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古くなったPCを自作NASに変える方法。TrueNAS SCALEを使えば結構簡単に作れる
2024年5月24日 06:24
「放置状態の古いPCが家に転がっている」という人は結構多いのではないだろうか。そんな使い道がなさそうなPCを別の用途で有効活用する方法を紹介しよう。
買い替えで余ったデスクトップPCや、使い道がなくなったミニPCなどを再活用することで、ファイル共有に加え、仮想マシンや各種アプリサーバーを動かすための汎用自宅サーバーとして復活させることができる。今回は、2021年発売のミニPCに無料で使える「TrueNAS Scale」をインストールする方法を紹介する。
(1) 第11世代Core i5搭載のミニPCをNASとして活用
(2) TrueNAS Scaleのインストール
(3) TrueNAS SCALEをファイルサーバーにする
(4) アプリを追加してみよう
(5) 本格的なNASとして利用可能
第11世代Core i5搭載のミニPCをNASとして活用
今回、NASとして利用するPCは、MINITSFORMから2021年に発売された「TL50」というミニPCだ。Core i5-1135G7、メモリ12GBを搭載した製品で、最新PCと比べると少し古さを感じさせる構成だが、十分な性能を持っている。
NAS化する場合、コンパクトであること、ストレージを複数台搭載できること、(できれば)省電力であることが求められるが、本製品は1基のNVMe M.2スロットに加え、SATA 2.5インチドライブを2台内蔵できる上、2.5Gbps×2のLANポートも搭載しており、NASとして利用するのにちょうどいい。
もちろん、スペックにこだわりすぎると、古いPCを活用する意味がなくなってしまうが、今回OSとして利用するオープンソースの「TrueNAS SCALE」は、必要スペックが高く、メモリ8GB(推奨16GB)、ブート用16GB SSD、データ用ドライブ2台(つまりストレージは計3台必要)となっている。
このため、古くなった自作PCであれば問題ないが、ミニPCを使う場合は、ある程度のスペックを備えたモデルが必要になる。その代わり、TrueNAS Scaleは非常に機能が豊富だ。
開発元のiXsystemsは、このOSを「Open Source Hyperconverged Infrastructure (HCI) solution」と紹介しているが、NASとしてファイル共有に利用できるだけでなく、仮想マシンを動かしたり、DockerやKubernetesのアプリケーションを動作させたりすることもできるのが特徴だ。
まずは、シンプルなファイルサーバーとして構成しておき、少しずつ機能を追加していくといいだろう。
TrueNAS Scaleのインストール
では、早速構築していこう。
STEP1:インストールメディアの準備
まずは、TrueNAS SCALEのインストールメディアを用意する。こちらのページからサインアップするか、「No Thank you, I have already signed up.」を選択して、ISOファイルをダウンロードする。今回は「23.10.2」の安定版を利用した。
ダウンロードが完了したら、USBメモリに書き込んでインストール用メディアを作成する。ここではRaspberry Pi Imagerを利用して書き込んだ。
STEP2:インストール開始
インストールメディアが作成できたら、PCに装着してUSBメモリから起動する。インストーラーが起動したら、インストール先を選択する。
今回はPCに256GBのM.2 NVMe SSD×1、500GBのSATA SSD×2を装着しているので、インストール先は256GBのNVMeを選択する。
続いて、管理者としてAdminを選択し、パスワードを設定する。最後にスワップファイルを作成すると、ファイルのコピーが開始される。インストールが完了したら、画面のメッセージに従ってメディアを取り外し、PCを再起動すればいい。
TrueNAS SCALEをファイルサーバーにする
TrueNAS SCALEは、前述したようにかなり多機能なため、設定は決して簡単とは言えない。シンプルに共有フォルダを作成するだけでも、それなりの手順が必要になる。まずはファイルサーバーとして利用するための最低限の設定をしておこう。
STEP4:ユーザー作成
最初にユーザーを作成する(ストレージが先でも構わない)。「Credentials」の「Local Users」から「Add」でユーザーを追加する。利用するユーザーの名前を指定して作成しておこう。
なお、グループで管理したり、ホームディレクトリを作成したりすることもできるが、今回はこうした設定もすべてスキップしている。必要に応じて設定するといいだろう。
STEP5:プールの作成
続いてストレージの設定をする。「Storage」から「Create Pool」を選択し、ウィザードに従ってプールを作成する。プールは、物理的なドライブを仮想的なストレージとして管理するためのものだ。
今回は、2台のSATA SSDが搭載されているので、これを「Mirror」で構成する。「pool」など名前を設定後、もしも、2台のSSDの容量が異なる場合は「Treat Disk Size as Minimum」を選択することで、少ない容量のほうに合わせて構成される。
ウィザードではLogやChacheなど、用途ごとの構成もオプションで設定できるが、今回はすべてスキップして、シンプルにデータ用の領域のみを作成した。
STEP6:データセットの作成
ストレージが作成できたら、そこにSMB共有用のデータセットを作成する。「Datasets」から作成したプールを選択し、「Add Dataset」から設定する。「Public」など適当に名前を付け、「Share Type」を「SMB」に設定して保存する(圧縮や暗号化などは標準設定でOK)。
STEP7:Windows(SMB) Sharesを設定
最後に、サービスとしての共有設定をする。「Shares」から「Windows(SMB) Shares」を選択し、「Path」に先ほど作成したデータセット(今回は「public」)を選択し、「Enabled」にチェックを付けて「Save」を選択する。
設定後、「Start SMB Service」という画面が表示されるので、「Enable Services」を選択すると、実際にファイル共有サービスが稼働する。
これで、最低限の設定は完了だ。すべてのユーザーがアクセスできる「public」フォルダが共有された。ネットワーク上のPCからエクスプローラーで「¥¥IPアドレス¥public」にアクセスし、登録したユーザーでログインすれば共有フォルダを利用できる。
もちろん、組織で使うならグループの構成や共有フォルダごとのアクセス権設定も必要なので、設定してみるといいだろう。ただし、市販のNASのように簡単ではないので、初めての場合はかなり苦戦するかもしれない。
アプリを追加してみよう
続いて、TrueNAS Scaleの特徴の1つとも言えるアプリを追加してみよう。以下に挙げているようなさまざまなアプリをインストールできる。
- Redis:データベースサーバー
- Minecraft:ゲームサーバー
- Plex:メディアサーバー
- Prometheus:モニタリングサーバー
- NextCloud:パーソナルクラウドサーバー
今回は、カンバン方式のタスク管理ツール「Planka」をインストールしてみる。
「Apps」から、「Refresh Charts」をクリックして、まずはリストを最新版に更新する。これで、カタログが更新され、多くのアプリが表示できるようになる。更新されたら、インストールしたいアプリを選択する。今回は「Productivity」のカテゴリで、「View All Productivity」をクリックし、一覧から、「Planka」を選択した(もちろん、検索してもOK)。
アプリをインストールする初回のみ、インストール先のプールをセットアップする必要があるので、「Setup Pool To Install」をクリックする。
設定は基本的に標準のままで構わないが、管理者アカウントと「BaseURL」のみ手動で設定する必要がある。アプリにサインインするために必要になるので、管理者のメールアドレスやユーザー名、パスワードを設定しておこう。
「BaseURL」は、アプリにアクセスする際に利用するアドレスで、ドメイン名を利用可能であれば指定しても構わないが、今回はローカルで利用するので「http://192.168.50.227:30062」とTrueNAS ScaleのIPアドレスとポート(少し下にある「Web Port」を参照)を設定した。
ちなみにアプリを起動すると、メモリやCPUなどのリソースが消費される。PCのリソースに注意しながら利用する必要がある。また、設定はアプリによって異なるので、ドキュメントも参照しながら設定することをおすすめする。
「Install」をクリックすると、実際のインストールプロセスが実行される。ダウンロードや設定に少し時間がかかる場合があるので、気長に待とう。アプリ画面を更新し、「Deploying」という表記が「Running」になれば完了だ。