レビュー
ランダムアクセス性能が光るIntel製「Optane SSD 800P」
2018年3月15日 11:00
Intelは3月8日、記憶素子に「3D XPoint Memory」を採用したSSD「Optane SSD 800P」シリーズを発表した。今回、同シリーズ製品である58GBモデルと118GBモデルを両方借用する機会が得られたので、ベンチマークレポートをお届けする。
Optaneブランド初のメインストリーム向けSSD
Optane SSD 800Pは、3D Xpointメモリを採用したIntelの「Optane」ブランド初のメインストリーム向けSSD製品で、すでに発売済みのハイエンドSSD「Optane SSD 900P」の下位に位置する。
フォームファクタはM.2 2280で、端子形状はKey B+M。インターフェイスにPCI Express 3.0 x2、通信プロトコルはNVM Express(NVMe)を採用している。発表時点での製品ラインナップは58GBモデルと118GBモデルの2製品で、主なスペックは以下の通り。
【表1】Optane SSD 800Pの主なスペック | ||
---|---|---|
容量 | 58 GB | 118 GB |
フォームファクタ | M.2 2280 (22×80mm/B+M Key) | |
インターフェイス | PCI Express 3.0 x2 | |
プロトコル | NVMe | |
記録素子 | 3D XPoint | |
シーケンシャル・リード | 1,450MB/sec | 1,450MB/sec |
シーケンシャル・ライト | 640MB/sec | 640MB/sec |
ランダム・リード | 250,000IOPS | 250,000IOPS |
ランダム・ライト | 145,000IOPS | 145,000IOPS |
レイテンシ(リード) | 7μsec | 7μsec |
レイテンシ(ライト) | 18μsec | 18μsec |
MTBF | 160万時間 | |
書き込み上限数 | 365TBW | |
動作温度範囲 | 0~85 ℃ | |
保証期間 | 5年 | |
価格 | 129ドル | 199ドル |
3D Xpointメモリは高いランダムアクセス性能を特徴とする記憶素子であり、これを採用したOptane SSD 800Pは、実アプリケーションで多用されるQueue Depth (QD)が浅いランダムリードで高い性能を発揮するとされている。この点については後ほどベンチマークテストでチェックしてみたい。
また、3D Xpointメモリは耐久性の面でも優れており、Optane SSD 800Pの総書き込みバイト数(TBW)は2モデルとも365TBに達している。これは、耐久性の高い3D TLC NANDを採用したIntel SSD 760Pシリーズの512GBモデル(288TB)を凌ぐもので、3D Xpointメモリの書き換え耐久性の高さが伺えるスペックだ。
テスト環境
今回、Optane SSD 800Pをテストするにあたって、10コア20スレッドCPU「Core i9-7900X」と、Intel X299チップセット搭載マザーボード「ASUS ROG RAMPAGE VI EXTREME」を用意した。
このX299環境に4基のM.2スロットを増設する拡張カード「ASUS HYPER M.2 X16 CARD」を追加し、Optane SSD 800Pをこのカードに搭載した状態でテストする。
なお、HYPER M.2 X16 CARDは大型ヒートシンクと冷却ファンを備えているが、SSD冷却機能を持たない通常のM.2 スロットで使用した場合を想定し、ヒートシンクと冷却ファンを利用しない場合のデータも取得する。
【表2】テスト機材一覧 | |
---|---|
CPU | Intel Core i9-7900X |
マザーボード | ASUS ROG RAMPAGE VI EXTREME (UEFI: 1102) |
メモリ | DDR4-2666 4GB×4 (19-19-19-43、1.2V) |
GPU | GeForce GTX 1080 8GB |
システム用ストレージ | CFD CSSD-S6T240NTS2Q (240GB SSD/SATA 6Gbps) |
M.2 拡張カード | ASUS HYPER M.2 X16 CARD |
電源 | 玄人志向 KRPW-TI700W/94+ (700W 80PLUS Titanium) |
グラフィックスドライバ | GeForce Game Ready Driver 391.01 |
OS | Windows 10 Pro 64bit (Ver 1709 / build 16299.251) |
電源設定 | 高パフォーマンス |
室温 | 約28℃ |
単体利用時の性能をチェック
Optane SSD 800Pを単体で利用したさいの性能から確認していく。
利用したベンチマークソフトは「CrystalDiskMark 6.0.0」で、テストファイルサイズ1GiBと32GiBの設定でベンチマークを実行した。
また、今回はASUS HYPER M.2 X16 CARDの冷却機能利用の有無により2パターンのデータを取得しており、冷却機能を使わない場合はCrystalDiskMarkのテーマカラーを「緑」、冷却機能を利用した場合は「青」に設定している。
ベンチマークの結果では、スペックが示す通り58GBモデルと118GBモデルのパフォーマンスがほぼ同等であり、シーケンシャルアクセス性能についてもリード1,450MB/sec、ライト640MB/secというスペック通りの結果となっている。
また、ASUS HYPER M.2 X16 CARDの冷却機能を利用したことで大きく性能が改善したという結果は見られていない。ベンチマーク中のSSD温度をHWiNFO64で測定した結果によれば、冷却機能の利用によりSSDのピーク温度は27℃も低くなっており、冷却の効果は明らかだが、今回の条件ではSSD単体の利用でもサーマルスロットリングによる性能への影響は生じなかったようだ。
さて、Optane SSD 800Pシリーズの強みとされるQueue Depthの浅い場合のランダムリード性能を示す「4KiB Q1T1」の結果に注目してみると、両モデルとも最大190MB/sec程度と一般的なNANDフラッシュを採用したM.2 SSDより高速な結果を記録している。
ただし、これはCPUのシングルスレッド性能がボトルネックとなった結果であり、ベンチマークの設定を変更してスレッド数を20に増やしたテスト(4KiB Q1T20)では、リードレートは1,450MB/secに達した。実利用でここまでの性能を引き出せるかはともかく、Optane SSD 800Pがランダムアクセス性能において非常に高いポテンシャルを持っていることが分かる。
118GBモデル2台によるRAID 0アレイの性能をチェック
Skylake-XベースのCPUを搭載したIntel X299環境では、CPUが提供するPCI Expressレーンに接続されたSSDでRAIDアレイを構築する機能、VROC(Virtual RAID on CPU)が利用できる。
今回は、このVROCを利用して、Optane SSD 800Pの118GBモデル2台でRAID 0アレイを構築したさいの性能をチェックする。
VROCを利用するには、UEFI上でRAID構築に利用するPCI Expressスロットの設定が必要だ。RAIDアレイの構築はUEFI上とPC上のどちらでも可能だが、ブートドライブとして利用する場合にはUEFI上で構築すると良いだろう。
今回の検証では、VROCで構築したRAID 0アレイの比較対象として、Windows 10が備えるダイナミックディスク機能を用い、RAID 0と同等の効果がある「ストライプ ボリューム」を作成した。
実行したテストはCrystalDiskMark 6.0.0で、テーマカラーの設定は、VROCは緑、ストライプボリュームは青とした。
ベンチマークの結果では、シーケンシャルアクセス性能がリード・ライトともに単体時の約2倍まで向上している一方、ランダムアクセス性能は「4KiB Q8T8」のライト性能が約2倍に向上したという結果を除けば大きな性能向上は見られず、逆にVROCでの「4KiB Q1T1」などは単体利用時の3割程度まで低下している。
もっとも、これはディスク性能自体が低下したというわけではないようで、単体利用時にも実施したスレッド数を増やしてCPUのボトルネックを軽減する「4KiB Q1T20」でテストを実行すると、VROCならリード1,830MB/sec前後、ライト1,120MB/sec前後となり、2倍には届かないが単体利用時よりディスク性能が向上していることが分かる。
ただし、ダイナミックディスク機能で作成したストライプボリュームは、同じ条件でリード2,400MB/sec超、ライト1,140MB/sec前後という、VROCを凌ぐ性能を発揮している。ブートドライブとして利用しないのであれば、ダイナミックディスクを利用した方が高い性能が得られるようだ。
容量の壁は高いがユニークな性能と高い耐久性は魅力的
3D Xpointメモリを採用したOptane SSD 800Pは、驚異的なランダムリード性能と高い耐久性を持つユニークなSSDだ。単体で利用する場合58GBモデルは容量的に厳しいものがあるが、118GBモデルならシステムディスクとしては及第点といったところだ。
単体では容量の少なさがネックとなる58GBモデルは、RAIDアレイの構築を前提とした時に「118GBモデルと同等の性能を持つ」という特徴が効いていくる。容量より速度を優先したいなら、多少安価な58GBモデルで台数を増やした方が費用対効果の面で優れるという訳だ。
メインストリーム向けと呼ぶには厳しい容量の壁があるOptane SSD 800Pだが、ユニークな性能と高い耐久性はやはり魅力的なものである。そこに自分なりの用途を見出せるなら、ぜひとも試してみるべきだろう。