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Core i5-13600Kで行こう!イマドキのメインストリームPCを組んでみた

 CPUで言えばCore i5やRyzen 5あたりを指す「メインストリーム」。CPUではトップグレード同士の対決が熾烈だが、一方でメインストリームが求めるのはほどほどの価格、一般用途では十分快適と言える性能。つまりコストとパフォーマンスのバランスだ。今回はCore i5-13600Kをメインに作例を組んでみたい。

過去のCore i7より最新Core i5。CPU性能はここ数世代で大きく向上

 第13世代……というかPCパーツ全般で価格が上がっている。PCを買い換えたいけれど価格がネックという方も多くいらっしゃるのではないだろうか。ただし、高価な一方で新世代パーツの性能は大きく向上している。最新世代では、コア数が増え、IPCが向上し、クロックも引き上げられている。それこそ、もともとコストパフォーマンスがよかったメインストリームクラスが注目されるわけだ。

 旧世代Core i5から最新Core i5というアップグレードなら間違いなく高性能が得られる。一方、ここで推したいのは旧世代Core i7ユーザーも、最新Core i5へのアップグレードを検討してみてはいかがだろうか、というものだ。もちろん比較的新しい世代のCore i7ユーザーには通用しない。ただ以下の表のとおり、何世代か前までさかのぼると、最新Core i5のほうが高性能だろうという見積もることができる。

過去数世代のCore i7と最新Core i5のコア/スレッド数一覧
製品名Pコア数Eコア数スレッド数
Core i5-13600K6C8C20T
Core i7-12700K8C4C20T
Core i7-11700K8C16T
Core i7-10700K8C16T
Core i7-9700K8C8T

 これを見ると、第11世代Core i7が境目だ。まあ、第11世代はそこまで古くないので買い換え検討をオススメするのは第10世代以前くらいになるだろう。ちなみに、Core i7-11700Kが初回販売時の価格で6万円前後。Core i5-13600Kは現在5万円前後。CPUだけでなくマザーボードやそのほかのパーツ価格全体が上昇していることを考えると、CPU価格を(以前の予算と比べ)抑えられれば価格が上昇しているほかのパーツの予算に回せるという考え方も成り立つ。

 もちろん、初めて自作PCをする方にとってもPCのパフォーマンスというものを体感できるグレードとしてCore i5(以上)がオススメだ。

 もちろんCore i3でもよいが、実は第13世代Core i3はまだ登場していない。1つ古い世代の第12世代Core i3はまだ流通しているが、例えばCore i3-12100の場合で4コア8スレッド。もちろんこれでも普段使いでは不満を感じることはないが、少し複雑な処理をさせるとパフォーマンス不足を感じるかもしれない。

 ハードウェアが進化するのと同時にソフトウェアも進化している。マルチスレッドへの最適化、あるいは新たなソフトウェアトレンド、たとえばビデオ会議やその際に用いるノイズキャンセリングや背景合成など、見渡せばPCへの性能要求は高まっている。こうした用途を想定するならば、性能に少し余裕を見たほうがよいとアドバイスしたい。

予算20万円! 独断と偏見!? 本企画に用いたパーツたち

 さて、今回は作例なのだが、大前提をメインストリームとしてビデオカードを搭載する方向とした。ご存知のとおり昨今、ビデオカードはけっこう高価だ。いや、ビデオカード以外も高価格化が進んでおり、ビデオカード搭載メインストリームと言えば10万円台半ばという一昔前の予算組みが通用しなくなってしまった。今回は予算規模を20万円台前半としたい。ビデオカードもメインストリームで、フルHDの高画質を楽しめる方向性で進めよう。

 それでは今回用いたパーツを1つずつ紹介していこう。

【CPU】Intel「Core i5-13600K」

 メインストリームのCPUと言えばIntelならCore i5。ただし第13世代Coreは執筆時点で「K」付きモデルのみ。Core i5なら13600Kまたは13600KF。お借りできたのがCore i5-13600Kだったのでこちらで進める。

 ただ、Core i5-13600KFは統合GPU非搭載モデルで数千円安い。トラブルシューティングや後々の使いまわしなどを考えると、統合GPUがあったほうが便利だが、ビデオカードを用いる前提であれば安さをとってもよいだろう。

 Core i5-13600KはPコア6基、Eコア8基でトータル20スレッド対応。クロックでもターボ時の最大クロックはPコアが5.1GHz、Eコアが3.9GHzと高めだ。TDPも高めでパフォーマンス志向の製品なので、後ほど紹介するCPUクーラーの選択もポイントに挙げられる。

【ケース】ASUSTeK「ASUS Prime AP201 MicroATX Case」

 毎日使う、場合によっては机の上に置くことも想定されるので、PCの外観は重要だ。編集部との相談でも、CPUの次に決まったのがこのケース。ASUSTeK「ASUS Prime AP201 MicroATX Case」を組み合わせてみた。

 シンプルな形状でホワイトの全面パンチングメッシュ。フロントインターフェイスの端子内部プラ部分もホワイトなら電源LEDもホワイトで統一され、見た目は非常に美しい。microATXケースとしてはやや高価だが、精度や剛性もよく組立てやすさも追求されている。

 サイズ感は確かにミニタワー。ただしハイエンドビデオカードも搭載できるため奥行きが46cmある。専有面積は意外と大きく、奥行き60cmの机の場合はやや窮屈に感じるかもしれない。ケースファンは背面に12cm角×1基(非PWM)が付属する。

【CPUクーラー】Deepcool「GAMMAXX L240 A-RGB」

 CPUクーラーもホワイトのものを選んでみた。ホワイト系パーツは増えてきているものの、まだ十分な選択肢があるわけではない。そこにコストも絡んでくるとなかなか難しい。ラジエータサイズを24cmクラスに抑え、Deepcool「GAMMAXX L240 A-RGB」を組み合わせてみた。ただし、予算が許すならば「K」SKUのCPUには36cmクラスをオススメしたい。

【マザーボード】ASRock「Z790M PG Lightning/D4」

 microATXフォームファクタのIntel Z790チップセット搭載マザーボード。予算を抑えるならば、本来Intel “H770”や“B760”のようなチップセットの登場を待つべきとは思う。しかし執筆時点ではリリースされていないので、既発のIntel Z790チップセット、そしてケースに合わせてmicroATXから選ぶことになった。

 microATXマザーボードは選択肢が少ないものの、ATXと比べて価格を抑えたモデルが多いのは確かだ。ASRock「Z790M PG Lightning/D4」もIntel Z790チップセット搭載マザーボードの中で比較的安価なモデルである。ただし「PG」とあるように、エントリーゲーマー向けモデル。上位モデルほどではないが、強化されたCPU電源回路を搭載しており、長時間のゲーミングにおける安定性を考慮している。

 そして末尾の「D4」はDDR4メモリ対応モデルを意味する。PCパーツ全般的に高めの現在、コストを抑えるなら新規格に飛びつくより従来規格を使い回すほうが得策だ。すでにDDR4メモリの自作PCをお使いなら使い回しも可能なほか、新規に買うとしてもDDR5メモリと比べてDDR4メモリのほうがまだ安い。

 ちなみに、Z790M PG Lightning/D4はビデオカード用PCI Express x16スロットもGen4、M.2スロットもGen4なので安さと引き換えに次世代への先行投資にはならない。

 実はASRockにはもう1枚マザーボードを送ってもらった。そちらが「B660M Steel Legend」。本来第12世代向けの製品だが、LGA1700なのでBIOSアップデート済みのものを購入すれば第13世代Coreでも利用できる。そしてこちらのほうがより安い。また、シルバーのヒートシンクはホワイトのPCケースとも相性がよい。

ASRock B660M Steel Legend
【ビデオカード】玄人志向「RD-RX6650XT-E8GB/DF」

 ビデオカードは、実際のところ使いたいものを選べばよい。PCパーツの中でも高価なのがビデオカードで、加えてゲーミングパフォーマンスを左右するのもビデオカードだ。今回の作例としてはRadeon RX 6650を搭載する「RD-RX6650XT-E8GB/DF」を組み合わせた。

 GPUのRadeon RX 6650 XTはフルHD高画質~WQHD中画質あたりを狙えるパフォーマンスレンジだ。今、メインストリームゲーマーのディスプレイ環境がフルHDからWQHDに移行しつつあると聞くが、まさにこのゾーンに最適と言える。RD-RX6650XT-E8GB/DFのデザインは非常にシンプル。2スロット厚で長さ20cm程度のサイズ感も組み込みやすかった。

【メモリ】Ballistix Tactical Tracer RGB 8GB×2

 こちらは2018年頃の旧世代の製品で、DDR4対応マザーボードを選ぶメリットを活用してみた。もちろん、新規で必要な方は予算に組み込む必要があるものの、まだ同容量のDDR5メモリ(サポート内の最大クロック)と比べてDDR4メモリのほうが8GB×2枚キットで倍近い価格差があるようだ。

 なお、性能に関して言えばDDR5-4800 vs DDR4-3200ではベンチマークで逆転することもあったが、DDR5のクロックは今後も高まっていく。その意味ではコストを除けば今後DDR4に固執する必要はないだろう。

【ストレージ】Solidigm「P41 Plus SSD 1TB」(SSDPFKNU020TZX1)

 Solidigmを聞き慣れない方もいるかもしれないが、IntelがSSD事業をHynixに売却したことで生まれたメーカーだ。Solidigm「P41 Plus SSD 1TB」はエントリー向けのポジションで、PCI Express 4.0 x4接続に対応したNVMe SSD。容量は1台でゲームプログラムも存分に保存できる1TBとした。小容量のSSDとしてシステムを、別途HDDにゲームプログラムを保存する方法も考えられるので、そこは予算と相談していただきたい。

【電源】Deepcool「PQ850M」

 ここまで選んできたパーツの消費電力のピークを計算するとざっと300Wあたり。600Wクラスの電源で十分といったところだが、全体的に消費電力が増大傾向にあるPCパーツを鑑みると、次のアップグレード時に出力不足となる可能性もある。PCに性能不足を感じるシチュエーションというのは、多くがゲームプレイ時のフレームレート不足で、将来的に上位グレードのビデオカードにアップグレードする可能性があるとすれば、GPUのTDPが100W単位で上昇するので電源出力的には200W単位で余裕を見ておくのが妥当だ。

 こうした理由もあって850Wクラスを組み合わせている。まあ、筆者がよく電源の企画を扱っているので、ここも妥協したくなかったというのが大きい……。

 Deepcool「PQ850M」は、フルプラグイン方式でケーブルマネジメントがしやすく、オン/オフ可能な準ファンレス機能があるため静音性もよい。奥行きもまずまず小さめなので今回のようなミニタワーとの組み合わせにも最適だ。

低リスク&イライラしない組み立て手順がオススメ

 さて、どんな方も組み立てる前にまず組み込むパーツをじっくり眺めて見るのではないだろうか。パーツを愛でつつ、これから組むPCのパフォーマンスを想像しつつ悦に浸る……というのも重要だが、たとえばケースをバラして内部を確認し、どの順でパーツを組み込むのがスムーズなのかを考えることも忘れてはならない。microATXミニタワーとなると多少の制限がある。まあ、今回のケースは内部が広いので激ムズではない。ゆるく筆者が組み立てた手順を紹介していこう。

ケースをバラして組み立ての手順を検討中

 今回は省くが、初期不良や相性の確認としてケース以外の各パーツの通電チェックを済ませておくとよい。ただし、はじめてPCを組む方には難しいかもしれない。はじめての方は、そのまま組み込んでいき完成したところで通電チェックをしていただきたい。たとえば、ケースに組み込まずにどうやって電源オンにするのか……など分からないところが多いと思われる。くれぐれもムリをしてはいけない。

 自作PC上級者は、ボタンやLEDをまとめたアイネックスの実験用スイッチ・LEDキット「KM-01」のようなものを確保しておいてもよいし、廃棄する古いPCケースからスイッチ部分をバラして確保しておくのもよい。ジャンパピンをショートさせる方法もあるが、間違ったピンをショートさせるとマザーボードを壊す可能性もあるのでオススメはしない。

 さて、通電チェックをした方はマザーボードにCPUとメモリ、M.2 SSDを組み込んだ状態だ。いちおう組み込み時に干渉するCPUクーラーや高さのあるヒートスプレッダを搭載したメモリは本組前に一度外したほうがよいだろう。自作PCがはじめての方も、この段階でマザーボードにCPUとM.2 SSDを組み込んだ状態まで進めておこう。

 今やIntelもAMDも同じになったが、CPUソケットの「LGA」はソケット側に高密度のピンがあって、これを曲げてしまうと大変だ。CPUをソケットに装着する作業は慎重に行なおう。CPUには正しい向きを示すための切り欠きがあって、ソケット側もこれと噛み合う形状をしている。間違った方向で載せた際は、CPUが斜めに浮いた状態で収まらない。この状態で固定レバーを下げ、ムリに力を入れると一発で破損する。CPUが水平に乗った状態、ソケットのフチにしっかり収まった状態を確認してからレバー固定しよう。

マザーボードにCPUとM.2 SSDを装着

 ちなみに、マザーボードをケースに収めた後に、CPUやメモリ、M.2 SSDを装着していく方もいる。もちろん問題はないが、今回はそうしなかった。……というのもライターである筆者は、「低リスク」と「イライラしない」を重視している。

 まず借り物パーツを壊すわけにはいかない。狭いケース内でCPUを装着しようとすると、落下リスクが高まる。また、どちらかと言えば大雑把な性格なので、バラック状態でもM.2 SSDやそのヒートシンクに使われる小さなネジを一発でうまく固定できたためしがない。それをケース内でやろうとしたら余計にうまくいくわけがない。小さなネジがケース内で行方不明になる……というところまで予想がつく。そんな苦労をするくらいなら、先に組み込んでおいたほうがよいという考えだ。

 さて、CPUクーラーをどのタイミングで組み込むのが最適だろうか。たとえば大型空冷方式の場合、マザーボードに組み込んだ状態からケースに収めようとすると干渉することがある。サイズ、形状から判断したい。また、CPUクーラーをバックプレートとそのほかといったように2ステップに分けて組み立てることも検討したい。CPUクーラーの上モノは大きくて後から組み込んだほうがラクだが、下に来るバックプレートやスペーサなどの細々したものは先に組み込んでおいたほうがラクという場合もある。

 今回GAMMAXX L240 A-RGBは、上モノが小さい簡易水冷で、一方のバックプレートは上モノまで一気に組まないと固定できないタイプだった。検討した結果、先にマザーボード上にすべて装着して、後からケースに収める方法をとった。

今回は先にCPUクーラーまで組んだ状態からケースに収める方法を採用

 そして再びケースに戻る。ケースに最初に組み込むパーツは電源になることが多いのではないかと思う。もっともラクなパーツという理由もあるが、ケーブル配線のアタリをつける目的も大きい。今回のケース、Prime AP201は電源スペースが前面パネル裏にある。ケースの裏面配線スペースを見ると、電源のプラグインコネクタからもっとも遠いところにあるマザーボード上コネクタがEPS12V。ここのケーブル長が足りるのかが最初の確認事項だ。PQ850Mの場合、ケーブル長は問題なく多少の余裕もあった。仮にケーブルの長さが足りない、または余裕がない時は延長ケーブルで継ぎ足したい。

電源を組み込み、ケーブルの取り回しを検討。写真ではケーブルタイを使って結束しているが、後々変更する可能性もあるので仮締め程度にしておこう

 ここまでくれば、あとはマザーボードをケースに収め、ラジエータを天板裏に固定し、配線を行なった上でビデオカードを装着していく。注意点はほとんどないが、ケーブルを挿してからネジ固定すべきか、ネジ固定してからケーブルを挿すべきか、場所ごと判断するとよい。

 たとえばEPS12Vのように隅にあるコネクタは、マザーボードを固定する前にケーブルを挿したほうがスムーズ。周囲にスペースがあるATX24ピンはマザーボードを固定した後からでよい。

 筆者が今回組み立てた順番をたどり、ポイントを解説してきたが、これが正しいというものではない。パーツの大きさや構造によっても最適な組み込み順が変わってくるだろう。目の前のパーツに対して柔軟に考えればよいのだ。こんな調子で組み上がったので、完成写真をご覧いただこう。

フルHDゲーミングにもリモートワーク用PCにも十分なパフォーマンスを達成

今回の作例がどのくらいのパフォーマンスになったのか、ベンチマークを実行してみた。利用したベンチマークソフトは、MAXON「Cinebench R23」、UL「PCMark 10」、「3DMark」、スクエア・エニックス「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」だ。

Cinebench R23では、CPU(Single Core)が2,014ptsと2,000を超えてきており第13世代Coreの高いシングルスレッド性能が分かる。また、CPU(Multi Core)も23,805ptsで、トータル14スレッド対応のCPUとはいえマルチスレッド性能も十分だ。

【グラフ】Cinebench

 PCMark 10ではOverallが11,691ポイント。各シナリオもすべて10,000ポイントを超えている。GamingだけでなくProductivity、Digital Content Creationのスコアも高めなのは、ミドルレンジではあるがビデオカードを搭載していることが効いている。

 基本的に(ある程度の)ビデオカードを搭載すれば万能型かつ高性能PCに仕上がる。統合GPUだけでもCPUへの依存度が高いアプリケーションは高性能、GPUアクセラレーションが効くアプリケーションでもある程度の性能向上があるものの、単体ビデオカードを搭載すれば壁を突破してより高性能になる。メインストリームのCPUを搭載したPCよりもメインストリームのCPUとGPUを搭載したPCのほうが、ゲーム以外の用途でも快適なので、リモートワーク用のPCをより快適にしたい方は参考にしていただきたい。

【グラフ】PCMark10

 3DMarkはメインストリーム向けGPUなりのスコアではあるが、Fire Strikeは27,303ポイントと30,000ポイント目前に迫る。ほか、Time Spyでも10,740ポイントと大台を超えている。こうしたスコアからも、おおむねWQHDの中~低画質、フルHDの高画質といったゲーミング環境が期待できる。ビデオカード全般で価格が上昇しているが、その価格分の快適さが得られることは間違いない。

【グラフ】3DMark

 こうしたあたりはFINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークでも確認できる。「快適」評価以上を得られているのは、4K軽量品質、WQHD高品質、フルHD高品質といったあたり。とくにWQHD標準品質、フルHD高品質は「とても快適」評価なので、グラフィックス負荷の重いシーンでも60fps割れのおそれが少ない。

【グラフ】FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク

 続いては運用中の温度を見てみよう。まずはCinebench R23のCPU(Multi Core)を10分実行中の温度。今回のパーツの中でももっとも温度的に高いのがCPUなので、ここに高負荷を連続的にかけた際、どのように推移するのかを見れば冷却が不足していないかどうかを判断できる。

 CPU温度はアイドル時で30℃台半ばだったが、ベンチマーク開始直後に100℃に達した。その後はおおむね80℃前後で、1セット終了毎のデータロード時にスパイク状に100℃に達する様子が見られた。

 実はハイエンドCPUでPL1 & PL2を無制限にした場合は今回とは逆のパターンになる。負荷がかかっている最中は100℃、1セット終了すると温度が低下するといった具合だ。まったく逆のグラフになっているのは、PL1 & PL2無制限ではなく、適切に設定されているためだろう。ハイエンドマザーボードは出荷時のデフォルトで無制限に設定されているものもある。

【グラフ】Cinebench R23実行時の温度推移

 BIOSを確認してみると、PL1が125W、PL2が253Wだった。ステータス監視ソフトからCPUのパッケージ消費電力を確認してみると、Cinebench R23実行中、おおむね120W台で推移しており、冒頭の100℃が連続する部分で220W前後、以降の100℃に達するスパイクは140W前後だった。

 ただし見方を変えれば、時折PL2に入ろうとするが、100℃のサーマルスロットリングにすぐに達するためPL1に戻されているようにも見える。次のゲームベンチマーク時の温度も見てからご判断いただきたいが、CPUへの依存が高いアプリケーションを使用する想定の方は、もう1ランク上、具体的には36cmクラスの簡易水冷CPUクーラーを検討するのがよいだろう。

BIOS設定はAutoのまま検証した。Z790M PG Lightning/D4ではShort Duration Power Limitが253W、Long Duration Power Limitが125Wの設定だった

 次はゲーミング時を想定した温度推移。FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークのWQHD、高品質設定を実行した。CPU温度はおおむね50℃前後を中心に推移し、序盤と以降時折60℃台に達するスパイクが見られた。もちろんタイトルによってCPU負荷は異なるものの、そこまでCPU温度が上昇するということもないようだ。

 また、GPU温度に関しては徐々に上がっていくが最大で71℃だ。GPUの温度上限に達していることは間違いないが、これ自体はほとんどのGPUで同じような挙動になるので気にする必要はない。主目的がゲームであれば、このくらいの冷却で問題ないと言えるだろう。

【グラフ】FFXVベンチマーク実施中の温度推移

今回の作例をもとに改善点を挙げるとすれば……

 では、今回組んだPCの感想を述べておこう。まず、性能レンジでは日常カジュアルにPCゲームを楽しむ方にちょうどよいあたりだと思われる。まずまずの静かさなので、帰宅して寝る前に少しゲームを楽しむなんて時にぴったりだ。

 デザイン面(と言ってもほぼケースだが)は満足している。もちろん、人それぞれの好みにもよるが、今回のPCは、リモートワークのビデオ会議で写り込んでもそれがゲーミングPCだとは悟られないだろう。もちろんビデオ会議中はLEDオフにしておくのがよいと思われるが……。

 ちなみに電源オン時LEDをを発光させると、パンチングメッシュによって内部パーツがうっすら見える。黒いマザーボードとビデオカードはパンチングメッシュを通すとディティールがぼやけるのでむしろ自然な感じになる。もちろんホワイトパーツにこだわる方はこだわっていただきたい。

 LED発光時、存在が少し気になったパーツがあることも事実だ。たとえば簡易水冷CPUクーラー。ホワイトを選んだ点は満足だ。ただし24cmクラスなので残る12cm角×1面分が空白になっている。ここの部分で明るさがクッキリ分かれるので、完璧を目指すなら36cmクラスのホワイトがよい選択ではないだろうか。

 また、内部LEDで照らし出された時、前面の電源部分もそこだけ暗くなっているのが心残りだ。LEDファンを搭載した電源を選んでここを明るくする方法もあるし、多少光を反射するホワイト電源を組み合わせるのもよい。ケーブルまでホワイトの電源や、黒いケーブルにホワイトのスリーブをかぶせたりすれば、完璧なホワイトに一歩近づけることができる。

 ホワイトへのこだわりを追求するとコストが跳ね上がってしまうが、それもまた自作PCの楽しみ方だ。一気に揃えることがムリでも、少しずつ理想に近づけていけばよいのではないだろうか。決して今目の前にある自作PCが完成形である理由はない。

 最後に今回の作例の価格を確認してみよう。

カテゴリ型番実売価格
CPUCore i5-13600K5万3,000円前後
メモリ使いまわしDDR4-2666 8GB×2DDR4-3200、16GBキットの実売価格は7,000円前後
マザーボードASRock Z790M PG Lightning/D4万35,000円前後
ビデオカード玄人志向 RD-RX6650XT-E8GB/DF5万円前後
SSDSolidigm P41 Plus SSD 1TB SSDPFKNU020TZX12万7,000円前後
ケースASUS Prime AP2011万3,000円前後
CPUクーラーDeepcool GAMMAXX L240 A-RGB1万2,000円前後
電源Deepcool PQ850M1万5,000円前後
合計20万5,000円前後

 OSやキーボード/マウス、ディスプレイなどは別途、メモリを使いまわしているが、結局20万円を若干超えてしまった。すべて価格情報サイトの最安値モデルを組み合わせていけばもっと安く抑えることは可能と思われる。

 2023年、Intel “H770“や“B760”マザーボードが登場すればそこで予算を抑えられるようになるかもしれない。とはいえ、一昔前なら10万円台半ばだったメインストリームのゲーミングPCの予算規模が、現在は20万円強を見積もったほうが良いという点も事実だろう。PCのパーツ構成を検討する際、参考になれば幸いだ。