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英語版「ALL-IN-WONDER RADEON 8500DV」の機能をチェック!
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ALL-IN-WONDER RADEON 8500DV |
TVチューナーを搭載し、MPEG-2によるビデオキャプチャ機能やテレビ放送のタイムシフト再生、予約録画などを実現する高機能ビデオカード「ALL-IN-WONDER」シリーズに、最新チップ「RADEON 8500」を搭載する新モデル「ALL-IN-WONDER RADEON 8500DV」が追加された。
人気ビデオカードの新モデルということもあり、注目している読者も多いことだろう。今回は、12月頭に秋葉原で販売が開始された英語版リテールパッケージの並行輸入品を取り上げ、日本語環境での動作状況や、気になるステレオ放送や音声多重放送への対応などを中心にチェックしてみたい。
●RADEON 8500搭載、IEEE 1394端子搭載などにより、大幅に機能アップ
ではまず、ALL-IN-WONDER RADEON 8500DV(以下AIWR8500DV)の機能面をチェックしていこう。
AIWR8500DVに搭載されるビデオチップは、その製品名からもおわかりのように、ATIの最新ビデオチップである「RADEON 8500」だ。DirectX8.1準拠のプログラマブル・バーテックスシェーダーやプログラマブル・ピクセルシェーダーなどをサポートする、ATIのハイエンドチップで(RADEON 8500の詳細については、本連載の過去の記事である「ハイエンドビデオカード対決!~RADEON 8500 対 GeForce3 Ti500( http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20011129/hotrev138.htm )」を参照してもらいたい)、このRADEON 8500を採用することによって、従来モデルと比較して3D描画能力が大幅に向上している。また、ビデオメモリはDDR SDRAMを64MB搭載している。
ところで、AIWR8500DVに搭載されているRADEON 8500は、RADEON 8500搭載ビデオカード「RADEON 8500」および「RADEON 8500LE」よりも低いクロックで動作するようになっている。台湾のEnTechが開発しているグラフィック関連ユーティリティ「PowerStrip」で確認したところ、ビデオチップの動作クロックは230MHz、ビデオメモリの動作クロックは190MHzとなっていた。双方とも低クロック動作モデルのRADEON 8500LEよりもかなり低い動作クロックとなっており、AIWR8500DVの描画能力は、一般的なRADEON 8500搭載ビデオカードよりも低いと考える必要があるだろう。
とはいっても、初代RADEON搭載のALL-IN-WONDER RADEONよりは高い3D描画能力が実現されていることは間違いなく、またALL-IN-WONDERシリーズは純粋な描画能力以外の部分に魅力があるため、この部分が大きな問題となることはないだろう。
ビデオチップの強化に加え、標準でIEEE 1394端子が新たに用意されている点もAIWR8500DVの特徴のひとつだ。カードのエッジ部分に6ピンのIEEE 1394端子が用意されており、DV端子が用意されている外部映像機器やIEEE 1394対応周辺機器などを接続し利用できる。また、DVキャプチャに対応するUlead製のビデオキャプチャ・編集ソフト「VideoStudio Version5.0 SE」が付属しているので、コンポジットおよびSビデオ入力端子から入力された映像のビデオキャプチャ、カード上に搭載されているTVチューナーで受信したテレビ放送の録画に加え、DVビデオのキャプチャも標準で可能となっている。
ATIは、IEEE 1394拡張カードとVideoStudio Version5.0をセットにした「DV WONDER」という製品を発売しているが、AIWR8500DVはDV WONDERの機能も取り込んだ形であり、まさに映像関連のフル機能カードに進化したといえる。
カードに用意される入出力端子は、IEEE 1394端子に加え、DVI-I対応のDVI端子とアンテナ接続端子、入出力端子が用意された専用の入出力アダプタを接続する専用端子が用意されている。製品にはDVI→VGA変換アダプタが付属しており、VGAケーブルを接続する場合にこの変換アダプタを利用するのは従来モデルどおりとなっている。
専用の入出力アダプタには、コンポジットビデオとSビデオ、ステレオ音声それぞれの入出力端子とIEEE 1394端子、さらにドルビーデジタル信号出力用のSPDIF出力端子(同軸タイプ)が用意されている。従来モデルでは入力端子と出力端子が別々のアダプタとケーブルによって提供されていたが、AIWR8500DVではそれらがひとつの入出力アダプタにまとめられており、使い勝手は大幅に向上している。
さらに、無線方式のリモコンも新たに用意された。受信ユニットはUSB用で、無線を利用しているため、赤外線リモコンよりも安定したリモコン操作が可能だ。このリモコンを利用すると、専用ソフトの起動や終了、TV受信時のチャンネル切り替え、DVD再生のコントロールなどが可能だ。また、マウスカーソルの操作なども可能となっている。
ちなみに今回は、日本語のWindows 2000 ProfessionalおよびWindows XP Professional上で利用してみたが、双方の環境とも問題なく利用でき、ドライバやATI Multimedia Centerも日本語の状態でインストールされた。もちろん、テレビ放送の受信や録画などの機能も利用可能だった。ちなみに対応OSは、Windows Me/2000/XPで、Windows 98はサポート外となっている。
ビデオメモリはカード裏面に搭載されている。メモリの種類はDDR SDRAMで搭載量は64MBだ | アクセススピード5nsのDDR SDRAMチップ。メモリクロックが低いため、一般的なRADEON 8500搭載ビデオカードよりも低速なDDR SDRAMが採用されている | 右側がAgere製のIEEE 1394コントロールチップだ |
動画関連の処理を行なうRAGE THEATERチップも搭載されている | テレビチューナーユニットは、従来のものよりもかなり小型のものが搭載されている。日本でのステレオ放送や音声多重放送の受信もサポート。受信感度は良好で、ノイズの少ない美しいテレビ表示が可能だった | カードに用意されている端子。左からアンテナ端子、DVI-I端子、専用入出力アダプタ接続端子、IEEE 1394端子だ |
付属のDVI→VGA変換アダプタ。通常のVGAケーブルを接続する場合に利用する | 専用の入出力アダプタ。ボックス部に音声や映像の入出力端子が用意されている。サウンドカードとの接続用サウンドケーブルも伸びている | 入力側の端子。ステレオ音声、コンポジットビデオとSビデオ入力端子、IEEE 1394端子が用意されている |
●英語版でも日本でのステレオ放送や音声多重放送に対応。ただ……
今回利用したのは冒頭でも紹介したように、英語版リテールパッケージの並行輸入品だが、付属のマニュアルには日本語の記述があり、ドライバだけでなく、テレビの受信や録画、DVDの再生などをコントロールする専用ソフト「ATI Multimedia Center(以下AMC)」も日本語化されていた。
AMCは、従来のものからデザインが大幅に変更されているが、基本的な機能はほぼ同じだ。TV放送の受信や録画、DVDビデオの再生、ファイルデータの再生など、目的別に機能を切り替えて利用する。
TV放送の録画時に利用できるキャプチャフォーマットは、MPEG-1やMPEG-2に加え、ATI独自のフォーマットである「ATI VCR」やWindows Media、AVIなどが選択可能となっており、標準ではATI VCRが選択されている。また、タイムシフト再生ももちろんサポートしている。さらに、北米地域用のEPG対応ソフト「GUIDE PLUS+」が付属しており、北米地域においてはEPGを利用した番組録画予約が可能だ。日本向けのEPGソフトは付属しておらず、日本ではEPGは利用できないが、この点は英語版ということを考えると仕方がないだろう。
ところで、ALL-IN-WONDERシリーズは、ビデオカードとしての機能とマルチメディア機能が1枚のカードにまとめられた高機能な製品だが、大きな問題が存在していた。それは、テレビ受信機能において、日本でのステレオ放送や音声多重放送に対応していなかったという部分だ。同様の機能を実現する他の製品が、基本的にステレオ放送や音声多重放送に対応していることもあり、この点だけでALL-IN-WONDERシリーズの購入を躊躇していた人も少なくないと思われる。
しかし、AIWR8500DVでは、日本におけるステレオ放送や音声多重放送の受信が可能な新型のチューナーユニットが搭載されたことで、待望のステレオ放送や音声多重放送を受信して楽しむことができるようになった。今回は英語版を利用したが、きちんとステレオ放送や音声多重放送の受信が可能だった。実際には、もっと早い段階で(最低でもALL-IN-WONDER RADEONの段階で)対応してもらいたかったが、ここは素直に歓迎すべきだろう。
ただし、これで問題がすべて解決されたわけではないようだ。なぜなら、テレビの受信や録画をコントロールする専用ソフト「ATI Multimedia Center」にバグがあるようで、受信時の音声モードがモノラルになってしまうことが多々あるのだ。
AMCのテレビ受信機能を起動すると、前回終了させた時に受信していたチャンネルが表示されるが、そのチャンネルがステレオ放送の場合には音声がステレオに設定されるが、モノラル放送の場合には音声がモノラルに設定され、その後放送がステレオ放送に切り替わったとしても、AMC側で再生される音声はモノラルのままになってしまう(起動時にステレオだった場合には、放送がモノラルに切り替わっても音声設定はステレオのままだ)。
また、受信チャンネルを切り替えると、問答無用でモノラルに変更されてしまう。起動時のチャンネルがステレオ放送で、再生音声がステレオに設定されていようとも、一度チャンネルを切り替えると、最初ステレオで再生されていたチャンネルもモノラルに切り替わってしまう。そのため、チャンネルを切り替えるたびに手動で音声設定をステレオに切り替えなければならないのだ。
さらに、通常視聴時の音声モードが、録画時の音声モードとも連動しており、音声がモノラルに設定されている状態で録画を行なうと、録画ファイルの音声もモノラルになってしまう。例えば、とあるチャンネルの放送を録画したい場合には、AMCのテレビ受信機能を起動し、録画したいチャンネルに切り替え、音声モードをステレオに設定したうえで録画を開始しなければならないのだ。
また、録画予約機能を利用した場合には、TV受信機能を起動したときと同じで、録画開始時点でそのチャンネルがステレオ放送ならばステレオ設定で、モノラル放送ならモノラル設定で録画される。そのため、録画開始時にたまたまモノラルのCMが流れていたとすると、その予約録画すべてがモノラルで録画されてしまうのだ(録画途中で手動でステレオに切り替えれば、それ以降はステレオで録画される)。
もちろん、今回利用したのは英語版リテールパッケージであり、日本語環境での動作が保証されている製品ではないため、この点をソフトのバグと言うのは間違っているかもしれない。しかし、せっかく日本でのステレオ放送や音声多重放送に対応したとしても、アプリケーションがこのような仕様では、現在発売されている英語版のAIWR8500DVでは、快適なテレビの視聴は望めないと言わざるを得ないだろう。
再生音声をステレオに設定していれば、録画ファイルの音声はステレオとなる。ただし、モノラルのまま録画を開始すると、放送がステレオ放送でも録画ファイルの音声はモノラルとなってしまう | タイムシフト再生時には、音声モードの切り替えができなくなる |
設定メニューのチャンネルのプロパティに、再生音声に関する設定項目があり、タイムシフト時にはここで設定を変更することでステレオ再生に切り替えることが可能 | チャンネルごとに再生音声に関する詳細を設定できるのだが、チャンネルを切り替えると、この設定内容に関係なく再生音声はモノラルとなってしまう |
●日本語版の製品が登場するまで様子を見るのがベスト
何度も言うように、今回は英語版のリテールパッケージを利用したチェックだったため、今回判明したテレビ音声の受信に関する問題を、AIWR8500DVの問題と考えるのは時期尚早だろう。従来モデルのように、ハード側の問題でステレオ放送や音声多重放送に対応しないのではなくソフト側の問題なので、ATIがこの点を認識していれば、日本語版を発売するときには、この問題が解決されたソフトが付属して発売されることになるだろう。またEPGについても、日本語版でサポートされる可能性が全くないわけではない。
テレビ放送の受信画質は従来同様非常に高品質で、他の競合製品を凌駕していると言っても過言ではない。また、RADEON 8500搭載による高い3D描画能力や、新たにIEEE 1394端子が用意されるなど機能面の充実も見逃せないポイントで、ALL-IN-WONDERシリーズの完成形と言っても過言ではないだろう。それだけに、ソフト側の問題点が大きくクローズアップされてしまう。
AIWR8500DVを購入しようと考えているのであれば、現在発売されている英語版リテールパッケージを購入するのではなく、日本語版リテールパッケージが発売されるまで様子を見た方がいいだろう。本連載でも、日本語版リテールパッケージの発売後に改めてチェックを行ないたいと思う。
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【12月8日】「ALL-IN-WONDER RADEON 8500DV」が登場、IEEE-1394もサポート
http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/20011208/etc_aiw85dv.html
(2001年12月21日)
[Reported by 平澤寿康@ユービック・コンピューティング]