PC Watch Selection

Photoshopで約4億画素の超高精細写真編集や、4千枚のRAW写真を使ったPremiereでの動画製作で検証

~マウスコンピューターのクリエイター向け超ハイエンドノート「DAIV-NG7700U1-M2SS」

本企画では、各種ゲームやクリエイティブなど、用途を絞った検証を行なう。評価にあたってはPC Watchによる評価・性能測定に加え、その道におけるプロにも製品を試用していただき、十分な性能が得られることを確認してもらい、対象製品がその用途において推奨に値するものだとPC Watchが太鼓判を押す
マウスコンピューター「DAIV-NG7700シリーズ」

 「DAIV-NG7700シリーズ」はマウスコンピューターがクリエイター向けパソコンブランド「DAIV」より販売している17.3型ノートPC。CPUにデスクトップPC用の第9世代(Coffee Lake Refresh)の「Core i9-9900K」、外部グラフィックスに「GeForce RTX 2080(8GB)」を搭載し、さらにAdobe RGB比100%を謳う17.3型4Kディスプレイが組み合わされている。まさにDAIVシリーズのフラッグシップにふさわしいスペックだ。

 今回マウスコンピューターより「DAIV-NG7700シリーズ」の最上位モデル「DAIV-NG7700U1-M2SS」(474,800円)を評価した。本記事では通常の使い勝手、AV品質、性能チェックに加えて、実際に本製品を試用したプロカメラマンの鹿野宏氏によるレポートもお届けする。

 標準構成モデルとしては、16GBメモリ/512GB PCIe NVMe SSDを搭載する「DAIV-NG7700S1-M2S5」(384,800円)、32GBメモリ/1TB PCIe NVMe SSDを搭載する「DAIV-NG7700M1-M2S10」(414,800円)、32GBメモリ/512GB PCIe NVMe SSD×2を搭載する「DAIV-NG7700H1-SS-BRAW」(424,800円)、64GBメモリ/512GB PCIe NVMe SSD(Samsung PM981)×2を搭載する「DAIV-NG7700U1-M2SS」(474,800円)の4製品がラインナップされている。

 メモリ、ストレージ、無線LANをカスタマイズ可能で、メモリは16GB/32GB/64GB、ストレージは500GB/1TB/2TB HDD、500GB/960GB/1TB/2TB SSD(SATA)、512GB/1TB/2TB SSD(NVMe)、無線LANは最大433Mbps対応/最大1.73Gbps対応から選択できる。ストレージはM.2形状SSDを2基、2.5インチ形状SSDを2基搭載できるので、最大8TBのストレージ容量を実現できる。

本体天面(下がヒンジ側)
本体底面(上がヒンジ側)。左下にあるのは取り外し可能なバッテリ。バッテリが経年劣化しても、バッテリのみをマウスコンピューターより入手できる
本体前面。向かって右側にステータスLED(バッテリ、電源ランプ)が配置されている
本体背面。中央のくぼみ部分にHDMI×1、Mini DisplayPort×2、電源端子が用意されている。左右にあるのは排気口だ
本体右側面。左からライン入力×1、マイク入力×1、ライン出力×1、ヘッドフォン出力・S/PDIF×1、USB 3.0 Type-A×2、ケンジントンロックを装備
本体左側面。左からGigabit Ethernet×1、USB 3.1 Type-C×2(左側はThunderbolt 3と共用)、USB 3.0 Type-A×2(右側は常時給電対応)、SDメモリカードスロット(UHS-II、SDXC対応)×1が配されている
ディスプレイ面。ディスプレイ上部にはWebカメラ、Webカメラインジケーター、アレイマイク×2が内蔵されている
キーボード面。キーボードはテンキー付き。タッチパッドはホームポジションに合わせて左寄りに配置されている
電源ボタンはヒンジ側に設置。その手前にはステータスLED(アクセスランプ、機内モード、スクロールロック、Capsロック、Numロック)が内蔵されている

 筐体は強化プラスチック製で、サイズは418×295.3×41.5mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約4.4kg。一般的なノートPCと比べればズシリと重たく感じるが、本製品と比較するべきはデスクトップPC。「Core i9-9900K」と「GeForce RTX 2080(8GB)」の性能を持ち運べると考えれば、納得できるサイズと重量感だ。

 インターフェイスはUSB 3.1 Type-C×2(内1ポートはThunderbolt 3と共用)、USB 3.0 Type-A×4(内1ポートは常時給電対応)、HDMI×1、Mini DisplayPort×2、ヘッドフォン出力兼S/PDIF×1、マイク入力×1、ライン入力×1、ライン出力×1、SDメモリカードスロット(UHS-II、SDXC対応)×1と豊富に用意されている。

 外付け高速ストレージを接続するためにThunderbolt 3端子が、高速メモリカードを読み書きするためにUHS-II対応メモリカードスロットが採用されている点は、クリエイター向けノートPCとしてスキのない仕様だ。

 また、ディスプレイ用端子としてHDMI×1、Mini DisplayPort×2が搭載されているので、本体と合わせて最大4画面のマルチディスプレイ環境を構築できる。VRヘッドセットを接続するさいにも映像端子が足らなくて困ることはない。

 本製品を屋外で使うことは基本的に少ないと思うが、バッテリ駆動でも最大約2.2時間は動作する。ただし、ACアダプタを接続していなければフル性能を発揮できないので、基本的には非常電源と捉えておくべきだろう。

プロ仕様の写真現像・動画編集に活用できる広色域ディスプレイ

 本製品にはAdobe RGB比100%を謳う4Kディスプレイ(3,840×2,160ドット、255ppi、LEDバックライト、非光沢)が標準搭載されている。写真現像・動画編集で正しい色を取り扱えるように、広色域の液晶パネルが採用されているわけだ。ちなみに本製品には工場出荷時にパネルの色域を実測した「色域出荷データシート」が同梱されている。

 実際の色域をディスプレイキャリブレーション機器「i1Display Pro」と色度図作成ソフト「ColorAC」で確認してみたが、sRGBカバー率は99.9%、sRGB比は141.4%、Adobe RGBカバー率は99.3%、Adobe RGB比は104.8%とほぼスペック通りの色域を確認できた。

 カラープロファイルを「ColorAC」に読み込んださいに「注意 : このICCプロファイルのLUT Greenにクリップ(値が飽和)の可能性が見られます」という警告メッセージが表示されたので、厳密には正確な色域を計測できていない可能性がある。しかし、それを考慮しても「DAIV-NG7700シリーズ」に搭載されている4K液晶ディスプレイが、プロ仕様の写真現像・動画編集に活用できる広色域を備えていることは間違いない。

本製品にはAdobeRGB比100%を謳う4Kディスプレイ(3,840×2,160ドット、255ppi、LEDバックライト、非光沢)が標準で搭載
実測したsRGBカバー率は99.9%、sRGB比は141.4%
実測したAdobe RGBカバー率は99.3%、Adobe RGB比は104.8%
ステレオスピーカーはキーボード奥の特等席に内蔵されている
YouTubeで公開されている「前前前世 (movie ver.) RADWIMPS MV」を最大ボリュームで再生したさいの音圧レベルは最大76.0dBA(50cmの距離で測定)

キーボードの打鍵感は良好、打鍵音も低め

 「DAIV-NG7700シリーズ」に搭載されているキーボードは、107キーの日本語仕様で、キーピッチは約18.4mm、キーストロークは約2mm。筐体サイズから考えるとキーストロークは少々浅く感じるが、剛性はしっかりと確保されており打鍵感も良好だ。

 意外だったのは打鍵音がかなり低めに設定されていること。サイズやデザインからゲーミングノートPCのキーボードのような打鍵音をイメージしていたが、よほど強くタイピングしないかぎりは甲高い音は鳴らない。一般的なノートPCと同等の静粛性を備えていると言える。

 ゲーミングノートPCのように色はカスタマイズできないが5段階で明るさを調整可能なキーボードバックライトを装備し、生体認証としてはWindows Hello対応の指紋認証センサーがタッチパッド左上に内蔵されている。DAIVシリーズのフラッグシップモデルだけに入力デバイスに妥協はない。

キーピッチは約18.4mm、キーストロークは約2mm
テンキーを搭載しているためにホームポジションは左寄りだが、ボディ自体が大きいので違和感はない
5段階で調整できるキーボードバックライトを内蔵。ただし色は変更できない
タッチパッド左奥にWindows Hello対応の指紋認証センサーを内蔵。パスワードの入力は不要だ

インタビュー ~プロフェッショナルから見た「DAIV-NG7700シリーズ」の魅力

事前に「DAIV-NG7700U1-M2SS」をプロカメラマンの鹿野宏氏に仕事で使っていただき、その使用感をインタビュー形式で伺った

――まずは鹿野さん(以下敬称略)の活動内容からお聞かせいただけますか

鹿野 もともと静止画のカメラマンとして活動を開始しましたが、デジタルはかなり早い時期からはじめています。デジタルカメラは動画も扱えるので、動画の仕事も増えていきました。最近制作する機会が多いのがタイムラプス動画です。普通の写真も撮っていますが、3億画素を上回る超高精細画像なども手がけています。

――なぜマウスコンピューターの製品を使うようになったのですか?

鹿野 通常の解像度の写真を扱うなら、前から使っているMacBook ProのLate 2013でいまでも支障はなにもないのですが、大量の写真を現像したり、超高精細画像を編集するさいには、やはり動きが引っかかるんですね。そこでもう1台マシンを追加するために候補を探していたときに「Windowsで自作」ということも考えたんですが、持ち歩きたかったんです。

 ほしいスペックに近い製品はいくつかありましたが、すごく高かったり、いらない機能があったり。そこでBTOをやっているマウスコンピューターさんに1台貸してほしいとお願いしたんです。

 実際に使ってみたら、タワー型に近い性能を持っていることがわかりました。最終的にどれを買うか悩んでいたときに新型の「DAIV-NG7510」が発売されたんです。最新のCPU、32GBのメモリ、デスクトップと同じぐらい強力なグラフィックス、M.2 NVMe SSDというスペックをリクエストしたけど、TB3も40万円ちょっとに収まりました。ほかのメーカーさんではこの値段は出なかったです。

――タイムラプス動画はどのように作るんでしょうか

鹿野 昼から夜まで星が上がってくるところなどを延々と撮影して、それをすべてつなげて、1本の動画に仕上げます。今回はパナソニックの「DC-S1R」で撮影しました。1枚あたり約5,000万画素のRAWデータです。全部で4,000カットありますが、これを2パターン書き出します。1つは昼から日が陰っていくまでを昼用の色味にチューニングしたもの、もう1つは深夜用にチューニングしたもので、まずはJPEGデータで書き出します。

ずらりと並ぶタイムラプス用の膨大な撮影データ。明るさや色の調整は「Lightroom」でRAWデータから書き出す時点で済ませておくとのこと
画質はJPEGの「60」、カラースペースは「sRGB」を選択して「書き出し」を実行する

鹿野 一通り調整が終わったら「書き出し」を実行しますが、「DAIV-NG7700U1-M2SS」(以下NG7700)なら40、50分ぐらいで全部終わっちゃいます。自分で買ったDAIV-NG7510は、NG7700のプラス30%ぐらい時間がかかりましたね。

 JPEGファイルが書き出されたら「Premiere」に読み込みます。私のタイムラプス動画は、普通の動画と違って差分で動かすようなことはしていなくて、全部が真正の1枚ずつの写真で、全部の写真に対して、前後のコマでクロスディゾルブをかけているんですね。動きを滑らかにするための手法ですが、これは結構CPUパワーが食われる処理です。

 この4Kタイムラプス動画の書き出しですが、昔のMacBook Proだと1時間以上かかりましたが、NG7700では22分24秒で終了しました。形式はMPEG4で、ビットレートはターゲットが30Mbps、最大60Mbpsです。最終的な納品形態が決まるまでは、最高品質、最大深度、最大レンダリング設定で書き出すようにしています。

どのような納品形態にも対応できるように最高品質、最大深度、最大レンダリング設定で書き出しているとのこと

――つぎは超高精細写真の制作についてお聞かせください。超高精細写真は具体的にはどのぐらいの解像度なんですか

鹿野 だいたい長辺2万ぐらいからなので、画素数では2億画素ぐらいからを超高精細と呼んでいます。文化財や絵画を保存するのに足りる画素数として、大体2億画素が基準になっていますね。

超高精細写真の編集画面。5,000万画素の画像がタイル状に20枚配置されている。この絵は約3億8,000万画素ぐらいで作られているとのこと ※これらの画像は千住博画伯のご厚意で掲載の許諾をいただいています。複製、転載は禁止させていただきます

 これは「20面タイリング」の超高精細写真です。ソニー「α7R III」で撮影しました。1枚の大きな絵を、カメラをずらしながら撮影しているんですね。

 私の場合はあらかじめイメージサークルの大きな絵……昔のポラロイドよりもちょっと大きいぐらいの12×6cmの画像を作っておいて、つまり1枚の大きく写っている絵を細かく分割して撮影して、それをまたビルドアップするという方法を使っています。

合成された写真を400%に拡大表示したもの

鹿野 これは最終的に合成した画像なのですが、100%表示ではどこでつなぎ合わせたのか見破れる人に会ったことはないです。というか自分自身でもわかりません(笑)。

 「マルチショット」といって、1ピクセルずつイメージセンサーをずらしながら4回撮影しているので、各ピクセルにRGBの正しい情報が全部記録されています。いわゆる演算で作った色とは異なり、本来の色、形で写っていて、偽色もほとんど出ないんですね。200%で見ていただいてもまずわからないと思いますし、400%で見てちょっとボケていると気づく人がいるかもしれないというレベル。

 この画像をつなぎ合わせるのは神経衰弱のような作業なのですが、3面タイリングとか4面タイリングまでは古いMacBook Proでもできていましたが、この20面タイリングになるとさすがに無理です。

 Photoshopの処理には、CPU速度に依存するものと、キャッシュアクセス速度に依存するものの2パターンがあります。GPUはそこそこの性能のものでいいんですが、CPUが速いことと、ディスクアクセスが速いことは必須条件です。当然メモリも重要。仮想メモリが使われた時点でドンッとスピードが落ちてしまいますから。

――マウスコンピューターのノートPCを導入してなにが変わりましたか

鹿野 いまはWindowsとMacの2台を持っているおかげで、重いバッチ処理的な長い仕事は全部Windowsでやって、つねに手作業が発生する仕事だけ手元のMacBookでやっています。そうやって2台を使うことで、いままで寝る時間が3時間しかなかったのが、6時間ぐらいは寝られるようになりました。これとっても大きいです。寝る時間ができてからミスが減りましたから!(笑)

 正直言ってWindowsというOSには、フォルダーごとの容量を表示してくれないとか、文字がすごく見にくいとかいろんな不満がありますが、Apple製品と違って自由度が高くて、いろんなメーカーが参入しているので、自分が求めているスペックのマシンにたどり着くことができました。

 クリエイターはみんなそうだと思いますが、とにかく素のマシンで、ストレージ容量がでかくて、CPUが速くて、GPUもいいマシンがほしいんですね。メモリも、予算さえあれば上限まで積みたいと誰もが望むと思います。

 かといって「100万円!」とか言われたら困りますが(笑)。そのへんのバランス感が、私がマウスコンピューターを選んだ最大の理由です。

クリエイター向け、ゲーミング向けノートPCとして突出した処理性能

 今回は編集部にて下記のベンチマークを実施した。

【表2】ベンチマーク結果
ベンチマークスコア
PCMark 10 v2.0.2115
PCMark 10 Score7387
3DMark v2.8.6578
Time Spy9272
Fire Strike Ultra5709
Fire Strike Extreme10870
Fire Strike20234
Sky Diver44810
Night Raid49956
Cloud Gate47794
Ice Storm Extreme148067
Ice Storm156419
CINEBENCH R20.060
CPU4389 pts
CPU(Single Core)492 pts
SSDをCrystalDiskMark 6.0.2で計測
Q32T1 シーケンシャルリード3449.176 MB/s
Q32T1 シーケンシャルライト2020.017 MB/s
4K Q8T8 ランダムリード1017.194 MB/s
4K Q8T8 ランダムライト1611.877 MB/s
4K Q32T1 ランダムリード388.487 MB/s
4K Q32T1 ランダムライト334.451 MB/s
4K Q1T1 ランダムリード43.747 MB/s
4K Q1T1 ランダムライト119.380 MB/s
Adobe Premiere Pro CCで実時間5分の4K動画を書き出し
3,840×2,160ドット、30fps5分18秒03
BBenchにより連続動作時間を計測(ディスプレイの明るさ40%、電源モード:高性能)
バッテリ残量5%まで1時間47分50秒

 デスクトップPC用プロセッサ「Core i9-9900K」と最新グラフィックス「GeForce RTX 2080(8GB)」を組み合わせているだけに、その性能はノートPCとして規格外だ。PCMark 10の総合スコアでは「4K gaming PC」の参考スコア「5005」の約1.48倍に相当する「7387」、3DMarkのTime Spyでは「4K gaming PC」の参考スコア「6733」の約1.38倍に相当する「9272」を記録。本製品は3D性能も非凡な処理性能を備えていると言える。

 これだけの処理性能を備える本製品は発熱もすごいだろうと予想していたが、「CINEBENCH R15.0」のCPUを5回連続で実行したさいのキーボード面の最大温度は37.2℃、底面の最大温度は40.3℃と、むしろ一般的なモバイルノートPCより低めに抑えられていた。もちろん高負荷時には冷却ファンが勢いよく回転しているが、安定して高性能を発揮するために効率的に排熱されており、その結果本体表面温度も低く抑えられているようだ。

キーボード面の最大温度は37.2℃
本体底面の最大温度は40.3℃
ACアダプタの最大温度は34℃

 以上のように、マウスコンピューター「DAIV-NG7700U1-M2SS」は、非常に重いデータを使ったPhotoshopやPremiere Proの編集作業を行なうのに十分な性能を持っていることを確認できた。

 ここに、同用途における本製品がPC Watch Selectionに値することを認定する。

本製品はLightroomおよびPremiere Proでの作業に遺憾なく性能を発揮することを認める