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ソニー「WF-1000XM5」のノイキャンはマジでほとんど聞こえなくなる。家・電車・街中・喫茶店で捗り具合を徹底検証

ソニーの完全ワイヤレスイヤフォン「WF-1000XM5」。大ヒットした前世代の「WF-1000XM4」と比べ音質だけでなくノイズキャンセリング機能が向上している点が最大の特徴。実売価格は3万7,000円前後。色は写真のブラックのほか、プラチナシルバーが用意されている

 ソニーの完全ワイヤレスイヤフォンのフラグシップモデルである「WF-1000XM5」が9月に登場した。音質の向上もさることながら、前世代の「WF-1000XM4」でも評判の高かったノイズキャンセリング性能がより強化されている点が注目されている。

 音質チェックは家電量販店に設置されている試聴機で行なうことができるが、ノイズキャンセリング機能の効果を店頭できちんとチェックすることは難しい。そこで、今回は筆者が実際に購入したWF-1000XM5で、日常シーンにおける効果を徹底的にチェックしてみた。WF-1000XM5のノイズキャンセリング機能が気になっている人はぜひ参考にしていただければと思う。

 なお、筆者もそうであったが、前モデルのWF-1000XM4を所有していて、WF-1000XM5に買い替えるか悩んでいる人も多いと思われるので、今回はWF-1000XM4と比較している。

小型化し、音質も向上している

 まずは前世代のWF-1000XM4と比べて大きく変わった点を簡単に見ていこう。

 WF-1000XM5の最大の特徴は、小型化および軽量化されている点である。WF-1000XM4と比較して本体(片耳)のサイズが約25%小さくなり、重量も約19%軽くなっている。全体的に評価の高かったWF-1000XM4だが、イヤフォン本体が少し大きく重いことを難点として挙げる人も多かった。この点はまさにユーザーの声を反映した改良点で、筆者がWF-1000XM5を購入した大きな要因の1つでもある。

 小型化、軽量化というと心配になるのがバッテリの持ちだが、ノイズキャンセリング機能を有効にした場合は8時間の連続音楽再生が可能で、ノイズキャンセリング機能を無効にした場合は12時間の連続音楽再生可能であるなど、WF-1000XM4から変わっていない。

WF-1000XM5は、本体、充電ケースともに小型化、軽量化されている
WF-1000XM5の本体の片耳(左)の重さは約5.9g、WF-1000XM4の本体の片耳(右)の重さは約7.3g、サイズが約25%小さくなっていることに加え、重量も約19%軽くなった
WF-1000XM5の充電ケース(左)とWF-1000XM4の充電ケース(右)。充電ケースもかなり小型化されている
ケースでイヤフォンを2回フル充電可能で、最大36時間、イヤフォン本体とケースだけで使用することができる

 音質は、聞き比べると誰でもはっきりと分かるくらい向上している。解像度が上がり、ボーカルも楽器の音もよりリアルに再現されるようになった。低域、中域、高域のバランスもよい。

 ただし、音質の評価は聴く音楽のジャンルや個人の好みで大きく変わる。この点については家電量販店などの視聴機で、自分の好みに合うか確認することをおすすめする。

最適なサイズのイヤーピースを使用することが重要

 ノイズキャンセリング機能の効果や音質を最大限発揮させるには、イヤフォンを正しく耳に装着することはもちろんのこと、耳にフィットするイヤーピースを選ぶことが重要となる。ノイズキャンセリング性能を試す前に、まずは最適なサイズのイヤーピースを探すことから始めた。

WF-1000XM5には出荷時に本体に装着されているMサイズのイヤーピースに加え、「XS」「S」「L」の3つのサイズのイヤーピースが付属する

 WF-1000XM5には「XS」「S」「M(出荷時に装着されているもの)」「L」の4つのサイズのイヤーピースが付属している。どれが自分にフィットするのか迷うところだが、ソニーのヘッドフォン/イヤフォン用アプリ「Headphone Connect」の「最適なイヤーピースを判定」機能を使えば、最適なサイズを知ることができる。まずはこの機能を使用して、どのサイズが自分にフィットするか確認する。

 なお、Headphone ConnectはiOS版とAndroid版が用意されており、スマホやタブレット、ソニーのAndroid搭載ウォークマンで使用できる。

ソニーのヘッドフォン/イヤフォン用アプリ「Headphone Connect」は、iOS版とAndroid版が用意されており、iOS版は「App Store」で、Android版は「Google Play」で入手できる
Headphone Connectをインストールして、WF-1000XM5を接続する
自分に合ったイヤーピースのサイズを確認するには、システムを開き、「最適なイヤーピースを判定」をタップする
「すべてのサイズを比較する」をタップする
比較したいサイズを2つ以上選択して「次へ」をタップする
「測定開始」をタップ、画面の指示に従い、各イヤーピースの密閉状態を測定する
すべてのサイズの測定が終了したら、最適なイヤーピースが判定される。筆者の場合はLサイズが最適のサイズであった

家の中でノイズキャンセリング機能を検証

 WF-1000XM4のノイズキャンセリング機能は、全メーカーのワイヤレスイヤフォンと比較してもトップレベルの性能であったので、正直WF-1000XM5でノイズキャンセリング機能が強化されていると言われても半信半疑だった。しかし、実際に試してみると、その差ははっきりと分かるものであった。

 今回は家の中、電車の中、街中など、日常生活空間においてWF-1000XM5のノイズキャンセリング性能を試してみた。音楽再生にはLDAC接続したソニーのウォークマン「A307」を使用。音数の少ない静かなジャズバラードなどの曲と音数の多いロックではノイズキャンセリング時の周囲の音の聞こえ方も変わるため、音楽再生時のノイズキャンセリング効果はその両方で検証している。

音楽再生はLDAC接続したソニーのウォークマン「A307」で実行。ボリュームは家の中では「60(最大100)」。そのほかの場所では「70(最大100)」に設定した

 家の中でノイズキャンセリング機能を比較した結果は下の表にまとめた通りだ。

屋内でノイズキャンセリング機能をチェック
WF-1000XM5
音楽なし
WF-1000XM5
音楽あり(静かなジャスバラード)※1
WF-1000XM5
音楽あり(ロック)※2
WF-1000XM4
音楽なし
WF-1000XM4
音楽あり(静かなジャスバラード)※1
WF-1000XM4
音楽あり(ロック)※2
強風にしたエアコンの音
(43dB~49dB)
かすかに聞こえる全く聞こえない全く聞こえないエアコンの音と分かるくらいに聞こえるほぼ聞こえない全く聞こえない
背後で掃除している掃除機の音
(60dB~62dB)
高音のシャーという音が聞こえるかすかに聞こえるほぼ聞こえない掃除機の音と分かるくらいに聞こえる高音のシャーという音が聞こえるかすかに聞こえる
ボリュームを30にしたTVの音
(48dB~56dB)
ナレーションがかすかに聞こえるほぼ聞こえない全く聞こえないはっきりと聞こえるかすかに聞こえるほぼ聞こえない
家人に普通に話かけられる
(36dB~56dB)
かすかに聞こえる全く聞こえない全く聞こえないきちんと聞こえるかすかに聞こえるほぼ聞こえない

※騒音の値はスマホアプリ(騒音測定器)で簡易的に計測した参考値 ※1 ノラ・ジョーンズのCome Away With Me  ※2 ザ・ローリングストーンズのRocks Off

 まずエアコンの音(43dB~49dB)が消えるか、エアコンの送風を「強」にした状態で、ちょうど真下あたりで試してみた。WF-1000XM5は音楽を再生していない状態でもかすかに聞こえるくらいでほぼエアコンの音が分からなくなる。

 対してWF-1000XM4のほうは音自体はかなり小さくなるもののエアコンの音がしているとはっきり分かる。明らかにWF-1000XM5のほうがノイズキャンセリング性能は優秀だ。ただし、音楽を流した状態では、WF-1000XM4もWF-1000XM5と同様にエアコンの音がまったく聞こえなくなる。

 次に背後で掃除をしている掃除機の音(60dB~62dB)が消えるか試してみた。WF-1000XM5は静かなジャズバラードを聴いている状態ではかすかに聞こえる程度で、ロックなどを聴いているとほぼ聞こえなくなる。対してWF-1000XM4はロックを聴いていても背後の掃除機の音がかすかに聞こえ、特に高音の音が気に障る。

 家人が見ているTVの音を消して自分の作業に集中したいときもある。TVから1.5mほど離れた場所で、TVの音が消えるかどうかも試してみた。TVは東芝製のものでボリュームは少し大きめの「30」に設定した。WF-1000XM5はナレーションの声がかすかに聞こえる程度で、音楽を流すと静かな曲でもほぼ聞こえなくなる。

 対してWF-1000XM4はロックなどの音の大きい曲を聴いている場合はほぼ聞こえなくなるが、静かな曲ではTVの音が邪魔になるくらいには聞こえてくる。この検証でもWF-1000XM5のノイズキャンセリング機能のほうがはっきりと優れていることが分かった。

 家の中で完全に雑音をシャットアウトしたいなら、WF-1000XM5はまさに最適と言える。家中のさまざま音に邪魔されることなく音楽を聴くことができる。ただし、ノイズキャンセリング機能が強力過ぎて、音楽を再生していると話かけられてもまったく気付くことができない。その点には注意が必要だ。

電車内でノイズキャンセリング機能を検証

 通勤、通学に完全ワイヤレスイヤフォンを利用している人も多いので、電車内でもノイズキャンセリング機能を検証してみた。検証したのは東京メトロの地下鉄日比谷線の電車内で、時間帯は午後。検証結果は下の表にまとめた通りだ。

電車内でノイズキャンセリング機能をチェック
地下鉄日比谷線の車内(66dB~79dB)
WF-1000XM5
音楽なし
WF-1000XM5
音楽あり(静かなジャズバラード※1)
WF-1000XM5
音楽あり(ロック※2)
WF-1000XM4
音楽なし
WF-1000XM4
音楽あり(静かなジャズバラード※1)
WF-1000XM4
音楽あり(ロック※2)
走行音半減する感じだが十分聞こえる多少聞こえる程度になる全く気にならなくなるそれなりにうるさく感じる音楽の邪魔になるレベルで聞こえる走行速度が速くなると多少気になる程度
車内アナウンス聞きとれるレベルで聞こえるかすかに聞こえる聞こえないはっきりと聞こえる聞きとれるレベルで聞こえるかすかに聞こえる
目の前で会話している人の声かすかに聞こえる聞こえない聞こえない少し聞こえる聞こえない聞こえない

※騒音の値はスマホアプリ(騒音測定器)で簡易的に計測した参考値 ※1 ノラ・ジョーンズのCome Away With Me  ※2 ザ・ローリングストーンズのRocks Off

 WF-1000XM5は耳に装着しただけで電車のうるさい走行音が半減する。静かな曲を聴いている時は走行音が多少聞こえるが、ロックなどの激しい曲を聴いている時は走行音が気にならなくなる。車内アナウンスは静かな曲を聴いている時はかすかに聞こえる程度で、ロックを聴いている時は聞こえない。目の前で会話している人の声も音楽を聴いていると聞こえないなど、WF-1000XM5のノイズキャンセリング機能は電車内でもかなり効く。車内アナウンスを聞きたい場合は注意が必要となる、それほどのレベルだ。

 対して、WF-1000XM4のノイズキャンセリング性能はWF-1000XM5と比べると明らかに劣る。静かな曲を聴いている場合は電車の走行音が常に邪魔になるし、ロックなどの音数が多くて激しい曲を聴いている場合も、電車が速度を上げて走行音が大きくなると、走行音が気になるレベルで聞こえる。目の前で会話している人の声は音楽を聴いていると聞こえないが、車内アナウンスはロックを聴いている時でも何かアナウンスされているということは分かる。

街中でノイズキャンセリング機能を検証

 次に街中で車の音や人の歩く音、話し声が消えるかどうかを検証してみた。検証したのは東京の秋葉原の中央通り沿いの一番人通りが多い場所で、時間は16時から17時の間。検証結果は下の表にまとめた通りだ。

街中でノイズキャンセリング機能をチェック
秋葉原の中央通り(64dB~74dB)
WF-1000XM5
音楽なし
WF-1000XM5
音楽あり(静かなジャズバラード※1)
WF-1000XM5
音楽あり(ロック※2)
WF-1000XM4
音楽なし
WF-1000XM4
音楽あり(静かなジャズバラード※1)
WF-1000XM4
音楽あり(ロック※2)
人の歩く音ほぼ聞こえない聞こえない聞こえない人がたくさん歩いていると分かるかすかに聞こえるほぼ聞こえない
1m先の人の話し声ほぼ聞こえない聞こえない聞こえないかすかに聞こえるかすかに聞こえるほぼ聞こえない
車の走行音ほぼ聞こえない聞こえない聞こえないかすかに聞こえるほぼ聞こえない聞こえない

※騒音の値はスマホアプリ(騒音測定器)で簡易的に計測した参考値 ※1 ノラ・ジョーンズのCome Away With Me  ※2 ザ・ローリングストーンズのRocks Off

 街中ではWF-1000XM5のノイズキャンセリング性能に改めて驚かされた。装着しただけで周りの音がすっと聞こえなくなる。音楽を再生すると静かな曲でも周りの音が聞こえなくなる。ガードレールによりかかって検証していたため、すぐ後ろを車がそれなりに速い速度で走っていくのだが、その音さえも聞こえない。ちょっと危険を感じるほどである。

 WF-1000XM4のほうは、装着しただけでは雑踏の音は消えない。人の行きかう音や車の音がきちんと認識できるレベルで聞こえる。ただし、音楽を再生すると静かな曲でも車の走行音はほぼ聞こえなくなり、人の行きかう音や話し声はかすかに感じられるレベルになる。ロックなどの激しい曲の場合は周りの音はほぼ気にならなくなる。街中で使う分にはWF-1000XM4も十分なノイズキャンセリング性能を持つと言える。

喫茶店でノイズキャンセリング機能を検証

 喫茶店などの店内で隣の話し声がうるさくて仕事や読書などに集中できないときがある。そういう場合もノイズキャンセリングイヤフォンは有効である。喫茶店で周りの話し声がどれだけ消えるかも検証してみた。

 検証したのは秋葉原の某チェーン店のカフェ。ちょうど愛を語りあうカップルとあやしい保険の勧誘をしている中年男性とその話を聞いている中年男性の間という、まさに検証にうってつけの場所に席をとることができたので、そこで話し声が消えるか試してみた。結果は以下の表の通りだ。

喫茶店でノイズキャンセリング機能をチェック
秋葉原の喫茶店(57dB~64dB)
WF-1000XM5
音楽なし
WF-1000XM5
音楽あり(静かなジャズバラード※1)
WF-1000XM5
音楽あり(ロック※2)
WF-1000XM4
音楽なし
WF-1000XM4
音楽あり(静かなジャズバラード※1)
WF-1000XM4
音楽あり(ロック※2)
テーブルの距離が60cmくらいの女性の話し声ほぼ聞こえない聞こえない聞こえない聞き取れるレベルで聞こえるかすかに聞こえるほぼ聞こえない
テーブルの距離が60cmくらいの男性の話し声ほぼ聞こえない聞こえない聞こえない聞き取れるレベルで聞こえるかすかに聞こえるほぼ聞こえない
店内に流れている音楽ほぼ聞こえない聞こえない聞こえないほぼ聞こえない聞こえない聞こえない

※騒音の値はスマホアプリ(騒音測定器)で簡易的に計測した参考値 ※1 ノラ・ジョーンズのCome Away With Me  ※2 ザ・ローリングストーンズのRocks Off

 WF-1000XM5のほうは、耳に装着しただけで、女性の声も男性の声もほぼ聞こえなくなる。音楽を再生した場合は静かな曲でも話し声は聞こえなくなる。隣の男性はかなり熱のこもった大きめの声でしきりに保険に加入することをすすめていたが、その声も見事に聞こえなくなった。耳に装着しただけで、店内に流れている音楽もほぼ聞こえなくなる。WF-1000XM5は、カフェなどで雑音をシャットアウトしたい場合の耳栓としてもかなり重宝しそうだ。

 一方、WF-1000XM4の場合は耳に装着しただけでは話し声は消えない。音楽を再生しても、静かな曲の場合は話し声が少し気になる程度に聞こえる。この点でもWF-1000XM4ノイズキャンセリング性能はWF-1000XM5と比べてかなり劣ることが確認された。

ノイズキャンセリング機能だけでも買い替える価値アリ

 以上の検証から、WF-1000XM5のノイズキャンセリング性能は、前世代のWF-1000XM4と比較すると格段に向上していることが確認できた。車が後ろを通っても気づかないほどの性能なので、日常生活においてはこれ以上望むべきではないレベルにあると言ってよいだろう。ノイズキャンセリング性能を重視するなら、これだけでもWF-1000XM4からWF-1000XM5に買い替える価値は十分にある。

 小型化し、音質も向上、さらにノイズキャンセリング性能も格段に向上しているなど、WF-1000XM5はWF-1000XM4と比較すると、多くの面でパワーアップされている。筆者自身、結構高価なことから、WF-1000XM4から買い替えるのにかなり悩んだが、結果的には大満足している。

 実売で3万7,000円前後と少し高価であることが難点だが、ノイズキャンセリング性能が優秀かつ高音質の完全ワイヤレスイヤフォンが欲しい人はぜひ注目していただきたい。