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スタンフォード大、ダイヤ分子から幅たったの原子3個分のナノワイヤを作る技術を発見

 米スタンフォード大学は26日(現地時間)、ダイヤモンドイドを化学的に組み合わせることで、幅がわずか原子3個分の微細なワイヤーを作る技術を発表した。

 一般に、一次元物質や二次元物質と呼ばれるごく細いワイヤーやごく薄いシート状の物質は、同じ物質であっても通常存在するもの(バルク物質)と物性が異なることが知られている。中にはシート状の二次元構造をもつ炭素分子であるグラフェンのように、熱や電気的に非常に優れた特性をもつものがあり、さまざまな応用が期待されている。この研究は、そのようなナノ素材のもつ原子レベルの構造を正確に形成するためのものだ。

 どうすれば微細なナノワイヤーを効率よく得られるのか? という課題に対し、研究チームは、炭素原子10個からなる最小のダイヤモンドイドに着目した。ダイヤモンドに類似したカゴ型の構造をもつ炭素分子の一群で、ファンデルワールス力を持つなどダイヤモンドに似た物性を示す。ファンデルワールス力は分子間力とも呼ばれ、分子や原子の間に働く電気的な引力のことだ。

 このダイヤモンドイドの表面に硫黄原子を付加し、銅溶液中に入れることでナノワイヤーが得られるが、特筆すべきは、かご状の構造を外側にして硫黄原子と銅原子がワイヤーコアと呼ばれる芯線のような構造を形成する点である。そのワイヤーコアの周りを取り囲むカゴ状の構造がシールドのような役割を果たしつつも、カゴ状構造同士がファンデルワールス力で引きつけられるため、まるでLEGOブロックのようにどんどんワイヤーコアを積み重ねていくことができる。つまり、肝心の細さを保ったままでナノワイヤーを伸長させることができるということだ。

 また、この非常に都合の良い性質も手伝って、ナノワイヤーの形成は容器の中に材料を投入するだけで、特別な触媒や過程も必要とせずに30分ほどで得られるとされており、非常に微細なナノ分子を正確に、平易な方法で得られる点で画期的と言えるだろう。

 研究チームは、カドミウムや亜鉛、鉄、銀などの異なった原子を用いた場合でもナノワイヤーを形成することに成功しているほか、カルボランというカゴ状の構造をもつ物質を用いても同様にナノワイヤーを形成することができるとしている。特に、カドミウムを用いたものは発光ダイオードのような性質を示し、亜鉛を用いたものは運動エネルギーを電気に変換するピエゾ効果(エレキギターの原理である)をもつことが明らかになっている。研究者は、「発電する衣服」のような従来考えつかなかったようなものから、超電導技術まで応用可能性が広がっていると期待をにじませている。

茶色の球が銅原子、黄色が硫黄原子。コアを格子構造が囲む構造が見られる。