アップグレード後の性能が知りたい!
GTX 1060をRTX 3060に換装。CPUは5年前のi5-8600KでもAAA級ゲームが快適に!?
2023年2月23日 06:33
さまざまなデバイスのアップグレードを目的とした新連載をスタートさせる……ということで、記念すべき第1回はCoffee Lake世代の自作PCで使っている「GeForce GTX 1060(6GB版)」を「GeForce RTX 3060(12GB版)」に換装すると、性能がどこまで変わるのか試して見たい。
GeForce GTX 1060(6GB版)は、2016年7月の発売以来、長期に渡って人気を博した名ミドルレンジGPUだ。発売時で3万円台半ばという価格ながら、前世代のハイエンドGPUであったGeForce GTX 980(7万円台半ばで登場)に近い性能を持っており、費用対効果にとてつもなく優れていたことから、それはそれは大ヒットした。これはSteamのビデオカード使用率トップを長期間獲得していたことからも明らかだ。
ちなみに、2022年11月に首位から陥落したときは、多くのPC系のニュースサイトで、そのことが取り上げられたほどである。
そんなGTX 1060だが、最新ゲームを快適にプレイするにはさすがに厳しくなってきた。単純な性能面はもちろんだが、RTコアやTensorコアを持っていないのでレイトレーシングには基本非対応(CUDAコアで動くアプリもあるがごく一部)、高い画質を保ったまま描画負荷を軽減してくれるNVIDIAの優秀なアップスケーラー「DLSS(Deep Learning Super Sampling)」にも対応できないと、機能面でも最新世代に比べて見劣りするようになったからだ。
レイトレーシングに対応するAAA級ゲームで遊びたいなら、ビデオカードを乗り換えるしかない。GTX 1060なら、最新世代の「xx60」型番に移行するのが王道だろう。NVIDIAの最新世代はRTX 40シリーズだが、現時点では「xx60」と付くグレードのデスクトップ版GPUはまだ登場していない。
というわけで、ここでは「GeForce RTX 3060(12GB版)」への換装でゲーム性能がどこまで向上するのかテストしていく。
GeForce RTX 3060 | GeForce GTX 1060 | |
---|---|---|
CUDAコア数 | 3,584 | 1,280 |
ベースクロック | 1,320MHz | 1,506MHz |
ブーストクロック | 1,777MHz | 1,708MHz |
メモリサイズ | GDDR6 12GB | GDDR5 6GB |
メモリバス幅 | 192bit | 192bit |
RTコア | 第2世代 | 非搭載 |
Tensorコア | 第3世代 | 非搭載 |
アーキテクチャ | Ampere | Pascal |
DLSS | 対応(2まで) | 非対応 |
NVENC | 第7世代 | 第6世代 |
カード電力 | 170W | 120W |
システム電力要件 | 550W | 400W |
ベースとなるPCは、CPUにCoffee Lake世代のCore i5-8600K(2017年11月発売)を搭載する古めの自作PCだ。Coffee Lake世代はWindows 11に正式対応しているということもあり、GTX 1060との組み合わせで、まだまだ現役で使っているという人も多いのではないだろうか。
その旧世代の環境にRTX 3060だけ入れ替えて問題なく性能を発揮できるのかも注目ポイントと言える。比較用として、Intel最新世代のCore i9-13900K環境にRTX 3060を搭載した場合の結果も合わせて掲載する。
旧環境 | 新環境 | |
---|---|---|
CPU | Core i5-8600K (6コア6スレッド) | Core i9-13900K (14コア20スレッド) |
マザーボード | Intel Z390 | Intel Z790 |
メモリ | DDR4-2666 16GB×2 | DDR5-5600 16GB×2 |
SSD | SATA 6Gbps 1TB | |
OS | Windows 11 Pro(22H2) |
【お詫びと訂正】初出時に表内の新環境のCPUを「Core i5-13900K」としておりましたが、正しくは「Core i9-13900K」となります。お詫びして訂正いたします。
定番ベンチマークの結果
まずは、定番の3Dベンチマーク「3DMark」のスコアから見ていこう。
DirectX 11ベースのFire StrikeでGTX 1060からRTX 3060に換装することで、約1.6倍もスコアがアップ。DirectX 12ベースのTime Spyでは約2.6倍もスコアが向上した。
同じミドルレンジでも2世代でここまで性能が変わるということだ。同じRTX 3060でもCore i9-13900Kを搭載する最新世代の環境では、多くのテストでスコアが伸びる。3DMarkはCPUパワーを測定するテストが含まれているためだ。ちなみにPort RoyalはGPU依存が高いテストなので、スコアがほとんど変わっていない。
ゲームの結果
続いて、実ゲームを試そう。画面サイズはフルHD(1,920×1,080ドット)、WQHD(2,560×1,440ドット)、4K(3,840×2,160ドット)の3種類で試した。
まずは定番FPSの「レインボーシックス シージ」と「Apex Legends」だ。レインボーシックス シージはゲーム内のベンチマーク機能を実行、Apex Legendsはトレーニングモードの一定コースを移動した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定している。
レインボーシックス シージはGTX 1060に対して、2.1~2.2倍のフレームレート向上を確認できた。RTX 3060なら4K解像度でも平均92fpsと十分快適にプレイできる。最新世代の環境とビデオカードがボトルネックになりにくいフルHDでは差が出ているが、それでも10fps程度。このゲームではCore i5-8600KでもRTX 3060の性能は十分引き出せると言える。
Apex LegendsもGTX 1060に対して、ほぼ2倍のフレームレートを出している。4Kでも平均73.6fpsと、軽めのゲームなら4Kでも遊べるパワーを持っているのが分かる結果だ。最新世代とはほぼ変わらない結果となった。
次は、人気のヒーロー対戦FPS「オーバーウォッチ 2」を実行する。マップ「Eichenwalde」でBotマッチを実行した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定している。
GTX 1060に対して1.7~1.8倍のフレームレート向上を確認できた。さすがに4Kでは快適なプレイの目安と言える60fpsを割り込んでいるが、それでも平均44.7fps。画質をちょっと落とすか、アップスケーラーのFSRを活用すれば4Kでも十分プレイできるだろう。
レイトレ&DLSS対応重量級ゲームで検証
今度はレイトレーシングやDLSSに対応する重量級のタイトルを試して見よう。GTX 1060はレイトレーシングやDLSSに非対応なので、そこがどう影響するかにも注目したい。
まずは、「Marvel’s Spider-Man: Miles Morales」を試そう。マップ内の一定コースを60秒ダッシュした際のフレームレートを「CapFrameX」で測定している。
レイトレーシングを使っていない場合はGTX 1060でもプレイは可能だ。しかし、最高画質設定はさすがに重く、フルHDでも平均43.5fpsしか出ていない。このあたりに古い世代のビデオカードの限界を感じるところだ。その一方で、RTX 3060ならWQHDでも平均62.5fpsと快適にプレイできるフレームレートが出ている。
このゲームでは、Core i5-8600Kの限界を観測できるのもポイントだ。Core i5-8600K環境でDLSS“パフォーマンス”を設定したフルHDのフレームレートに注目してほしい。DLSSを有効にしていない状態とフレームレートがほとんど変わっていない。
これは、GPUがボトルネックになりにくいフルHD解像度ではCPUパワー不足が足を引っぱって、DLSSを有効にしてもフレームレートが伸びなくなっているのだ。最新のCore i9-13900K環境ではフルHDでもDLSSを有効にすれば、フレームレートが伸びていることからも明らかだ。
RTX 3060のようなミドルレンジのビデオカードは、ゲームの解像度がフルHDであっても性能限界に到達しやすく、CPU性能の影響を受けにくいものだが、高いCPUパワーを求めるゲームにおいてはDLSSがうまく働かないこともある、ということだ。
レイトレーシングに関してはGTX 1060は非対応なので、そもそも有効にしてのプレイができない。そして、描画負荷は非常に高くなり、RTX 3060ではDLSSをパフォーマンス設定にしてもフルHDで平均50.8fpsまでしか向上できない。その一方でCore i9-13900K環境ならDLSSで平均76.6fpsに到達できる。Marvel’s Spider-Man: Miles MoralesはCPUパワーも重要なゲームであることがここでも分かる。
続いて、描画負荷の高い重量級ゲームの代表格「サイバーパンク2077」を実行してみよう。ゲーム内のベンチマーク機能を使ってフレームレートを測定している。
まずはレイトレーシングを使っていない場合から。DLSSに対応していないGTX 1060は最高画質だとフルHDでも平均29.1fpsしか出ない。その点、RTX 3060なら平均65.7fpsと十分快適にプレイできるフレームレートに到達でき、DLSSをパフォーマンス設定にすればフルHDで平均96fpsまで向上、WQHDでも平均71.8fpsまで出せる。
レイトレーシングを有効時は、GTX 1060は非対応なのでそもそもプレイできず、RTX 3060でもDLSSを使ってもフルHDで平均59.2fpsとやっと問題なくプレイできるフレームレートというところ。Core i9-13900K環境のほうがフルHD解像度のフレームレートが高いのは、サイバーパンク2077もCPUパワーが結構必要なゲームなのが理由だろう。
高負荷時の消費電力
最後にシステム全体の消費電力を確かめてみよう。OS起動10分後をアイドル時、3DMark-Time Spy実行時の最大値とサイバーパンク2077実行時の最大値を測定した。電力計にはラトックシステムの「REX-BTWATTCH1」を使用している。
GTX 1060のカード電力は120W、RTX 3060が170Wなので、その差が消費電力に出ていると言ってよいだろう。ゲームでは2倍以上フレームレートに差が付くケースもあるので、ワットパフォーマンスで見た場合はRTX 3060のほうが圧倒的に上だ。
ちなみに、Core i9-13900K環境になると、さらに80~90Wほども消費電力がアップする。いかにCPUの消費電力が大きくなっているのか分かるところだ。
というわけで、Coffee Lake環境(Core i5-8600K)におけるGTX 1060からRTX 3060への強化に挑戦してみた。
一部の重量級ゲームではCore i5-8600KではCPUパワー不足が見られるが、RTX 3060なら軽めのゲームなら4Kまで、中量級ならWQHDまでとなる。
なお、レイトレーシングに対応した重量級ゲームであっても、DLSSと組み合わせればフルHD解像度ならプレイ可能なフレームレートを出せるパワーが概ね手に入ると言ってよいだろう。GTX 1060に限界を感じている人の参考になれば幸いだ。