レビュー

本日発売の「ゲームギアミクロ」ハードウェアレポート

ゲームギアミクロ

 株式会社セガから、往年のポータブルゲーム機「ゲームギア」発売30周年を記念した超小型ポータブルゲーム機「ゲームギアミクロ」を発売した。税別価格は4,980円。今回「ブラック」の実機を購入したので、ハードウェアおよび分解を中心にレポートしたい。

 なお、製品を分解することは、メーカーの保証を放棄したことになり、分解以後はたとえ自然故障であってもメーカー保証の修理などを受けることはできなくなる。また、電気製品は見た目にはダメージを受けていなくても分解中になにがしかの圧力を与えることで破損する場合もある。分解によるトラブルなどに対してはメーカーも、PC Watch編集部も、筆者も責任を負うことはできず、PC Watch編集部では、この記事についての個別のご質問・お問い合わせにお答えできないことをご了承いただきたい。

 使い勝手やソフトウェア面でのレビューについては、僚誌GAME Watchの記事(開封レポートブラックブルーイエローレッド)を参照されたい。

ゲームボーイミクロを下回る小ささにびっくり

 本機はAmazonでの限定販売となっている。自宅の郵便ポストに届いて、まずびっくりしたのはそのパッケージの小ささ。ゲームボーイアドバンスのソフトのパッケージよりも小さく、このなかにゲーム機が収まっているとは信じられないほどだ。

製品パッケージ
ゲームボーイアドバンスソフトのパッケージよりも小さい
パッケージ内容

 実際の本体もかなり小さく(公称約80×43×20mm)、筆者手持ちで最小の汎用ポータブルゲーム機「ゲームボーイミクロ」よりも二回りほど小さい。ここまで小さくなるとむしろ大きめのキーホルダーの類だろう。本体にはストラップホールも装備しているので、かばんなどにぶら下げて持ち歩くのはたやすい。

ゲームギアミクロ本体
ゲームボーイミクロと比較しても、その小ささは際立つ

 パッケージは本体のほかにハードウェアの説明書しかなく、乾電池とMicro USBケーブル、ACアダプタなどは別売りだ。ただ、いずれも入手性が高く、実際の購入者はすでにこれらを持っていることも多いだろうから、問題はないだろう。

 むしろ、説明書はハードウェアと共通のセーブ機能(スタートボタン1秒間長押し)に対してしかなされておらず、はじめてゲームタイトルをプレイするユーザーはとっつきにくいほうが問題になるかもしれない。

 電源は単4形乾電池×2またはMicro USBによる給電となっている。前者はシステムで残量を把握可能だが、Micro USBによる接続でACアダプタもしくはバッテリからの給電となるため、バッテリの場合は別途なんらかの手段で残量管理しなければならない。

 さて、実際に手にしてグリグリいじってみた感想だが、本機は小型のためか、ボタンのクリック感がかなり弱く、フワフワしていてあまりフィードバックが得られない印象。また、十字ボタンも同様にかなり弱い印象を受けた。

 ところがいざゲームをプレイしはじめると、このフワフワ感はあまり気にならなくなる。というのも、かなりストロークが浅い段階(アクチュエーションポイントが浅い段階)でボタンがキビキビ反応するからだ。気になっていた十字ボタンの入力ミスもなく、快適にプレイできた。

 その一方で1.15型の液晶はやはり小さく、ミニチュア感が強い。ゲームギアを本格的にプレイしたことのある世代にとって、ややつらいサイズかもしれない。意外に良かったのはスピーカーとヘッドフォン出力。スピーカーは小型なのに比較的音量があり、低音が弱い8bitゲーム機ならではのサウンドにピッタリ。ヘッドフォン出力はホワイトノイズやハムノイズがなく、クリーンな印象だ。

電源ボタン、音量ダイヤル、ヘッドフォンジャックはすべて本体上部
背面には電池室。分解もこちらから行なう
ソニック・ザ・ヘッジホッグをプレイしている画面。1.15型はさすがにかなり小さい。一昔の携帯電話のサブ液晶並みだ
スタートボタン長押しで表示されるメニュー

部品点数は少なく製造は容易そう

 プレイ後に本機を分解した。本体は4本のプラスネジで留められており、簡単に分解できる。基板などはネジで固定されておらず、シャーシにそのままはめ込まれているので、簡単に取り出せる。ただ、液晶はコネクタとフレキケーブルで接続されているほか、スピーカーの線も基板に直接はんだ付けされているので、取り外すさいは断線に十分注意が必要。

ネジを4本外すだけで完全に分解できた

 税別4,980円だけあって、中身は至ってシンプル。中枢となるSoCは、Allwinner製の「F1C200s」だった。このSoCはARM9ベースのCPUコアと、64MBのDDRメモリを内包。製造プロセスは40nmで、1cm四方のQFN88パッケージとなっている。

 最大192kHzのオーディオDACが内蔵されているが、本機の音の良さはこのあたりなのかもしれない。その一方で1080p/30fpsに対応したH.264/MPEG-1/2/4対応ビデオデコーダやカメラセンサーインターフェイス、USB OTG機能なども内蔵しているが、本機で使われることはないだろう。

液晶モジュール
基板のSoC側
SoCはAllwinnerのF1C200sだった

 ゲームなどを保存するストレージには、深センXTX(芯天下)製のSPI NANDフラッシュ「XT26G01AWSEGA」が使われていた。容量は1Gbit(128MB)である。収録されているゲームが4本しかなく、いずれも相当古いタイトルなので(新たに実装された隠しコマンドと、システム本体をもってしても)この容量で十分といったところだろうか。

 基板上には、説明書にはない「JP1」にタクトスイッチが実装されている。電池室をよく見ると、先の細いペンのようなもので押せそうだ。というわけで、電源を切って電池を取り出して押してみたが、セーブデータが消去されるわけではなかった。ではリセットスイッチか? と思いMicro USBで給電しつつ押してみたものの、こちらも反応はない。よって、用途については不明だ。

 なお、権利表記を見るかぎり、本機はLinuxをベース(カーネル3.10.65)に作られているようだ。そのためゲームタイトルの移植もエミュレーションベースになっていると思われる。ソニック・ザ・ヘッジホッグのように高速スクロールをするゲームでは、若干のもたつきが感じられるシーンもあるが、もしかしたらこのあたりが影響しているかもしれない。

基板のSPIフラッシュ側。ボタン類もそのままメイン基板を押す仕組みとなる
SPIフラッシュメモリはXTX製のXT26G01AWSEGA
基板には「JP1」にタクトスイッチが実装されており、電池室からもアクセスできるが、用途は不明

あの頃クリアできなかったゲームを

 これまでレトロゲーム機の復刻は据え置きのモデルが多く、いずれも途中で中断する機能が実装されているため、多忙な現代においても、生活スタイルにあわせて(実機よりは)かなりプレイしやすくなってはいる。しかし、それでもディスプレイやTVの前に「よっこらしょ」と腰を据えて、コントローラの配線を気にしつつプレイするしかない。それが、スマホのように手軽にゲームがプレイできる時代に慣れた身にはつらく、筆者は結局途中で投げてしまうものが多かった。

 その点、液晶も統合されていて1台で完結する本機なら、スキマ時間を縫って起動してちょっとプレイすることが可能。また、家中どこでも、そして外出先でもプレイできるのが最大のメリット。没入感という意味では据え置きに勝てないが、暇つぶし程度にはちょうどいい。

 よって、問題はユーザーがそのスキマ時間に、本機の収録タイトルをプレイしたいかどうかに尽きる。「あの頃なかなかクリアできなかったんだけど、いま改めて挑戦してみたい」という人なら、本機は間違いなく買いだ。本体が小さく場所も取らないので、セガ創立60周年、ゲームギア発売30周年記念品としても価値が高いだろう。