西川和久の不定期コラム
コンパクトな筐体に第11世代Core i5と2.5GbE×2搭載の「MINISFORUM TL50」
2021年6月3日 06:50
NUCタイプのコンパクトなボディに2.5Gigabit Ethernet×2を搭載。2.5インチ×2収容可能
一般的なメーカー製のPCとは違い、クラウドファンディングからスタートしているMINISFORUMのPC。2021年は2月にRyzen 7 PRO 2700Uを搭載した「UM270」、4月にRyzen 5 4500Uを搭載した「HM50」と、AMDプロセッサ搭載機2台をご紹介した。どちらもなかなか個性的な1台で楽しめる内容だった。そしてIntelプロセッサ搭載機の登場となる。
CPUは第11世代Tiger LakeのCore i5-1135G7。このクラスだとIntelのNUC(NUC11PAHi5)が直接の競合となるだろうか。どのような差別化がなされているのか興味津々と言ったところ。主な仕様は以下の通り。
MINISFORUM「TL50」の仕様 | |
---|---|
プロセッサ | Core i5-1135G7(4コア8スレッド/2.4(cTDP-up)~4.2GHz/キャッシュ8MB/cTDP-down 12W、up 28W) |
メモリ | 12GB(オンボード/LPDDR4-3200) |
ストレージ | M.2 PCIe SSD 512GB |
OS | Windows 10 Home(64bit) |
グラフィックス | Iris Xe Graphics/HDMI 2.0、DisplayPort、Thunderbolt 4 |
ネットワーク | 2.5Gigabit Ethernet×2、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.1 |
インターフェイス | Thunderbolt 4、USB 2.0 Type-A×2、USB 3.0 Type-A×4、音声入出力 |
その他 | 拡張ストレージ:2.5インチ×2 SATA SSD/HDD(6Gbps)。VESAマウンタ |
サイズ/重量 | 149.6×149.6×55.5mm(幅×奥行き×高さ)/約603g |
価格 | 599ドル |
プロセッサは第11世代Tiger LakeのCore i5-1135G7。4コア8スレッドでクロックは2.4GHz(cTDP-up)から最大4.2GHz、キャッシュは8MB、cTDP-down 12W/up 28Wとなる。ストレージはM.2 PCIe SSD 512GB。OSは64bit版Windows 10 Homeで、バージョンは20H2だったので、その範囲でのWindows Updateを適用、評価している。
メモリはLPDDR4-3200で12GB。スロット式なら4GB+8GBと半端な構成となるが、本機はオンボードでの搭載となり、PCMark 10 System Informationを見ると1,536MB×8の計12,288MBとなっていた。
グラフィックスはプロセッサ内蔵のIris Xe Graphics。外部出力用にHDMI 2.0、DisplayPort、Thunderbolt 4を備えている。最大出力解像度はそれぞれ、HDMIが4K/60Hz、DisplayPortとThunderbolt 4が8K/60Hz。3画面同時出力にも対応する。
ネットワークは、Gigabit Ethernet×2、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.1。Gigabit Ethernetは2つとも2.5G対応だ。全部入りの上に、2.5Gigabit Ethernet×2は、用途によってなかなか魅力的だと思われる。
そのほかのインターフェイスは、Thunderbolt 4、USB 2.0 Type-A×2、USB 3.0 Type-A×4、音声入出力。SDカードスロットは無い。また、拡張ストレージとして2.5インチ×2 SATA SSD/HDD(6Gbps)を内蔵可能。VESAマウンタも付属する。
サイズは149.6×149.6×55.5mm(幅×奥行き×高さ)、重量約603g。現在予約中で価格は599ドルとなる。
IntelのCore i5-1135G7搭載NUC(NUC11PAHi5)が5万1,800円なので、OS、ストレージ、メモリ代を考えると2.5Gigabit Ethernetの2つ分も含めお得と言ったところだろうか。
筐体はご覧のように以前ご紹介したHM50とまったく同じで、IntelのNUCよりは二回りほど大きい。前面のType-CがThunderbolt 4(稲妻アイコン)、背面のEthernetがどちらも2.5G対応となっている点で判別可能だ。重量は実測で619g。
前面はリセット、電源ボタン、音声入力、音声出力、USB 3.0 Type-A×2、Thunderbolt 4。背面はUSB 3.0 Type-A×2、USB 2.0 Type-A×2、2.5Gigabit Ethernet、DisplayPort、HDMI、ロックポート、電源入力用Type-Cを配置。底面はVESAマウンタ用のへこみがあり、四隅のネジを外せば簡単に内部にアクセスできる。
内部は左側にある白いコネクタ2つがSATA、右側にM.2 SSD。メモリは裏にオンボード、加えてスロットもなく増設ができず12GB固定となる。一般的な用途であれば十分だが、仮想マシンなど多くのメモリを必要とする場合、本機は不向き。この点をどう思うかで評価が別れそうだ。
付属品はSATAケーブル、2.5インチマウンタ、VESAマウンタ、HDMIケーブル、電源ケーブル、ACアダプタ。注意してほしいのはACアダプタだ。コネクタがType-Cなのでほかのデバイスに使えそうだが、出力19V/3.42A固定なので壊れてしまう可能性がある。本機専用で使っていただきたい。なおアダプタのサイズは約92×43×28mm(幅×奥行き×高さ)、重量184gとなる。
裏パネルは写真からもわかるように、付属のマウンタで2.5インチSATA SSD/HDD 2基を本体内に内蔵可能だ。
UM270やHM50では、HDMIとUSBのケーブル2本を使って接続していたキーボード付きのモバイルディスプレイだが、今回前面にThunderbolt 4が備わったことにより1本で接続可能となった。思った以上にスッキリするのでこの差は小さくない。
発熱や振動は試用した範囲ではまったく気にならないレベル。ノイズは本体に耳を近づけるとそれなりに鳴っているものの、机の上に設置し、少し離れれば大丈夫だろう。クラウドファンディングのページには”通常動作時には39.4dB、全負荷時でも43.4dBと、わずか4dBの増加に抑えた静音設計”と書かれている。
BIOSは起動時、「DEL」キーで表示する。Main、Securty、Boot、Save&Exit……と項目は少なめだろうか。今回は特に触らず評価した。
小型な筐体で重量もそこそこ。カバンに入れて持ち運びも容易だ。SDカードスロットがないのは残念だが、各種ポートはよりどりみどり。後述するベンチマークテスト結果も上々。手軽に色々な用途に使える1台だ。
Ryzen 5 4500U搭載のHM50と比較して3DMarkで圧勝!
初期起動時、スタート画面(タブレットモード)はフルHDで1画面。特にプリインストールのアプリなどはない。デスクトップはWindows標準とシンプルだ。使用感は第11世代Core i5、メモリ12GB、PCIe SSDなのでストレスなく快適に作動する。
ストレージはPCIe SSD 512GBの「KINGSTON OM8PCP3512F」。仕様によるとM.2 PCIe Gen 3 NVMe 1.3とあるが、データ転送速度などは不明だ。Cドライブのみの1パーティションで約475GBが割り当てられ、空き容量は445GB。
Wi-FiはIntel Wi-Fi 6 AX200、Gigabit Ethernetは2.5G対応のIntel Ethernet Controller I225-V。Bluetoothも含め、すべてIntel製だ。
ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、Cinebench R23、CrystalDiskMarkを使用した。参考までに少し前にご紹介したMINISFORUM HM50(Ryzen 5 4500U搭載)のスコアも掲載している。
ご覧のように、PCMark 10/8に関しては項目によって本機のスコアが高かったり低かったり、結構でこぼこしている。搭載しているSSDの性能がHM50より低いので、関係があるかもしれない。
Cinebench R23は似たり寄ったり(マルチコアは少し下回るが、シングルコアでは上回る)の結果。ただ3DMarkになると、Time SpyからCloud Gateまでが本機が速い。ここはIntel Iris Xe Graphicsの方がRadeon Graphics(6コア)より強力ということだろう。
MINISFORUM TL50 | MINISFORUM HM50(参考) | |
---|---|---|
PCMark 10 v2.1.2508 | ||
PCMark 10 Score | 4,602 | 5,004 |
Essentials | 9,190 | 8,928 |
App Start-up Score | 11,700 | 11,382 |
Video Conferencing Score | 7,721 | 7,706 |
Web Browsing Score | 8,592 | 8,114 |
Productivity | 6,245 | 7,644 |
Spreadsheets Score | 5,622 | 9,293 |
Writing Score | 6,938 | 6,289 |
Digital Content Creation | 4,609 | 4,985 |
Photo Editing Score | 6,739 | 7,583 |
Rendering and Visualization Score | 2,916 | 4,503 |
Video Editting Score | 4,983 | 3,630 |
PCMark 8 v2.8.704 | ||
Home Accelarated 3.0 | 4,228 | 4,180 |
Creative Accelarated 3.0 | 4,690 | 4,340 |
Work Accelarated 2.0 | 3,004 | 5,184 |
Storage | 4,973 | 5,042 |
3DMark v2.18.7185(HM50はv2.17.7137での測定結果) | ||
Time Spy | 1,532 | 1,022 |
Fire Strike Ultra | 1,111 | 587 |
Fire Strike Extreme | 2,096 | 1,210 |
Fire Strike | 4,260 | 2,687 |
Sky Diver | 13,533 | 9,759 |
Cloud Gate | 19,261 | 15,954 |
Ice Storm Extreme | 76,892 | 83,918 |
Ice Storm | 91,058 | 103,562 |
CINEBENCH R23 | ||
CPU | 5,498(9位) | 5,552(9位) |
CPU(Single Core) | 1,363(3位) | 1,173(5位) |
CrystalDiskMark 6.0.0 | ||
Q32T1 シーケンシャルリード | 1986.016 MB/s | 2547.722 MB/s |
Q32T1 シーケンシャルライト | 962.886 MB/s | 1264.363 MB/s |
4K Q8T8 ランダムリード | 306.388 MB/s | 899.852 MB/s |
4K Q8T8 ランダムライト | 969.992 MB/s | 1090.003 MB/s |
4K Q32T1 ランダムリード | 298.721 MB/s | 487.360 MB/s |
4K Q32T1 ランダムライト | 702.968 MB/s | 346.617 MB/s |
4K Q1T1 ランダムリード | 49.044 MB/s | 50.847 MB/s |
4K Q1T1 ランダムライト | 274.707 MB/s | 121.753 MB/s |
以上のようにMINISFORUM TL50は、第11世代Tiger LakeのCore i5-1135G7、メモリ12GB、ストレージ512GB SSDを搭載し、サイズが149.6×149.6×55.5mm(幅×奥行き×高さ)のコンパクトなデスクトップPCだ。2.5Gigabit Ethernetを2つ、本体内に2.5インチSSD/HDDを2基内蔵可能と言った特徴を持つ。メモリが12GB固定と言う、用途によっては欠点になりえる部分もあるが、試用した範囲では特に気になることもなく、Tiger Lakeを満喫できる内容だ。
【6月9日訂正】記事初出時、クラウドファンディング実施中としておりましたが、すでに終了していたため、直販サイトでの価格に差し替えました。お詫びして訂正します。