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パスワード管理アプリのおすすめ4選+α。無償で使えるBitwardenなどを紹介

ID/パスワードの管理・利用を楽にするパスワード管理アプリとは?

 サービスのクラウド化がどんどん進んでいることもあり、われわれユーザーが管理すべきID、パスワードの数はそれこそうなぎ登りだ。あまりに数が増えてしまった結果、同じパスワードをあちこちで使い回したり、パスワードを忘れてしまって利用しようとするたびにパスワードを再発行したり……という人もいるに違いない。

 ご存じのとおり、同じパスワードの使い回しは、もし1箇所で漏洩してしまったときに芋づる式にほかのサービスも危険にさらされることになるなど、高いリスクが伴う。かと言ってサービス1つ1つで異なる、推測されにくい十分なセキュリティ強度を持ったパスワードを用意するとなると管理の手間が増えてしまう。

 セキュアに、かつ手間を増やすことなくID/パスワードを管理するにはどうすればいいか。そこで出番となるのがパスワード管理アプリやパスワードマネージャーと呼ばれるツールだ。

 今やPCだけでなく、スマートフォンやタブレットなど複数のデバイスを扱うことが多いうえに、キャッシュカードやIC化された運転免許証、マイナンバーカードのように暗証番号が必要な物理アイテムも増えている。これらを効率的に管理するには、サポートしてくれる専用のツールが必要な時代になってきているのだ。

 というわけで、今回はメジャーなパスワード管理アプリを中心に、5つのツールについて、それぞれどんな特徴があり、どんな風に使えるのかを解説していきたい。

 なお、今回のパスワード管理アプリのいくつかの検証にはマウスコンピューターのビジネス向け14型ノート「MousePro-NB420ZL」を使用した。14万円台からで第11世代Coreを搭載し、LTEをサポートしているなど、コストパフォーマンスの高さが特徴だ。

そもそもパスワード管理アプリとは?

 一昔前は(もしかしたら今も)、PCディスプレイにIDとパスワードが書かれた付箋が貼られている、なんていう光景が多くのオフィスで見られていたと思う。

 それは論外にしても、個人の手帳やPC内のテキストファイルに、ログイン時に使うID/パスワードをメモしている人は今もいるはずだ。そうしたセキュリティ的にリスクの高い習慣や非効率な管理をデジタル化して改善するのが、パスワード管理アプリだ。

ディスプレイに付箋が貼られている光景はさすがにあまり見なくなってきているが……

 パスワード管理アプリの多くは、単純にID/パスワードを「保管」するだけではなく、その情報の入力が必要になったときにユーザーに代わって自動で入力してくれる機能も持つ。

 たとえば、WebブラウザからSNSにログインするときに、そのSNS(のURL)が何であるかを判定し、保管されているID/パスワードのなかから適切そうなものを自動で候補表示して、選択するだけで入力が完了する、というものだ。Webブラウザ自体もパスワードを記憶する機能を備えているが、管理という点においては柔軟性が高いとは言えない。

 また、メジャーなパスワード管理アプリは、複数のOS、デバイスと同期することもでき、どのデバイスでも同じようにログイン操作や管理を簡単に行なえる仕組みを備えている。さらには推測困難なランダムパスワードを自動生成する機能を持ち、それを新たなサービス用のログインパスワードとしてすぐに使うこともできる。

 2段階認証の一種であるワンタイムパスワードの生成機能を備えているものもあり、パスワード管理アプリは、もはやパスワードを「忘れてしまってもいい」ほどの利便性を提供してくれるツールと言っても過言ではない。

ランダムパスワードの生成機能があると、自分で推測困難なパスワードを考える必要がない

 ただ気になるのは、一般的に1つの「マスターパスワード」を使ってツール内の情報にアクセスするようになっていること。あらゆるWebサービスのログインパスワードやプライベートの大切な情報を1つのツールにまとめてしまうことになるため、マスターパスワードが知られてしまえば、丸ごと情報やデータが抜き取られる危険性がある。

 それ以前に、ツール自体が不正にユーザーの情報を取得しないともかぎらない。そういった点から、パスワード管理アプリの利用に懐疑的な考えを持つ人もいるのではないだろうか。

 しかしながら近年は、第三者機関による調査あるいは認証を受け、一定以上の信頼性を持つツールが増えてきた。

 データの強固な暗号化に加えて、ツールを利用するさいの本人確認に生体認証や2要素認証、物理的なセキュリティキーを選べるなど、こぞってセキュリティ対策を強化している。なかにはオープンソースで開発することで透明性を高め、脆弱性が発見された場合でも迅速に修正可能な体制を整えているものもある。

顔や指紋を用いる生体認証に対するツールも増えてきた
デバイスに接続して利用するセキュリティキーは使い勝手の良さと高いセキュリティを両立できる

 そういうこともあって、現在ではある程度安心してパスワード管理アプリを利用できる状況になってきた。あとはツールを使うユーザーの運用の仕方次第でセキュリティの高低が決まるところもある。

 したがって、ツールを選ぶさいには、情報の管理のしやすさはもちろんのこと、ツールを利用するさいの認証方法の多さ、導入(移行)の容易さ、管理できる情報の種類の多彩さといったところが肝になってくるだろう。

 それらの観点から、必須の機能を備えながらも個性的な5つのツールを集めてみた。最後に用意した機能比較表も参考に、自分に合うツールを見つけてもらえれば幸いだ。

Bitwarden - 無料で多機能かつオープンソース

https://bitwarden.com/
Google Play Storeのリンク
App Storeのリンク

PCのWebブラウザからアクセスしたBitwarden

 「Bitwarden」は、多機能かつオープンソースということもあり、現在もっとも注目度が高いパスワード管理アプリの1つだ。個人ユーザーかつ無料でも利用可能な機能が多く、チーム/組織向けのプランであっても2名までなら無料で使い続けられるのも魅力。

 対応プラットフォームは幅広く、WebブラウザやWindows、macOS、スマートフォンはもちろんのこと、Linuxにも専用アプリが用意されている。Webブラウザの拡張機能を使うことで、PCのWebブラウザ上でのパスワード自動入力なども行なえる。

PCアプリ版のBitwarden
スマートフォン版のBitwarden

 パスワード管理アプリとしては後発ということもあってか、インポート機能が充実しているのが特徴として挙げられる。主要な競合ツールからマイナーなツールまでカバーし、対応していないツールであってもCSVファイルからインポートが可能で、その仕様もきちんと公開されているため比較的移行は容易だ。

 また、登録したパスワードのフォルダ分けなどの整理を、アプリはもちろんWebブラウザ上からでも効率的に行なえるようになっている。細かい点ではあるけれど、これからパスワード管理アプリを導入しようと考えているユーザーにとっては大きなポイントかもしれない。

 通常はWebブラウザの設定などから大量に一括取り込みすることが前提になるため、プラットフォームを問わず楽に整理できる点は重要だ。

インポート元はメジャーどころからマイナーなツールまで幅広く対応
Webブラウザ上でも項目を複数選択して一気にフォルダ移動できるなど、細かな部分の使い勝手もいい

 ワンタイムパスワードの生成や、マスターパスワード代わりにセキュリティキーが使える機能がPremium以上のプランでのみ対応なのは、できるだけ無料のツール1つにまとめたいと思っている個人ユーザーには悩みどころかもしれない。それでも個人のPremiumアカウントは年10ドル(1カ月約0.83ドル)と安価なので、リーズナブルにフル機能を活用できるサービスと言えるだろう。

PCのWebサービスのログイン画面では、右上の拡張機能のアイコンから一覧表示できる候補を選択して自動入力
スマートフォン画面の例。入力欄の近くに候補一覧が表示
さらに対応IMEだとキーボードの上に直接候補が表示される

1Password - PC/スマホとマルチプラットフォーム対応の定番

https://1password.com/jp/
Google Play Storeのリンク
App Storeのリンク

PCのWebブラウザからアクセスした1Password

 比較的長い歴史を持つ、定番とも言えるパスワード管理アプリが「1Password」だ。14日間の無料トライアル期間はあるものの、基本的には有料のサービスで、それだけに機能も豊富。対応プラットフォームはWebブラウザ、Windows、macOS、iOS、Androidの各OS用にアプリが用意されている。こちらもWebブラウザの拡張機能によるPC上での自動入力が可能だ。

PCアプリ版の1Password
スマートフォン版の1Password

 IDとパスワードのようなデータだけでなく、クレジットカード、個人情報、サーバー管理用の情報、銀行口座など、さまざまなデータを登録しやすくする細かなテンプレートが用意され、わかりやすく登録/管理できるようになっている。ワンタイムパスワードの生成にも対応するため、あらゆるデリケートなデータを統合的に管理できるだろう。

 マスターパスワード代わりに使えるのは、スマートフォンでは指紋などの生体認証、認証アプリによるワンタイムパスワードなど。Windowsアプリではセキュリティキーが利用できるほか、Windows Helloによる各種認証方式にも対応する。

 つまり、Windows 10のログオンに使用しているWindows Helloの顔認証、指紋認証、もしくはPINコードによる認証などが、本アプリの起動時にも求められ、認証をパスすればアプリが利用できるようになるというわけだ。

テンプレート的に多数用意されているデータのタイプを選んで情報登録
PCアプリ起動時にはWindowsのログオンで使っている顔認証や指紋認証、PINコードを利用可能

 Bitwardenに比べるとインポート機能が弱く見えるが、よほど特殊なツールを使っているユーザーでないかぎりは必要十分。もっとも低価格なプランでも企業利用に求められるレベルのセキュリティ機能を最初から備え、ログイン情報にかぎらず多様な用途に活用できるのは、有料ならではのアドバンテージといったところだろうか。

PCのWebサービスのログイン画面では、入力欄の近くに候補表示。右上に見える拡張機能のアイコンから表示することもできる
スマートフォン画面の例。こちらも入力欄の近く、もしくは対応IMEのキーボード上に候補が表示

Microsoft Authenticator - ワンタイムパス対応でパスワード管理も可能

https://www.microsoft.com/ja-jp/account/authenticator
Google Play Storeのリンク
App Storeのリンク

スマートフォンで利用可能なMicrosoft Authenticator
サービスごとのワンタイムパスワードが発行され、タップでクリップボードにコピーできる

 元々はワンタイムパスワードを生成する、いわゆる認証アプリだった「Microsoft Authenticator」。だが、最近になってパスワード管理アプリとしての機能も追加され、より汎用的に使えるツールに変貌した。と言っても、大まかにはその2つの機能だけで、ワンタイムパスワードの画面とパスワード管理アプリの画面を切り替えて使うようなイメージになる。

 改めて説明すると、ワンタイムパスワードは2要素認証と呼ばれる方式を採用したアプリ、Webサービスなどで利用するコードだ。通常のパスワードのほかに、認証アプリが1分ごとに新たに発行する6桁の数字のワンタイムパスワードも入力することで、より高い確率で本人性を確認できる仕組みとなっている。

 登録したアプリ/サービスごとに発行されるワンタイムパスワードをタップするだけでクリップボードにコピーでき、あとはそれを利用先のアプリ/サービスに貼りつけるだけの簡単な手順で扱える。

 パスワード管理アプリ機能は、Webブラウザ上での自動入力にも対応する。登録したID、パスワード、関連付けるWebサイトのURLなどを管理でき、Webサイトのログイン画面でID/パスワードを入力するさいには、登録済みのなかから選択するだけで自動入力できる。機能は決して多くはないが、ワンタイムパスワード生成機能を含めすべて無料で利用できるのは利点と言えるだろう。

パスワード管理アプリの機能はシンプル
Webサービスのログイン画面における候補表示の仕方

Firefox Lockwise - Firefoxユーザーにイチ押し

https://www.mozilla.org/en-US/firefox/lockwise/
Google Play Storeのリンク
App Storeのリンク

Firefoxと統合されているPCWebブラウザ版のFirefox Lockwise

 WebブラウザのFirefoxが備えるパスワード管理アプリの機能を1アプリとして切り出したようなツールが「Firefox Lockwise」だ。Firefoxで利用しているアカウントと連携するかたちになっているため、基本的にはFirefoxユーザー向けのツールと言える。

 とは言え、独立したスマートフォンアプリを利用することで、スマートフォン上ではほかのWebブラウザやアプリなどでパスワードの自動入力も可能になる。スマートフォンアプリの起動は生体認証にも対応し、セキュリティ面でも安心感は高い。

スマートフォンアプリのFirefox Lockwise
スマートフォン画面の例。入力欄の近くに候補が表示

 ただし、試してみたところでは、スマートフォンのChromeなどほかのWebブラウザ上では、そのブラウザ内蔵のパスワード自動入力機能が優先され、うまく使えない場合があるようだ。

 PC版のWebツール上ではパスワードのインポート機能が利用でき、EdgeやIE、Chromeからの移行は容易。FirefoxでWebサービスの新規アカウントを作成するようなときには、パスワード入力欄でさりげなくランダムパスワードを提案してくれるようにもなっていて、Firefoxとの一体感は当然だが強い。デフォルトではマスターパスワードがオフになっているので、セキュリティが気になるなら忘れずにオンにしておこう。

PCのWebサービスのログイン画面における候補表示の仕方
新規アカウントのパスワード入力時にランダムパスワードを提案してくれる

Firefox Relay - アカウント作成用の“ダミーメールアドレス”を作れる

https://relay.firefox.com/

Firefox RelayのWebサイト

 今回のパスワード管理アプリのテーマからは少し外れるが、何らかのサービスに新規にユーザー登録するさい、セキュリティやプライバシーの面からプライベートの「本メールアドレス」を使いたくない、と感じることもあるはず。そんな場面で利用できるのが「Firefox Relay」というサービスだ。

 これは、エイリアスとなるダミーのメールアドレスを発行し、そのアドレス宛のメールをすべてFirefoxアカウントで利用している(本)メールアドレスに転送してくれるもの。試しに使ってみたいWebサービスや、業務の都合上どうしても別メールアドレスで登録したいときなどに使えるだろう。

 Firefoxという名称ではあるが、Firefoxアカウントさえあれば利用できる独立したサービスなので、プラットフォームやメインで使用しているWebブラウザが何かに関係なく便利に使える。作成できるエイリアスは5つまで、添付ファイルは150KBまで、という制限があるので、その点にだけ注意して活用したい。

Firefoxアカウントでログイン
「Generate New Alias」の青いボタンをクリック
すぐにダミーメールアドレスが発行された

機能比較表 - 有料ツールがベターだが、無料ツールの組み合わせもアリ

 最後に、Firefox Relayを除く4つのツールの機能比較表を用意した。

 このなかから純粋にパスワード管理アプリとして導入するもの選ぶということであれば、やはりBitwardenと1Passwordのどちらかになるだろう。ワンタイムパスワードの生成やセキュリティキーの利用を考えると、いずれにしても有料アカウントが前提となるが、それでもBitwardenの料金の安さは魅力的だ。

【表】パスワード管理アプリの比較
Bitwarden1PasswordMicrosoft AuthenticatorFirefox Lockwise
ライセンス無料
Premiumは0.83ドル/月~
有料
2.99ドル/月~
無料無料
日本語対応
クロスプラットフォームWeb/Windows/macOS/
Linux/Android/iOS
Web/Windows/macOS/
Android/iOS
Android/iOSWeb/Android/iOS
スマホアプリロック解除 - PIN認証-
スマホアプリロック解除 - 生体認証
スマホアプリロック解除 - 2要素認証
認証アプリ
セキュリティキー
(要Premium登録)

認証アプリ
セキュリティキー
--
Windows Hello認証--
データインポート
対応形式50以上+CSV

対応形式5+CSV

MSアカウント/Chrome/CSV

Chrome/Edge/IE
データエクスポート
PC Web、アプリから可

アプリから可
-
バックアップ機能あり

PC Webから可
PC Webブラウザ上での自動入力-
Firefoxのみ
スマホWebブラウザ上での自動入力
スマホアプリ上での自動入力-
ランダムパスワード生成-
PC Webのみ
ワンタイムパスワード生成
(要Premium登録)
-
SSO(シングルサインオン)相当機能
(要Enterprise版)

(要Business版)
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【お詫びと訂正】初出時に、BitwardenをWindows Helloに非対応としていましたが、対応しております。お詫びして訂正させていただきます。

 とりあえず金銭的なコストをかけずにはじめたいということなら、Microsoft AuthenticatorとFirefox Lockwiseの2つをセットで利用するという手もある。PCとスマートフォン間でツールをまたいだ同期ができない点はネックだが、Microsoft Authenticatorをワンタイムパスワード生成専用と割り切って使うのなら問題ない。

 有料ツールにしろ無料ツールにしろ、紙のメモやテキストファイルで保管するより、圧倒的に効率良く管理できるようになるはず。これからも増え続けることはまず避けられないID/パスワードの整理と管理に、ぜひパスワード管理アプリの導入を検討してみてほしい。