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直径数nmの分子細線を基板上に直立形成できる技術。3次元立体電子回路に応用可

今回の手法によって基板上に直立して形成されたナノワイヤー。以下、電子顕微鏡写真のスケールバーは500nm

 京都大学大学院工学研究科、量子科学技術研究開発機構、およびインド大学間加速器研究センターらによる研究グループは6月29日、粒子線を利用して、長さや太さが均一な有機分子による数nm径の細線を形成することに成功した。

 医療分野だけでなく、軟X線領域にあたる極端紫外光(EUV)を用いた微細加工など、半導体分野においても放射線が活用されている。半導体素子の加工は微細化の速度を維持し続けているものの、大きさに基づく集積には限界もあることから、3次元的な集積も進められている。

 一方で、非常に固い無機物のシリコンと柔らかい有機物の化学反応の組み合わせは細長い構造を形成しづらく、3次元構造の実現には2次元構造の重ねあわせが必要で、2次元構造1枚では、長さと太さの比(アスペクト比)が10程度の構造を直立させるのも困難だった。

様々な分子を自由に選択して直立型ナノワイヤーを形成した例

 研究グループでは、高エネルギー粒子線を十分な速度で突入させ、粒子に沿って極めて狭い空間だけに化学反応を起こすことで、アスペクト比が100程度の細長い構造(ナノワイヤー)を基板上に直立させることに成功した。高いアスペクト比以外にも、1つの粒子で1つの構造を形成し、光などの集束が必要ない点や、数nm単位の微細性を持つ点、太さや長さが均一な点、多くの分子が加工できる点、異なる物質を連結できる点などを特徴としている。

 粒子線が突き抜ければよいため、対象の物質に依存せず、複数の有機分子を積み重ねて適用することで、異なる分子が連結したナノワイヤーの形成なども可能。ナノワイヤー同士の3次元構造の作成なども可能だとしており、今後は3次元立体電子回路の形成などのほか、直立型ナノワイヤーの広い界面をいかした超高感度センサーなどへの応用も見込んでいるという。

フタロシアニン/フラーレン分子とペリレン酸無水物/トリフェニレン分子を積み重ねてナノワイヤーを形成した例
試料を飛んでくる粒子の方向に対して傾けて回転させ、様々な方向から粒子が材料中に侵入するようにさせて直立型ナノワイヤーの櫓を組ませた例