【Flash Memory Summit 2009】
Sun MicrosystemsはSSDとHDDのハイブリッドへ

振動台の上にSSDを載せて動かしてみせる(SMART Modular Technologies)

会期:8月11~13日(現地時間)
会場:米国カリフォルニア州サンタクララ
   Santa Clara Convention Center



 「Flash Memory Summit 2009」では、サーバー/ストレージの大手ベンダーであるSun MicrosytemsがSSD(Solid State Drive)を含めたストレージ戦略をいくつかの講演で発表した。

 Fishworksフラッシュアーキテクトを務めるAdam Leventhal氏は、SSDとHDDを組み合わせて使い分けることで消費電力の低いストレージシステムを構築できることを示した。なおFishworksとは同社で7000シリーズのストレージシステムを開発しているチームの名称である。FishはFully Integrated Software and Hardwareの略称だ。

 Leventhal氏はまず、データの読み出しと書き込みを繰り返す速度(IOPS:Input Output Per Second)を消費電力当たりで比較するとSSDがHDD(15,000rpm品)に比べるとはるかに高く、記憶容量(GB)を消費電力当たりで比較するとSSDとHDD(15,000rpm品)はあまり変わらないことを示す。そしてSSDはHDDの置き換えではなく、SSDとHDDを上手く組み合わせることが低消費電力ストレージの構築では重要だと説明した。

 データ記憶には容量の膨大なHDDを使い、データの入出力には高速のSSDを使う。このときHDDに高価な15,000rpm品ではなく、安価な7,200rpm品を使うのがポイントである。7,200rpm品は15,000rpm品よりも記憶容量当たりの消費電力が低い。

消費電力当たりのデータ入出力回数(IOPS/W)の比較消費電力当たりの記憶容量(GB/W)の比較
HDDとフラッシュメモリ(SSD)長所と役割15,000rpmタイプのHDDと7,200rpmタイプのHDDでIOPS/WとGB/Wを比較

 そこで15,000rpm品のHDDだけで組んだストレージと、7,200rpmのHDDおよびSSD(読み出しに最適化したタイプと書き込みに最適化したタイプ)を組み合わせたハイブリッドストレージで性能を比較した。SSDありのストレージでは消費電力を68%削減でき、IOPSが高くなった。

 さらに、HDDを5,400rpmタイプに変更することも検討。5,400rpmタイプは、消費電力当たりの記憶容量とIOPSでは7,200rpmタイプとあまり変わらない。ただし5,400rpmタイプのHDDは安価なので、SSDと組み合わせればコストをさらに下げた低消費電力ストレージと実現できそうだとするにとどまった。

15,000rpm品のHDDだけで組んだストレージと、7,200rpmのHDDおよびSSD(読み出しに最適化したタイプと書き込みに最適化したタイプ)を組み合わせたハイブリッドストレージで性能を比較。左側の青色が15,000rpm品のHDDによるストレージ。右側の黄色がハイブリッドストレージ5,400rpmのHDDでIOPS/WとGB/Wを比較消費電力をさらに低減するストレージの可能性

●NANDフラッシュはエンタープライズ製品の開発を

 Sun Microsystemsのキーノート講演では、フラッシュメモリ担当リードテクノロジストを務めるMichael Cornwell氏が発表した。

 同氏はNANDフラッシュメモリのベンダーはコンシューマ用製品の開発と製造に力を入れており、エンタープライズ用製品にはあまり力を入れていないと述べた。また記憶容量当たりの単価を下げることに夢中になるあまり、エンタープライズ用製品では不可欠な書き換え可能回数、書き込み速度、読み出し速度といった性能を犠牲にしていると批判した。

 例えば書き換え可能回数は3年前に比べて10分の1に減少し、書き込み速度は2年前に比べて4分の1、読み出し速度は2年目に比べて6分の1に低下した。このままではNANDフラッシュメモリのレイテンシ(最初のデータを読み出すまでの時間)はHDDの2世代遅れになってしまう。そして50nmを切るような微細加工技術でエンタープライズに適したNANDフラッシュメモリを提供できるベンダーは、ほんのわずかになってしまうだろうと展望した。

エンタープライズ分野にとってのフラッシュメモリNANDフラッシュメモリは性能を犠牲にしてコスト低減を追求

 次世代のサーバーに向けてSun Microsystemsでは、「Open Flash Module」と呼ぶNANDフラッシュメモリの小型メモリモジュール(SO-DIMMタイプ)を開発し、Open Flash Moduleの仕様を公開することでサーバー/ストレージの業界全体で採用を促そうとしている。

 Open Flash Moduleは現在、サーバーグレードのSLC NANDフラッシュメモリをSamsung Electronicsが供給し、コントローラチップをMarvell Technology Groupが供給している。そしてUnigenがメモリモジュールに組み立てる。

 同社のサーバーにはHDDとともにOpen Flash Moduleを組み込み、記憶容量をHDDで稼き、I/O性能をOpen Flash Moduleという役割分担を構築する。

 またDRAMをNANDフラッシュメモリでバックアップした不揮発性メモリ「NV(Non Volatile)-DRAM」を採用して信頼性を高める。例えば100GB級のNV-DRAMと10TB級のNANDフラッシュメモリでメモリ階層を構築したサーバーを考えている。

NANDフラッシュメモリのモジュール「Open Flash Module」Open Flash ModuleのサプライチェーンNANDフラッシュメモリを組み込んだサーバーのアーキテクチャ
DRAMをNANDフラッシュメモリでバックアップした不揮発性メモリNV(Non Volatile)-DRAMNV-DRAMの外観。AGIGA Techが開発、提供している。

 NANDフラッシュメモリのベンダーは2007年~2008年に、SLC(シングルレベルセル)タイプのNANDフラッシュメモリの生産数量を急速に減らし、MLC(マルチレベルセル)タイプの割合を大幅に増やした。エンタープライズSSDが要求する性能を満足できるのはSLCタイプのNANDフラッシュだけなので、エンタープライズSSDのベンダーやエンタープライズSSDを導入したいストレージベンダーにとっては、望ましくない事態である。Flash Memory Summit 2009のキーノート講演で、Sun MicrosystemsのCornwell氏が不満を表明したのには、こうした背景がある。

 NANDフラッシュメモリの微細化ペースは今後、鈍っていく見通しだ。SLCタイプである限り、記憶容量当たりのコスト低減はあまり進まないためだ。従ってエンタープライズSSDのコストがHDDに比べるとはるかに高いという状況は、改善されにくい。エンタープライズSSDの普及を加速するには、コストの低い(そして性能も低い)MLCタイプでもエンタープライズ用ストレージで許容できるようにする、なんらかの工夫が必要だろう。

(2009年 8月 20日)

[Reported by 福田 昭]