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【IDF特別編】番組編成を大きく変えたIDF14で新時代のIntelをアピール

 先週、Intelが米サンフランシスコで開催した開発者会議「Intel Developer Forum(IDF14)」。2014年は例年とはちょっと違った編成でプログラムが構成されていた。IDFは、CEOが同社のビジョンを広く語る場として期待されてもいるのだが、その押し付け感が希薄だったのだ。

基調講演をMega Sessionのダイジェストとして編成

 IDFの楽しみは基調講演にあると言ってもいい。例年、CEOが初日のステージを飾り、さらに各部門事業担当部長が自分の担当分野について披露する。これまでは、3日間の会期のうち、初日と2日目の午前中は、この基調講演に占有されていた。会場も、5,000人近い参加者を収容できる大きなスペースが設定され、参加者全員が聴講することが前提になっていた。

 今年のIDFでは基調講演と称されるセッションは、幕開けの90分間だけが設定されたのだ。そこで、CEOのBrian Krzanich氏が現状の概略を語り、その場で各部門担当事業部長を紹介、各自が自分の分野のダイジェストを紹介するという構成に変わった。そして、それぞれの担当者には個々の看板セッションとして「Mega Session」という枠が割り当てられ、基調講演より縮小されたスペースで念入りなスピーチをするという方式に改められたのだ。

 設定されたMega Sessionは、

・Internet of Things(Doug Davis, Vice President, General Manager, Internet of Things Group)、
・The Next Revolution in Computing: Edison, Wearables and New Devices with Mike Bell(Vice President, General Manager, New Devices Group)
・Taking on the Developer Challenge(Doug Fisher, Vice President, General Manager, Software and Services Group)
・(H)'Appy Hour with Hermann Eul,(Vice President, General Manager, Mobile and Communications Group)
・The Data Center Opportunity with Diane Bryant(Senior Vice President and General Manager of Intel’s Data Center Group.)
・PC Reinvention and Innovation - Focus Areas for Developers with Kirk Skaugen(Senior Vice President, General Manager, PC Client Group)

の6つで、それぞれ60分が初日と2日目に分散して編成されていた。仮にこれを基調講演の枠で編成したとすると、10時間近いものになってしまう。それでは、並行して走る技術セッションの受講にも影響が出てしまうし、実際、これまでのIDFはその傾向も強かった。そうしたことがないようにするための配慮の編成にしたということなのだろう。

新任CMOによって変わるIntelのマーケティング

 それぞれのMega Sessionは、部門ごとの基調講演的な意味合いもあり、ある程度の容量を確保したスペースが割り当てられていたが、人気のセッションは設定された部屋では早々と長蛇の列ができて受講者が入りきれないという問題も出てきていた。また、Mega Sessionは、その分野の概要を60分間で把握できるというメリットはあるが、いい席を確保するためには、その60分間のために早くから行列に並ばなければならないというのも閉口した。

 これらについては、IntelがChief Marketing Officerとして、この6月にSteven Fund氏を迎え入れてから最初のIDFだからということもあるのだろう。Intelのブランディングとマーケティングを担当するFund氏は、かつてはPepsi-Cola、そして直近ではP&GでGillette Fusionのブランディングを担ってきた人物だ。カミソリのトップブランドであるGillette Fusionは、P&Gの歴史の中でも異例のスピードでそのブランドを確立し、10億ドルの売り上げを叩きだしたということだ。

 まるで畑違いのFund氏だが、氏がIntelに参加することで、何かが大きく変わる。今後Intelのマーケティングイベントや、同社のブランディングについても、大きな変化が起こるのではないか。想像の域を出ないが、Broadwell-Yプロセッサに対して「Core M」という独自のブランドを与えたのは彼の仕事である可能性も高い。こうした背景を前提に、これからのIntelの方向を見ていくというのも面白いのではないだろうか。

ウェアラブルで2020年にはIAデバイスが500億個に躍進

 さて、CEOのBrian Krzanich氏による基調講演だが、この1年を振り返り、タブレットの浸透が顕著だったことに触れ、x86があらゆる分野で愛されていることがアピールされた。Intelの予想では、2020年にはx86のインストールベースは500億個に達するという。2013年時点で22億個のIAデバイスが、そこまで大きく増加するのは、ウェアラブルデバイスに使われるからだ。特に、これからはファッションウォッチのセグメントが伸びていくことに言及され、ゲストには、FossilのGreg McKerlvey氏(EVP、Chief Strategy and Marketing Officer)が招かれて登壇した。そこで、McKerlvey氏は、「我々にはSPOTの悪夢があるが、しかし技術は変わった」と新たな時計の先進性をアピールした。それを受けて、Krzanich氏は、「さて、これからみなさんは、Edisonを使って何を作るか。50ドルでプラグ&プレイUSBをサポートするこのデバイスで、全てのものをSmartにできるはず」とビジョンを語った。

 そのあと、Diane Bryant氏(SVP, データセンターグループ担当GM)と、Kirk Skaugen氏(SVP, PCクライアントグループ担当GM)、Doug Fisher氏(VP, ソフトウェア&サービスグループ担当GM)が続けて登壇し、それぞれのMega Sessionの見所、聞き所をダイジェストとしてチラ見せした。詳しくはぜひMega Sessionでというわけだ。

 最後に、再び登壇したBrian Krzanich氏は、ずっと同社が熱心に開発を続けてきたRealSenseについて、その拡張機能としてのスナップショットを紹介、現時点で、距離や深度の測定や動き検出などができるようになっていることを報告した。壇上ではそれを最初に搭載する、わずか6mm厚のタブレットとしてDellの「Venue 8 7000」が紹介され、同社会長兼CEOのMichael Dell氏が登場するというハプニングも用意されていた。

 どうやら、CEOのBrian Krzanich氏の方針は、全社的な方向性はきちんと把握して陣頭指揮は取るものの、製品の発表などの派手な部分は担当VPに任せるというもののようだ。ただ、ウェアラブルに関しては、実際、Edisonがようやく正式発表されるなど、そのシーンにおいてのIntelは周回遅れの印象を否めない。そこはきちんと全社的に取り組むということで、CEO自らがアピールするなど、分かりやすい構成になっていた。つまり、美味しいところをVPから取り上げないという点では、歴代の同社CEOとは、ちょっと趣が異なるわけだ。

(山田 祥平)