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【懐パーツ】純正ではi486最速、「IntelDX4」

IntelDX4

 今回は1994年に発売されたi486世代の末裔、「IntelDX4」を紹介したい。

 i486は1989年に発売された32bitプロセッサである。当初の動作クロックは25MHzまたは33MHzの2種類であった。旧製品Intel 80386に対して、8KBのL1キャッシュを内蔵し、ほぼ全ての命令を1クロックで動作させることで高速化。浮動小数点演算を行なうコプロセッサを内蔵することで、同クロックのIntel386と比較してほぼ2倍の性能を実現した。

 その後、内包する浮動小数点演算のコプロセッサを省いた廉価版の「Intel486SX」が1991年に登場。そして1992年に、マザーボード上の供給クロックを2倍に逓倍することで高速化を図った「i486DX2」が登場する。

 当時、プロセッサの動作速度はマザーボードのバスクロックに依存していたが、メモリなどの周辺機器の動作クロックを引き上げることは難しく、CPUだけ高速化する逓倍技術は画期的であった(今では当然の技術だが)。

 そして1994年に、この「IntelDX4」が登場する。“4”という数字とは裏腹に、逓倍は3倍である。ベースクロックが25MHzのマザーボードの場合は75MHz、33MHzの場合は100MHzで動作した。i486シリーズの中では最高クロックを誇っている。また、キャッシュ容量も8KBから16KBに増強されており、高速化を実現している。

 こう言うと凄そうなプロセッサなのだが、実は先に1993年に、新アーキテクチャを採用したプロセッサ「Pentium」が既に登場していた。最大2命令を同時実行できるようになったPentiumは、浮動小数点も1命令1サイクルで実行できるようになり、i486を完全に過去のものにした。つまりIntelDX4は廉価版という位置付けであるとともに、i486を延命処置させるための製品に過ぎなかった。

 当時、i486システムを延命させる製品としてAMDの「Am5x86」、Cyrixの「Cx5x86」シリーズもあり、これらはいずれもIntelDX4より高速だったため、廉価なPCであってもIntelDX4を採用する製品はさほど多くなかった。付け加えるならば、それまでのi486の駆動電圧は5Vであったのに対し、本製品は3Vに引き下げられており、3V非対応マザーボードで使用するためには、いわゆる“ゲタ”を履かせる必要があった。さらに、83MHz駆動のPentium OverDriveという選択肢もあったので、コスト制限上の理由がない限り、IntelDX4を選ぶメリットは薄い。

 さて、実物だが、さすがに経年劣化が激しく、ピンの多くが曲がっていた。今回写真を撮影するに当たってほぼ戻したが、動作する自信はない。IntelDX4の刻印とともに注目したいのは、「iCOMP index=435」だろうか。

 iCOMP indexはIntel自身が定めたプロセッサの速度指標で、25MHz動作のi486SXを100とした時の製品の性能を示している。つまり、本製品は25MHzのi486SXと比較して約4.35倍速い、ということだ。動作クロックが4倍になっている上に、キャッシュ容量も多くて浮動小数点コプロセッサもあるのだから、4.35倍となっているのも一理もある。

本体底面。マレーシア製だ
ピンが結構折れ曲がっており、時を感じさせる
3V駆動だった