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風呂で使える「防水Androidタブレット」を試す。実際にどこまで濡らしていいのか、メーカーにも聞いてみた

 筆者は音楽が好きだが、最近のVTuberが手掛けるMV(ミュージックビデオ)には、エンタメとしての進化を感じる。VTuberとしての立ち位置やテーマ性を盛り込んだ楽曲に、スピーティーなアニメーションを組み合わせた独特のMVは、かなりの中毒性があるのだ。いにしえのニコニコ動画にも同じようなムーブメントがあったが、あの頃に生まれた芽が大きく花開いた感すらある。

 ここ最近、YouTubeのPAD(PC Watch & AKIBA PC Hotline! plus DVPR)チャンネルでPCケースやミニPCを取り上げる際にスピーカーとして呼ばれる機会が増え、話し方のクセを直したり、スムーズな会話の方法を学ぶためにYouTuberを見て勉強しようと思ったのだが、その過程でこうしたVTuberの配信やそのMVを知り、すっかりハマってしまった。

 どうせならリラックスしているお風呂の時間にも楽しめるといいなあ、と考えてふと思い付いたのが、お風呂でも利用できる「防水対応タブレット」である。

 今回はそうした「防水対応タブレット」の現状を整理し、水場での利用を想定して設計されている2台のAndroidタブレットを実際に使って検証してみた。水場での使用について、メーカーにもアドバイスをもらっているので、気になる人はチェックしてほしい。

意外と少ない「お風呂でも使える」防水対応タブレット

 製品ページなどに「防水機能対応」とあるからと言って、どのモデルも同じようなレベルの防水機能に対応しているわけではない。

 日本では、JEMA(一般社団法人 日本電機工業会)が、「IPXX」という名称で防水防塵機能についての規格を定めている。そして防水・防塵機能に対応するデバイスは、この規格で規定されたテストの結果にもとづいて、どのような状況で利用できるかを明示することを義務づけられている。

 防水機能は、その対応状況によって9つの等級が定められている。その内容を簡単にまとめたのが以下の表だ。

【表1】防水機能の等級とそのサポート内容
等級内容
IPX0水の浸入に対して保護されていない
IPX1垂直に落ちてくる微量の水滴が付いても機能に有害な影響がない
IPX2垂直より左右15度以内の降雨によって有害な影響がない
IPX3垂直より左右60度以内の降雨によって有害な影響を受けない
IPX4いかなる方向からの水の飛沫によっても有害な影響を受けない
IPX5いかなる方向からの水の直接噴流によっても有害な影響を受けない
IPX6いかなる方向からの水の強い直接噴流によっても有害な影響を受けない
IPX7水面下15cm~1m以内で30分間まで水中に沈めても内部に浸水しない
IPX8水面下でも利用可能

 なお、表中では「IPX~」と記述しているが、防塵規格にも対応する場合はXの部分に防塵等級の数字が入る。防塵機能とは、内部にホコリなどの異物が入り込んで故障することを防ぐ機能で、防水機能と同様に1~6までの等級が設定されている。

【表2】防塵機能の等級とそのサポート内容
等級内容
IP0X保護されない
IP1X直径50mm以上の固形物が内部に入らない
IP2X直径12.5mm以上の固形物が内部に入らない
IP3X直径2.5mm以上の固形物が内部に入らない
IP4X直径1mm以上の固形物が内部に入らない
IP5X有害な影響を生じる粉塵が内部に入らない
IP6X粉塵が内部に入らない

 泥だらけになったり、海上での利用を想定しているわけではないので、今回は防水機能を中心に見ていこう。

 等級とそのサポートする内容を見ると、IPX4までは「利用中に雨がぱらついても機器が保護される可能性が高い」といったレベルで、水気の多いお風呂で安心して使えるかというと、ムリがありそうだ。

 しかしIPX5や6の等級であれば水流がかかっても機能には影響がないとされているため、たとえばシャワーがちょっとかかるくらいなら大丈夫だろう。そう考えると、IPX5以上が「お風呂タブレット」として利用できそうな印象だ。

 IPX7と8の等級は、水没した状況における耐久性を示す。これらに対応していれば、たとえばタブレット本体をお湯を張ったバスタブに落としてしまった際にもダメージを受けにくいわけで、お風呂でもより安心したいなら、この等級をサポートしていることを目安にして考えれば良い。

 こうした防水機能の観点から各種タブレットの状況を調べてみると、意外と選択肢は狭かった。まずタブレットの代表選手とも言えるAppleの「iPad」シリーズでは、基本的には防水機能に対応しない。そのためお風呂で使うには、後述する防水ケースを利用しなければならない。

筆者が現在利用しているAppleの「iPad mini 6」は、防水機能に対応しない

 Androidタブレットだと、防水機能対応モデルはそこそこ存在する。ただ、実際に等級レベルまで調べてみるとIPX2~4までのものが多く、外で使っているときに多少雨に降られても大丈夫、というレベルだった。今回のように湿気が多く水をかぶる可能性が高いお風呂で使いたいニーズに応えられるタブレットは、やはり少ない。

 今回はそうした数少ない防水対応タブレットの中から、Samsung「Galaxy Tab S9 FE」、そしてNTTドコモ「dtab d-51C」を取り上げ、実際にお風呂で使ってみた感触を整理してみた。

 なお、Windowsタブレットでもお風呂で使えそうな耐久性の高いモデルはいくつか存在する。パナソニック「TOUGH Book」シリーズや、デル「Latitude Rugged」シリーズがそれにあたる。いずれも高度な防水防塵機能に対応し、お風呂どころではない過酷な環境で利用できることを謳い文句にしているが、非常に重い上に価格が高く、今回の用途には向いていない。

10.1型液晶を搭載する「Dell Latitude 7030 Rugged Extreme タブレット」。標準構成の「定価」は60万円以上……

Samsung「Galaxy Tab S9 FE」、音質が高く操作性にも影響がない

10.9型液晶を備える「Galaxy Tab S9 FE」。実売価格は7万円前後

 Samsung「Galaxy Tab S9 FE」は、10.9型液晶を搭載するタブレットだ。搭載するSoCは同社製の「Exynos 1380」で、メインメモリは6GBを搭載する。

 現行のスマホと比較すると、ミドルレンジに近いスペックだが、最近のAndroid搭載タブレットの中では性能は高めで、Webブラウズや各種アプリの表示はなめらかで美しい。液晶ディスプレイ自体の表示品質もかなり高く、YouTubeの動画も快適に視聴できた。

 防塵防水機能の等級はIPX68と、水面下でも利用可能な強力な防水機能をサポートする。浴室内に持ち込んでうっかりシャワーをかけてしまったり、バスタブに落としてしまうようなことがあっても、故障する可能性は低い。

 今回は実際に浴室に持ち込んで霧吹きで水をかけてみたり、バスタブからお湯をすくってパチャパチャとかけたり、シャワーでちょっとだけお湯をかけたりしてみた。水没しても大丈夫な防水等級だが、用途的にはそこまでのテストは必要ないと判断した。

 こうして水がかかった状態になっても、YouTubeなどコンテンツの視聴はまったく問題なかった。また内蔵スピーカーは高音域に強く全体的に透明感があり、音質のレベルは高い。湿気の多い浴室内でも音質に変化はなく、別途スピーカーを用意する必要はない。

水がかかった状態でも普通に利用できるし、液晶の表示品質は高い
充電ポートは縦持ちしたときの底面に装備する。側面の外装にはこうした充電ポートやスピーカーなどの穴があるが、そうした穴に’水が入り込むことを防ぐフタは付いていない

 タッチしたときの反応も機敏で、濡れた指で触ってもおかしな挙動はなかった。画面が水に濡れた状態でも指先はスムーズに動かせたし、タップやピンチイン・アウトといったタッチ関係の操作もきちんと認識していた。ただ画面上を水滴が垂れるときに、画面がぶれたりアプリが勝手に最小化したりといった現象がまれに起こった。

  Samsungの広報担当者にこうした環境で使う際の注意点を聞いたところ、プールの水や海水にはさらさないでほしいということ、汚れた水や石けん液などが付いた場合はすみやかにきれいな水で洗い流して乾燥させてほしい、ということだった。またサウナやスチームバスルームなど、高温になりやすい環境では防水機能が損なわれる可能性があるようだ。

 また防水防塵機能は永続的に維持されるものではないので、環境による自然劣化もあり得るという。より安心して使いたいなら、水没破損や落下などによる画面割れ、故障や盗難時にわずかな負担金で端末の交換などが行なえる「Galaxy Care」に加入するのもおすすめだ。

Galaxy Tab S9 FEでGalaxy Careに加入する場合、月額料金は539円。修理時の自己負担金は1万1,000円までとなる

NTTドコモ「dtab d-51C」、除菌シートで常に清潔

10.1型液晶を搭載するスタンダードなスタイルのタブレット「dtab d-51C」。直販サイトの定価は6万5,230円

 NTTドコモの「dtab d-51C」は、10.1型液晶ディスプレイを搭載するタブレットだ。搭載するSoCは「SnapDragon 695 5G」でメインメモリは4GBと、現行のスマホで言うならどちらかと言えばローエンド寄りのミドルレンジといったところか。

 とはいえ、WebブラウズやYouTubeなどのコンテンツを楽しむ程度なら、まったく問題はない。液晶画面の輝度は高く、表示品質も高いため、映像コンテンツの消費にはまったく問題ない。

 防水防塵機能の等級はIP68で、先ほど紹介したSamsungのGalaxy Tab S9 FEと同じだ。水面下での利用をサポートする強力な「お風呂タブレット」であり、Webサイトでもお風呂やキッチンで利用できることをアピールしている。また除菌シートでの拭き取りにも対応しており、常に清潔な状態で利用できるのも特徴の1つと言える。

 こちらもお湯を張った浴室内に持ち込んで、Galaxy Tab S9 FEと同様のテストを行なったところ、基本的な操作感は乾燥した状態とほとんど変わらない。霧吹きや手でちょっと水をかけたくらいで画面が暗くなったり、シャットダウンしたりすることはないし、タッチ操作に支障が発生することもなかった。

こちらも水やお湯がかかった状態でも普通に利用できた。
充電ポートは縦持ちしたときの上部に装備する。充電ポートやヘッドフォン端子にカバーは付いていない

 音質の傾向もGalaxy Tab S9 FEに似ていた。湿度の高い入浴中の浴室内でも高音域の透明感は維持され、VTuberのミュージックビデオもクリアな音質で再生された。リラックスできるお風呂中だからこそ、好きな音楽や動画を高音質で楽しめるのはなかなか快適だ。

  ドコモの広報担当者にも同じようにお風呂などで利用した際の注意点を聞いたところ、温泉の湯や石けん洗剤などが付いたり、バスタブのお湯の中に落としたときは、すぐにキレイにぬぐいて乾燥させてほしいとのことだ。カメラのレンズ内に結露が生じた場合にも同様だという。また使用中に充電ポートやイヤフォン/マイク穴、空気抜き穴などに水がたまることがあるので、そうした部分もしっかりと水抜きしてほしいとのこと。

 Galaxy Tab S9 FEでも同様だが、濡れた環境で放置したままにするのはよくない。お風呂から上がったら、きちんと水抜きして乾燥させる手順が必要である。

 今回の取材でも無償修理の対象外となるケースとして「本端末内部への水の浸入による故障、損傷、本端末の水濡れシールが反応している場合、本端末に水没・水濡れなどの痕跡が発見された場合、または結露などによる腐食が発見された場合」を上げており、常日頃からきちんとメンテナンスしなければならないことが分かる。

microSDカードスロットを装備しており、ストレージを拡張できる

防水カバーは手軽だが運用面に難あり、防水タブレットのほうが良い

 今回試したお風呂でも使える防水機能対応タブレットは、今まで紹介してきた通りYouTubeを楽しむ程度なら問題なく快適だし、音質も十分優れている。お風呂場でも音楽やミュージックビデオを楽しみたいという筆者のニーズには十分以上に応えてくれることがよく分かった。

 一方、防水機能の等級が高いモデルと言えども、それなりに繊細な扱いは必要だということも分かった。水場に放置したり、石けんや洗剤などが付いたりすることはなるべく避けたいし、使用中にバスタブにドボンと落としたりするのも、運用的にはやはり避けるべきところではある。動画を視聴する際にも、バスタブカバーの上に置くなどの工夫は必要だ。

バスタブにかぶせるカバーの上にスタンドを置くと、タブレットの安定感が増すのでおすすめ

 ちなみにこうした防水タブレットの「防水機能」のみを抜き出したアイテムとして、防水カバーというものも売られている。今回はこうしたカバーにiPad mini 6を入れて試してみた。

 カバーは予想したよりはゆったりとした作りで、出し入れは楽だった。また上部で密閉するためのレバーも3つ付いており、てこの原理でしっかりと閉まる。水が内部に入り込むこともなく、安心して使えそうだ。

内部にタブレットを入れて水に濡れることを防ぐ防水カバーで、防水等級はIPX8対応だという。Amazonで1,984円で購入した
こんな感じでiPad mini 6を入れる。上部に3つの密閉用レバーがあり、簡単に密閉できる

 ただ運用はちょっと厳しい。やはりカバー越しなので、タッチ操作やボタン操作はかなり難しくなる。また密封された状態なので、スピーカーの音質が著しく低下し、Bluetooth接続の防水スピーカーが欲しくなる。こうした使い勝手の面を考えると、Galaxy Tab S9 FEやdtab d-51Cのような防水タブレットのほうがおすすめと言えそうだ。

スタンドが付いており、タブレットを入れた状態で自立するのは便利だった