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本格的在宅勤務に向け、ノートではなくあえて高性能デスクトップPCを買った話

いまどきメモリは8GBでも足りないんです

 新型コロナウイルスがいつ終息するのか先行きが見えないなか、5月4日に緊急事態宣言の延長が発表された。株式会社インプレスでも、それを見越してその数日前に、不要不急の出社禁止措置を5月末まで延長しており、この記事も自宅で執筆している。

 こちらの記事(PC Watchはこうやってテレワークしています)でも紹介したとおり、PC Watchでは在宅勤務をかねてから試験運用していた。そのため、この3月から全面的な在宅勤務が開始されてからも、とくに効率を落とすことなく業務を遂行できているどころか、より多くの情報を読者の方々にお届けするべく、記事数は大幅に増えているほどだ。

 ただ、ちょっと悩ましかったのが仕事に使うノートPCの性能があまり高くないこと。会社では、エントリークラス(GeForce GTX 1050搭載)のゲーミングデスクトップを使っているが、取材先や自宅などでも記事を書くことがあるので、つねにモバイルノートも携行し、仕事に使っていた。

普段使っているFCCL製モバイルノート「FMV LIFEBOOK UH90/B3」

 CPUはCore i7-8550U、メモリは8GB、液晶は13.3型のフルHDというスペック。モバイルノートとしてはそこそこの仕様で、動画編集やゲームなどの重い作業以外はほとんどこなせる。だが、快適かと言われると、そうではない。その最大の原因は、Chromeが膨大なメモリを消費するのに対し、メモリが8GBしか搭載されていないためだ。

 必要な情報に即座にアクセスできるよう、Chromeではつねに20枚程度のタブを開いている。Chromeは、反応速度を高めるため、基本的にメモリはあるだけ使うようになっている。タブを20個も開いていると、Chromeだけでメモリを2GBほど使う。ノートだとCPU内蔵のGPUが平均で少なくとも1GBはメモリを消費することもあり、8GBはあっさりと使い切ってしまうのだ。

日常的に20個程度はつねにChromeのタブを開いている

 その結果起きるのが、Gmailを読むのすら少し待たされてしまうということだ。加えて、常時というわけではないが、ウイルススキャンがバックグラウンドで走ったりするとCPU負荷も高まり、1つ1つの動作が緩慢になる。Gmailなどブラウザベースのアプリ/サービスは基本的にそこまで重くないのだが、メモリが足りていないと状況は変わってくるのだ。これまではノートPCで作業するのはたまにだったので、妥協していたが、毎日使うとなると仕事の効率への影響も無視できなくなる。

仕事にも使うことを見据えてハイエンドゲーミングPCを購入

 そこで、自宅にもゲーミングデスクトップPCを設置することにした。すでに自宅にはゲーミングノートがあったのだが、いくつかの理由でそれは(配信を除いた)仕事には使わず、デスクトップを追加することにした。その理由を紹介していく。

自宅での仕事とゲーム環境を1台のデスクトップにまとめた

高性能=高効率

パソコン工房の「ガチくんモデル」の最上位機種「LEVEL-R040-LCi9K-XYVI-IeC [Windows 10 Home]」

 購入したのはパソコン工房の「ガチくんモデル」の最上位機種「LEVEL-R040-LCi9K-XYVI-IeC [Windows 10 Home]」だ。標準構成で、Core i9-9900K、メモリ16GB、NVMe SSD 512GB、HDD 2TB、GeForce RTX 2080 Ti、DVDスーパーマルチドライブ、Windows 10 Homeと、ゲーミングPCとしてもかなりハイエンドな仕様だ。ここからBTOで、メモリを32GBに、SSDを1TBに、OSをWindows 10 Proに変更し、購入価格は287,940円(税別)となった。

 容易に想像できるとおり、これだけの構成なら、ほぼあらゆる作業を快適にこなせる。一般的用途でこれで重くなるとしたら、4Kでのゲームや動画編集くらいだろう。メモリは16GBあればおおむね事足りるだろうが、現在、インプレスeスポーツ部の配信も自宅から行なっており、ゲーム+配信アプリなども同時起動するので、将来性も考慮してメモリは32GBに増強した。

 仕事については至極快適だ。仕事柄、1日に受け取るメールの数は数百におよぶ。記事執筆などで1時間ほど目を離しただけでも、未読メールがどっさりと届いている。その内、記事化対象としてしっかり読まなければいけないものは10分の1以下だろう。カーソルキーを押して、次から次へと流し読みしていく必要がある。

 そのさい、モバイルノートPCだと、まれに次のメールが開かれるまでに1秒ほどかかることがあり、ストレスだったのだが、このデスクトップPCならほぼ瞬時に開ける。きちんと計測まではしていないが、数倍の早さでメールのチェックができる。個人的にはこれだけでも買ってよかったと思っている。

 当然だが、仕事を終えた後のプライベートのゲームも、ひじょうに快適に動作する。ゲームにもよるが、フルHD解像度なら200fps程度は余裕で出せる。配信をしながらでも余裕だ。

Fortniteは、画質最高設定/フルHD解像度で150fps前後
Apex Legendsは、画質最高設定/フルHD解像度で180~240fps程度出る

 ちなみに、OSをWindows 10 Proにしたのは、仮想マシンでの検証なども見越してのことだ。

デスクトップPCは静音

 これは意外と見過ごされがちなのだが、デスクトップPCは一般的に言ってノートPCより静音だ。ことゲーミング製品となると、ノートPCでは口径の小さいファンを高速回転させるので、甲高いファンノイズが発生してしまう。デスクトップでは空間に余裕があるので、大型のファン、ヒートシンクを使えるため、ファンの回転数を抑えられ、結果としてファンノイズも減る。

 加えて、LEVEL-R040-LCi9K-XYVI-IeC [Windows 10 Home]では標準で水冷クーラーを装備している。水冷は空冷よりも冷却性能が高く、ファンノイズもさらに小さい。自分の用途を考えると、スペックはもう一段下げても良かったのだが、この点があったので最上位モデルを選んだ。

LEVEL-R040-LCi9K-XYVI-IeC [Windows 10 Home]では標準で水冷クーラーを装備。高性能でも騒音が小さい

 ファンノイズを聞くのが自分だけなら、ヘッドフォンを使えばノイズは耳に入らなくなる。しかし、昨今は同僚や取引先などとの電話/ビデオ会議が増えた。その場合、ファンノイズはそのままマイクに拾われて相手に聞こえて耳障りとなり、会話も聞こえにくくなってしまう。また、ノートPCでメモを取るときも、キーボードがマイクのある本体に内蔵されているので、打鍵音や振動音が伝わりやすくなる。

 デスクトップなら、キーボードと本体は分離されているし、デスクトップは机の下に置いているので、たとえファンノイズが発生しても、マイクから遠いので拾いにくくなるのだ。今回計測まではできていないが、卓上のゲーミングノートと机の下のデスクトップでは、マイク/耳に届く騒音は明らかに減少した。

ノートPCのカメラ、マイクは品質に期待できない

 ビデオ会議に関して、ノートPCなら最初からマイクとカメラを内蔵しており、すぐにでもはじめられるメリットがある。だが、先にも書いたとおり、一部の高級製品を除き、内蔵マイクは品質的にも環境的(騒音を拾いやすい)にも良いとは言えない。これはカメラにも当てはまる。

 一般的なノートPCの内蔵カメラは画質が低い。とくに普通の室内だと、天井のシーリングライトによって、目の下、あるいは顔全体に影ができてしまう。センサーのダイナミックレンジも狭いので、机の上に顔を照らす用の照明を置いても、大きな改善は期待できない。また、多くの場合、ノートPCのWebカメラはユーザーを見上げる場所に位置し、顔を下から煽った角度になるので、これもあまりよろしくない。その結果、ノートPCにWebカメラが内蔵されていても、より高画質で、設置場所も融通が利く外付けWebカメラを使う人が増えている。

 であれば、ビデオ会議用に最初からカメラとマイクが内蔵されているというノートPCのメリットはあまり活かされず、デスクトップでもいいのではという話になるのだ。

 筆者の場合は、ゲーム配信を行なうため、以前からミラーレスカメラ+キャプチャユニット、オーディオグレードのマイクを持っていたので、やはりノートPCの内蔵カメラ/マイクを使うことはない。

現在のデスクトップ環境。ミラーレスカメラα6300を使った配信環境は、そのままビデオ会議にも流用している

 デスクトップを選んだもう1つの理由は、大きめのディスプレイを使おうと思ったというのもある。筆者は視力が高いので13型フルHDでも文字を読める。会社では27型のディスプレイだが、4K解像度なので、文字の大きさは13型フルHDとほぼ同じ。ただ、ゲームをやるなら大きめの画面のほうがいい。ということで、ASUSの280Hz対応27型フルHD液晶「VG279QM」も購入した。

 視力的に13型や15型でフルHDは文字が読みにくいという人もいるだろう。そういう人は、ノートPCを使う場合でも、外付けディスプレイを用意したほうがいい。なによりデュアルディスプレイになるので、作業の効率が上がる。

配信はもちろん、ビデオ会議でも意外と求められるCPU/GPU機能

 先にも書いたとおり、筆者はゲーム関連の定期配信を行なっている。これまでは会社のスタジオからの配信だったが、現在はそのほかの演者を含め自宅から行なっている。このさい、配信ソフト(OBSやXSplit)、ビデオ会議ソフト(Discord)、ゲーム(ストリートファイターVやFortniteなど)といったソフトを同時に実行する。

 当然、これを1台でこなすには高い性能が必要となるのが、想定外だったのが、DiscordのCPU利用率の高さだ。演者の顔をワイプとして映すために、Discordのビデオチャット機能を使っているのだが、3~4人分の顔を表示させると、Core i7-8750Hでも、CPU負荷が30%ほどかかってしまう。Discordの設定ではエンコード/デコードにハードウェアで利用するようになっているのだが、多くの処理をCPUが行なっているようだ。そのため、肝心のゲームが重くなってしまう。

現在は、定期配信も演者の方に自宅から参加してもらっている。そのさいにDiscordで全員の顔を映し出すと、思いのほかCPU負荷が高くなる

 調べたところ、自分の顔を映し出すと重くなってしまうので、ノートPCで配信を行なっていたときは、ゲームプレイのさいは、自分の顔の表示を切っていた。これが、今回購入したLEVEL-R040-LCi9K-XYVI-IeC [Windows 10 Home]だと、顔の表示を切ることなく、スムーズに動かせた。

 ゲームの配信は、そこまで一般的な用途ではないが、昨今のビジネスの場では、打ち合わせでビデオ会議が多用されている。そのさいに、あまり自宅を見せたくないため、カメラに写る背景だけを削除して、別の画像に差し替える機能を搭載するサービス/アプリも増えている。これらの機能もCPUやGPUをそこそこ使うので、ある程度の性能のCPUや外部GPUがほしいところだ。

 また、対象はGeForce RTXシリーズにかぎられるが、NVIDIAが提供する「RTX Voice」を使うと、ほとんどすべてのビデオ会議ソフトでマイクに乗る環境ノイズを消すことができる。本製品でも試してみたところ、ずっと流れている騒音が見事に消え去った。今回買ったPCは、ファンノイズはひじょうに小さくてもともと問題ないが、筆者は配信時に円柱状の水槽にポンプで泡を送り込む間接照明を使っていて、これがずっとぶ~んという騒音になってわずかだ配信にも乗っかってしまう。これはまったくといっていいほど聞こえなくなった。

 加えて、筆者はストリートファイターVをプレイするので、アーケードコントローラを利用しており、普通はボタンを叩く音がマイクに乗るが、これもほとんど聞こえなくなった。とくに家族のいる人が自宅でビデオ会議に参加するときに重宝するだろう。

 なお、しゃべっている間にボタンを叩くような短い騒音が発生すると、じゃっかんだが声が合成処理がかかったような音になる局面がある。RTX Voiceは設定でノイズ除去の強度を調整できるので、気になる場合は調整してみよう。

今後も見越して余裕のあるスペックのPCを買いたい

 今回購入したパソコン工房のLEVEL-R040-LCi9K-XYVI-IeC [Windows 10 Home]は、ゲーミングPCとしてもハイエンドなもので、あらゆる処理がストレスなく実行できて当然とも言える。今回の記事で伝えたいのは、「だから最上位の30万円のPCを買いましょう」というものではない。

 急遽在宅勤務を余儀なくされ、PCを新規購入あるいは買い換えしなければという人もいるだろう。ただ、今回の新型コロナウイルスは、より柔軟な働き方という考え方に大きな影響を与え、無事短期間で終息したとしても、在宅勤務を新しい選択肢の1つとして定着させていく契機になるだろう。

 そういった観点から、自宅でも快適に仕事ができる環境を作っておくのは良い投資だと思う。そのさいに検討したいのがゲーミングPCの購入だ。ゲーミングPCといっても、ゲーム専用機ではない。PCなのだから、ゲーム以外にさまざまな仕事や学習にも活用できる。ざっくり言って、15万円クラスのゲーミングPCを買えば、多くのことを快適に処理できる。

 もちろん、リビングのテーブルしかないという場合は物理的に難しいので、ノートを選ぶしかないのだが、この記事で述べたように、ノートかデスクトップかと聞かれたら、筆者はデスクトップをおすすめする。