イベントレポート

世界最薄6mm厚の8型タブレットDell「Venue 8 7000」が披露

~2015年後半にSkylakeを投入

IntelCEOブライアン・クルザニッチ氏

 9月9日~11日(現地時間)の3日間に渡り、米国カリフォルニア州サンフランシスコ市にあるモスコーンセンターウェストにおいて、IntelDeveloper Forum(IDF) 2014が開催される。IDFは、Intelが主催し、同社製品に関わる開発者や製品担当者などに対してIntel技術、戦略などを説明する場となっている。初日となる9月9日には、同社CEOのブライアン・クルザニッチ氏による基調講演が行なわれた。

 従来のIDFでは、CEOのほかに、各事業部(PCクライアント、サーバー、モバイル、組み込みなど)の事業本部長による基調講演が行なわれ、開催日の毎朝に行なわれる構成になっていたのだが、今回のIDF 2014からそれが見直され、初日の朝にCEOおよび各事業部長が基調講演に登場し概要を語り、詳細はその後に行なわれるメガブリーフィング(拡大説明会)で説明する形へと変更された。

 この基調講演の中でIntelは、発表されたばかりのCore Mプロセッサ(開発コードネーム:Broadwell-Y)および2015年前半に発表が予定されている第5世代Coreプロセッサ(同:Broadwell)の後継となるSkylake(スカイレイク、開発コードネーム)を初めて公式に公開し、その実働デモを行なった。IntelはSkylakeを2015年に後半に投入する。

 また、この講演の中では、Dellが開発しているRealSense機能を搭載した、8.6型液晶/厚さ6mmのAndroidタブレットを公開した。厚さ6mmは、IFAで発表されたソニーのXperia Z3 Tablet Compact(別記事参照)よりもさらに薄くなっており、世界最薄の8型タブレットとなる可能性が高い。

「GalileoやEdisonを利用して製品を作れば世界が変わる」とクルザニッチ氏

 先述の通り、今回のIDFはこれまでとはかなり違った趣のIDFとなっている。そうした中での唯一の基調講演は、まずCEOのブライアン・クルザニッチ氏が登壇し、IoT(Internet of Things)や「Edison」などのIntelが最近力を入れている事業を語った後、データセンター事業部 事業部長のダイアン・ブライアント上席副社長、PCクライアント事業部 事業部長のカーク・スコーゲン氏、ソフトウェア・サービス事業部 事業本部長のダグ・フィッシャー副社長が次々と登壇して最新情報などを紹介した。

 CEOとしては3回目(2013年のIDF 13、2014年年春のIDF Shenzhen、そして今回)となるIDFに登壇したクルザニッチ氏は、「私は2013年のIDFで新戦略を明らかにした。大事なことは戦略を語ることではなくてその結果だ。我々はビッグデータ、2-in-1デバイス、4,000万台のIAタブレット、LTEモデム、Edisonなど多数の成功を収めることができた」と述べ、Intelが同氏が敷いた新戦略の下で確実に前進していることを強調。また、「我々の仕事は、開発者にとって重要なプラットフォームになることだ。2013年には20億台のデバイスがネットに繋がるデバイスとして存在しているが、2020年にはそれが500億台になると考えている。その500億台時代に備えた製品を作れる環境を用意必要がある」と述べた。

 その上で、今回のIDFの基調講演ではパートナーに焦点を当てていくとし、新しくIntelのパートナーになった企業を紹介していった。そのジャンルは、これまでのIntelのパートナーだったPCメーカーやスマートフォンメーカーではなく、近年Intelが非常に力を入れているIoTやウェアラブル関連の企業になっていた。IDF会場で来場者が休憩するエリアなども、“メイカー”と呼ばれる小規模のハードウェア開発者を意識したデザインになっており、Intelがこの分野に力を入れていることをアピールしたい様子が伺える。

 クルザニッチ氏が紹介したのはSMS Audioが発表した「BioSport」と呼ばれるイヤフォンだ。BioSportは、心拍数やペース、距離、燃焼カロリーなどのデータを取得するバイオセンサーを内蔵していることが特徴のイヤフォンで、バッテリ不要でスマートフォンのステレオミニジャックに接続して利用できる。

 その次に紹介したのは、ニューヨークの高級店Barneys New YorkでIntelが販売を開始した「MICA」(マイカ、My Intelligent Communication Accessory)という女性用のアクセサリ。クルザニッチ氏は「スマートバンドのような製品はほかにもあるが、皆女性が欲しがるような製品ではなかった。これこそがユーザーが本当に欲しがっているものだ」と述べ、機能だけでなくデザイン性などが重要だとした。

 さらに、Fossil Groupの上級副社長兼最高戦略マーケティング責任者のグレッグ・マッキベリー氏を壇上に招き、先日発表(別記事参照)したIntelとFossil Groupの提携について語った。マッキベリー氏は「これまでもFossilはPalmやMicrosoftなどとも協業してきた。大事なことはテクノロジによる複雑な機能だけでなく、スタイルやファッション性なども兼ね備えることだ」と述べ、技術系の企業が陥りがちな仕様による差別化だけでなく、ファッション性やスタイルといった部分に目を向けるべきだと指摘した。

昨年(2013年)のIDFでは戦略を語ったが……
今年は複数の目標を達成することができた
2020年にはインターネットに繋がるデバイスが500億台になると予想されている
SMS AudioのBioSportを紹介、心拍数などを計測することができる
BioSportを紹介するクルザニッチ氏
Barneys New Yorkで販売されているMICA(マイカ)
CESの時のプロトタイプを紹介
MICAの製品版を紹介するクルザニッチ氏
Fossil Groupの上級副社長兼最高戦略マーケティング責任者のグレッグ・マッキベリー氏(左)と話あうクルザニッチ氏(右)

 その後クルザニッチ氏は、このIDFでに合わせて正式に発表(別記事参照)された「Edison」について、Edisonが、50ドル程度の低価格で間もなく出荷されることを明かした。そして、Edisonをこの低価格で提供することで、それを利用して製品を製造しようというメイカーなどを支援することができるとした。

 クルザニッチ氏は最後にIoTについて触れ、同社を中心にしたOpen Interconnect Consortium、Industrial Internet Consortiumなど、オープンな取り組みにより普及を目指していきたいとした。その具体的な例として、著名な物理学者ステファン・ホーキング博士のために、コネクテッド車椅子を作る取り組みを行なっていることなどを紹介。クルザニッチ氏は「GalileoやEdisonを使えば、開発者が思いの通りの製品を作れるようになる。メイカーワールドが新しい革新を作り出し、世界を変えることになるだろう」と述べ、集まった開発者に向けてこれまでは考えつかなかったような製品を作り出して欲しいと訴えた。

Edisonを正式に発表、価格は50ドル前後から
Edisonを紹介するクルザニッチ氏
ホーキング博士用のコネクテッド車椅子を開発

Intelベースのウェアラブル機器開発者にA-wearの開発キットを提供

Intel上席副社長兼データセンター事業部 事業本部長 ダイアン・ブライアント氏

 次いで壇上に登場したのは、Intel上席副社長兼データセンター事業部 事業本部長のダイアン・ブライアント氏だ。「2013年時点で19億台のスマートフォンがあり、その1台毎に平均26個のアプリが導入されている。それらのアプリ1つがデータセンターに対して1日に20のトランザクションを実行しており、データセンターには1日に1兆のトランザクションが発生している。これが2020年には500億台のデバイスがネットに繋がるようになるので、処理しなければいけないデータは35ZB(350億TB、1ZB=10億TB)に達すると予想されている」と述べ、スマートフォンやタブレットだけでなく、IoTなどの機器も含めてデータセンターに接続されるようになれば、ビッグデータなどとして処理しなければいけないデータは天文学的に増えていくと指摘した。

 その上で、癌ゲノム研究などに関するIntelの取り組みなどについて触れ、Intelのビッグデータの取り組みが癌ゲノム研究に貢献していることなどを説明し、2020年までにその完全な解析を実現したいと説明した。また、ブライアント氏は「A-wear」(Analytics for Wearables)と呼ばれる開発者向けのプログラムを発表した。このA-wearはIntelベースのウェアラブル機器を開発する開発者などに提供される開発キットで、クラウデラ社から提供されるデータ管理ツール、Intelから提供されるツールなどが含まれており、ウェアラブル機器からのデータをクラウドのサーバーで解析してより有効に利用することが可能になるという。開発者はこの開発キットを無料で利用することが可能だ。

IDF前日にXeon E5-2600 v3を発表したので、具体的な製品には言及がなかった
2020年には500億台デバイスが35ZBのデータを生成、それを効率よく解析する必要がある
Intelが癌ゲノム解析に力を入れていく
A-wear(Analytics for Wearables)と呼ばれる開発者向けのプログラムを発表

2015年の後半に投入されるSkylakeをデモ

Intel上席副社長兼PCクライアント事業部 事業本部長のカーク・スコーゲン氏

 続いては、Intel上席副社長兼PCクライアント事業部 事業本部長のカーク・スコーゲン氏が登壇。スコーゲン氏は、IntelがIFAで正式に発表したCore Mプロセッサに関して、10月に5つのOEMメーカー(Acer、ASUS、Dell、HP、Lenovo)から搭載PCが出荷されることなどを説明した。IFAでも紹介されたIntelのリファレンスデザインとなる「Llama Mountain」、ASUS「Transformer Book T300 Chi」などを紹介し、Core Mにより、従来よりも魅力的な2-in-1デバイスやタブレットなどをCoreプロセッサのパフォーマンスで製造できることを説明した。また、第5世代Coreプロセッサに関しては2015年の初頭に投入するとしてIFAでの説明を繰り返した。

IFAではCore Mを正式に発表
Core M搭載PCは5つのOEMメーカーから10月に登場する予定
Core M搭載製品の1つとなるASUS Transformer Book T300 Chi
Broadwellの後継となるSkylakeを2015年の後半に投入

 そして、そのCore M/第5世代Coreプロセッサの後継となる製品として、「Skylake」(スカイレイク、開発コードネーム)を2015年の後半に投入することを明らかにし、そのデモとしてデスクトップPCと、360度回転ヒンジを備える2-in-1デバイスの2つを公開した。デスクトップPC上では3Dアプリケーションを動作させ、2-in-1デバイス上ではビデオ再生をしているデモだった。スコーゲン氏は「2015年の第1四半期にはSkylakeを搭載した開発用のシステムをソフトウェア開発者に供給する」との意向を示した。

 IAベースのタブレットについても触れ、「99~599ドルの価格帯で、200のデザインが150カ国で提供されており、“2014年に4,000万台のIAタブレット”という目標は達成できる見通し」と述べ、IAタブレットの戦略が順調であることを強調した。さらに、従来LTEの弱点とされてきたLTEモデムについても、既にIntelが出荷開始しているCAT.6/300Mbps(下り)に対応した「XMM-7260」が、Samsung Electronicsの「Galaxy Alpha
」に採用されたことを明らかにした。スコーゲン氏によれば、今年の第4四半期に欧州や中国などに向けて出荷される予定だという。

 このほか、スコーゲン氏は、A4WPによるワイヤレスチャージング、WiGigによるワイヤレスドッキングステーションなどについても紹介した。

Skylakeを搭載したデスクトップPCを紹介するスコーゲン氏
Skylakeを搭載した2-in-1デバイスの試作機。360度回転するヒンジを備えた2-in-1デバイス
目標4,000万台のIAタブレットの出荷は予定通り進行
CAT.6/300Mbpsの通信に対応したXMM-7260がSamsungのGalaxy Alphaに搭載された。年末に向けて欧州と中国などで発売される予定
WiGigとワイヤレス給電のデモ
A4WPのシステム。右側が受電側で、左側が送電側

IA Androidのリファレンスデザインを今年の年末商戦に投入へ

Intel副社長兼ソフトウェアサービス事業部 事業本部長のダグ・フィッシャー氏

 次にIntel副社長兼ソフトウェアサービス事業部 事業本部長のダグ・フィッシャー氏が登壇。「ソフトウェア開発の速度が高まっている。特にAndroidは著しい。Intelとしてもそれに対応するためにIA Androidのリファレンスデザインとなるシステムを提供することにした」と明らかにした。

 そのリファレンスデザインにはGoogleのサービス(例えばGoogle Playなど)が利用できるAndroid OSが入っており、ARMだけでなく、IAにも最適化したいという開発者に対して提供する予定だという。2週間程度の短い間隔で最新のOSへアップデートされる。提供時期は今年の年末商戦頃になる予定で、言ってみればIA版のNexusシリーズのような扱いの端末と考えればいいだろう。

 また、IntelがOEMメーカーなどに対して提供するRealSenseについても触れ、RealSenseの3Dカメラを利用して物体のサイズを測るデモなどを行なった。また、詰めかけた開発者に対し、RealSenseに対応したソフトウェアの開発を呼びかけた。

Intelが発表したIA Androidのリファレンスデザイン機
IA Androidのリファレンスデザイン機は年末商戦頃に投入される
RealSenseの3Dカメラを利用して物体のサイズを計測しているところ

2,560×1,600ドット/8.4型液晶で薄さ6mmを実現したVenue 8 7000

 各事業部の事業本部長による説明が終わった後、再びステージに戻ってきたクルザニッチ氏は、ブラックのやや額縁が大きめなAndroidタブレットを手に、RealSenseのデモを始めた。そのタブレットには、Intelが開発した「RealSense Snapshot」という3Dカメラが内蔵されており、それを元にデモを始めようとカメラを向けると、その先にはDell会長兼CEOのマイケル・デル氏が座っているという演出で、デル氏が壇上に呼ばれることになった。

 そして、それまでデモに使われていた額縁が大きなタブレットは、その額縁が取り払われると、なんと下から厚さがわずか6mmという世界最薄の「Dell Venue 8 7000」シリーズが登場するという、(これまでのIDFらしからぬ)演出も用意されていた。

 そのDell Venue 8 7000は、2,560×1,600ドットの8.4型有機ELの液晶パネルを備えるAndroidタブレットで、CPUにはAtom Z3500シリーズ(開発コードネーム:Moorefield)が搭載される製品となる。最大の特徴は、RealSense Snapshotという3Dカメラを備えていることで、撮影した画像に深度センサーで測定したデータが記録されており、アプリケーションを活用すると、撮影後にフォーカスを変えたりすることができる。両氏によれば、DellはVenue 8 7000を年末商戦に向けて出荷する予定であるという。

クルザニッチ氏がやや縁が大きめのIA Androidタブレットをデモ
観衆を撮影すると、その先には…マイケル・デル氏の姿が
縁を外すと薄くてコンパクトなAndroidタブレットが登場
マイケル・デル氏が手に持つのがVenue 8 7000
Dell Venue 8 7000のスペック

 また、基調講演後に行なわれたIntel副社長兼モバイル通信事業部 事業本部長のハーマン・ユール氏のメガブリーフィングでは、DellがやはりRealSenseを搭載した10型Androidタブレットも出荷する予定であることも明らかにされ、こちらも注目を集めた。

Dellの10型液晶搭載2-in-1デバイス。詳細は明らかにされなかったが、脱着式でOSはAndroidタブレットとなる

(笠原 一輝)