【COMPUTEX 2010レポート】【Thermaltakeブース編】
今夏以降発売の新製品は使い勝手の改善に注力

会期:6月1日~6月5日(現地時間)
会場:Taipei World Trade Center Nangang Exhibition Hall
   Taipei World Trade Center Exhibition Hall 1/3
   Taipei International Convention Center



 PCケースやCPUクーラー、電源などを取り扱うThermaltakeブースでは、今夏以降に日本での発売も検討されている新製品が多数展示された。既存モデルに似た製品が多いものの、細かいところで使い勝手を向上させたり、機能強化を行ったりと、ユーザーニーズに応えようという気持ちが伝わってくる製品群となっている。

●既存モデルの使い勝手を向上させたPCケース新製品

 シンプルな外観を持つ「Armor A60」は、既存の「Armor A90」の姉妹モデルとなるミドルタワーケース。Armor A90に比べて前面の全体がメッシュ状になるなどシンプルな外観になった本製品だが、大きく2つの機能強化がポイントとなる。

 1つはフロントパネル部にUSB 3.0ポートを1基を装備したこと。USB 3.0ポートはマザーボードのI/Oリアパネル部から引き回る方式を採っている。こうした方式を採っているのは、USB 3.0規格がマザーボード上のヘッダピンの仕様を策定していないためで、こうした手法を採らざるを得ないのが現状となっている。

 もう1つのポイントは、側面にカバーを付けた状態で脱着が可能なHDDスロットを備えていることだ。同社はこのスロットを「イージースワップ」と名付けているが、とくにホットスワップ対応などは謳っていない。これは単純にSATA接続をしているだけで、ケース側で独自にホットスワップに対応させるための機構を持っていないことによる。もちろんマザーボードが対応していれば、ホットスワップは可能だ。

 そのほかの主な仕様は、5インチベイ×3、3.5インチベイ×1、HDDベイ×5。ファンはフロントに最大200mm角、リアに120mm角、トップに200mm角×1または120mm角×2、サイドに120mm角を取り付け可能。7~8月ごろの日本発売が検討されており、価格は15,000円前後が見込まれている。

Armor A90の姉妹モデルとなる「Armor A60」。フロントIOのUSB×1基はUSB 3.0対応となっているUSB 3.0はリアパネルへケーブルを接続する格好になる側面にはイージースワップと呼ばれる、カバーを取り付けたままHDDを脱着可能な機構を備える

 「V4 Black Edition」は、やはり発売済みの「V3 Black Edition」に続く製品で、後継製品と呼ぶのに近い位置付けとなる。フロント、リア、トップに2基、サイドにそれぞれ120mm角ファンを取り付けられるのが特徴の製品で、それを受け継ぐ。

 V3からV4への変更点は、フロントパネルのデザインが異なることと、V3ではツールフリーで固定できるベイが3段分に留まっていたものが全段ツールフリー化した。ベイは5インチ×4、3.5インチ×1、3.5インチシャドウ×4、2.5インチシャドウ×1となっている。日本での発売は未定ながら、早ければ7~8月頃となる。価格は現在のV3と同程度の8,000円前後が見込まれている。

V3 Black Edition後継モデルとなる「V4 Black Edition」左がV4、右がV3。シャシーの設計コンセプトは同じだがフロントパネルのデザインが異なるすべてのベイがツールフリーで固定できるようになったのが特徴

 「V6 BlacX Edition」は、V5 Black Editionに近い筐体を持つ製品でフロントのデザインは酷似するが、実際にはまったく異なる性格を持った製品となっている。ケース上部に取っ手を備えるというきわめて特徴的な外観を持つV5に対して、V6では取っ手を排除。代わりに、上部に200mm角ファン×1+120mm角ファン×1を搭載可能とした(V5は120mm角×1)。さらに、上部にHDDドックを1基用意。先述のイージースワップと同じく、ホットスワップはマザーボードに依存するインタフェースとなっている。やはり早ければ7~8月頃、日本で発売される可能性があり、価格は1万円前後が見込まれている。

 同じように上部にHDDドックを持つ「V9 BlacX Edition」。こちらは上部のHDDドックを2基備えている。発売済みのV9 Black Editionをベースとした筐体を採用しているが、このHDDドックの追加やサイドファンの廃止、上部インタフェース端子のUSB 3.0対応などが違いとなっている。

V6 BlacX Edition。ファンはトップの2基以外に、フロント、リア、サイドにそれぞれ120mm角ファンを1基ずつできる右手前がV5 Black Edition、左奥がV6 BlacX Edition。先の写真と比較してもV5のフロントパネルはV6とそっくりだが、V5が備える上部の取っ手が排除された取っ手を外した代わりに上部ファンを2基搭載可能にしたほか、HDDドックを備えているのが特徴
V9 BlacX Editionは、現行のV9 Black Editionのマイナーチェンジモデル上部に2基のHDDドックを装備するほか、USBポートの1基がUSB 3.0対応となった側面に230mm角ファンを備えたV9 Black Editionに対し、BlacX Editionはこれが廃止された

 一定の根強いニーズを持つデスクトップケースとして、Thermaltakeは以前にLanBoxと呼ばれる取っ手付きのデスクトップを発売したが、以降しばらくはデスクトップケースから離れていた。そして、今回のCOMPUTEXでは久々の同社製デスクトップ型ケースとなる「ARMOR A30」を展示。microATXに対応するケースで、本体サイズは265×280×460mm。

 LanBoxのように取っ手は無くなったが、上部に230mm角ファンを1基装備。フロントに90mm角、リアに60mm角×2基も装備する。マザーボードや拡張ボード部はトレイ状となっており、丸ごと引き出してのメンテナンスが可能。また、LanBoxではビデオカードとHDDベイが干渉してボードサイズの長いカードを装着できない事態が発生したそうで、ARMOR A30ではHDDベイの位置を工夫することで、344mmのビデオカードまで装着可能にしたという。また、フロントUSBの1基はUSB 3.0に対応する。値段や発売時期などは未定とのこと。

microATXに対応するデスクトップ型ケース「ARMOR A30」取り外し可能な天板には230mm角ファンを装備する
リア方向から上部から見たところ。HDDベイはフロントから向かって右側に設置されており、拡張カードとの干渉を避けている背面部。マザーボードや拡張ボードを丸ごと引き出せる構造になっている

 ここからはコラボレーションモデルとなるが、3月にドイツで行なわれたCeBITでも展示されたElement Vをベースに、NVIDIAカラーリングを施した「Element V NVIDIA Edition」の発売が決まったとのこと。

 既存モデルと大きな違いはないが、SLI構成時にも使えるビデオカード用のダクトが付属するのが目立った違い。このダクトは標準モデルには提供されないので、NVIDIA Editionだけのプレミア仕様となる。価格は25,000円前後が見込まれており、7~8月の出荷予定となっている。

 また、ARMOR A60/A90をベースとしたAMD仕様のモデルも展示された。こちらは現時点では発売が未確定。フロントパネルをAMDカラー(というかATIカラー)である赤色をモチーフにしたものに変更しているほか、側面のアクリルパネルや上部ファンに埋め込まれたLEDも赤色に変更している。

 このほか、ようやく最近になって在庫も出てきたというLevel 10のペイントモデルも展示された。こちらはあくまで展示会用のデザインで、とくに発売の予定はないとのこと。

NVIDIAカラーであるグリーンを基調としたデザインが施されたElement V NVIDIA Editionの発売が決定デモ機はGeForce GTX 480の3-way SLI構成。ビデオカードのフロント側にダクトが備わっているのが分かるが、これはNVIDIA Editionのみで提供される上部インタフェース部にはeSATA端子やファンコントローラなどを装備する
ARMOR A90/60のAMD Edition。発売は未確定。ATIカラーである赤色パネルが特徴フロントだけでなく、サイドのアクリルパネル、上部ファンのLEDなども赤色で統一人気のLevel 10のペイントモデルも展示。こちらは展示会用の特別デザインで発売予定はない

●Frio風デザインで静音を重視したCPUクーラー「静(Jing)」

 Thermaltakeといえばユニークな形状のものや、冷却能力を追求したものなど、個性的なCPUクーラーでも知られる。最近では220W TDPまでサポートするという強力CPUクーラー「Frio」が発売されたことが記憶に新しいが、このFrio風のデザインで、静音性を重視したという「静(Jing)」が展示された。静の文字は正確には繁体字で、Jingとは静の中国語読みに由来する製品名。

 林の閑静な雰囲気をイメージしたという白と薄緑を基調としたデザインで、ファンは16dBAの128mm角ファンを吸排気に計2基装備。この2基はファンガードを持たない専用設計となっており、それぞれ吸排気用にファンの向きが逆になっているほか、風量も吸気側が42CFM、排気側が37.7CFMと微妙に仕様が異なっている。

 ヒートシンクはFrioに似ているものの、6φのヒートパイプを5本使うなど違いは見られる。ヒートシンクの素材はベース部が銅で、ヒートパイプと水平フィンはアルミ。

 CPUクーラーの固定はバックプレートによるもの。各種固定金具は専用のケースに入れられて出荷される。このケースについては、ユーザによる紛失を防ぐだけでなく、社内の製造面でも付属品漏れを防いだり、輸送中のトラブルを防ぐなど、さまざまな効果を狙ってのものとのことだ。

 製品の発売は今年Q3を予定。価格は海外で59ドルが予定されており、日本での価格は当然海外価格がベースとなるが具体的なコメントを得られなかった。

静音性を重視したサイドフローCPUクーラー「静(Jing)」ファンはガードのない専用タイプで、吸排気用それぞれでファンの向きが逆になっていることを見て取れる
ヒートパイプは5本。ベース部は銅となる付属品。CPUクーラーの固定はバックプレートを用いる

●80Plus Goldの電源も製品投入

 Thermaltakeの電源ユニットといえばToughpowerシリーズがおなじみとなっている。ただ、現行のToughpowerは80PLUS BRONZE仕様に留まっており、この上位モデルとして80PLUS GOLD準拠の「Toughpower Grand」が披露された。

 デザインも大幅に手を加えており、角が丸いという特徴的なデザインとなった。また写真ではうまく写せなかったのだが、搭載されているファンは同社のCPUクーラーなどでも採用例がある「桜ファン」を使用。ファンの先端に切り欠きを設けることで風切り音を防ぐものだ。

 ラインナップは1,075W、875W、750W、650Wの4モデル。具体的な計画ではなく、あくまでも現時点での計画という前置きはあったものの、日本で発売するとすれば1,075W、750W、650Wの3モデルになる見込みだという。時期や価格は未定で、登場時には現行のToughpowerを置き換える格好での販売になるだろうとしている。

 このほか、長らく展示会での展示は続けられていたものの、一向に具体的な発売計画が聞かれなかった「Toughpower 1350W」は、製品設計をやり直し、80PLUS SILVER準拠製品として登場することになるという。日本のコンセント仕様を考慮したうえで、安心して出荷できる最高クラスの製品ということもあり、日本での発売も検討されているという。時期や価格は未定。

80Plus Gold準拠の電源ユニット「Toughpower Grand」シリーズ。7年保証をうたう。1075W、750W、650Wの日本投入が検討されている角を丸くしたデザインも特徴として挙げられた展示会への出品だけに留まっていたToughpower 1350Wは設計をやり直し、改めて製品投入が計画されている。日本で発売される可能性もある

(2010年 6月 3日)

[Reported by 多和田 新也]