Hothotレビュー
デル「Venue 8 7000」
~RealSenseカメラを搭載した世界最薄のAndroidタブレット
(2015/4/27 12:38)
デルの「Venue 8 7000」は、世界最薄という6mmの薄さを実現した8.4型のAndroidタブレットだ。薄さだけでなく2,560×1,600ドットの有機ELディスプレイ、被写体の大きさを計測できるインテルの「RealSense Snapshot Depthカメラ」など、さまざまな特徴を備えている。送料込みの税別価格は48,980円。
CPUはAtom Z3580(最大2.3GHz、ビデオ機能内蔵)を搭載し、メモリは2GB、内蔵ストレージは16GB。OSは最新のAndroid 5.x系ではなくAndroid 4.4となる。
まずはデザインを見てみよう。本体サイズは124.4×215.8×6mm(幅×奥行き×高さ)、重量は305g。8型かつ高解像度のディスプレイながら狭額縁設計のため、成人男性であれば両幅を片手で掴みこむこともできる程度の大きさだ。一方で、縦の長さがあるため重心のバランスが若干取りにくく、本体の片側を片手だけで持つ時はやや不安を感じる。
本体左側面には電源ボタンと音量ボタン、本体左側はmicroSDカードスロットを搭載。microSDは最大512GBのmicroSDXCまで対応する。microSDカードスロットはピンを押し込んでスロットを引き出すというSIMカードスロットで多く採用されている形式で、最初は本製品がSIM対応なのかと勘違いしてしまった。
本製品の特徴でもあるカメラは配置場所も非常に個性的だ。前面カメラは本体の左下に配置されており、左手で持つと前面カメラが隠れてしまう。背面の「RealSense Snapshot Depthカメラ」は本体下部に3つのカメラが搭載されており、カメラをメインで使う場合は本体の天地を入れ替えて持つことになる。画素数は背面のメインカメラが800万画素、前面が200万画素で、タブレットのカメラとしては十分なスペックだ。
本体底部は充電やデータ通信用のmicroUSBポートに加えてイヤフォンジャックを搭載。ワイヤレス関連ではIEEE 802.11a/b/g/n/ac準拠の無線LAN、Bluetooth 4.0、GPSを搭載。マイクは本体左側面に、スピーカーは本体下部のカメラ横に配されている。
ホーム画面や操作インターフェイスはAndroid標準
ホーム画面は5面構成でAndroidの標準的なインターフェイス。右上部を画面下に引き出すと各種設定、左上部を引き出すと通知が表示される。通知エリアの上部にはサウンド技術「MAXXAUDIO」のショートカットが用意されており、動画や音楽、ゲームといったシーンごとに最適な音響設定に切り替えるられる。
画素密度は359ppiと非常に高精細で、Retinaディスプレイを謳うiPad mini 3の326ppiよりも高い画素密度。有機ELのディスプレイ画面も明るく視認性も高い。フルHDを超える解像度の高さは情報量の多いPC向けサイトでも問題なく1画面に収めて表示できる。
設定画面もAndroid標準に近いシンプルな構成。画面を下にして置くと通知をオフにできる「フリップして消音」、動画再生の補正技術「インテルスマートビデオ」など独自の設定も搭載されてはいるものの、基本的にはほぼ素のAndroidと言っていいだろう。
ベンチマーク結果は良好。バッテリも10時間以上駆動
ベンチマークの測定は「Quadrant Professional Edition」、「AnTuTu Benchmark」、「MOBILE GPUMARK」の3アプリで実施。比較対象としてCPUに2.3GHz駆動のクアッドコア「MSM8974AB」を搭載した「ARROWS NX F-02G」を用いて測定結果を比較した。
測定結果は非常に良好で、3つのアプリとも高い結果を残した。CPUのメーカーが異なり、そもそも端末もタブレットとスマートフォンという違いはあるものの、NTTドコモ冬モデルとしてトップクラスのハイスペックであるARROWS NX F-02Gよりも高い結果となっている。スペックの高さという点では安心できそうだ。
Venue 8 7000 | ARROWS NX F-02G | |
---|---|---|
Quadrant Professional v2.1.1 | ||
総合 | 22936 | 19620 |
AnTuTu 5.7 | ||
総合 | 44604 | 38045 |
マルチタスク | 6309 | 5726 |
Dalvik | 2948 | 1921 |
整数演算 | 4531 | 3643 |
浮動小数点演算 | 4586 | 3968 |
Single-thread integer | 2116 | 2513 |
Single-thread float-point | 2413 | 2285 |
RAM演算能力 | 3282 | 1932 |
RAM速度 | 3231 | 1677 |
2Dグラフィックス | 1626 | 1674 |
3Dグラフィックス | 11160 | 10962 |
ストレージのI/O | 1732 | 1094 |
データベースのI/O | 670 | 650 |
MOBILE GPUMARK Version 2 | ||
総合 | 92564 | 48889 |
搭載バッテリの容量は5,900mAhで、駆動時間はWebブラウジング時で9.8時間を公称。実際にWi-FiをオンにしてTwitterを5分に1回チェック、ディスプレイの明るさは50%にし、さらにフルHDの動画を再生し続けたところ、公称値を上回る11時間5分でバッテリが空になった。薄型ながらもバッテリの持ちはよく、1日であれば十分に持つだろう。
写真の距離測定や再フォーカスが可能な「RealSense Snapshot Depthカメラ」
本製品の特徴である「RealSense Snapshot Depthカメラ」は、背面に搭載された3つのカメラを利用し、被写体の長さや面積を計測したり、フォーカスを後から調整できるという機能だ。
カメラを起動し、シャッターボタン横の矢印マークをタッチして「デプス・スナップショット」を選択すると、画面に大小合わせて3つのカメラ画像が表示され、あとはシャッターボタンで撮影するだけで操作は完了する。
デプス・スナップショットで撮影した画像はギャラリー上に立方体のアイコンが表示され、タップすると画面上部には測定ツールや再フォーカスのアイコンが表示される。
長さや面積を図る場合は定規アイコンの測定ツールを選択し、測定したい距離や面積の端をタップしていくだけ。距離と面積の測定は画面上部のアイコンから切り替えられる。
非常に面白い機能ではあるのだが、測定の単位がフィートのみとなっているため、メートルを使う日本人には少々分かりにくい。また、実際の測定結果も写真の通り、同じサイズであるはずの縦が8インチと7インチ、横が4インチと5インチというように分かれてしまった。実際に図ってみたサイズは縦が27.6cm、横が14.1cmと、8インチ(20.32cm)、5インチ(12.7m)と比べてもかなりの開きがある。そもそもインチが小数点単位で計算できないためあまり細かな計測はできないので、あくまで長さを知る参考程度の機能という印象だ。
再フォーカスの場合は画面上部から再フォーカスを選んだ後、ピントを合わせたい箇所をタッチするだけで自由にピントの切替が可能だ。Googleの「Googleカメラ」にも同様の機能が搭載されているが、再フォーカスのために写真を2枚撮る必要があるGoogleカメラと比べ、1回のシャッターで再フォーカスが可能なため非常に手軽に使える。
カメラだけでなくギャラリー機能にも独自の「Dell Gallery」機能を搭載。顔認識を用いてギャラリーを検索したり、Facebookと連携してFacebookタグを用いたアルバムの自動生成などが可能だ。さらに位置情報を利用し、世界地図上でどの位置で撮影したかを表示することもできる。
非常に面白い機能が搭載されているのだが、肝心の画質に関してはタブレットということもありスナップ写真程度といったところ。全体的に写真がぼやけた仕上がりになっており、晴天時の屋外であればいいが屋内では画質が荒くなってしまい、食べ物撮影にはあまり適していない。そもそもタブレットで日常的に写真を撮るという想定ではないのかもしれないが、非常に面白い機能が揃っているだけに画質の面は少々残念だ。
プリインストールアプリは控えめ。文字入力はQWERTYのみ
プリインストールアプリは、別売のHDMIアダプタ「Dell Cast」と組み合わせてTVやディスプレイにワイヤレスで画面を映し出せる「Dell Cast」、端末の状態確認やオンラインサポートの利用が可能な「My Dell」、通知エリアからも設定できるサウンド技術「MaxxAudio」に加え、ゲームアプリとして「UNOFriends」「Ice Age Adventure」が用意されているが、全体的にプリインストールは少なめ。また、Officeファイル用アプリとして「POLARIS Office」もプリインストールされている。
文字入力はオムロンソフトウェアの「Japanese IME」をプリインストール。同じオムロンソフトウェアのiWnnとは異なり、Japanese IMEはQWERTYのみで10キ-やフリック入力は非対応。10キーやフリック入力を利用したい場合は別のIMEアプリをインストールする必要がある。
高い性能や薄型軽量の本体、高画質ディスプレイが魅力
6mmという本体の薄さや約300gという軽さに加え、高画素密度の有機ELによる美しいディスプレイなど非常に魅力的な特徴を備えた「Venue 8 7000」。スペック面でもベンチマークの結果は良好で、7~8型Androidタブレットとしては非常に高いスペックだ。
一方、RealSense Snapshot Depthカメラについては、面白い機能ではあるものの、カメラの画質が課題だ長さを測れる機能はインチ表示のため分かりにくく精度もさほど高くない。再フォーカスは操作そのものが面白いものの、ピントの合った写真を撮りたいという時には二度手間になってしまう。
価格は48,980円とほぼ5万円近い価格。7~8型のAndroidタブレットというとNexus 7(2013)が1つの基準として考えやすいが、Nexus 7(2013)のLTEモデルが約4万円ということを考えると、LTE非対応ながら値段が1万円近く高いことになる。高い性能や美しいディスプレイ、薄型軽量の本体サイズがこの価格差に見合うかどうかが購入の判断になるだろう。