【COMPUTEX 2009レポート】
Intelウルトラモビリティ基調講演
~次期Atomプラットフォーム搭載のMIDを多数デモ

Intelのアナンド・チャンドラシーカ氏

会期:6月2日~6日(現地時間)
会場:Taipei World Trade Center Nangang Exhibition Hall
   Taipei World Trade Center Exhibition Hall 1/3
   Taipei International Convention Center



 米Intel上級副社長兼ウルトラモビリティグループジェネラルマネージャのアナンド・チャンドラシーカ氏は4日(現地時間)、COMPUTEX会場近くのホテルで、ウルトラモビリティに関する基調講演を行なった。

 講演では、チャンドラシーカ氏が、次期Atomプラットフォームである「Moorestown」(ムーアズタウン、コードネーム)の性能や互換性、消費電力に焦点を当てて解説。また、台湾のハードウェアメーカーの幹部を壇上に招き、現在開発中のMoorestown採用機の実機を披露するなどし、Moorestownの優位性や開発の順調ぶりを強くアピールした。

 まず現行のAtomプラットフォーム(Menlow)の現状について、チャンドラシーカ氏は世界ですでに70以上のMID(Mobile Internet Device)が製品化された実績を披露。その実機の一部を壇上で紹介したが、CompalのSamson Sern氏(Co-GM PCBG)を壇上に招き、同社が現在開発中である世界最薄のWindowsベースMIDである「KAX15」を公開した。

壇上には現行のAtomを採用したMIDがずらり展示そして、現在開発中の世界最薄Atom搭載MIDをCompalのSern氏が披露ゲストに呼ばれた、台湾のTVタレントJanet Hsiehさんは、この手のガジェットが大好きということで、Compalの製品を見て大はしゃぎ

 チャンドラシーカ氏は、Atomの性能についても、ARMコアベースの製品に対して2倍以上であるとの結果をスライドで示すとともに、実機上でQuake 3を動かしてみせた。これは性能だけでなく、互換性の高さも示すもので、チャンドラシーカ氏は、現状のMMOのほとんどはPC向けだが、Atomによって、それらが今後ハンドヘルドデバイスでもプレイできるようになるとした。

AtomとARM系プロセッサの性能比較。ちなみに、一番上は今回ラインナップに追加された2GHzのAtom Z550の結果Quake 3の動作デモこちらは、UPnPデバイスにAtom搭載MIDから音楽と2つの動画をストリーム配信するデモ

 こういった特徴を引き継ぎつつ、2010年にIntelが投入するのがMoorestownだ。CPUの「Lincroft」(リンクロフト、コードネーム)は、プロセスルールは45nmで、現行のSilverthorneのコアを流用するが、2D/3Dグラフィックス機能、動画再生支援機能、メモリコントローラなども内部に統合した完全な新アーキテクチャとなる。

 MenlowからMoorestownに移行することで、マザーボードの面積は半分近くに縮小され、より小型のデバイスが可能となるが、チャンドラシーカ氏がもっとも力説した改善点は、アイドル時の消費電力の少なさだ。

 2007年に同社がMoorestownを紹介したとき、アイドル時の消費電力はMenlowの1/10を目指すとしていたが、すでに現時点でその目標を大きく上回る1/50以下を実現できているという。まだ完成品ではないため、具体的な消費電力の数値についての明言は避けたが、壇上ではMoorestownの試作機とMenlowの実機を用意し、その場で消費電力の違いを計測して見せた。

 ネットへの接続性についても、EricssonおよびOPTIONとの協業により3G通信機能が実装されることと、Intel自信の「Evans Peak」により、1チップでWiMAX、Wi-Fi、Bluetooth、GPSの4つの機能が実装されると説明した。

Moorestownのブロックダイヤグラム。CPUのLincroftはグラフィックス機能やメモリコントローラを統合標準的なMoorestownとMenlowの基板のサイズ比較Moorestownはアイドル省電力がMenlowの1/50以下に。動作時も低く抑えられている
壇上でも計測器を用いて両者の消費電力を比較グラフの上の方の水色がMenlowで、下の緑がMoorestown1チップで4つの無線機能を提供するEvans Peak

 Intelは2008年から、Moorestownに向け、Linuxベースのオープンソースプラットフォーム「Moblin」への投資を行なってきたが、4日付けで組み込み機器向けソフトウェア開発会社のWind Riverを買収したことを発表した。これを受け、Wind RiverでGM(Mobile Handsets and MIDs)を努めるJason Whitmire氏が壇上に招かれ、Moorestown上に実装した独自のUIを披露した。デモ内容は、3D UIや720pの動画再生、Quake 3の動作などMoorestownの性能の高さを示すものだが、チャンドラシーカ氏はこれがマルチタスクで動いている点も競合製品にはない優位点だとした。

MoblinのUI。予定表や、好みのアプリ、ドキュメント、メディアファイル、SNSの情報などが分かりやすく並べられ、ユーザーがやりたいことの9割に1クリックでアクセスができるWind RiverのJason Whitmire氏Wind Riverが開発中のUI
スライドショー、動画再生、ゲームのプレイをマルチタスクで起動可能

 このほかにも、Inventec社長のRichard Lee氏、Quanta Computer会長のBarry Lam氏もゲストとして招かれ、それぞれのMoorestown試作機を披露。さらに、Moorestownの後継で、32nm SOCプロセス1チップの「Medfield」についても業界の各社と協力しながら開発を進めていることについて言及し、講演を締めくくった。

InventecのRichard Lee氏Quanta ComputerのBarry Lam氏Moorestownの後にはMedfieldが控えている
LincroftのウェハebのMoorestown試作機InventecのMoorestown試作機
QuantaのMoorestown試作機展示会場のデモの1つ。MIDで撮影した写真をGPSによる位置情報とともにアップロードし、画像比較によりそれが何であるのかを検索して返してくれるこちらはセンサーやマイク/スピーカーなどを内蔵した腕時計型のデバイスを振ったりすることで、アプリを起動したり、Skypeに応答して会話をするというデモ

(2009年 6月 5日)

[Reported by 若杉 紀彦]