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RADEONシリーズの本命!? ALL-IN-WONDER RADEON登場



ALL-IN-WONDER RADEON。ファンの下にRADEONチップ。銀色のボックスはTVチューナーボックスだ

 ATI Technologiesの多機能ビデオカード「ALL-IN-WONDER」シリーズは、TVチューナーを搭載し、ソフトウェアエンコーダを利用したMPEG-2形式のビデオキャプチャが可能ということで、ビデオ関連機能を重視するユーザーに圧倒的な支持を得ている。そのALL-IN-WONDERシリーズの最新モデルで、トップクラスの3D描画能力を誇る同社の最新ビデオチップ「RADEON」を搭載する「ALL-IN-WONDER RADEON」の出荷が開始された。トップレベルの2D/3D表示能力と、高いビデオ関連機能が実現された、待望の製品がついに登場ということで、ショップによっては既に売り切れとなっているところもあるようだが、製品の入手に成功したため、ビデオ関連機能を中心にその実力を検証してみよう。


●ほとんどスキのない豊富な機能を持つ最強のビデオカード

 ALL-IN-WONDERシリーズは、TVチューナーを搭載し、ビデオ入出力機能、ビデオキャプチャ機能を標準で備える、ビデオ関連機能が充実したマルチメディアビデオカードとして人気が高く、このジャンルの製品としては既に標準的な存在であるといっても過言ではないだろう。'99年秋に登場した「ALL-IN-WONDER 128」や、ビデオチップにRAGE128 Proを搭載し、6月に登場した「ALL-IN-WONDER 128 Pro」は、現在でも順調なセールスを誇っており、世代交代の激しい現在のビデオカード市場からは考えられないほどのロングランを記録している。

 そのALL-IN-WONDER 128 Proの後継モデルとして登場した製品が、今回取りあげる「ALL-IN-WONDER RADEON」である。搭載されるビデオチップが、ATI Technologiesの最新チップである「RADEON」となったことで、ALL-IN-WONDERシリーズが現時点でトップクラスの3D描画能力を得ることとなった。従来モデルでの唯一ともいえる弱点が、3D描画能力であったことを考えると、ALL-IN-WONDER RADEONには死角がほとんどないといってもいいだろう。

RADEONチップの右に見えるのが、ビデオメモリのDDR SDRAMチップ(SAMSUNG製K4D623237A-QC60)。表に3チップとカード裏面に1チップで合計32MB搭載している ALL-IN-WONDER RADEONには、ビデオ入出力コントローラとして「ATI Rage Theater」を搭載している

 RADEONに関する詳細は、過去の記事「RADEONは3Dチップ界の「カリスマ」となるか!?~ATI Technologies RADEON256搭載ビデオカード~」を参照してもらうとして、ここではALL-IN-WONDER RADEONの、ビデオチップ以外の仕様を紹介することにしよう。

PowerStripで確認したところ、ビデオチップとビデオメモリは双方とも166MHz(表示では164.3MHz、ビデオメモリはDDR動作で実質2倍)であった
 ALL-IN-WONDER RADEONに搭載されるビデオメモリは、32MBのDDR SDRAMだ。ビデオチップとビデオメモリの動作クロックは発表されていないものの、台湾のEnTechが開発しているグラフィック関連ユーティリティ「PowerStrip」で確認したところ、ビデオチップ、ビデオメモリ共に166MHz(ビデオメモリはDDR動作のため、実質333MHz動作となる)であった。ビデオメモリの搭載量、ビデオチップとビデオメモリの動作クロックなどの仕様は、現在発売されているRADEON搭載ビデオカード「RADEON 32MB DDR」と全く同じだ。つまり、ALL-IN-WONDER RADEONの2D/3D描画能力は、RADEON 32MB DDRと同じであると考えていいだろう。

 用意される入出力端子だが、Sおよびコンポジットのビデオ入出力端子、サウンドの入出力端子、TVアンテナの接続コネクタは従来通りだが、D-Sub15ピンのアナログRGB端子はDVI端子に変更され、さらにドルビーデジタル出力用のS/PDIF出力端子が新たに用意されている。

 DVI端子は、デジタルディスプレイ用のインターフェイス規格であるDVI(Digital Visual Interface)に対応した接続コネクタで、DVI対応の液晶ディスプレイを接続して利用できる。とはいっても、ユーザーの大多数はアナログRGB端子を持つディスプレイを利用しており、付属のDVI→D-Sub15ピン変換アダプタを取り付けて利用することになる。

 また、ドルビーデジタル出力用のS/PDIF端子からは、DVDビデオタイトルの再生時にドルビーデジタル信号を出力できる。ドルビーデジタルデコーダを搭載するAVアンプなどに接続すれば、迫力のある5.1チャンネルサウンドでDVDビデオを楽しめるわけだ。

 ちなみに、ビデオの入出力端子やサウンド入出力端子はカードに直接用意されているのではなく、専用のアダプタを利用する。

カードエッジの入出力端子。左から、ビデオ/オーディオ入力、TVアンテナコネクタ、ビデオ/オーディオ/ドルビーデジタル出力、DVIコネクタ。ビデオとオーディオの入出力端子には付属のアダプタを接続して利用する アナログRGBのディスプレイを接続する場合には、標準で付属しているDVIをD-Sub15ピンに変換するアダプタを取り付ける必要がある


●TV機能では、新たにタイムシフト機能をサポート

 ビデオ関連機能だが、TVチューナー搭載によるTV表示機能はもちろんのこと、ソフトウェアエンコーダを利用したMPEG-2形式によるTVの録画、予約録画、ビデオ入力端子から入力された映像のビデオキャプチャも従来通りサポートされており(MPEG-1、AVI形式でのキャプチャもサポート)、基本的には従来モデルから大きな変更はないといっていいだろう。しかし、見逃すことのできない新機能が1つある。それは、「TV-ON-DEMANDタイムシフティング機能」だ。

 タイムシフト再生機能は、日立のPrius DECKシリーズやソニーのVAIO Rシリーズに登載されていることでおなじみだ。TV番組を画面に表示しながら、その裏でハードディスクに録画を行なうことにより、リアルタイムでTV番組を見ているにもかかわらず、一時停止や巻き戻しといった操作を可能とする。もちろん、一時停止中や数分前の映像を見ている時にも録画は行なわれているため、それ以降の場面を見逃す心配もない。今やタイムシフト機能は、TV表示に対応したパソコンにとって不可欠の機能といってもよく、ALL-IN-WONDER RADEONがTV-ON-DEMANDタイムシフティング機能を搭載したことは素直に喜べる部分だろう。

 ちなみに、TV-ON-DEMANDタイムシフティング機能を利用しているときには、TV画面をリアルタイムで表示している時でも実際の放送とは若干のタイムラグが生じる。とはいっても、その時間は0.5秒にも満たないもので、ほとんど気にする必要はないだろう。

 ただ、従来からの問題点がそのまま引きずられている部分もある。それは、ステレオ音声と多重音声をサポートしていないという点だ。

日本のTV放送の受信は全く問題なく、チャンネルの自動スキャンで受信可能な全チャンネルを視聴できた
 ビデオドライバに加え、TV表示やDVD再生などのビデオ関連機能の統合ソフト「ATI Multimedia Center」自体は多国語サポートとなっており、メニュー等の日本語表示はもちろんのこと、日本のTV放送の受信にも対応している。初起動時にTV電波のサーチを行なうと、受信可能な全チャンネルが登録され、全く問題なく視聴可能だった。しかし、ステレオ音声や多重音声は従来同様サポートされていない(北米のみでのサポート)。従来より一貫して未サポートということは、ハード的な問題があるのかもしれないが、やはり残念な部分といえる。

 また、電子番組表「EPG」もサポートしていない(正確には北米地域用のEPG対応ソフト「GUIDE PLUS+」が付属しており、EPG自体はサポートしているが、日本では利用不可能)。EPGに対応していれば、TV朝日系列局の地上波データ放送「ADAMS」のコンテンツの1つである電子番組表「ADAMS-EPG番組表」を受信して、そのデータをもとにTV番組の録画予約などができるようになる。日本のメーカーが発売しているTVチューナー搭載ビデオキャプチャデバイス(先日取り上げたNECのSmartVision Pro for USBなど)では、EPGに対応しているものが多く、かなり便利に利用できる。ただ、ADAMS-EPG自体、日本独自のものなので、ワールドワイドを対象とする製品でサポートさせるのは難しいのだろう。

 ところで、今回利用したのはバルク版で、付属のドライバのバージョンは「build 4.12.3056」であった。しかし、このドライバを利用した場合、筆者のマシンの環境ではかなり不安定で、TVを表示させているだけでもすぐにマシンがハングアップしたり、ビデオキャプチャを行なっても、画面上部の数ラインのみしかキャプチャされないといった問題が発生した。しかし、サポート対象外ではあるが、ATI Technologiesのホームページに掲載されているSpecial Purpose Driver(バージョン:D714-0831a-62B-SPD、ALL-IN-WONDER RADEON用ではなくRADEON用として掲載されている)を利用すれば、そういった問題はすべて解決された。そのため、ALL-IN-WONDER RADEONを購入した場合には、このSpecial Purpose Driverをダウンロードして利用することを強くお奨めする。

TV-ON-DEMANDタイムシフティング機能を有効にした場合、コントロールウィンドウにスライドバーが表示され、画面のコントロールが可能になる セットアップメニューで、キャプチャ形式や、TV-ON-DEMANDタイムシフティング機能で利用する録画時間の設定が可能 キャプチャ形式は、あらかじめ決められているものだけでなく、カスタム設定でキャプチャ形式やキャプチャサイズ、音声フォーマットなどを細かく指定可能だ

【対応するキャプチャフォーマット(MPEG)と推奨CPU】
キャプチャフォーマットフレームサイズ推奨CPU
MPEG-1352x240ドット, IフレームのみMMX Pentium 200MHz
MPEG-1352x240ドット, IBPフレームPentium II 300MHz
MPEG-2720x240ドット, IフレームのみPentium II 450MHz
MPEG-2720x480ドット, IBPフレームPentium III 700MHz

【テストマシン環境】
マザーボード:ABIT SE6
CPU:PentiumIII 800EB MHz
メインメモリ:128MB SDRAM(PC133)
ハードディスク:Western Digital 307AA


●文句なくおすすめできる最強のビデオカードだ

 これまでのALL-IN-WONDERシリーズは、ビデオ関連機能の高機能さはかなり魅力だったものの、3D描画能力がやや劣っていたことで、一部ハイエンドユーザーの取り込みに失敗していた可能性が高い。しかし、ビデオチップにRADEONを搭載することで、3D描画能力は現状でほぼトップクラスにあり、ハイエンドユーザーが敬遠するような問題点はほとんど見あたらなくなったといっていいだろう。

 もちろん、全く問題がないわけではない。特に、TV放送のステレオと多重音声をサポートしていない点は改善の余地があるだろう。また、まだ初物ということを考えても、4万円近い販売価格はやや高く感じるかもしれない。

 しかし、RADEONによるトップクラスの2D/3D描画能力と、タイムシフト機能をサポートしたTV機能、MPEG-2をサポートするビデオキャプチャ機能など、用意されている機能を総合的に評価した場合、その価格でも十分納得できるはずだ。ALL-IN-WONDER RADEONは、現時点で文句なくおすすめできる最強のビデオカードであるといっていいだろう。

□Akiba PC Hotline!関連記事
【8月19日】ようやく待望の「ALL-IN-WONDER RADEON」が発売に
http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/20001007/etc_aiw-radeon.html
□関連記事
【8月4日】【Hothot!】RADEONは3Dチップ界の「カリスマ」となるか!?
~ATI Technologies RADEON256搭載ビデオカード~
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000804/hotrev74.htm

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(2000年10月13日)

[Text by 平澤寿康@ユービック・コンピューティング]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp