やじうまPC Watch
【懐パーツ】PDも対応する初のDVD-RAMドライブ「LF-D101N」
~類を見ない独自ローディング機構に注目
2019年3月15日 11:59
松下電器産業株式会社の「LF-D101N」は、一般市場としては初となるDVD-RAM対応ドライブ群に属するモデルで、1997年10月に発表され、1998年1月20日に発売された。発売時の価格は9万円だった。
筆者が入手したLF-D101Nという型番のモデルはOEM向け製品とされており、一般小売りモデルは「LF-D101J」で1998年6月に発売されている。とはいえ仕様は一緒のようだ。パーツとして購入したユーザーであれば、後者を入手していることだろう。
LF-D101Nの最大の特徴は、CDとDVDの読み出しに加え、松下独自のPD(Phase-change DualまたはPhase-change Disc)、そしてDVD-RAM Ver.1.0の読み書きが自由に行なえる点である。
PDとDVD-RAMはともに相変化記録技術を採用したメディア。波長650nmのレーザーを用いて、記録層の物質を結晶質またはアモルファス状態にし、その反射の違いによりデータを記録する。CD-Rなどの追記型とは異なり、HDDやFDのように自由にデータの書き込みや消去が行なえるため、PCとの親和性が高いのが特徴だった。
PDは1995年に開発され、CDと同等の容量である650MBを実現していた。ディスク自体はCDと同じ12cm径だが、カートリッジに収まっているのが特徴だった。
CD-RやMO、DVDといった大容量リムーバブルメディアのほとんどがメディアの内周から記録を開始していたのに対し、PDは外周からデータを書き込む。このため領域の最初のほうが読み書きが速い。当時、一般用途では650MBの容量を一気に使い切るのが難しかったことを考えれば、極めて合理的な仕様であったと筆者は思う。
一方、DVD-RAMはDVDフォーラムが正式に策定した書き換え可能なDVD規格だ。今、DVDと言えば容量は4.7GBだが、DVD-RAMが出た当初の規格Ver.1.0では、片面2.6GB/両面5.2GBだった。DVD-RAMが片面4.7GBという容量に達したのはVer.2.0からであったが、PDとの互換性は失われている。
DVD-RAMはPDと同じパケットライト方式を採用しているため、ファイルを頻繁に書き換えるPCとの親和性が高い。Ver.1.0がPDと互換性を保っていたということは、松下がDVDフォーラムで規格策定に大きく働きかけていたということで間違いないだろう。
前置きが長くなってしまったが、そのPDとDVD-RAMに対応した初のドライブがLF-D101Nというわけである。先述のとおり、PDとDVD系読み書きは波長650nmのレーザーで行なうが、CDは波長780nmのレーザーを使う必要がある。記録層の位置もCDとDVDと異なるため、レンズの開口数も異なる。このためLF-D101Nでは2つの対物レンズを備えており、挿入されたメディアを認識し、サーボでレンズを切り替えるというトリッキーな仕組みを用いている。
また、PDとDVD-RAMは、CD-ROMやDVD-ROMとは異なりカートリッジ形式となっているため、トレイを工夫する必要がある。それまでのPDドライブは、一般的なCD/DVDドライブより深く、PDが収まるトレイになっていて、そこに12cmと8cmのディスクの溝を用意することで対応していた。これはほぼ同時期に発売された日立製のDVD-RAMドライブ「GF-1055」とて同じで、以降のDVD-RAMドライブのデファクトスタンダードにもなっている。
一方で、LF-D101Nは左右からメディアを挟むユニークなフレーム機構となっており、メディアを前面から出し入れするようになっている。これにより、縦置き時でもメディアを挿入しやすいというメリットが得られる。ガイドレールには一般的なCD/DVDが挿入できるような溝があり、板バネでメディアを保持する仕組みとなっている。
このローディング機構は大変よく練られたものとなっているほか、基板に搭載されるチップも大半もPanasonicの刻印があり、内製率が非常に高いことが伺える。さらに先述のデュアル対物レンズのギミックも考慮すると、コストは決して安くない。
いまやちょっとリッチなランチ代ぐらいでDVDスーパーマルチドライブが買えることを考えると、「20年前はDVDドライブに9万円も払ってたんかい!」とバカバカしく思えるかもしれない。しかし、少なくともLF-D101Nはそれに見合うだけの価値が詰め込まれており、非常に高い完成度と複雑度に、設計・開発者には頭が下がる思いでしかない。