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音質も大事だけど……。用途に合わせて選びたいイヤフォン
2023年9月5日 06:17
イヤフォンまたはヘッドフォン、それは持ち運んで音楽を聴いたり、TVやゲームなどをプレイする際に周囲に音を出さず自分のみが音声を楽しめるようにするなど、前世紀より用途に応じて使い続けられてきたオーディオデバイスの1つである。
音質へのこだわりが強い人には耳を覆うように装着し、密閉感と高音質を実現できるヘッドフォンがおススメだが、屋外での利用や自宅のパーソナルスペースで気軽に音声を楽しむのにも、イヤフォンは最適なデバイスと言える。
ところで、イヤフォンやヘッドフォンにはいくつか種類がある。音声出力機器との接続は有線か無線の2択となるが、音声を出力する基本的な仕組みは同じながらも、イヤフォンから耳まで音を届けるアプローチにはいくつかの種類があり、好みや用途に応じて使い分けるのが楽しいイヤフォンの楽しみ方と言える。
そこで今回は「装着パターン」でイヤフォンとヘッドフォンの種類を分けて、種類別にその特徴を解説するとともに、おススメの製品を紹介していきたい。なお、今回も気になる商品は実際に購入して何点か試してみたので、その際の使用感や使い心地、気になる点なども合わせて紹介していく。
なお、イヤフォンやヘッドフォンの音質は音声を生成する機構、ドライバユニットによるところが大きい。ドライバユニットにはダイナミック型やバランスドアーマチュア型、バランス型、コンデンサ型など多くの種類があり、こうしたドライバユニットによっても音の性質はかなり異なるなど、奥が深すぎるので本稿ではここには触れていない。
興味のある人は、以下の装着タイプ以外にこうしたドライバユニットの違いを聴き比べたりして楽しむのも、イヤフォンの楽しみ方の1つと言える。
インナーイヤー型
かなり古くから発売されている昔ながらのイヤフォンのスタイル。ハウジングを耳介の部分に装着して使用する。耳穴の奥にまで入れずに使用することから、耳に入れるというより引っ掛けると表現する場合も多い。
逆にインナーイヤーという表現から耳介も耳穴も同じ扱いとして、インナーイヤーと言いながら実態はカナル型の製品もたまに見かけるため、インナーイヤー型を買う場合は、写真などでその形状を確認するのがベストだ。
日本でおそらく最も知名度の高いインナーイヤー型はAppleのスマートフォン(iPhone)に付属するイヤフォンだろう。iPhoneを購入すると付属するこの有線イヤフォンがいわゆるインナーイヤー型の典型的なスタイルと言える。また、TWSとして発売されている「AirPods」もインナーイヤー型の1つだ。
その特徴は自然な装着感だ。耳の奥まで入れずに手前の耳介に装着して耳穴を覆うような仕組みのため、圧迫感が少ないことから現在でも愛用者は多い。また、古くから多くの製品がリリースされていることから、音にこだわりのある人の中にはあえてインナーイヤー型を使っている人が多い印象も受ける。
難点は装着の手軽さゆえの外れやすさだ。また圧迫感が少ないということは周囲の音も拾いやすいため、屋外などでは使いにくく、静かな場所ではその構造上、音漏れなども発生しやすいことから、近年は後述のカナル型が主流となっている。
筆者もインナーイヤー型はあまり手持ちがないが、久しぶりに発掘して装着してみたところ、装着時の軽快な感覚は悪くないと感じた。一方で、1度カナル型に慣れてしまった体では外れやすさや密着感の少なさの方が気になった。
メインストリームから外れているが、今でも新製品は多く発売されている。その代表とも言えるのが、Appleの「AirPods」だ。TWSのため、手軽に高音質を楽しめるデバイスとして重宝している人も多い印象だ。
なお、TWSにおいて外れやすい弱点はかなり致命的だが、他社からは「AirPods」のハウジング同士を有線接続し、首からかけて使えるオプションも多く発売されているので、紛失が気になる人は試してみるといいだろう。
カナル型のTWSを多く発売するSOUNDPEATSもインナーイヤー型のTWS「SOUNDPEATS Air4」を発売している。同社は全体的に低価格帯の製品を多くリリースしているが、製品の品質はかなり高く人気のブランドで愛用している人も多い。TWSのインナーイヤー型を試したい人はチェックしてみるのがおススメだ。
有線接続のインナーイヤー型は今でもソニーやオーディオテクニカなど多くのメーカーが製品を販売している。たとえばイヤフォンでは定番のメーカー、オーディオテクニカが発売する有線接続のインナーイヤー型「ATH-CM707」などは、10年以上前に発売して今でも現行品として販売されているロングセラーだ。価格は発売当初から多少は下がっているが、インナーイヤー型が今なお根強く人気を保っている証の1つと言える。
カナル型
カナル型は、ハウジングに装着したイヤーピースを耳穴にすっぽりと入れることで、密閉性を高める装着スタイルのイヤフォンだ。2006年前後くらいからコンシューマ向けの製品が多くリリースされるようになった印象が強い。コンシューマ向け製品が出始めの頃は、まだカナル型という単語に馴染みがないこともあり、特徴がより伝わるように(耳栓型)と併記する場合もあった。
その特徴は“耳栓型”の別称から分かるように密閉性の高さだ。耳穴をイヤーピースが塞ぐ仕組み上、それだけで周囲の環境音はかなりシャットアウトされる。実際に音を出さない状態のままでカナル型のイヤフォンを装着した場合、それだけでも周囲の細かな音は遮音されて聞こえなくなる。
ちなみに、世間一般で「ノイズキャンセリング」と呼ばれる機能には、アクティブとパッシブがあり、アクティブはデバイスに備えるマイクで周辺の環境音などを拾い、それと相反する音を使ってノイズを打ち消すことでノイズ除去を行なう仕組みだが、パッシブノイズキャンセリングはこのカナル型の形状そのものを指すことが多い。つまり装着するだけで不要なノイズが低減されるというわけだ。
カナル型の難点は、耳穴にダイレクトに挿入して使用する仕組みのため、長時間付けたままだと耳が痛くなる場合があるなどの弊害もある。もちろんほかの形状でも類似の事象は発生するが、やはり耳穴の中に直接入れるため、イヤーピースのサイズや形状が少しでも噛み合わないと、1~2時間で痛くなる場合も多いようだ。また、耳穴の中に外れたイヤーピースが残ってしまうような現象が起こるのも、カナル型ならではの難所の1つといえる。
ほかにも、密閉性の高さが魅力であると同時に、それが圧迫感として馴染めない人も多く見られる。装着時に違和感を覚えたり、吐き気など体調を悪化させてしまう人もいるため、この辺りは自身の体質などと相談する必要がある点には注意が必要だ。
苦手な人や体質上使えない人もいる一方で、個人的な感覚ではイヤフォン市場はカナル型が主流になっている印象が強い。そのため、何も考えずにイヤフォンを探すと山のようにカナル型イヤフォンがヒットする。加えて、ノイズキャンセリング機能との相性の良さもあり、高機能のTWSはほとんどがカナル型だ。
そんな中でコストパフォーマンスでおススメしたいのはAmazonが販売する「Echo Buds」だ。アクティブノイズキャンセリング機能も備えるほか、Alexaによる音声コマンドも使えるなど、多機能な製品に仕上がっており、価格も参考価格は1万2,980円だが、頻繁にセール価格で販売されるため、お得に買えることが多いのも嬉しいポイントだ。
そしてハイエンド製品からはソニーが9月1日に発売したばかりの「WF-1000XM5」を推しておきたい。筆者もどこかのタイミングで購入を検討しているアクティブノイズキャンセリング機能搭載のTWS新製品だ。前モデルの「WF-1000XM4」も魅力的な製品だったが、今回の5では部品の小型化などにより、前モデルで7.3gだった装着部が5.9gまで軽量化したという。また、ノイズキャンセリング機能も強化されており、さらに高次元のノイズキャンセリング機能が楽しめるようなので、試すのが楽しみだ。
いつもソニーのTWSばかり紹介しているが、比較のために近日購入してチェックしてみようと思っているのが、パナソニックのテクニクスブランドで発売されているカナル型フラッグシップモデル「EAH-AZ80」だ。まずは一目見ただけでビビッとくる高級感のあるデザインが非常にクールだ。また、デュアルハイブリッドノイズキャンセリングなど、ノイズキャンセリングの機能もかなり強力そうなので、是非試してみたいところだ。
筆者個人としては、正直なところ屋外での利用はもうアクティブノイズキャンセリング機能搭載のカナル型TWS以外は選択肢は存在しないほどにどっぷりと使っている。色々な製品を試したが、感覚的には2万円以上の製品のノイズキャンセリング機能は、低価格製品のノイズキャンセリング機能とは別次元の世界が広がるため、低価格製品で試して、ノイズキャンセリングの効果があまり感じられなかった場合は、こうした高級TWSも試してみるのをおすすめしたい。
なお、ノイズキャンセリングの性能の高さで評判が高かった製品の中では、老舗オーディオーメーカーのボーズが発売する「Bose QuietComfort Earbuds II」についてもチェックしたいところだが、こうした高級TWSを買いまくっているといくら金があっても足らないため、悩ましいところだ。
オープンイヤー型(骨伝導型含む)
オープンイヤー型は、カナル型とは真逆のアプローチで装着するスタイルのイヤフォンだ。端的に言うと耳穴をふさがずに装着して音声を聴くタイプを広くオープンイヤー型と呼び、近年盛り上がりを見せている。
一般的なオープンイヤー型では、ガイドを耳に引っかけて装着し、耳穴の近くにハウジングの音声出力部がくるように配置して利用する。これにより、耳穴にのみ音声が届くという仕組みで、空気伝導と呼ばれることもある。
中には耳に装着するイヤーカフと呼ばれる耳飾りの形状の物もあり、こちらは耳にイヤフォンを挟む形で装着することで、音声出力部がちょうど耳穴のそばにくるようなスタイルとなっており、一見するとイヤフォンに見えず、ユニークなビジュアルとなっている。
圧迫感がないため、カナル型が苦手な人に高評価を得ているようで、筆者も実際に試してみたが、確かに耳穴の圧迫感は皆無であり、インナーイヤー型以上の解放感が得られる点はポイントが高い。構造上、音漏れが気になる人もいるかもしれないが、音声の指向性がしっかりと確保されており、あまりボリュームを上げすぎなければ、外した場合もほとんど周囲に音が聞こえない。
難点はやはり密閉性の真逆をいく開放型のため、当たり前の話となるが、静寂を好む層には向かない。そして、これは一部のメガネ装着者たち限定の悩みとなるが、ガイドを耳に引っかけるという装着スタイルからメガネとバッティングする場合が多々あるため、メガネ装着者たちはちょっと注意が必要だ。
オープンイヤー型として、いくつかチェックしてみたが、NTT sonorityが発売するパーソナルイヤースピーカー「nwm MWE001」がかなりよかった。有線接続のインナーイヤー型イヤフォンとなるが、NTTが開発したパーソナライズド・サウンド・ゾーン機能により、音漏れがかなり防がれるという。周囲の評判もかなりよく、カナル型が苦手な人たちの多くがチェックしていた。
また、後述の骨伝導イヤフォンのトップブランドであるShokzも最近、オープンイヤー型の「OpenFit」を発売している。こちら、筆者は未チェックながら、実際に使ってみた周囲の評判がかなりよかったので合わせて紹介しておく。
イヤーカフ型としては、Amazonなどで検索すると山のようにヒットするのだが、低価格でカラフルな製品はイヤーカフとしては魅力的ながら聞いたことのないメーカーの製品ばかりだったので、こちらでの紹介は控えようと思う。
オープンイヤー型の亜種とも言えるのが骨伝導型イヤフォンだろう。耳を塞ぐ事なく、耳の手前から引っかけて、ハウジングに相当する部位をこめかみ辺りにフィットさせる感じで装着するスタイルのため、ある意味、オープンイヤー型の先駆者的な存在とも言える。直接骨に接した部分からの振動で音を伝える仕組みとなっており、音を出すことなく、音を伝えるという魔法のようなギミックだ。
以前より耳の不自由な人向けの医療系の技術として研究されていたが、近年は一部のメーカーから製品がリリースされるようになった。代表的なメーカーはShokzで、骨伝導型イヤフォンでは圧倒的シェアを誇り、高機能な製品を数多くリリースしている。
オープンイヤー型共通の解放感は言うまでもなく、密閉感がない点も同様だ。なお、こめかみを押さえるような装着状態となるため、長時間装着していると頭が痛くなるという人もいるようなので、体質など自身の体調と相談して利用するのがいいだろう。
これまでもいくつかの骨伝導イヤフォンなどのデバイスを試してみたが、今回はShokzのハイエンド骨伝導イヤフォン「OpenRun Pro」を数日間試してみた。低価格な骨伝導イヤフォンの場合、どうしてもその構造上、音質がイマイチであることが多いのだが、「OpenRun Pro」は、どこかから音が出ていると思わせるレベルの高音質が楽しめたのは驚きの体験だった。また、音漏れについてもほとんど感じることのないレベルで、使い勝手もかなり良好だった。
オーバーヘッド型(ヘッドフォン)
音声を耳元で聴く機能を備えるヘッドフォン。大型のハウジングと装着時に耳を覆うイヤーパッド、両耳のハウジングをそれぞれヘッドバンドで繋ぐ作りとなっている。イヤフォンと比べてもその歴史は遥かに古く、100年以上の歴史があるようだ。ここではその詳細は控えるので、興味がある人は調べてみるといいだろう。
その特徴はやはり耳を覆う大型のハウジングとイヤーパッド、これで耳を完全に覆う形で装着されるため、密閉感は後述のイヤフォンと比べてもかなり高い。加えて、耳全体を覆いながらも、耳穴の周辺はイヤーパッドによる隙間がかなり確保される製品が多いため、密閉感を保ちながら耳穴には何も入らないので、後述のカナル型などが苦手な人でもヘッドフォンなら使える人は多い。
ハウジング部が大型なことから音質はトップクラスであり、実際にプロの現場などで使われることも多い。また、ゲーミングオーディオデバイスとして用意されているのは、そのほとんどがゲーミングヘッドセットと呼ばれるマイクも備えたオーバーヘッド型のヘッドフォンとなっている。
ゲーミングヘッドセットの中には単なる2chのヘッドフォンではなく、バーチャルサラウンド環境を構築可能な製品なども多く発売されており、少なくともゲームで高音質を楽しみたい場合なら、間違いなくオーバーヘッド型のヘッドフォンがベストチョイスと言える。
一方で両耳に挟み込んで使用する都合上、長時間利用していると耳全体に痛みが発生するような場合もある。また、当たり前の話だが耳を覆う大きさのハウジング、頭を覆う形で装着するヘッドバンドなどその構造上から、どんなに小型のヘッドフォンであってもそのサイズはかなり大きくなりがちだ。シンプルな構造で軽量化したヘッドフォンやヘッドセットなどもあるが、ハウジングのサイズが小さいため、音があまりよくなかったり、ヘッドバンドが陳腐だったりと、個人的にはあまりいい印象がない。
筆者はゲーム関連の記事を執筆する都合上、ゲーム機やPCで使うゲーミングヘッドセットもいくつか所持している。1つはソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)が発売する「CUHJ-15007」は付属のワイヤレスアダプターを介してPS3やPS4で7.1chバーチャルサラウンドを楽しめるヘッドセットで、当時としてはコスパもよく、PS4でゲームをする際には重宝していた一品だ。7.1chのバーチャルサラウンドをゲームで楽しむと圧倒的重厚感とゲーム連動した音声の位置の変化など、普通のステレオ音声では満足できなくなるレベルの満足感が得られる。
なお、現行機であるPS5向けには「PULSE 3D ワイヤレスヘッドセット」(CFI-ZWH1J)がリリースされている。
また、ボイスチャットなどで使用するマイクはヘッドセットごとに癖が強く、環境によってはこちらのマイク音声にノイズが乗ったりボリュームが小さいなど、納得のいく音声のやり取りが楽しめない場合がある。
そのような時には折り畳みマイクの搭載など、ボイスチャットでの利用にも適した製品がおススメだ。筆者が当時使用していたのは、ロジクールの「G430」という製品だ。有線接続にも対応する有線ヘッドセットで、PS4のボイスチャットで重宝していた。
ロジクールの現行製品ではPS4やPS5などでも使える「Logicool G」ブランドの「G535」などがコストパフォーマンスも高めのワイヤレスヘッドセットとなっているようだ。接続方式が有線か無線か、機能面などではかなり豊富に種類があるため、気になる人はスペックなどをチェックして好みの1台を選ぶのがいいだろう。