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MS IME、ATOK、Google 日本語入力、一番使いやすいのはどれだ?ATOK信者が比べてみた

 ペンや紙で手書き文字の書き味が変わるように、PCでの日本語入力体験はIME(Input Method Editor)によって大きく変わる。だがほとんどのWindowsユーザーは、標準インストールされているMicrosoft IME(MS IME)をそのまま使っていることだろう。

 日本語入力の快適性を追求していくと、いずれ2つのIMEである「ATOK」と「Google 日本語入力」に必ず巡り会う。ライター稼業の筆者は特にATOKを愛好していて、少なくとも30年以上前、Windows 95の時代からATOKを常用している。

 ただあまりにATOKに親しみすぎていて、MS IMEとGoogle 日本語入力の現状について、あまりに知識不足という反省もあった。 そこで日本語入力における言わば“三大IME”であるMS IME、ATOK、Google 日本語入力の各機能について、ATOKヘビーユーザーの視点から比較してみようというのが本稿の趣旨である。

 動作の検証にあたってはWindows 11 Proのバージョン23H2を利用。MS IMEは同OSで標準利用できるものを使った(設定で旧バージョンのMS IMEを使うことは可能だが今回は触れない)。

 またATOKは、月額制サービス「ATOK Passport」のベーシックプラン(月額330円)を契約の上で、アプリのバージョン34.0.3をインストールしている。Google 日本語入力のバージョンは2.29.5370.0である(※原稿執筆時点)。

MS IME
Microsoft IME(MS IME)の設定画面。Windows本体の設定に統合されている
ATOK
筆者が愛用中のATOK。これこそ至高!……とは思っているが、ほかのIMEについても謙虚に勉強せねば
Google 日本語入力
Googleが作ったIME

コレがないと困る! ATOKユーザーお気に入りの8機能、ほかのIMEにもあるの?

 まずは以下の表をご覧いただきたい。日本語入力において筆者が求める機能の有無を、IME別にまとめた。冒頭でも述べたが、あくまでATOKヘビーユーザーでの視点となるため、ATOKの欄に○が多いのはご勘弁を。だが本稿執筆にあたっていろいろ調べてみたところ、意外な機能がMS IMEとGoogle 日本語入力にも搭載されていて驚いた。

筆者が求める機能ATOKMS IMEGoogle
日本語入力
テンキーから入力する数字を、IMEオン時でも常に半角かつ確定済みに限定できるか?×
半角/全角キーを押したとき、カーソル付近で(目線を動かさずに)入力モードを確認できるか?×
誤用・誤変換に注釈をつけてくれるか?×
同音異義語の使い分け方を教えてくれるか?
漢字の読み方がわからないとき、手書き入力できるか?×
送り仮名(行う、行なう等)の変換優先度を調整できるか?××
辞書登録した単語を簡単にデバイス間で共有できるか?×
※要検証
×
キー設定を他のIME様式に変えられるか?

【6月20日訂正】「誤用・誤変換に注釈をつけてくれるか?」について、Google 日本語入力の評価を×から△に変更しました。これに伴い、本文も修正しています。

 ここからは、なぜその機能が欲しいのか? あるとどう便利なのか? 詳細とともに解説していく。

テンキーから入力する数字を、IMEオン時でも常に半角かつ確定済みに限定できるか?

 表計算(スプレッドシート)ソフトや電卓アプリで頻繁に数字を入力するなら、キーボードにテンキーがあったほうが絶対的に効率が上がる。これはもう紛れもない事実だ。

 作成する文章にもよるが、筆者は入力する数字をすべてアラビア数字かつ半角にしたい派。全角アラビア数字で「1万9800円」「60秒」というような表記をすることは99%なく、ほぼ確実に「1万9800円」「60秒」としか表記しない。

 なので日本語入力がオンかオフかに関わらず、テンキーから入力した数字は常時、後から変換する必要のない確定状態で入力できたほうが、変換のためのスペースキー入力を1~数回分減らせて効率がいいのだ。

ATOK
ATOKなら日本語入力がオンかオフかに関係なく、テンキーから入力した数字は常に半角かつ確定状態で入力できる

 ATOKでは、プロパティ画面の「入力変換」タブ→「入力補助」の項目で「テンキーから入力を必ず半角にする」「確定文字で入力する」のチェックボックスをオンにしておけば、この挙動が実現する。つまりATOKがオン状態でも、テンキーで入力する文字はIMEがオフ状態のようなかたちになるわけだ。

ATOK
ATOKのプロパティ画面から「入力変換」タブ→「入力補助」と進んでいくと、テンキーからの入力をコントロールできる

 なおGoogle 日本語入力の場合は、プロパティ画面の「一般」タブで「テンキーからの入力」を「直接入力」とすれば同じ挙動になる(『半角』ではダメ)。

Google 日本語入力
Google 日本語入力ならプロパティ画面の「一般」タブで、テンキーからの入力を「直接入力」にしておこう

 対してMS IMEは設定画面(画面右下のタスクトレイ内『あ』ないし『A』を右クリックしてから『設定』を選択)で「全般」を選ぶと、「テンキー」の項目がある。ここで「常に半角」を選んでおけば、確かに似たような挙動にはなるのだが、しかし確定状態にはならず、あくまで“変換待ち”の状態になってしまう。よってEnterキーを押すなりして確定しないといけない。

MS IME
MS IMEの設定にも「テンキー」の項目はあるのだが、これを「常に半角」にしても、望みの挙動にはならない(変換待ちになってしまう)

 「半角/全角キーでこまめにIMEのオン・オフを切り替えればいいじゃないか」という声も聞こえてきそうだが、それだとやっぱり半角/全角キーを押す回数が増えてしまう。

 もしMS IMEの挙動しか知らず、それでいてExcelに数字入力をする機会が多い方は、ぜひATOKかGoogle 日本語入力でこの操作感を一度は試してみてほしい。大概の方が「便利!」と叫んでくれるのではなかろうか。

半角/全角キーを押したとき、カーソル付近で(目線を動かさずに)入力モードを確認できるか?

 今この瞬間、IMEがオンか(日本語入力できるか)、あるいはオフか(半角英数の入力か)を確認したいとして、はたして画面のどこを見ればいいのか。基本的には、画面右下のタスクトレイ内の表示を見ることになる。MS IMEなら「あ」と出ていればオン、「A」ならオフを意味する。

 ほんのわずかに視線を変えればいいだけなのだが、集中して長文を入力している時だと、それさえ煩わしく感じてしまう。それが正直な気持ちである。

MS IME
どんなIMEでも、画面右下のタスクトレイをみれば日本語入力がオンかオフか分かる。しかし目線を動かさねばならず……(こちらはMS IMEの例)

 ATOKなら、この問題があっさり解決する。プロパティ画面の「入力・変換」タブ→「表示」で、「カーソル位置に入力モードを表示」の項目をチェックしよう。「簡易表示」あるいは「詳細表示」にしておくと、半角/全角キーを押すたびに、文字入力カーソルがあるその位置に「あ」「A」などが表示される。

ATOK
ATOKでは、半角/全角キーを押すごとに、カーソルの位置に入力モードが表示される

 このおかげで、どんな状態からでも半角/全角キーを1回か2回押せば、望みのIME状態が確実に得られる。Google 日本語入力にも同様の機能があり、プロパティの「入力補助」から「カーソル周辺に入力モードを表示する」で、機能の利用可否を選択できる。

Google 日本語入力
Google 日本語入力でもATOKと同等の表示が可能

 以前のMS IMEでは「IME入力モード切替の通知」を「画面中央に表示する」というオプションがあったのだが、最新アップデートを適用したWindows 11ではこれがなくなっている。個人的には、より洗練されたかたちで復活を期待したい機能だ。

誤用・誤変換に注釈をつけてくれるか?

 「つまづく」「汚名挽回」「的を得る」。この3つは、どれもなんとなく意味は伝わるが、どれも間違いというか不適というか……。「つまずく」「汚名返上(もしくは名誉挽回)」「的を射る」(別に『当を得る』との表現もある)が正しいとされる。

 こうした誤用を指摘してくれるのATOKの「校正支援」だ。プロパティ画面に専用の設定画面が設けられており、細かく適用可否を設定できる。

ATOK
ATOKの「校正支援」設定。かなり細かな設定ができる

 ちなみに「つまづく」「汚名挽回」「的を得る」の3つは、恥ずかしながら筆者が実際にATOK利用中に指摘された誤用。実際に「つまづく」と入力すると、変換文字のすぐ後ろ部分に「つまずくが本則」と大きく表示される。一方「汚名挽回」では、入力後に変換を確定せずに少し時間が経つと、Endキーを押せば解説が出る旨が小さくポップアップ表示される。

ATOK
誤用をこのように大きな表示で指摘してくれる
「汚名挽回」の注意については、あくまでEndキーを押したときだけ表示される

 MS IMEとGoogle 日本語入力では、少なくとも「つまづく」「的を得る」の間違いは指摘してくれなかった。ただしGoogle 日本語入力では、読み間違いに起因するミスを、変換時に「もしかして : ○○」と指摘してくれるケースがある。

 たとえば「ふいんき」と入力すると「もしかして : 雰囲気(正しくはふんいき)」、「ぼんよう」で「もしかして : 汎用」(正しくははんよう)といった具合だ。ATOKの校正支援と比較するとやや限定的だが、うっかりミス、覚え間違えの解消にはつながるだろう。

MS IME
MS IMEでは、「つまづく」と入力しても特に警告なし
Google 日本語入力
Google 日本語入力における「もしかして : ○○」の表示例

 近年では、完成後の文章を後から丸ごと読み込ませるタイプの校正支援サービスなどがある。とはいえ、文字入力時にある程度の誤用指摘をしてくれるのは助かる。

同音異義語の使い分け方を教えてくれるか?

 同音異義語の使い分けが、どうも苦手だ。具体的なところでは、たとえば「上限を超える」という表現。これが本来正しいと頭では分かっているのだが、アレ、もしかすると「上限を越える」ってアリなんだっけ? こうした感じで迷ってしまう。

 ATOKでは前述の「校正支援」メニュー内の「用語・用例」→「同音語の使い分けを支援する」がオンになっていると、変換候補の表示時に右向きの三角マークが表示されるケースがある。その後にカーソルを合わせて少し待っていると、情報が表示される。用例まで出るのが便利だ。

 この機能こそATOKだけの専売特許かと思っていたが、改めて調べるとMS IMEとGoogle 日本語入力でも、同種の情報が特に設定するまでもなく表示される。ただ当然ながら、情報の書き方は少しずつ違う。参考までに「はかる」の解説文(スクリーンショット)を以下に並べておいたので、比較してみてほしい。

MS IME
MS IMEで「はかる」を入力したところ
ATOK
こちらはATOK
Google 日本語入力
Google 日本語入力。どれも総じて、説明文を読めばしっかり使い分け方を確認できる

漢字の読み方が分からないとき、手書き入力できるか?

 以前、TVで旅行番組を見ていたとき、石川県にある「百海」という名称のバス停が紹介されていた。正確には「どうみ」と読むそうだが、もしこれをPC上に入力するときは「百(ひゃく)」「海(うみ)」と文字入力すれば特に問題はない。

 では「羽咋(市)」はどうだろうか。こちらも石川県の市町村名なのだが、恥ずかしながら筆者、この「咋」という字の読み方がまったく分からなかった(『昨』ではない)。もし、雑誌などで「羽咋」の字を見たとき、PCだけを使ってこの文字を入力できるのだろうか。

 こうしたシーンで、ATOKの手書き入力機能が活躍する。ATOKメニューを立ち上げ「入力ツール」→「手書き文字入力」で専用画面を呼び出し、ここでマウスのドラッグ操作で文字を入力すればいい。

 書き順が分からなくても、それっぽく入力していくと文字が少しずつ絞り込まれていく。目的の文字が見つかったら、後はマウスクリックでその文字が入力される。MS IMEでもこれと同等の機能が「IME パッド」として用意されている。

ATOK
タスクトレイから手書き文字入力を選択
マウスを左クリックしながら動かすと文字が書けるので、読めない漢字を(見よう見まねでいいので)入力しよう
MS IME
MS IMEでは「IMEパッド」内で手書き入力できる

 一方、Google 日本語入力には一時期、手書き入力機能が実装されていたそうだが、現行バージョンでは未搭載となっている(2019年頃を境に廃止された模様)。それほど日常的に使う機能ではないし、なによりGoogleの「入力ツール」というWebサイト上ならば手書き入力ができるので代替してほしい……との判断なのだろうか。

送り仮名(行う、行なう等)の変換優先度を調整できるか?

 「行う」なのか「行なう」なのか。「生れる」なのか「生まれる」なのか。こうした“送り仮名”の処理については、文章の書き手はもちろん、出版社などでも対応が分かれるところだろう。

 ATOKでは、プロパティ画面の「入力・変換」タブ→「変換補助」メニュー内にある「送り仮名」の項目で、本則・省く・送る・すべての4つから変換基準を表示できる。

ATOK
ATOKなら送り仮名の設定は簡単。「変換補助メニュー」から調整できる
たとえば「本則」にしておけば、「おわる」の変換で「終わる」が出るものの、「終る」は出ない

 基本的には「本則」にしておけば問題はない。この場合「おわる」と入力しても、変換候補には「終わる」だけが表示され、「終る」はそもそも候補に表示されない。このおかげで、簡単に表記を統一できる。

 もし表現にこだわる小説家の方が「送り仮名は極力省きたい」のであれば、設定画面で「省く」を選べばいい。「おわる」の変換候補に「終る」だけが表示され、逆に「終わる」が一切表示されなくなる。

 現行のMS IMEでは、この送り仮名設定はなくなっており、ATOK流でいけば「すべて」を選んだのと同じ挙動になる。「終る」「終わる」の2つが候補として並ぶ格好だ。Google 日本語入力にも送り仮名設定機能はない。

MS IME
MS IMEだと「終わる」「終る」が両方表示される。自分の判断で都度、選ぶしかない

辞書登録した単語を簡単にデバイス間で共有できるか?

 最近のIMEは、誕生間もない流行語などであってもクラウド経由で辞書に反映させる機能が充実してきた。だがそれでも限界はある。たとえば2023年の新語・流行語大賞でランクインした“観る将”は、「みるしょう」から一発変換できなかったりするし、ほかにも、筆者は「…(三点リーダー)」を多用するので、「・(なかぐろ)」を1文字入力するだけで「……(2文字分の三点リーダー)」に変換できるよう、辞書登録している。

ATOK
筆者が手動登録した単語辞書のリスト。それほど数は多くないが、たとえば「か」で、火曜日を意味する「(火)」が入力できるようにしてある。「そら」の読みで「宇宙」とかも定番かな?

 かつては、こうした辞書登録履歴はPC内にローカル保存されるだけだった。デスクトップPCとノートPCを2台使いするとなると、適当なタイミングで辞書データを手動でエクスポート・インポートしなければならず、とても面倒だった。

 これを劇的に変えてくれたのがATOKの「ATOK Sync」機能である。専用のアプリを常駐させておけば、後はバックグラウンドで辞書データを自動同期。PCが故障したり、買い替えた場合にも威力を発揮する。

ATOK
常駐ソフトの「ATOK Sync」。これがあれば同期は簡単。設定にもよるが、1日に1回、同じ時刻に自動で実行される

 MS IMEについては、Windows 11の「設定」から「アカウント」→「Windows バックアップ」→「自分の設定を保存する」と進んでいくと、「言語設定と辞書」というメニューがあるにはある。しかし、同一のMicrosoftアカウントでログインしている複数のWindows 11 PC間において、登録単語が自動かつリアルタイムで同期されることはないようだ。

 ただ正確な挙動は調べきれなかった。変換履歴だけが共有されていたり、あるいは再セットアップ時にバックアップからの復元扱いすれば、結果的に辞書を移植できる可能性はあるが……。この機能の詳細については、継続調査とさせていただきたい。

MS IME
「Windows バックアップ」の設定には、「言語設定と辞書」という、同期につながっていそうな項目があるのだが……

 なおGoogle 日本語入力には辞書メンテナンスのためのツールがある。だが“アプリにログインする”という概念が現状ないため、ATOK Syncのような自動同期機能は少なくともできない(手動での辞書インポートおよびエクスポートは可能)。

キー設定をほかのIME様式に変えられるか?

 MS IMEを普段使っている方が初めてATOKに触れた場合、まず驚くのがキー操作の違いだろう。ATOKでは文節単位での変換確定に下カーソルキーを用いる。

ATOK
ATOKで変換しているところ。この状態で「返還」を選びたいならスペースキーを押す。下カーソルキーを押すと、文節を確定して次の文節に移動するというのがATOKの基本

 MS IMEでは通常、変換候補の選択に上下カーソルキーを使い、さらに変換中に左右カーソルキーを押すと変換対象文節が移動する。文節を短くしたり長くしたりするときは、Shiftキーを押しながら左右カーソルキーを押して調整する。

 対してATOKでは、変換候補の選択に使うのはスペースキー(変換候補を進める)と上カーソルキー(変換候補を戻す)の2つ。そして単純に左右カーソルキーを押すと、それだけで変換文節を短くしたり伸ばしたりできる。Shiftキーの出番が減るのが利点だ。しかし「下カーソルで文節確定」は、頭で理解しても、どうしても指の動きが付いていかない……なんて事態があり得る。

 しかし心配は無用。この基本キー操作については、ATOKでMS IME風の操作をしたり、逆にMS IMEでATOK風の操作をしたりと、どちらも柔軟な調整が可能だ。ATOKならばプロパティ画面の「キー・ローマ字・色」から、MS IMEはWindows設定画面からMS IME設定画面の「キーとタッチのカスタマイズ」で、ATOKとMS IME設定のどちらかを選べる。

MS IME
キー操作は簡単にカスタマイズできる。こちらはMS IMEでの設定画面
ATOK
ATOKのキー設定画面

 なおGoogle 日本語入力は、「MS IME」「ATOK」「ことえり」の中から操作方法を選ぶ仕組みになっている。よってGoogle 日本語入力独自の操作方法を覚える必要はほぼない。

Google 日本語入力
Google 日本語入力ではMS IME風かATOK風かを選べばいい

オマケ~変換精度をちょっとだけ比べてみた

 日本語IMEの比較というと、少ない手数でいかに正しく変換できるか、つまりは変換精度が気になるところだ。そこで簡単ではあるが、辞書学習状況などを極力リセットした状態の各IMEで、3つの例文を入力・変換してみた。もちろん、たかが3つの文章で精度を厳密に検証できるはずもない。あくまで参考値として捉えてほしい。

入力例文

1.分析的なものとして論じられている精神の諸作用は、実は、ほとんど分析を許さぬものなのである。(青空文庫にて公開中の『モルグ街の殺人事件』冒頭文より)
2.生成エーアイは果たして人類を成長させるのか、それとも衰退させるのか、長い議論が続くことになりそうだ(筆者が作成した文章)
3.株式会社インプレスは、「インターネット白書2024エーアイ化する社会のデータガバナンス」を発行いたします(インプレスの2024年2月13日公開プレスリリース冒頭文を一部改変)

 この文章を冒頭から最後まで一気に入力し、スペースキーを1回だけ押して表示された文章が以下である(入力例文と異なる箇所を赤字で表示)。

MS IME

1.分析的なものとして論じられている精神の作用は、実は、ほとんど分析を許さぬものなのである。
2.生成エーアイは果たして人類を成長させるのか、それとも衰退させるのか、長い議論が続くことになりそうだ
3.株式会社インプレスは、「インターネット白書2024エーアイ化する社会のデータガバナンス」を発行いたします

ATOK

1.分析的なものとして論じられている精神の諸作用は、実は、ほとんど分析を許さぬものなのである。
2.生成AIは果たして人類を成長させるのか、それとも衰退させるのか、長い議論が続くことになりそうだ
3.株式会社インプレスは、「インターネット白書2024AI化する社会のデータガバナンス」を発行いたします

Google 日本語入力

1.分析的なものとして論じられている精神の作用は、実は、ほとんど分析を許さぬものなのである。
2.生成AIは果たして人類を成長させるのか、それとも衰退させるのか、長い議論が続くことになりそうだ
3.株式会社プレスは、「インターネット白書2024エーアイ化する社会のデータガバナンス」を発行いたします

 1.の文章は、アルファベットが混じっていないこともあって、どのIMEとも変換はほぼ完璧。ただし「しょさよう」が「所作用」「諸作用」「初作用」と全部違う点が興味深い。原文の「諸作用」をあてたATOKは見事。

 2.の変換もどれもほぼ完璧。加えてATOKとGoogle 日本語入力は「えーあい」と入力した部分を「AI」「AI」にしてくれており、なかなか気が利いている。

 3.もほとんと問題ないが、Google 日本語入力のみ「株式会社インプレス」の表記が間違っていた。見たところ、文節を「株式」と「会社員」と「プレス」に分けてしまったようだ。

 3つのIMEで多少差が出たが、物理キーボードを備えたPCであればこのレベルの修正は簡単。一度変換すれば、以後は学習効果によって精度も上がるはずなので、あまり気にせず使いこんでほしい。

機能差やコストは三者三様。MS IMEに不満なら、まずはGoogle 日本語入力を試してみては?

 今回、三大IMEをガッツリ検証──というよりATOK愛好家が日常利用できている機能がそのほかのIMEにもあるか、上から目線で比較──してみたわけだが、やっぱりそれぞれに個性が出るのだなと改めて実感した。

IMEは複数同時にインストールしておいても、Windowsキー+スペースキーで簡単に切り替えられる。使い比べは簡単なので、ぜひお試しあれ

 まずMS IME。Windows 11に標準インストールされており、触れやすさはほかのIMEと比べるまでもない。シンプルなだけに、クセがないという見方もできるだろう。ただ、テンキーからの半角数字確定入力は、慣れた身からするとどうしても欲しい機能だ。

 その点、Google 日本語入力は無料で、テンキーからの半角数字確定入力に対応。カーソルキー周辺での入力モード表示も可能なので、もしMS IMEの使い勝手に不満があるなら、一度はGoogle 日本語入力を試してみてもいいだろう。ただし新機能などの開発がそれほど活発でないように見えるのが、気がかりではある。

 ATOKは有料ということもあって、機能面では抜きん出ていると言ってよいだろう。だが同音異義語の使い分けサポートはもうATOKだけのセールスポイントではない。辞書のクラウド同期は一度使うと手放せないが、それだけのために月額330円、すべてのPCユーザーが出せるかと言えば、それもまた難しいかもしれない。

 だが、その金額の価値は十分にあるというのが筆者の意見だ。1年フルに使い続けたとして、年額料金は3,960円。この料金で最大10台までインストールすることができる。2台以上のPCを同時利用している方ならお得感は高いし、なにより不慮のPCトラブルが発生しても、辞書データを高い確率で守れる。

 MS IMEは、Windowsの進化とともにこれからドンドン機能強化されるだろう。だが、いつか搭載される機能をただ待ち続けるより、今そこにあって、すぐ使えるATOKをチョイスする手もある。お財布事情と相談しながら、自分にとってベストなIMEを見つけてほしい。