オンキヨー「DX1007A5」ファーストインプレッション
~1,366×768ドットの10.1型液晶をデュアル搭載


 12月10日に発表されたオンキヨーの「DX1007A5」は、1,366×768ドット液晶を2枚搭載するノートPCである。11月末に工人舎が同コンセプトの「DZ」シリーズを発表しているが、12月10日には工人舎とオンキヨーはノートPC分野などでの協業も発表しており、本製品がこの協業製品の第1弾だ。

 ハードウェアを見ると、工人舎のDZシリーズに比べてスペックの強化が行なわれている。工人舎DZシリーズから強化された点をまとめると、各液晶解像度が1,024×600ドットから1,366×768ドットへ、メモリ容量が1GBから2GBへ、HDD容量が160GBから320GBへ変更されている。ただし、工人舎DZシリーズが持っているワンセグチューナは備えていない。

 筆者はこのDX1007A5が発表された12月10日の16時過ぎに、ONKYO DIRECTで注文。12月23日の午後に自宅に到着した。もともと12月末からの出荷予定となっていたので、予告どおりといっていい。

 手元に届いて半日程度の使用なので簡単な内容には留まるが、本製品のファーストインプレッションを述べていきたい。

●写真で見る「DX1007A5」

 まずは本製品の外観上の特徴などを、写真と画面キャプチャで紹介する。

・2画面ディスプレイの様子

ONKYO DX1007A5のパッケージ。ONKYO DIRECTで注文したもので、送り状などは、この底面に貼り付けられていた1画面の状態。これでも1,366×768ドットの解像度を持つので、昨今のモバイルノートPCとしては標準的なスペックといえる2画面状態。左右のフレームを引っ張ることで裏側に収納されていた右側の画面を取り出せる(詳しくは動画を参照)。解像度は合計で2,702×768ドットとなるか、クローンもしくは拡張デスクトップでの利用のみなので、やはり“1,366×768ドットが2枚”と認識すべき
ホットキーユーティリティがインストールされているので、[Fn]+[F3]キーを押すことで画面をどのように使うか変更できる。外部ディスプレイを接続した場合は内蔵1画面+外部ディスプレイ1画面の構成に限定される。これは内蔵GPUのディスプレイ出力パイプラインがそもそも2系統しかないためWindows 7の画面の解像度からも、こうした画面設定を行なえる。解像度は間違いなく1,366×768ドットだヒンジ部は180度回転可能。写真では1画面状態で回転させているが、液晶部は独立した構造になっているので、2画面に展開した状態でも回転は可能
コンバーチブルタブレットPCのように液晶を表にして折りたためる。ただしタッチパネルの機能は備えていないもちろん折りたたんだ状態で2画面を表示させることもできる2画面へ展開した状態を後ろから見た様子。アルミと思われる底板が剥き出しになっており、ちょっと無骨な雰囲気である
折りたたんだ状態で画面を回転させることもできる。[Fn]+[F1]キー、もしくは画面横の画面回転ボタンを押すことで、画面の回転方向を指定できる2画面化させたときの中央のフレーム幅は、2cm弱といったところ。もちろん気にならないわけではないが、かなり狭く抑えられている印象を受ける
2枚の液晶は完全に平面にはならず、左側の液晶がやや傾いた向きとなる。ただ、本体の中心に向かって傾くので、使用しているときはほとんど気にならないし、むしろ自分の顔の方向に向いていることは好ましいと思う本体後方は、バッテリよりさらにせり出した足を持っている。液晶を2枚備えるため、重心が高くなる。液晶の重みによる本体の転倒を防ぐための設計だと思われる
液晶ディスプレイをさまざまに触ってみた様子。1画面から2画面へ、拡張デスクトップとクローンデスクトップの変更、タブレット形状への変更を行なっている

・キーボードやインタフェース周り

キーボードはいわゆるアイソレーションタイプのもの。タッチパッドはマルチタッチに対応しており、Synapticsのドライバにより2本指操作による拡大/縮小やページスクロール操作をサポートしているキーピッチは実測で17~18mmの間。公称は17.4mm。キーストロークは公称1.7mm。はっきりとした押下の抵抗があり、昨今の薄型ノートのキーボードよりは、やや強めにタッチしたほうが入力ミスを防げそうだ液晶ディスプレイの向かって右側には、上から画面回転ボタン、ブライトネス調整ボタン、光学式ポイティングデバイス、指紋リーダーを備える。光学式ポインティングデバイスは、マウスのセンサーが内蔵されているようなもので、この上で指を滑らせることでポインタの操作が可能
液晶向かって左側にはマウスの左右ボタン、130万画素のWebカメラを備えているブライトネス調整ボタンは機能の割り当てを変更可能。[Fn]+[F8]キーを押すことでOSDが表示され、ページ送りボタン、ボリュームボタン、ズームボタンとして機能させられる。ただしズームボタンはデスクトップの拡大機能ではなく、Internet Explorerなどアプリケーション上の表示倍率を変更するものである点に注意ヒンジ部の本体側にはステレオスピーカーを搭載。1.5+1.5Wとのことで、モバイルノートPCに搭載されたものとしては悪くないレベル、といったところ
本体右側面。前方方向より電源スイッチ、USB、ミニD-Sub15ピン出力、Ethernetを備える。ミニD-Sub15ピンとLANポートの間は単なるカバーで、工人舎のDZシリーズではワンセグチューナ用のアンテナに使われている部位だLANポートは大きめのカバーで覆われており、使用の際には写真のように取り外す本体左側面。前方方向より無線用スイッチ、USB×2、排気口、電源端子を備える。無線は[Fn]+[F2]キーでBluetooth、[Fn]+[F4]キーでWi-Fiの有効/無効を切り替えることもできる
[Fn]+[F7]キーで、排気口に備えたファンの騒音モードを切り替えられる。季節柄、Automaticモードでも騒音には問題を感じなかったが、排気口周辺はわりと熱くなっており、暑くなる季節にかけて少し不安はある本体前面部は、向かって左からジョグ型のボリュームツマミ、ヘッドホン出力、マイク入力、SD/MSカードスロット、microSDカードスロットを備えるSD/MSカードスロットにはダミーカードを備える。このSDカードスロットはプッシュロック式でないのが残念に思う

・バッテリ、電源、重量について

バッテリは本体底面の後方部に装着されるバッテリは工人舎の「LBATZZ03」となっている。11.1V/5,200mAhのものだ。実は本製品のバッテリに関しては悩ましい問題があるのだが、詳しくは後述したいこのバッテリ単体の重量は、実測で330g
ACアダプタはLITE-ONブランドのものが付属する。19V/3.42Aで、100~240V対応のユニバーサル仕様。ACケーブルとの接続口はメガネ型である。なお、写真でケーブルを巻いているベロクロケーブルは筆者が取り付けたもので、実際は一般的なビニールタイが使われているACアダプタと付属のACケーブルを合わせた重量は実測で305gとなったちなみにバッテリを取り付けた状態の本体重量は実測で1,857g。ACアダプタ/ケーブルと合わせると、2,162gということになる

・本体底面

本体裏面のカバー内には、HDDとメモリが取り付けられているメモリはHynix製のDDR2-800 SO-DIMMが1枚取り付けられており、1スロットの空きがある状態。ちなみにDDR2-800が装着されているが、公称の製品仕様はDDR2-667となっている。さらにいえば、K8コアの仕様でCPUクロックの整数分の1のメモリクロックでしか動作しないので、1,600MHz÷5=320MHzのDDR2-640相当で動作しているHDDの脇にはなぜかUSBポートが存在する。手持ちのフラッシュメモリを取り付けたところ正常に動作するので無効化されているわけではない。小型の通信デバイスなどを取り付けるなどのアイデアも浮かぶが、テストに使えるデバイスが手元になかったので試せていない

●製品を使ってのファーストインプレッション

 ここからは、短時間ではあるが実際に使ってみた所感を述べていきたい。まず、導入当初に気になったことが2点ある。1つは、Windows 7を起動すると必ずNumLockがオンになることだ。テンキーが独立したデスクトップキーボードならともかく、ノートPC用でNumLockがオンの状態で起動するのは好ましくない。

 この理由は、Windows 7のレジストリで、起動時にNumLockが有効になるよう設定されていたためだ。一度レジストリ設定を変更したあとでリカバリをしてみたが、再インストール後もやはり有効に設定されていたので、本製品用のOSイメージがそのように設定されているようである。

 レジストリ変更は危険を伴うので作業には注意を要するが、「\HKEY_USERS\.DEFAULT\Control Panel\Keyboard\InitialKeyboardIndicators」の値を「0」に修正すれば無効化される。デフォルトでは「2」に設定されている。

 もう1つ気になったのは、GPU設定ツールのCATALYST Control Center(CCC)がインストールされていなかったことだ。本製品はチップセットにAMDのM780Gを用いており、GPUはRadeon HD 3200となるのだが、このGPU用の設定ツールがCCCである。

 CCCは多くのユーザーにとって不要と思うユーティリティかも知れないが、問題は、本製品の同梱物に「ディスプレイ表示色の差異について」という用紙が用意され、色調補正の方法としてCCCを用いた方法が提示されているのだ。いわば、マニュアルに書いてあることができない、という状況であり、好ましくない。

 これをインストールするには、AMDのWebサイトからダウンロードしてくる必要がある。ついでなので、最新のディスプレイドライバに更新してもいいだろう。筆者は製品到着時の最新バージョンであるCATALYST 9.12を適用して使用している。CCCをインストールすることで、色調補正などの機能だけでなく、GPUの省電力モードを切り替えることなども可能になるので、インストールしておく価値はあると思う。

デフォルト環境ではWindows起動時にNumLockが強制的にオンになってしまう。これはレジストリエディタを使って設定を変更できる同梱のシートにCATALYST Contorol Centerを用いた液晶の色味調整の方法が記載されているが、デフォルト環境ではこれがインストールされていない。CCCをインストールするとGPUの省電力設定なども変更できるので導入したほうがいいだろう

 さて、本製品の魅力の1つにHDD容量が工人舎のDZシリーズに比べて大きいことが挙げられる。この320GB HDDは、リカバリ領域を除いた部分を2つにパーティション分けして出荷されている。これは好みの問題にもなるだろうが、システムとデータ領域を分けたいというニーズに応える仕様といえる。

 製品の性能についても触れておきたい。本製品のCPUはAthlon 64 MV-40を採用している。1.6GHzで動作するシングルコアCPUだ。CULV版Core 2 Duoを搭載した製品が安価に出回っているいま、8万円を超える価格帯でシングルコア、というのは物足りなく感じるかも知れない。

 ただ、液晶ディスプレイが充実していることの価格を上乗せを考えれば、PCの基本スペック部分にかけられるコストは減る。その意味で、ネットブックのAtomプラットフォームに比べれば高い性能を期待できる、というポジティブな考え方ができると思う。実際、WindowsエクスペリエンスインデックスでもボトルネックはGPU側にあると判定される。

 また、動画再生でも負荷が高い部類に入るAVCHD動画(1,920×1,080ドット/約17Mbps)をWindows Media Playerで再生したときも、シーンによってコマ落ちはあるものの、それなりに再生できる。そもそも、このCPU負荷はGPUによる再生支援の効果があってのもので、再生支援が効く動画ならCPU使用率は大きくは変わらない。しかし、負荷の低い動画であれば、AVCHDのようにコマ落ちまではしないので、Webブラウズなどをしながらの視聴にも耐えられる。シングルコア製品といっても、まずまずの動画再生性能は備えている印象だ。

初期状態のHDD容量。HDDは144GB×2にパーティション分けされている。システム領域となるCドライブの空き容量は132GBWindows 7のエクスペリエンスインデックスの測定結果フルHDのAVCHD動画を再生しているときのCPU使用率。高再生負荷な動画だが、ところによりコマ落ちは起こるものの、おおむね再生は可能

 ところで、先に「バッテリに悩ましい問題がある」とした件だが、本製品はさまざまな意味でバッテリがネックになる。まず本製品の公称バッテリ駆動時間は約3.7時間。11.1V/5,200mAhというサイズのバッテリを現在の基準に照らし合わせると、決して長くない駆動時間だ。

 実際の駆動時間も測定してみた。2画面を拡張デスクトップとして使用し、輝度最大、画面を暗くするなどの省電力設定は無効化した環境で、BBench(海人氏製作)を使ってキーストローク出力とWeb巡回を実行してみた。有線LANは取り外し、IEEE 802.11g接続の無線LANでインターネット通信している。結果は2時間2分で残り5%となりシャットダウンされた。

 消費電力が高い液晶画面を輝度最大で2枚使うという条件の悪い状態でのテストであり、モバイル時には1画面のみを使うようにするなどの工夫をすれば多少は改善されるだろう。それにしても、2時間少々という駆動時間はモバイルPCとしては短い。公称時間いっぱいまで駆動させられたとしても、6セルバッテリで6~7時間も駆動可能な製品が珍しくないCULVノートやネットブックと比較して見劣りしてしまう。

 ちなみに、本製品で使われているバッテリは「LBATZZ03」、工人舎DZシリーズのオプションは「LBATZZ02」と、型番が異なっている。先述したとおり、本製品が使用しているバッテリは工人舎ブランドのもので、11.1V/5,200mAhというスペックも、工人舎のDZシリーズと同じ。普通に考えれば工人舎DZシリーズのオプションを流用可能と思われるが、オンキヨーとしてはサポート外であり、自己責任での使用となるとしている。

 バッテリ駆動時間が長くないうえに、オプションのバッテリが用意されていない状況では、モバイルノートとして活用することを目論んでいるユーザーとして非常に困る。ただし、朗報として、オンキヨーではオプションバッテリの販売は予定しているそうなので、それを待ちたい。

 最後に、簡単に購入の理由にも触れておくと、そもそもは、工人舎のDZシリーズが発表されたとき、デュアルディスプレイノートPCという発想に興味を持ったのがきっかけだ。ただ、液晶解像度が1,024×600ドットでは1画面利用時にネットブックと変わらない点が購入に至らなかった。現在使っているネットブックでの大きな不満が液晶解像度だったためで、これが解消されないのなら、買い換え後に同じ不満を抱えることになる。

 こうした背景とは別に、来年早々にも出揃うはずのPineview採用製品を一通り眺めたあとで、新しいネットブックなりCULV搭載ノートなりへの買い換えは計画していた。ところが、1,366×768ドットでデュアルディスプレイという本製品が登場したことで、工人舎DZシリーズを購入しなかった理由が解消されてしまった。バッテリ駆動時間というネックは感じたが、それ以上に1,366×768液晶×2枚を1台のノートPCで利用できるという好奇心が勝り、購入した次第である。

 購入後に環境を整えるべくアプリケーションのインストールなどを行なっているが、左側の画面にインストーラのプログレスバーを表示しつつ、右側の画面でWebブラウズをする、といったことが非常に快適だ。もちろん本格的に使い始めたら、Webブラウザのほか、テキストエディタ、フォトビューワ、フォトレタッチ、エクスプローラ、Adobe Readerといったアプリケーションを並行利用して仕事を進めることになる。その際に、この2画面は間違いなくフル活用できると期待している。

(2009年 12月 25日)

[Reported by 多和田 新也]