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第9世代Coreはソルダリング復活もOC性能は不十分。殻割り+ダイ研磨なら13.5℃低下

 海外の著名オーバークロッカーder8auer氏は20日、YouTube上で第9世代Coreプロセッサのヒートスプレッダに関する考察を投稿した。

 Intelのメインストリーム向けCPUは、Ivy Bridge世代からCPUダイとヒートスプレッダの接合材(TIM)にグリスを採用していた。通常で利用する分にはなんら不自由がないが、熱伝導性の悪さがオーバークロックの足かせとなっており、高クロックを狙うオーバークロッカーのあいだで不評だった。

 第9世代Coreでは、増えたコアと向上したクロックで増加した熱に対策するため、ソルダリングを用いている。Sandy Bridge世代への回帰となるわけだが、どうやら手放しで喜べる状況ではないようだ。

 同氏はこれまでも述べているが、Intel CPUのソルダリングは、熱伝導率が81.8W/(m・K)のインジウムが採用されており、ヒートスプレッダに使われている銅の398W/(m・K)には遠く及ばない。また、ヒートスプレッダとPCBを接合するシール材のために残した厚みもあるため、熱伝導のボトルネックにもなる。

 そこで同氏はCore i9-9900Kを“殻割り”し、シール材を除去した上でインジウムが薄くなるよう再ソルダリングしてみたが、過熱と冷却の過程でクラックが入ったため、結果が振るわなかった。その後ソルダリングを完全に削ぎ落とし、液体金属に置き換えたところ、9℃ほどの温度低下が確認できたのだという。

 ただ、Core i9-9900Kは2コア増えた分、ダイも大型化しており、放熱面積ではCore i7-8700Kと比較して有利であるにもかかわらず高い温度を示している。そこで詳しく分析したところ、Core i9-9900KのダイがCore i7-8700Kのダイよりも厚みが2倍になっていることがわかった。

 一般的にシリコン上に成形される回路は底部にあり、そこで発せられた熱がダイ=シリコンの上を通って、TIM→ヒートスプレッダに伝わる。シリコンの熱伝導率はインジウムよりは優秀だが、やはり銅に及ばないほか、厚みが増している分冷却性能が落ちているのではないか、というのが同氏の考察だ。

 そこで同氏は、市販のCore i5-9600Kを購入して殻割りし、40μmのダイヤモンド研磨シートなどを用いて、ダイを研磨して検証。その結果、ダイを0.20mm削った場合、5GHz駆動時で標準時から13.5℃も温度が低下し、単純に液体金属に置き換えたときと比較しても、温度が5.5℃低下しているという。

 これまで、Intel CPUでオーバークロックの結果を出そうとするならば、殻割りをしてTIMを塗り替えるだけである程度良い記録が狙えたが、第9世代では殻割りをしたうえで、難易度の高いインジウムの除去を行ない、さらにリスクが高いダイ研磨をしなければならなくなった。ソルダリングの採用により、オーバークロックがより狭き門になってしまったと言える。