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【懐パーツ】全ユーザーが羨む高機能、「ATI ALL-IN-WONDER RADEON」
2016年10月4日 06:00
最近、パワレポ倉庫にあるビデオカード群を紹介していないのだが、実は記事にしようとした段階で“とある問題”が発覚してしまった。その問題についてはまた回を改めて述べるが、とりあえず今回はヤフオクで590円で落札できた懐かしいATI Techonologies製ビデオカード「ALL-IN-WONDER RADEON」を紹介しようと思う。
ALL-IN-WONDERシリーズは、ATI製ビデオチップにTVチューナやビデオ入出力を組み合わせ、ビデオ関連機能を1枚に集約した高機能ビデオカードである。初代は「ALL-IN-WONDER」という名前でビデオチップに「3D Rage II+」を搭載し、1996年に登場。続いて「3D Rage Pro」搭載版(1997年)と「3D Rage 128/128 Pro」搭載版(1999年/2000年半ば)が登場し、2000年後半に登場したALL-IN-WONDER RADEONは数えて4世代目となる。
ALL-IN-WONDER RADEONの特徴は、当時ATIで最上位だった「RADEON 32MB DDR」のクロックや仕様をそのまま継承している点である。一般的にこうしたコンボビデオカードの場合、部品の実装密度の関係や発熱の観点から、消費電力が高いビデオチップのスペックをダウンさせて搭載するのがセオリーであるが、本製品のスペックダウンは一切ない。だから、本製品は性能も機能も欲張りたいというユーザーにとって羨む的となった。
RADEONはコアクロック166MHz、メモリクロック333MHzで動作する。本製品に搭載されているビデオメモリの容量は合計32MBである。採用されているDDRメモリチップはSamsung製の「K4D623237A-QC60」で、容量は512K×32bit×4バンク(8MB)。3.3Vで駆動し、レイテンシは6ns(つまりDDRで333MHz)。表面に3枚実装しているが、TVチューナ実装スペースに押され、残り1枚は背面に実装している。かなりトリッキーな作りである。
ビデオチップは薄型の冷却ファンによって冷やされているが、ピン留めなどはされておらず、伝熱性接着剤によってくっついている。今では考えられないほど小型な機構である。気になる初代RADEONの性能だが、以前のベンチマークによると、16bitモード/低解像度の軽負荷環境ではGeForce2 MXより若干速い程度だが、32bitモード/高解像度の高負荷環境ではGeForce2 GTSよりも速いとされる。つまり高負荷時のスコア低下が少なかったわけだ。当時の3DゲームはVoodooの流れで32bitモードはあまりメジャーではなかったが、パワーユーザーであればRADEONの真の価値が理解できたはずである。
ALL-IN-WONDER RADEONのもう1つの特徴はDVI出力だろう。2000年当時、DVI接続の液晶は出ていたもののまだまだ高価で、手にする一般ユーザーは少なかったと思われる。ALL-IN-WONDER RADEONのDVIサポートはかなり先行したものだと言える。アナログRGBの出力は、ミニD-Sub15ピン変換アダプタを用いる。
ビデオ入出力を担うのは「ATI Rage Theater」と呼ばれるチップ。ビデオ入出力の利用には専用のアダプタを利用しなければならないが、今回入手できなかった。TVチューナはPhilips製。実装はシンプルで特筆すべき点はない。TVチューナはタイムシフト機能もサポートしていた。ただしALL-IN-WONDERはグローバル向け製品であったため、TVチューナは日本独自のステレオ音声や多重音声、EPGなどは非対応である。
ちなみにグローバルでは、Radeon HD 3650を搭載した「All-in-Wonder HD」がシリーズ最後の製品となったが、日本国内では販売が確認されておらず、2006年に発売した「All-in-Wonder X1900」が最後となっている。もっとも、そのX1900も英語パッケージで、日本でTV機能が使えたどうかは不明。ATIによる正式サポートが受けられた日本語版ALL-IN-WONDERは、2002年に発売した「ALL-IN-WONDER RADEON 8500DV」が最後のようである。
と、書いていて思ったが、3Dの絶対性能がGeForceシリーズより低い現状、Radeon RX 480にHDMIキャプチャとエンコーダを組み合わせた「All-In-Wonder RX」を4万円で出したらどうだろうか。