2021年11月9日 11:00
栗田工業株式会社(本社:東京都中野区、代表取締役社長:門田 道也)は、土壌・地下水中の汚染物質の一つであるVOCs(揮発性有機化合物)を、汚染土壌の掘削を伴わずに浄化する新技術「パワーバイオE-PLUS(TM)」を開発し、適用を開始しました。
「パワーバイオE-PLUS(TM)」は、土壌に吸着したVOCsを加温により地下水中へ溶出させ、微生物の働きで分解・無害化させる新技術です。土壌の掘削を伴わずに汚染源へアプローチできるため工場が操業中でも浄化に着手できることに加え、従来の原位置浄化技術の課題であったリバウンドを抑制し、短期間で確実に土壌・地下水汚染を浄化します。
工場が立地する土地では、過去に使用された有害な化学物質や排水が地表から浸透して地下に残存していることがあり、事業者が工場棟の増改築や用地売却等を行う際に、これら汚染物質の浄化が必要となる場合があります。建屋下に土壌・地下水汚染が存在する場合、操業中では建物の解体が困難であるため、汚染された土壌を取り除く掘削除去ではなく、地下水に微生物を注入して汚染物質を分解させるバイオ浄化などの原位置浄化が採用されています。
汚染物質の一つであるVOCsは地下深くまで浸透しやすい性質を持っており、水を通しにくい地層(難透水層)にまで浸透した場合は、土壌に吸着されてしまうためバイオ浄化では完全に浄化することが難しく、地下水中にVOCsが徐々に溶け出すリバウンドにより浄化期間が長期化するという課題がありました。
このたび当社が開発した「パワーバイオE-PLUS(TM)」は、地中に電極を設置し、電流を流すことで土壌を加温し、難透水層の土壌に吸着したVOCsを地下水中への溶出させる「電気発熱法※1」と、地下水中に溶出したVOCsを微生物の作用により分解・無害化させる「クリオーグ・パワーバイオ(R)法※2」を組み合わせた新たな土壌・地下水浄化技術です。
本技術で難透水層の土壌に吸着したVOCsを除去することが可能となり、浄化後のリバウンドを抑制できます。実際に本技術を適用し土壌汚染対策法の浄化終了の要件(浄化後2年間地下水基準適合維持)を達成できた事例があります。さらに、土壌への加温は微生物の活性化を促す効果もあり、従来のバイオ浄化技術適用時と比べて浄化期間の大幅な短縮を実現します。
また、汚染土壌の掘削を伴わずに浄化が可能なことから、操業中の工場建屋下の汚染にも適用できるとともに、重機による掘削や汚染土の運搬、処理が不要であるため、掘削除去に対してCO2排出量削減効果が期待できます。
今後は、「パワーバイオE-PLUS(TM)」を当社が保有する汚染源探査技術(ダイレクトセンシング)や浄化期間予測シミュレーション技術と組み合わせ、より的確に汚染源を捉えて浄化を最適化することで、操業中の工場における確実な土壌・地下水浄化を提供し、より一層の環境負荷低減に貢献していきます。
クリタグループは、独自の技術・商品・ソリューションをお客様に提供し、水と環境の課題解決を通して持続可能な社会を実現していきます。
※1:地中に電極を設置し、電流を流すことで土壌を40℃~80℃に加温し、土壌粒子に吸着しているVOCsを地下水に溶出する技術。当社は2021年5月に株式会社島津製作所より「電気発熱法」の実施権および浄化用設備を取得しました。
※2:あらかじめ培養した微生物を栄養剤とともに地中へ注入し、VOCsを分解・無害化する当社独自の技術。汚染物質を分解できる微生物が地中に存在しない土地でも適用可能であり、栄養剤だけを注入する場合に比べ浄化期間を短縮できるという特長があります。
本技術の詳細については、以下関連プレスリリースを参照ください。
https://www.kurita.co.jp/aboutus/press160314.html
<補足資料>
詳しくは、商品紹介ページを参照ください。
https://kcr-pg.kurita-water.com/powerbio-e-plus_main.html?utm_source=KeWISite&utm_medium=PressRelease&utm_campaign=2021sepPressRelease