
GPUコアのスペックが引き下げられた一方、メモリ周りについては、512bitのメモリインターフェイスを採用し、5.0GHzで動作する4GBのGDDR5メモリを備えている。これは、上位モデルであるR9 290Xと同等のスペックだ。また、新APIの「Mantle」や「AMD TrueAudio」も、R9 290Xと同じようにサポートしている。
【表1】Radeon R9 290の主要スペック | |||
---|---|---|---|
Radeon R9 290 | Radeon R9 290X | Radeon R9 280X | |
GPUクロック(最大) | 947MHz | 1,000MHz | 1,000MHz |
Stream Processor | 2,560基 | 2,816基 | 2,048基 |
テクスチャユニット | 160基 | 176基 | 128基 |
ROP | 64基 | 64基 | 32基 |
メモリ容量 | 4GB GDDR5 | 4GB GDDR5 | 3GB GDDR5 |
メモリクロック(データレート) | 1,250MHz(5,000MHz相当) | 1,250MHz(5,000MHz相当) | 1,500MHz(6,000MHz相当) |
メモリインターフェイス | 512bit | 512bit | 384bit |
Mantle | ○ | ○ | ○ |
True Audio | ○ | ○ | ─ |
リファレンスボードはR9 290Xとほぼ同等の仕様
今回、AMDより借用したR9 290搭載ビデオカードは、同GPUのリファレンスボードだ。2スロット占有型の外排気式GPUクーラーを搭載したリファレンスボードは、上位モデルR9 290Xのリファレンスボードと外観上の差異は見られない。
映像出力ポートはDVI-I、DVI-D、HDMI、DisplayPortを各1系統ずつ備え、補助電源用コネクタは8ピンと6ピンをそれぞれ1系統ずつ備えている。また、R9 290はR9 290X同様、ブリッジケーブル不要の新CrossFireをサポートしているため、基板上部のCrossFire端子は省略された。
テスト機材
それではベンチマーク結果の紹介に移りたい。R9 290の比較対象には、上位モデルのR9 290Xのほか、「GeForce GTX 780」(以下GTX 780)と、「GeForce GTX 770」(以下GTX 770)のスコア用意した。
比較製品中、GTX 780とGTX 770については、ASUS製のOC版ビデオカードをリファレンスクロック相当にダウンクロックして測定しているほか、R9 290Xのベンチマークスコアについては、以前掲載したRadeon R9 290Xのレビュー記事よりQuietモードのデータを流用している。
【表2】テスト機材 | |||
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GPU | R9 290 | R9 290X | GTX 780/GTX 770 |
CPU | Intel Core i7-4770K(3.5GHz/Turbo Boostオフ) | ||
マザーボード | MSI Z87A-GD65 GAMING | ||
メモリ | DDR3-1600 4GB×4(9-9-9-24、1.5V) | ||
ストレージ | 120GB SSD(Intel SSD 510シリーズ) | ||
電源 | Antec HCP-1200(1,200W/80PLUS GOLD) | ||
グラフィックスドライバ | Catalyst 13.11 BetaV8 | Catalyst 13.11 BetaV5 | GeForce 331.58 |
OS | Windows 8 Pro 64bit |
DirectX 11対応ベンチマークテスト
まずはDirectX 11対応ベンチマークテストの結果から確認する。実施したテストは、「3DMark - Fire Strike」(グラフ1、2)、「3DMark11」(グラフ3、4)、「Stone Giant DX11 Benchmark」(グラフ5)、「Alien vs. Predator DX11 Benchmark」(グラフ6、7)、「Unigine Heaven Benchmark 4.0」(グラフ8)。
R9 290のスコアは、上位モデルのR9 290Xのスコアのおおよそ1割弱ほど低いものとなっている。スコア差が1割以上開いたテストは無く、GPUのユニット数削減やクロック引き下げなどのスペックダウンを考えれば、想像よりもスコア差は小さいものに収まった印象だ。
NVIDIA製GPUとの比較においては、GTX 770よりGTX 780に近い結果となった。比較に用いたNVIDIA製GPUはテッセレーション処理を得意とするKeplerアーキテクチャ採用製品であるため、極端にテッセレーション処理を多用する「Stone Giant」でGTX 770の後塵を拝する結果もあるが、概ねGTX 770より1ランク上のGPUであると言える結果だ。
DirectX 9/10対応ベンチマークテスト
次に、DirectX 9対応ベンチマークと、DirectX 10対応ベンチマークの結果を紹介する。実施したテストは「3DMark Vantage」(グラフ9、10)、「3DMark - Cloud Gate」(グラフ11)、「3DMark06 v1.2.1」(グラフ12、13)、「3DMark - Ice Storm」(グラフ14)、「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編」(グラフ15)、「MHFベンチマーク【大討伐】」(グラフ16)、「BIOHAZARD 6」(グラフ17)、「PSO2ベンチマーク」(グラフ18)、「Unigine Heaven Benchmark 4.0」(グラフ19)。
DirectX 9およびDirectX 10対応ベンチマークテストの結果でも、R9 290とR9 290Xのスコア差は1割未満に収まった。「PSO2ベンチマーク」や「BIOHAZARD 6」などで、高負荷時にR9 290Xとのスコアが開く傾向が見られるが、そこまで極端な変化が見られるわけでは無い。
NVIDIA製GPUとの比較については、GTX 770よりGTX 780に近いスコアであるということ自体はDirectX 11対応ベンチマークと同様だ。GPU負荷の軽い条件ではGTX 770に抜かれている結果も見られるが、高解像度かつ高負荷な条件になると、GTX 770との差が広がる傾向が見られる。
消費電力の比較
最後に、消費電力の測定結果を紹介する。消費電力はサンワサプライのワットチェッカー(TAP-TST5)を利用して、各テスト実行中の最大消費電力を測定した。
アイドル時の消費電力に関しては、いずれのGPUも50W前後で横ならびとなっており、3D描画を行なわない状況では各GPU間の消費電力には差が無いと考えて良さそうだ。
ベンチマーク実行中の消費電力では、R9 290がR9 290Xより24~37W低い消費電力を記録した。これは、おおよそ1割前後差であり、パフォーマンス差が1割弱であったことを考えると妥当な結果であると思われる。競合製品となるGTX 780は、R9 290よりさらに27~58W低い。消費電力あたりの性能に関しては、GTX 780が優勢なようだ。
激化したハイエンドGPU市場、GTX 780対抗モデルとして魅力的な価格となるか
以上の通り、R9 290はR9 290Xの下位モデルとしては優秀なパフォーマンスを備えたGPUだ。性能あたりの消費電力ではやや分が悪いが、純粋にパフォーマンスだけを見れば、GTX 780の対抗GPUと言えるだけの性能を有している。これらハイエンドクラスのGPUは、性能を優先するユーザーに向けた製品であることを考えれば、多少のワットパフォーマンス差は、そこまで重要というわけでもない。
R9 290にとって重要なのは、GTX 780をはじめとする競合製品との価格差だろう。上位モデルのR9 290Xの正式仕様が発表となった時点では、R9 290XがGTX 780と同等以下の価格帯へ投入される予定であったが、NVIDIAは10月29日、GTX 780を499ドル、GTX 770を329ドルへそれぞれ価格改定した。市場在庫の存在するGTX 780/770が即座に改定後の価格に見合った販売価格になるわけではないが、既に6万円台中盤程度まで価格が下落したGTX 780に対し、魅力ある価格で発売されるか否かが鍵となりそうだ。