特集

2018年のゲーミングノートパソコン9製品を一斉レビュー

~プロゲーマーに加え3DCG/映像/写真のプロもそれぞれの視点で評価

9メーカーが選んだおすすめのゲーミングノートPCを5つの視点で検証

 ここ数年で高性能CPUやGPUの省電力化が進み、ノートPCでもAAA級のタイトルを難なく遊べるようなデスクトップPC並みの性能を備えた製品が手に入るようになっている。

 本稿では、ALIENWARE(デル)、ASUS、G-Tune(マウスコンピューター)、GALLERIA(サードウェーブ)、iiyama PC(ユニットコム)、Lenovo(レノボ・ジャパン)、MSI、OMEN by HP(日本HP)、Razerの9社から、それぞれのメーカーがおすすめする1台を借用し、一斉比較することとした。

 13.3型~17.3型まであり、搭載GPUはミドルレンジからハイエンドクラスまで、なかにはGPUを2基使うSLI構成のものや、Thunderbolt 3による外付けGPUボックスまで多彩な顔ぶれとなっている。

 今回はゲーミングPCのレビューということで、ゲームが本職のプロゲーマーや、ゲームやグラフィックス技術に精通したテクニカルライターが参加しているが、ゲーミングPCはクリエイティブな要件も満たせる高性能さも備えている。そこで、PCにシビアな性能を要求する映像編集、3DCG制作、写真の専門家にも参加してもらい、合計5人のプロフェッショナルたちをレビュワーとして招いている。

 そのため、本稿はゲーミングだけでなく、クリエイティブな作業を求めるユーザーにも参考になることと思う。

 評価方法としては、5人それぞれが製品を評価するための指標として5項目を設定。ゲーム用途であれば、「操作性」、「画面品質」、「デザイン」、「性能」、「コストパフォーマンス」が評価項目となっており、1項目につき最大5点満点として、点数で順位を決定。同点の場合は評価項目以外の要素を加味して順位を決める。1位~3位に選ばれた栄えある製品には、とくにおすすめ度が高いということで、レコメンドマークを授与している。

 なお、本稿における評価の点数は、比較機中の相対的なものである。点数が低いものも、その用途において快適に利用ができないことを意味するものではないことをご留意いただきたい。

 それぞれの製品の内容と評価をすぐにご覧になりたい方は、下記の目次にあるリンク先を参照されたい。

審査する専門家たちと評価基準を紹介

 以下、評価者となる5人の専門家のプロフィールや評価基準を紹介している。評価ページを読む前に各人がどういった背景を持って製品を見ているか、事前に把握したほうがより参考になるだろう。

【プロゲーマー目線】鈴木 悠太

 プロゲーミングチーム「SunSister」所属選手、チームスタッフとして活動。チーム運営から選手サポート、通訳など幅広く業務をこなす。「Alliance of Valiant Arms」2012年日本代表。東京アニメ・声優専門学校、e-sportsプロフェッショナルゲーマーワールドの立ち上げから3年間、講師として従事した。

 初めてPCを自作したのは中学生のとき。高校生ではFPSゲーム中心の生活を送り、“esports”という単語が日本になかった時代から競技ゲームにたずさわってきた。

 現在使用しているPCのスペックは、OSがWindows 10 Home CPUはCore i7-6700(3.4GHz)、GeForce GTX 1070、メモリ32GB、ストレージはSSD 512GB+HDD 2TB。

 今回の記事では、競技的にゲームをするにあたって、ゲーミングノートPCは現行のゲーミングデスクトップPCとどこまで戦えるのか、という観点から評価を行なった。

 検証内容としては、各ゲーミングノートPCでPUBG(PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS)と、AVA(Alliance of Valiant Arms)で何戦か行ない、体感的な操作性やスペックを確認した。また、ベンチマークスコアや排熱などの値も体感と合わせて評価対象とした。とくに、ディスプレイの応答性といった部分はシビアにとらえ、勝てるPCを評価した。

PUBGで検証する鈴木氏
鈴木氏愛用のZOWIE製マウスとマウスパッド

【技術系ライター目線】西川 善司

 テクニカルジャーナリスト。映像技術、コンピュータグラフィックス技術、VR技術、ゲーム開発技術、自動車関連技術などにフォーカスした取材、記事執筆を行なっている。インプレスではAV Watch、Car Watchで連載を担当。ゲームについては、趣味をやや逸脱したレベルでプレイに取り組んでおり、1990年代はリアルタイムストラテジー系のゲームを中心に取り組み、攻略本も執筆。最近ではストリートファイターVを熱心にプレイ中。

 私物のノートPCは、11型前後のリアルモバイルPCと17型前後の高性能ゲーミングPCとの2台体制。デスクトップPCは、自作PCが中心で、Core i9、Ryzen 7の2台体制で仕事やゲーミングに取り組んでいる。

 今回の評価にあたっては「1台のPCで完成されたゲーミング環境になっているかどうか」を主軸にした評価を行なっているが、高価なゲーミングPCゆえにその拡張性/将来性についても目を向けてみた。

ストリートファイターVで検証

【映像エディター目線】小林 譲

 筆者はふだん映像のエディターとして、TV番組やCMなどを顧客を前にして編集をすることが多い。顧客にストレスを感じさせずスムーズな編集環境のためには自身の技術以外にも、やはり高い性能を持つPCを使うことは必須だ。

 ポストプロダクションと呼ばれるいわゆる編集室には、高いマシンが備えつけなわけだが、つねにそこで作業できるわけではない。自身のノートPCを持ち歩いて出先で編集をするケースは昨今多い。まわりの多くのエディターがそうであるように、筆者もふだんはMacBook Proを愛用している。今回はそういった場に最新のゲーミングノートPCを使用したらどうなるか? という検証である。

 使うソフトは今や業界標準となったAdobeのPremiere Pro CC。エディターとして気になる点を、以下の5項目に分けて評価することにする。

  • リアルタイム性
    4K 映像など重たいファイルに負荷のあるエフェクトをかけ状態でどれだけサクサクと編集できるか
  • 処理速度
    編集された映像をファイルに書き出すさいの所要時間(筆者のMacでは約60秒)
  • ディスプレイ
    UIの見やすさや解像度、色の再現性
  • 拡張性
    標準装備の接続端子や外付けのGPUなど
  • コストパフォーマンス
    価格対性能比のバランス
動画編集時のPremiere Pro CCの画面

 余談だが、Macが映像業界で広く使われている背景に、一時期Final Cut ProというApple製の編集ソフトが革命的に業界に広まったことがある。また、Mac 専用のProResという映像フォーマットは、もはや 業界標準と言っていい。Windowsのよさは知っていても、なかなかMacから抜け出せない人が多いのはこのためだろう。

【3DCG製作者目線】宋 明信

 長年CG/CADソフトウェアメーカーにて、ソフトウェア エンジニアを担当し、とくにCGソフトウェアであるAutodesk 3ds Maxを中心にユーザー向けの技術啓蒙や支援を行なう。PCやビデオカードとソフトウェアとの相性テストなども担当。

 現在は独立し ウイニー・ビレッジにおいてコンテンツ制作会社に対しての3DCGの技術支援やソフトウェア開発などの業務を行なっている。MacBook Pro 15インチ2016 LateにWindows 10を突っ込んで、走り回っている毎日。

 3DCGソフトAutodesk 3ds Maxを使う上でのベンチマークテストとして以下の3点を中心に計測。

  • 一番処理時間がかかる工程がレンダリングと呼ばれている計算処理であるが、まずはどのくらいの速度で完了するのか? 最新のArnoldレンダラーを使って計測
  • 画面描画のパフォーマンスレベルはどの程度か計測
  • データ読み込みの性能はいかがなものか? これはソフトウェアの起動時間で計測

 そのほか、持ち運び可能であるかや、導入コストを評価点に取り入れてみた。所有欲を満たしてくれるか、製品の作りの良さ、筐体のソリッド感などを踏まえて評価している。なお、長期レポートではないので堅牢性などは評価外とした。

アニメーションテストの画面
レンダリングテストの画面

【写真家目線】若林 直樹

 デジタルカメラが登場したころから評価する機会に恵まれ、写真家のなかではいち早くデジタル化に移行したITに強い写真家。

 出版社のスタジオやロケが多く、ノートPCは必需品である。長期のロケなどに行くと撮影カットは膨大になる。それらの保存やバックアップにはノートPCが必須で理想はストレージの容量が1TBで、メモリも8~16GBが必須と考えている。仕事先でPhotoshopはガシガシ使うこともあるので画質もよくそれなりのスペックがほしい。

 僚誌DOS/V POWER REPORTでの仕事の影響もあり、自作PCにも通暁、自作したPCは数十台以上になる。現在のメインマシンのスペックはCPUがCore i7-7700Kで、メモリは16GB。ノートPCは「VAIO NOTE 505」からはじまり現在は13.3型のMacBook Pro(Late 2016)をメインに使用。サブ機はMacBook AirでこちらにはWindowsを入れている。

 普段からPhotoshopでのRAW現像からWeb用や印刷用に画像処理をしており、今回はそうした仕事での使い方を想定して、評価項目に「色温度」、「階調性」、「輝度ムラ」、「処理速度」を設けた。

 「階調性」はグレーの暗部と明部、そしてRGBの各色のグラデーションを評価し、画面表示の色の傾向を見るために「色温度」をRAW撮影から算出。輝度ムラは白を表示させ、同じ明るさで撮影しコントラストを同じ値で高め、そのムラの見え方とヒストグラムの広がりで評価している。

 「処理速度」は、Photoshopで10枚のRAW写真データを同期させて調整値を同じにし、Photoshop上に開ききるまでの時間で評価した。バッチテストはPhotoshopの「アクション」で普段使う調整に重いフィルタを追加し、処理が終わるまでの時間で計測した。これはGPUによる影響を受けやすく差が出やすい結果になった。

階調の検証画面