【COMPUTEX 2009レポート】
Dolby、第3世代のPC向け音響技術「Dolby Home Theater v3」をデモ

会期:6月2日~6日(現地時間)
会場:Taipei World Trade Center Nangang Exhibition Hall
   Taipei World Trade Center Exhibition Hall 1/3
   Taipei International Convention Center



 米Dolby Laboratoriesは、COMPUTEX会場に隣接するホテルで同社にとって第3世代となるPC向け音響技術「Dolby Home Theater v3」などをデモした。

Dolbyの第3世代PC向け音響技術のマトリックス

 現在同社がPC向けに提供しているプログラムは「Dolby Home Theater v3」、「Dolby Advanced Audio」、「Dolby Headphone」の3つがある。最上位となる規格のHome Theater v3には、Dolby Headphone、Sound Space Expander、Natural Bass、Dolby Prologic IIx、Dolby Digital Live、Audio Optimization、High Frequency Enhancerの7つの技術が含まれる。

 Dolby Headphoneは、その名の通りヘッドフォン向けの技術で、ステレオソースの音声を擬似的に5.1ch相当にサラウンド化するもの。これを通常のスピーカー向けにしたのが、Sound Space Expander。サラウンド化という意味では同じだが、スピーカー向けに異なるアルゴリズムを利用しているという。

 Natural Bassは、もとのオーディオを損なうことなく、低音を増幅させる技術で、小さなスピーカーでも低音が得られるようになる。Dolby Prologic IIXは、ステレオ音声を最大7.1chにまで疑似サラウンド化する技術で、5.1ch音声を7.1chにすることもできる。Dolby Digital Liveは、PCの通常のオーディオをDolby Digitalフォーマットに変換する技術。

 ここまでは第2世代に含まれていたもので、第3世代になって追加されたのがAudio Optimization。これはPCから再生されるオーディオをマイクで録音し、それをPCの周波数応答に応じて平均化。続いて、独自のアルゴリズムを使ったインバースフィルタにより、そのPCの周波数応答特有の逆の位相を作り、もとのオーディオに重ね合わせることで、周波数応答を平坦にさせる。

 こういったプロセスにより、ノートPCに内蔵されるスピーカーの限界によって引き起こされる問題を解消し、音質を引き上げる。このチューニングの作業は、量産版の製品を使って、Dolbyのエンジニアが機種ごとに応じた最適化を行なうのが特徴。

最適化を行なう前の周波数応答はかなり波打っているがインバースフィルタにより平坦になる

 もう1つの新技術であるHigh Frequency Enhancerは、一般的ビットレートでのエンコーディングにおいて失われる高周波帯を再生させる技術。これにより、より原音に近いオーディオを実現する。

 Dolby Advanced Audioにもこれら2つの新技術と、Natural Bass、Dolby Headphoneが含まれるが、第2世代のDolby Sound RoomにあったSound Space Expanderは省略された。

 Dolby Headphoneには特に変更点はないが、ライセンス価格が安く、CPUへの負荷も非常に少ないので、同社では今後特にネットブックに焦点を当てて、提供していくという。

 なお、これらの技術は、オーディオコントローラには依存しないものの、PC OEMメーカーにのみ提供されているので、ユーザーが後から追加することはできず、最初から搭載されているPCを購入する必要がある。対応OSはWindows Vista/7で、Dolby HeadphoneはWindows XPにも対応している。

Dolby技術を搭載したPCではスピーカーのプロパティにこのようにDolbyの設定タブが追加される

(2009年 6月 8日)

[Reported by 若杉 紀彦]