レビュー

ランダムアクセス性能が光るIntel製「Optane SSD 800P」

 Intelは3月8日、記憶素子に「3D XPoint Memory」を採用したSSD「Optane SSD 800P」シリーズを発表した。今回、同シリーズ製品である58GBモデルと118GBモデルを両方借用する機会が得られたので、ベンチマークレポートをお届けする。

Optaneブランド初のメインストリーム向けSSD

 Optane SSD 800Pは、3D Xpointメモリを採用したIntelの「Optane」ブランド初のメインストリーム向けSSD製品で、すでに発売済みのハイエンドSSD「Optane SSD 900P」の下位に位置する。

 フォームファクタはM.2 2280で、端子形状はKey B+M。インターフェイスにPCI Express 3.0 x2、通信プロトコルはNVM Express(NVMe)を採用している。発表時点での製品ラインナップは58GBモデルと118GBモデルの2製品で、主なスペックは以下の通り。

Optane SSD 800P。フォームファクターはM.2 2280。
端子形状はKey B+Mで、Key BまたはKeyMのM.2スロットに搭載できる。
【表1】Optane SSD 800Pの主なスペック
容量58 GB118 GB
フォームファクタM.2 2280 (22×80mm/B+M Key)
インターフェイスPCI Express 3.0 x2
プロトコルNVMe
記録素子3D XPoint
シーケンシャル・リード1,450MB/sec1,450MB/sec
シーケンシャル・ライト640MB/sec640MB/sec
ランダム・リード250,000IOPS250,000IOPS
ランダム・ライト145,000IOPS145,000IOPS
レイテンシ(リード)7μsec7μsec
レイテンシ(ライト)18μsec18μsec
MTBF160万時間
書き込み上限数365TBW
動作温度範囲0~85 ℃
保証期間5年
価格129ドル199ドル

 3D Xpointメモリは高いランダムアクセス性能を特徴とする記憶素子であり、これを採用したOptane SSD 800Pは、実アプリケーションで多用されるQueue Depth (QD)が浅いランダムリードで高い性能を発揮するとされている。この点については後ほどベンチマークテストでチェックしてみたい。

 また、3D Xpointメモリは耐久性の面でも優れており、Optane SSD 800Pの総書き込みバイト数(TBW)は2モデルとも365TBに達している。これは、耐久性の高い3D TLC NANDを採用したIntel SSD 760Pシリーズの512GBモデル(288TB)を凌ぐもので、3D Xpointメモリの書き換え耐久性の高さが伺えるスペックだ。

58GBモデルの表面。3D Xpointメモリチップを2枚搭載している。
58GBモデルの裏面。片面実装となっており、裏面には何も実装されていない。
118GBモデルの表面。3D Xpointメモリチップは58GBモデルと同じく2枚。
118GBモデルの裏面。こちらも片面実装で裏面には何も実装されていない。

テスト環境

 今回、Optane SSD 800Pをテストするにあたって、10コア20スレッドCPU「Core i9-7900X」と、Intel X299チップセット搭載マザーボード「ASUS ROG RAMPAGE VI EXTREME」を用意した。

10コア20スレッドCPUのCore i9-7900X。CPU直結のPCIe 3.0を44レーン備えたハイエンドCPU
Intel X299チップセット搭載マザーボード「ASUS ROG RAMPAGE VI EXTREME」

 このX299環境に4基のM.2スロットを増設する拡張カード「ASUS HYPER M.2 X16 CARD」を追加し、Optane SSD 800Pをこのカードに搭載した状態でテストする。

 なお、HYPER M.2 X16 CARDは大型ヒートシンクと冷却ファンを備えているが、SSD冷却機能を持たない通常のM.2 スロットで使用した場合を想定し、ヒートシンクと冷却ファンを利用しない場合のデータも取得する。

4基のM.2スロットを追加するASUS HYPER M.2 X16 CARD。インターフェイスはPCI Express 3.0 x16
カードを覆う金属製カバーはSSD冷却用ヒートシンクになっており、カード本体に搭載した遠心ファンによる送風を受けてSSDを冷却する
【表2】テスト機材一覧
CPUIntel Core i9-7900X
マザーボードASUS ROG RAMPAGE VI EXTREME (UEFI: 1102)
メモリDDR4-2666 4GB×4 (19-19-19-43、1.2V)
GPUGeForce GTX 1080 8GB
システム用ストレージCFD CSSD-S6T240NTS2Q (240GB SSD/SATA 6Gbps)
M.2 拡張カードASUS HYPER M.2 X16 CARD
電源玄人志向 KRPW-TI700W/94+ (700W 80PLUS Titanium)
グラフィックスドライバGeForce Game Ready Driver 391.01
OSWindows 10 Pro 64bit (Ver 1709 / build 16299.251)
電源設定高パフォーマンス
室温約28℃

単体利用時の性能をチェック

 Optane SSD 800Pを単体で利用したさいの性能から確認していく。

 利用したベンチマークソフトは「CrystalDiskMark 6.0.0」で、テストファイルサイズ1GiBと32GiBの設定でベンチマークを実行した。

 また、今回はASUS HYPER M.2 X16 CARDの冷却機能利用の有無により2パターンのデータを取得しており、冷却機能を使わない場合はCrystalDiskMarkのテーマカラーを「緑」、冷却機能を利用した場合は「青」に設定している。

▼58GBモデルのベンチマーク結果
58GBモデル冷却なし (1GiB)
58GBモデル冷却あり (1GiB)
58GBモデル冷却なし (32GiB)
58GBモデル冷却あり (32GiB)
▼118GBモデルのベンチマーク結果
118GBモデル冷却なし (1GiB)
118GBモデル冷却あり (1GiB)
118GBモデル冷却なし (32GiB)
118GBモデル冷却あり (32GiB)

 ベンチマークの結果では、スペックが示す通り58GBモデルと118GBモデルのパフォーマンスがほぼ同等であり、シーケンシャルアクセス性能についてもリード1,450MB/sec、ライト640MB/secというスペック通りの結果となっている。

 また、ASUS HYPER M.2 X16 CARDの冷却機能を利用したことで大きく性能が改善したという結果は見られていない。ベンチマーク中のSSD温度をHWiNFO64で測定した結果によれば、冷却機能の利用によりSSDのピーク温度は27℃も低くなっており、冷却の効果は明らかだが、今回の条件ではSSD単体の利用でもサーマルスロットリングによる性能への影響は生じなかったようだ。

ベンチマーク実行中のSSD温度

 さて、Optane SSD 800Pシリーズの強みとされるQueue Depthの浅い場合のランダムリード性能を示す「4KiB Q1T1」の結果に注目してみると、両モデルとも最大190MB/sec程度と一般的なNANDフラッシュを採用したM.2 SSDより高速な結果を記録している。

 ただし、これはCPUのシングルスレッド性能がボトルネックとなった結果であり、ベンチマークの設定を変更してスレッド数を20に増やしたテスト(4KiB Q1T20)では、リードレートは1,450MB/secに達した。実利用でここまでの性能を引き出せるかはともかく、Optane SSD 800Pがランダムアクセス性能において非常に高いポテンシャルを持っていることが分かる。

▼58GBモデルのベンチマーク結果
58GBモデルの「4KiB Q1T20」テスト結果 (1GiB)
58GBモデルの「4KiB Q1T20」テスト結果 (32GiB)
▼118GBモデルのベンチマーク結果
118GBモデルの「4KiB Q1T20」テスト結果 (1GiB)
118GBモデルの「4KiB Q1T20」テスト結果 (32GiB)

118GBモデル2台によるRAID 0アレイの性能をチェック

 Skylake-XベースのCPUを搭載したIntel X299環境では、CPUが提供するPCI Expressレーンに接続されたSSDでRAIDアレイを構築する機能、VROC(Virtual RAID on CPU)が利用できる。

 今回は、このVROCを利用して、Optane SSD 800Pの118GBモデル2台でRAID 0アレイを構築したさいの性能をチェックする。

118GBモデル2台を搭載したASUS HYPER M.2 X16 CARD。RAIDアレイの検証では常に冷却機能を利用する

 VROCを利用するには、UEFI上でRAID構築に利用するPCI Expressスロットの設定が必要だ。RAIDアレイの構築はUEFI上とPC上のどちらでも可能だが、ブートドライブとして利用する場合にはUEFI上で構築すると良いだろう。

UEFI上でPCI Expressスロットの設定をVROCモードに変更して再起動する
UEFI上にVROC設定メニューが出現するので、ここでRAIDアレイを構築する

 今回の検証では、VROCで構築したRAID 0アレイの比較対象として、Windows 10が備えるダイナミックディスク機能を用い、RAID 0と同等の効果がある「ストライプ ボリューム」を作成した。

 実行したテストはCrystalDiskMark 6.0.0で、テーマカラーの設定は、VROCは緑、ストライプボリュームは青とした。

Intel VROCのベンチマーク結果 (1GiB)
ストライプボリュームのベンチマーク結果 (1GiB)
Intel VROCのベンチマーク結果 (32GiB)
ストライプボリュームのベンチマーク結果 (32GiB)

 ベンチマークの結果では、シーケンシャルアクセス性能がリード・ライトともに単体時の約2倍まで向上している一方、ランダムアクセス性能は「4KiB Q8T8」のライト性能が約2倍に向上したという結果を除けば大きな性能向上は見られず、逆にVROCでの「4KiB Q1T1」などは単体利用時の3割程度まで低下している。

 もっとも、これはディスク性能自体が低下したというわけではないようで、単体利用時にも実施したスレッド数を増やしてCPUのボトルネックを軽減する「4KiB Q1T20」でテストを実行すると、VROCならリード1,830MB/sec前後、ライト1,120MB/sec前後となり、2倍には届かないが単体利用時よりディスク性能が向上していることが分かる。

 ただし、ダイナミックディスク機能で作成したストライプボリュームは、同じ条件でリード2,400MB/sec超、ライト1,140MB/sec前後という、VROCを凌ぐ性能を発揮している。ブートドライブとして利用しないのであれば、ダイナミックディスクを利用した方が高い性能が得られるようだ。

Intel VROCの「4KiB Q1T20」テスト結果 (1GiB)
ストライプボリュームの「4KiB Q1T20」テスト結果 (1GiB)
Intel VROCの「4KiB Q1T20」テスト結果 (32GiB)
ストライプボリュームの「4KiB Q1T20」テスト結果 (32GiB)

容量の壁は高いがユニークな性能と高い耐久性は魅力的

 3D Xpointメモリを採用したOptane SSD 800Pは、驚異的なランダムリード性能と高い耐久性を持つユニークなSSDだ。単体で利用する場合58GBモデルは容量的に厳しいものがあるが、118GBモデルならシステムディスクとしては及第点といったところだ。

 単体では容量の少なさがネックとなる58GBモデルは、RAIDアレイの構築を前提とした時に「118GBモデルと同等の性能を持つ」という特徴が効いていくる。容量より速度を優先したいなら、多少安価な58GBモデルで台数を増やした方が費用対効果の面で優れるという訳だ。

 メインストリーム向けと呼ぶには厳しい容量の壁があるOptane SSD 800Pだが、ユニークな性能と高い耐久性はやはり魅力的なものである。そこに自分なりの用途を見出せるなら、ぜひとも試してみるべきだろう。