【CeBIT 2010レポート】【PCサプライ編】
CPUクーラーやケースの新製品が多数

四本足で支える形状がユニークな「PC-T1」。Mini-ITXに対応したまな板である

会期:3月2日~3月6日(現地時間)
会場:ドイツ共和国 ハノーバー市 ハノーバーメッセ



 出展企業が減ったとはいえ、CPUクーラー、ケースなどをはじめとするPCパーツメーカーにとって、CeBITはこの夏以降の新製品の商談をまとめる重要な場になっている。それだけに新製品だけでなく、ユニークな参考出展も見られる興味深いイベントだ。ここでは、CPUクーラー、ケースを中心に、PC関連製品の展示物を紹介する。

●Lian-Liがロボット型のまな板風ケースを展示

 Lian-Liが展示した「PC-T1」は、Mini-ITXに対応した、いわゆる「まな板」風のケースだ。デザインがユニークで、4本の足を広げた虫ともロボットとも見えるような形状になっているのが目を引く。

 Mini-ITXマザー、スリム光学ドライブ、3.5インチHDD×1台、電源ユニットを固定可能。色は展示された赤色(型番末尾がR)のほか、黒色(型番末尾がB)がラインナップされる。今後2カ月以内の発売を予定しており、価格は150ドル以下になる見込みという。

 また、もう少し“普通のまな板”も新製品にラインナップされており、光学ドライブやHDDなどの交換が容易に行なえる「PC-T60」(ATX対応)や「PC-T7」(Mini-ITX)のほか、マザーボード以外のパーツはあまり交換しないユーザー向けにキューブケースの上にマザーボードを載せる格好となる「PC-Q06」が展示されている。

 PC-T60は5インチベイ×2、3.5インチベイ×3。PC-T7は5インチベイ×1、3.5インチベイ1を持つ。PC-Q06はキューブ型のベース部に5インチベイ×1、3.5インチシャドウベイ×1を持ち、ケース上部にMini-ITX用の固定台座が設けられている。その上に対応プレートを載せることで、ATXやmicroATXでの利用も可能なスタイルとなっている。

 そのほかにもLian-Liからはいくつかの新製品ケースが展示されているので写真で紹介する。

 ちなみにLian-Liの新製品の大きな特徴となっているのが、USB 3.0への対応である。昨今のDIY向けPCケースはフロント部などのアクセスしやすい位置にUSBやサウンド入出力端子を装備するのが当たり前だが、このUSBポートを、すべてUSB 3.0化することを進めている。これまでに紹介した製品も同様だ。

 また、ケース周りのサプライ製品も積極的に展開していくことのこと。来月から順次ローンチしていくという。

背面側に電源ユニットを固定する電源とリセットスイッチ、LEDを側面部に備える
下部には電源ユニットのスペース、各種ドライブベイを備えるこちらはPC-T60のスタイルを踏襲したMini-ITX対応の「PC-T7」
ATX/microATXに対応する「PC-T60」。色は赤のほか、黒、シルバーがラインナップされる光学ドライブなどのスペースがキューブ型ケースになっている「PC-Q06」。Mini-ITXならそのまま取り付けが可能こちらのプレートを取り付けることでATX/microATXでも利用可能になる
「PC-X900」は既存のPC-X1000に似た奥行きの短い製品で、一回り小型の製品。フロント部に3基の120mm角ファン、背面に2基の120mm角ファンを備える。ベイ構成は5インチ×3、シャドウ×7となる「PC-A77F」は前面すべてが5インチ(12基分)になったケースで、やはり奥行きは短め。5インチベイのうち6基をシャドウベイ×9基として使うマウンタが付属する。ファンは前面に120mm角×3、背面に120mm角×1、上面に140mm角×2を備える「PC-X2000F」は140mm角を前面に3基、背面に2基備える大型ケース。ドライブ、マザー、電源のエアフローを分離した設計のケースだ。前モデルとなるPC-X2000からベイ構成を見直しており、5インチ×4、シャドウ×7となる
「PC-V352」は、microATXに対応したケースで、PC-V351の後継となるモデル。PC-V351では本体向かって左側面に固定されていたIOポートを、右側面側へ移動可能にした。元々5インチベイは左右どちらでもOKな構造だったので、そのコンセプトを進めた格好となるLian-Liブランドのアクセサリ展開を来月以降、積極的に行なっていくとしている

●サイズが今夏登場の新製品を展示

 サイズも例年どおりCeBITに出展しており、今夏発売の新製品やコンセプトモデルを展示した。

 「RASETSU(羅刹)」は、現行の夜叉のヒートシンクを横に寝かせたような形状のトップフロー型CPUクーラー。同社のトップフロー型CPUクーラーといえば「KABUTO(兜)」が人気を集めているが、同社によれば、「KABUTOよりも冷える」とのことで期待したい製品だ。

 NINJA(忍者)シリーズの新製品となる「NINJA 3」も展示された。これまでファンレスでの利用を重視していたものを、NINJA 3ではファンを用いたときの冷却能力を高めた設計へ転換。ヒートシンク形状の変更を行なっているという。両製品ともに夏前の発売が予定されている。

 CPUクーラーはこのほかに2つのコンセプトモデルが示された。1つは「SUSANO」で、これまでのイベントでは「God Hand」の名称で紹介されていたもの。100mm角ファン×4個を搭載する大型クーラーで、12本のヒートパイプを装備。現在細かなチューニングを行なっている段階という。

 もう1つは夜叉の銅版となる「YASYA CU」。ただしこちらの製品は思ったほど冷却性能が上がらなかったそうで、現在製品化の予定はないとのことだ。

 GPUクーラーとしては、「SETSUGEN(雪原)」の後継となる「SETSUGEN 2」のデモが行なわれた。現在はプロトタイプの状態だが、製品化は近いという。旧製品となるSETSUGENとは一目で違いが分かる形状となっており、冷却能力も大きく増すとしている。

 PCケースでは「GEKKO(月光)」の製品化が近いとのこと。月光はフロントカバーを備えるATX対応PCケースで、吸音材および制震材を内側に張り巡らすことで静音性を高めているのを特徴としている。カラーも複数がラインナップされる。ベイ構成は5インチ×4、3.5インチ×1、シャドウ×4となっている。このほか、「IKAZUCHI」と呼ばれるコンセプトモデルも示されている。

 このほか2.5インチHDDクーラーや5インチベイ用“引き出し”、ファンアームのコンセプトモデル、スピーカー、アンプ新製品、電源の新製品が展示されている。これらは写真で紹介する。

夏前にも発売が予定されている「RASETSU(羅刹)」。120mm角ファンを備えたトップフロー型CPUクーラーとなる「NINJA(忍者)3」も夏前の発売が計画されている。120mm角ファンを取り付け可能なサイドフロー型CPUクーラーとなるNINJA 3を上部から見た写真。ファンを付けたときの冷却能力を高めるよう設計の見直しが行なわれている
コンセプトモデルのCPUクーラー「SUSANO」。単なる大型化だけでなく、ヒートパイプが長くなりすぎないような工夫をしているというヒートシンクの一部にある切り欠きは、ビデオカードのPCI Express電源端子と干渉しないために設けられているものYASYAの銅版も展示されたが、性能が思いのほか伸びないため製品化されるとすればSUSANOのほうが先になるとのこと
GPUクーラーのコンセプトモデルとなる「SETSUGEN 2」組み込まれた状態だけでは分かりにくいのでカタログを撮影したもの。初代とは形状が大きく変わっていることが分かるPCケースの新製品となる「GEKKO」
GEKKOには複数のカラーバリエーションモデルが用意されるフロント部を開けたところ。5インチベイの1つは3.5インチ兼用となるPCケースのコンセプトモデル「IKAZUCIH」。デザイナーのこだわりがあるというフロントパネルデザインが特徴
IKAZUCHIのデザイン候補の1つ2.5インチHDDクーラーとなる「Himuro」。現在はコンセプトモデルの段階で、市場のニーズを調査したうえで製品化を検討するとのこと5インチベイに取り付ける“引き出し”製品となる「Kama Cabinet」。量産前のモデルだが、充電用のUSB端子を備えるなどのコンセプトが特徴になるという。例えばiPodを充電したまま5インチベイ内に収納しておくなどの用途に使える
ケース内でファンを自由に配置するためのアーム。製品名なども示されていない段階のコンセプトモデル「Kro Craft Mini Speaker」はエンクロージャーにアルミを用いたスピーカー。コストの問題が発生して製品化を検討している状態という。中央は3.5インチタイプのアンプ製品「Kama Bay Amp Mini」アナログメーターが特徴となる「Kama Bay Amp 2000」。GW前の発売を予定している。Power ICにはYAMAHAのチップを用いている
Kama Bay Amp 2000の背面Kama Connectシリーズの新製品となる「Kama Connect Plus」。製品化は間近。USB-IDE/SATA変換に加え、カードリーダとUSBハブ機能を備える
Kama Connect PlusのUSB Hub機能部電源新製品の「Chouriki(超力)2」。電源効率の向上、新しいベアリングのファン、ファンブレードの工夫などを盛り込んでいるとのこと

●ThermaltakeやCoolerMasterの新製品

 PCケースやCPUクーラーでおなじみのThermaltakeやCoolerMasterも、このCeBITで新製品を登場させている。

 Thermaltakeの「Frio」はサイドフロー型のCPUクーラー。2個のファンでヒートシンクをサンドイッチする形状の製品で、最大220WのTDPに適応できるという。ファンは120mm角で、回転数は1,200~2,500rpm。日本国内ではすでに「Frio 冷却魂」という名前で発売済で、実売7,770円前後だ。

 「Armor A70」はゲーマー向けにデザインされたPCケース。5インチベイ×3、3.5インチベイ×1、HDDシャドウベイ×6に加え、SSD用の2.5インチシャドウベイが1基用意されている。ファンは前面に120mm×1、背面に120mm×1、上面に200mm角×1を備える。価格は未定で、発売は2カ月以内を予定している。

Thermaltakeの「Frio」。120mm角ファン×2基を用いたCPUクーラーで、対応TDPは220WとされているThermaltakeの「Armor A70」エクスターナルベイは独特の形状をしたフロントカバーに覆われている。フロント下部は青色LED付きファンによる光が漏れる
側面。最下段のシャドウベイが2.5インチ用となる。背面には水冷キットのパイプを通すための穴も用意されているこちらは既存の「Element」をベースに、NVIDIAカラーリングを施したコンセプトモデル

 CoolerMasterの「HAF X」は、同社のHAFシリーズのフラッグシップに位置付けられるPCケース。上面に200mm角ファン×2(1基はオプション)、側面に230mm角ファン、背面に140mm角ファンを備えるほか、ビデオカードの脱落を防ぐ固定用パーツにもファンを備える。

 ベイはいずれもツールフリーで作業できることを売りとしており、5インチベイ機器をフロント部から簡単に脱着できることをアピールしていた。発売は6月を予定。価格は未定としながらも、CM Stacker 830の価格に近いはず、としている。

 CPUクーラーは2つの新製品が展示された。1つは4月発売の「V6 GT」で、2基の120mm角ファンでヒートシンクをサンドイッチする形状の製品。ファンの回転数は600~2,200rpm。従来の同社製品からリテンションパーツを変更し、より脱着がしやすいものにしているのも特徴として挙げている。

 このほかコンセプトモデルとして展示した「HB6」で、7本のヒートパイプを用いたサイドフロー型のCPUクーラー。やはり120mm角ファンを取り付け可能。発売は6月を計画しているとのこと。

CoolerMasterの「HAF X」。シャシーはSECCだが、周囲はプラスチックでメカ風のデザインに仕上げている上面に230mm角ファンを2基装着可能。1基は取り付け済みの状態で出荷される側面の図。電源ユニットは最下段に装着され、エアフローを分離するためのパーツが取り付けられる。ビデオカードは2スロット占有タイプを4枚装着可能
5インチベイ機器の取り外しが簡単に行なえることをアピール来月発売予定の「V6 GT」。2基のファンでアルミフィンを挟み込む形状。ベース部は銅が使われる。このデザインはスポーツカーをイメージしているそう6月の製品化を計画しているコンセプトモデル「HB6」

●カスタマイズが豊富なラグジュアリーケース

 ilouxが展示した「iloux one」は円柱状のスタイルがユニークなPCケース。購入時にデザインのカスタマイズを行なえることで、自分だけのPCケースを手に入れることが出来ることを特徴としている。

 例えばフロントパネルだけでも素材(アルミやチタンなど)、カラーリング、ウッド状のデザインに仕上げられるほか、LEDを用いたラインを入れることができる。上部に7型のサブディスプレイを埋め込むことや、背面にRCAコネクタを備えることが可能となっている。

 ケースとしての仕様は、microATXに準拠しており、サイズの大きいビデオカードを装着できるよう設計し、冷却面も内部エアフローを工夫しているという。フロントローディングタイプのスリム光学ドライブベイ、3.5インチシャドウベイを備える。

 すでにドイツベースで販売を開始しており、価格は1,945ユーロから。高額なケースだが、ブーススタッフは、この価格で世界に1つしかないケースを手に入れられるのだから……とアピールしていた。

デザインをさまざまにカスタマイズ可能な「iloux one」天板は20型以上のディスプレイにも耐えられる強度になっているというケース内部。microATXフォームファクターに準拠。スリム光学ドライブベイの下に余裕を持たせることで長いビデオカードにも適応できる
天板の固定はマグネットを用いることで、ワンタッチで正しい位置へセットされるようになっている背面。これはRCAコネクタを付けたモデルだが、これを省略することもできる

●VGAコネクタ×1個でデュアルディスプレイを実現

 NEOCOMは、2枚のディスプレイを一体化したデュアルディスプレイ機器を展示。1,366×768ドットの解像度を持つ、白色LEDバックライトの18.5型液晶を2枚搭載。対面の人と同じ画面を見る使い方のほか、片方のディスプレイを180度回転させることで、1人で2画面を見ることもできる。OS側の設定によりクローン、拡張デスクトップなどを選ぶことができる。

 また、現状では非対応だがタッチパネル化も検討しており、片方のディスプレイだけをタッチパネル化するというアイデアもあるという。

 ケーブルは主に3本を接続。1つはVGAケーブル、残りはUSBケーブルである。ディスプレイはVGAケーブルとUSBケーブルで1画面ずつ接続され、1画面はDisplayLinkのUSB-ディスプレイコントローラを用いて表示される格好だ。もう1つのUSBケーブルは内蔵の130万画素Webカメラに利用される。

 発売は7月を予定しており、価格は未定としながらも500ドル前後になるのではないかとしている。

NEOCOMが展示したデュアルディスプレイ。基本形状は自分と対面の人がディスプレイを見るというスタイル。写真の裏側にもう1枚のディスプレイを備えている片方のディスプレイを180度回転させることで、1人で2画面を見ることができる片方のディスプレイは、このようにチルトすることができる

(2010年 3月 4日)

[Reported by 多和田 新也]