パソコン工房新製品レビュー

9万4,800円でCore i5など充実装備のノートPC「STYLE-15FH123-i5-UXSX」

STYLE-15FH123-i5-UXSX

 パソコン工房を展開するユニットコムより、15.6型ノートPC「STYLE-15FH123-i5-UXSX」が発売された。価格は9万4,800円で、同社のラインナップの中でもコストパフォーマンスの高い一般用途向けの製品となる。

 本機はスタンダードノートPCのカテゴリに含まれる製品ではあるが、CPU内蔵グラフィックスのIris Xe Graphicsは高性能で、軽いゲームならプレイできるとしている。

 こういったタイプのモデルは安かろう悪かろうではないかという心配もあるだろう。今回は実機をお借りしたので、さまざまな角度からチェックしてみたい。

16GBメモリや500GB SSDなど充実した構成

 「STYLE-15FH123-i5-UXSX」のスペックは下記の通り。

【表1】STYLE-15FH123-i5-UXSX
CPUCore i5-1235U
(2-Pコア+8-Eコア/12スレッド、Pコア4.4GHz+Eコア3.3GHz)
GPUIris Xe Graphics(CPU内蔵)
メモリ16GB DDR4-3200(8GB×2)
SSD500GB(M.2 NVMe)
光学ドライブDVDリーダーライター
ディスプレイ15.6型非光沢液晶(1,920×1,080ドット)
OSWindows 11 Home
汎用ポートUSB 3.1 Type-C(USB PD対応)、USB 3.0×2、USB 2.0
カードスロットSDXC
映像出力HDMI、ミニD-Sub15ピン
無線機能Wi-Fi 6、Blunetooth 5
有線LANGigabit Ethernet
その他前面100万画素カメラ、内蔵マイク、ヘッドフォン端子、マイク端子など
本体サイズ約361×256×31.5mm
重量約2.08kg
価格9万4,800円

 CPUは10コア20スレッドのCore i5-1235U。メインメモリは16GB、ストレージはM.2 NVMe接続の500GBと、スタンダードノートPCのカテゴリとしてはそれぞれ十分な性能と容量を備えている。

 最近のノートPCとしては珍しく、光学ドライブを搭載している。なお、本製品DVD-RAMには対応していない。

 ディスプレイは15.6型のフルHD、ネットワーク周りはGigabit EthernetとWi-Fi 6。USBはType-C(USB PD対応)が1基とType-Aが計3基で、SDカードリーダも搭載。映像出力はHDMIのほかにミニD-Sub15ピンも用意されている。一般に必要とされそうなものを片っ端から搭載している印象だ。

 機能が豊富なこともあってか、重量は約2.08kgとやや重め。それでも価格は10万円を切る設定になっており、スペック的にはかなりお買い得感がある。

 カスタマイズにも対応している。性能に関わる部分では、SSDは最大1TB、メモリは最大64GBに増量できる。それ以外では、天板にある「iiyama」のロゴを省くというオプションがあるのがユニーク。

 メーカーとしてのアイデンティティを失いそうな気もするが、まったく意匠のない天板にはニーズはがありそうだ。なお液晶下部の「iiyama」ロゴは外せない。

軽めの3Dゲームは動かせる

 次に実機のパフォーマンスをチェックする。ベンチマークテストに利用したのは、「PCMark 10 v2.1.2574」、「3DMark v2.25.8056」、「Cinebench R23」、「CrystalDiskMark 8.0.4」。

 本機にはカスタマイズツール「Control Center 3.0」がプリインストールされており、動作モードの切り替えができる。設定は標準の「エンターテイメント」のほか、「パフォーマンス」、「静音」、「省電力」の計4つが選べる。試用機の初期設定では最も性能を引き出せる「パフォーマンス」となっていたが、テストは4つのモードすべてで実施した。

「Control Center 3.0」で動作モードを選べる
【表2】ベンチマークスコア
動作モードパフォーマンスエンターテイメント静音省電力
PCMark 10 v2.1.2574
PCMark 104,9094,9231,6303,130
Essentials9,1069,1434,5257,898
Apps Start-up score10,94511,0584,54010,992
Video Conferencing Score7,9057,9066,2476,554
Web Browsing Score8,7298,7453,2676,840
Productivity6,8696,9282,6806,127
Spreadsheets Score6,6796,6532,2605,277
Writing Score7,0657,2153,1807,114
Digital Content Creation5,1335,1139701,720
Photo Editing Score7,8877,9081,5662,764
Rendering and Visualization Score3,0933,053394826
Video Editing Score5,5445,5391,4812,230
Idle Battery Life6時間27分---
Gaming Battery Life1時間17分---
3DMark v2.25.8056 - Time Spy
Score1,3171,298124371
Graphics score1,1631,164111334
CPU score5,3733,7773701,041
3DMark v2.25.8056 - Fire Strike
Score3,5443,3839791,011
Graphics score3,8713,8951,1781,218
Physics score13,41513,1793,8133,419
Combined score1,2951,092290304
3DMark v2.25.8056 - Wild Life
Score9,4799,4246222,647
3DMark v2.25.8056 - Night Raid
Score11,65911,1311,1433,467
Graphics score13,81113,8151,4484,306
CPU score6,1925,2995221,649
3DMark v2.25.8056 - CPU Profile
Max threads2,7753,034204602
16-threads2,9582,967172598
8-threads2,3112,094212609
4-threads1,8101,592214574
2-threads1,4781,319227505
1-thread90485990433
Cinebench R23
CPU(Multi Core)6,802pts5,312pts603pts1,557pts
CPU(Single Core)1,678pts1,601pts455pts950pts

 CPUのパフォーマンスは、シングルスレッドがなかなか良好だが、スレッド数が増えると排熱処理にやや問題が見えてくる。

 「3DMark」の「CPU Profile」によると、1スレッド時にはCPUクロックが4~4.4GHz辺りで推移しているが、2スレッド時には3.6GHz前後、最大スレッドでは2.8GHz前後に落ちる。冷却力がもう一息ほしいところだ。

 動作モードを変更すると、「エンターテイメント」ではわずかな性能低下に留まるが、「静音」と「省電力」では劇的に性能が下がる。

 特に「静音」だと10分の1未満まで落ちることが多く、実使用時にも動作のもたつきが顕著だ。ただ「パフォーマンス」時でもファンの騒音は小さく、強いて設定変更が必要な場面は少ないだろう。

 グラフィックス周りは、ディスクリートGPUを搭載したモデルには劣るものの、軽めの3Dゲームであれば動作する性能はある。

 GPUクロックも仕様上で最高の1.2GHz程度まで上がっている時が多く、パフォーマンス的にも問題はなさそうだ。その分、CPUのクロックが上がりづらいという面はあるかもしれない。

 バッテリ駆動時間は、アイドル時で約6時間半、ゲーミングで1時間強といったところ。極端な高負荷でなければバッテリはそれなりに持つので、ちょっとした外出に持ち出す程度なら問題なく使えそうだ。

 SSDはIntel(現Solidigm)製の「SSDPEKNU512GZ」が使われていた。QLC NANDを採用したエントリークラスの製品だが、シーケンシャルリードで3GB/sを超えるなど十分に実用的な性能を発揮している。スタンダードノートPCとしては十分過ぎるほど高速だ。

CrystalDiskMark 8.0.4

使い勝手を重視した無骨なデザイン。多彩な端子類も特徴

フラットな天板にロゴのみのシンプルなデザイン

 続いて実機を見ていく。筐体は全体がマットブラックで、天板とディスプレイの下部に「iiyama」のロゴがあるほかは目立つデザインはない。天面はフラットで、無難なデザインだ。

 ディスプレイを畳んで手に持つと、底面のバッテリ部分が少し膨らんでおり、ここがちょうど手にかかって持ちやすい。2kg程度の重量も、手で持つ分には特に気になるほどではなく、取り回しはいい。筐体のたわみもなく、剛性は十分ある。

 ただ天板に関しては、押すと簡単にへこんでしまう。ディスプレイを開いた状態でねじる動きにもたわみやすいので、天板への衝撃や圧迫にはある程度気配りが要りそうだ。

 15.6型のディスプレイは、明るさはかなり強く、100%にするとまぶしいほど。逆に0%にするとかなり暗くできるので、好みの明るさに調整したい人には向いている。

 色味は全体的に白っぽさがあり、コントラストが足りないように感じるが、発色は悪くない。視野角は上下方向に傾けると色相反転があり、上下の角度が正面からずれると明るさが著しく変化する。左右に関しては影響は小さいが、基本的には正面から1人で使うものと思った方がいい。残像感は少なく、動画やゲームの視聴に違和感はない。

ディスプレイは十分に明るい
視野角は特に上下が狭く、色相反転も見られる

 キーボードはテンキーありのアイソレーションタイプ。ストロークはノートPCなりに浅いが、弱めのクリック感があり手ごたえは良好。スペースキーなど長めのキーを端押ししても違和感なく押下される。

 キー配置はオーソドックスなもの。キートップの形状はテンキーなど一部のキーが縦に少し潰されているが、アルファベットキーや方向キーなどは正方形が保たれており、ブラインドタッチにも支障がない。キートップは強めのシボ加工でザラザラとした感触。筆者としては好感触だが、好みが分かれるかもしれない。

キーボードはテンキーあり。配置はオーソドックスで無理がない
タッチパッドはボタン独立型

 端子類は、左側面に電源端子、Gigabit Ethernet、ミニD-Sub15ピン、USB Type-C(USB PD対応)、HDMI、USB 3.0と豊富に並ぶ。右側面はDVDリーダーライターが広い場所を取るが、手前側にヘッドフォン端子、マイク端子、USB 3.0、USB 2.0がある。SDカードスロットは前面の左側に用意されている。

左側面は電源端子、Gigabit Ethernet、ミニD-Sub15ピン、USB Type-C(USB PD対応)、HDMI、USB 3.0
右側面はヘッドフォン端子、マイク端子、USB 3.0、USB 2.0、DVDリーダーライター
背面はバッテリが搭載されており端子類はない
前面右側にインジケータがあり、その下にSDカードスロットがある
底面は吸気用のスリットがある。手前の小さなスリットはスピーカー

 スピーカーは底面の左右に1基ずつ配置。安価なノートPCは高音が響くだけの耳障りな音になりがちだが、本機は高音を出すぎない程度に抑えつつ、低音もできるだけ自然に聴かせようというバランス調整がうまくできている。根本的なスピーカーサイズが小さいので音質は軽く、音楽を聴くのに向くとは言えないが、人の声は聞き取りやすく、普段使いで自然に聞けるよう上手に音を出している。

 エアフローは、底面吸気、左側面排気。低負荷時にはほぼ無音で、高負荷になるとファンが周ってやや高めの風切り音が出る。ただ音量はかなり小さく、静かなオフィスや教室などで一時的に高負荷になったとしても、まず気になることはないだろう。キートップへの熱伝導も、高負荷時に中央上部が若干温まる程度で、ほぼ全域が快適に保たれている。

 ACアダプタは45W出力。最近はUSB Type-Cを採用するものも多いが、本機は専用のACアダプタとなっている。ACアダプタ部はコンセント直結ではなく、ケーブルの途中にある形。出力なりの小型サイズではあるので、持ち運びに邪魔にはならないだろう。

 なお、USB Type-CポートはUSB PD対応となっており、45W以上の充電器を用意すれば、充電できる。

ACアダプタは45W出力でかなり小型

1台でほぼ何でもこなせるノートPCを安価に

 円高や半導体不足など、さまざまな要因でPCが高値で推移する中、10万円を切る低価格でCore i5-1235Uや16GBのメモリ、500GBのM.2 NVMe接続SSDなど、割と贅沢なスペックを確保している。スペック的にかなりコストパフォーマンスが高い。

 その上で実際に使ってみて、安っぽさが目立つのではと心配したが、特にそういう印象はなかった。筐体の質感が悪いわけではないし、キーボードの打鍵感も悪くない。高級感があるとは言わないが、ごく普通のノートPCだなと思う。

 気になる部分はディスプレイの視野角の低さで、視聴位置が正面から外れた時の違和感はかなり大きい。1人で使う分にはさほど気にならないので、この点は値段なりと割り切って考えた方がいいだろう。

 それ以外の部分は、特に不満はない。端子類が充実しているのは確かで、USB Type-Cも搭載しているし、microではないSDカードも挿入できる。別途再生ソフトを用意すれば、DVDリーダーライターでDVDの視聴も可能。

 普通の人はもはや存在も知らないであろうミニD-Sub15ピンを搭載した是非はあるが、昔のプロジェクタを使いまわしたいなどのニーズに比較的安価に対応できるなら悪くはない。

 CPUの冷却不足も全コアをフルで回すような高負荷を続けた際に差が見えるだけで、普段使いには十分な性能を発揮している。45W出力のACアダプタでまかなえる性能として考えれば上等だ。

 総合的に見て、やはりコストパフォーマンスの高さに異論をはさむ余地はない。本製品は安価に幅広く使える1台と言っていいだろう。