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ソフトウェア基調講演レポート
「MIDやビジュアルコンピューティングの躍進に注力」

Intel副社長兼ソフトウエア&ソリューション・グループ事業本部長のレニー・ジェームズ氏

4月3日(現地時間) 開催

会場:上海国際コンベンションセンター



 IDF Spring 2008の2日目は、副社長兼ソフトウエア&ソリューション・グループ事業本部長のレニー・ジェームズ氏による基調講演が行なわれた。ここでは、同社が現在注力しているソフトウェア開発関連の取り組みが紹介された。

●オープンソースソフトウェアスタックの認定プログラムを発表

 ジェームズ氏は、現在ソフトウェアの世界が大きく変化を見せていることを取り上げ、主に次の3つのテーマに分けて紹介された。それは、「どこでソフトウェアが開発されるか」「どのように開発されているか」「ユーザーの期待が変わってきている」という点である。

 まず、どこで開発されるか、という点については、IDF Spring 2008の開催地でもある中国における取り組みを紹介。2011年にかけて、中国におけるソフトウェア開発者が世界でもっとも多くなるとの予測を示した。ソフトウェア売り上げ増、サポートインフラの充実を例に、また、中国のITマーケットは“非常に健全に成長している”としている。

 こうした背景のもと、現在、政府や大学とも協力して、ソフトウェア開発者の教育、養成プログラムを展開していることを紹介。Intel独自の開発センターも設けており、ソフトウェア会社を起業しやすい土台作りに努めていることを紹介した。

 2つめのテーマである開発のされ方の変化については、現在のキートレンドは言うまでもなく「オープンソース」である。オープンソースのプロジェクトが多数立ち上がり、これらを利用したソフトウェア・サービスも多数登場している。

 しかし、オープンソースを用いた開発においても、ソフトウェアの動作に関わる検証や互換性問題の解消は不可欠である。そこで、Intelでは、オープンソースを用いたソフトウェア開発を支援する新たな取り組みとして、今回の基調講演では「Intel Certified Solutions Program」の立ち上げが発表された。

 このプログラムは簡単にいえば、一定の品質を持ったオープンソースモジュールであることを認定するための取り組みだ。Intelアーキテクチャ向けのソフトウェア開発者に対して、同社のアーキテクチャに適したオープンソースモジュールを明確にすることで、負担を減らす、ということである。この認定においては、SpikeSourceが窓口となって行なわれる。同社はIntelキャピタルが2005年に出資を行なった企業であるが、今回のプログラムのために追加出資も行なわれている。

2011年にかけて、ソフトウェア開発者の数はマンパワーにあふれる中国が最大の規模になる見込み 健全な成長を続ける中国のIT産業に確かなエコシステムを確立するため、ソフトウェア開発者養成のプログラムを、政府や教育機関と協力して実施しているという

そうした取り組みの一成果。2D/3Dエフェクトをかける動画編集ソフトで、北京オリンピックでも活躍する予定という。IntelのクアッドコアCPUを用いて、20個のスレッドによる並列処理が行なわれている オープンソースを使った開発の負担を軽減するため、一定の品質を持ったソフトウェアスタックを認定する「Intel Certified Solutions Program」を発表した

●MIDとビジュアルコンピューティングに対する取り組み

 3つ目のテーマとして掲げられた「人々が持つ期待の変化」については、大きく2つのカテゴリに関する話題が述べられた。1つ目がモバイルインターネットデバイス(MID)に対するものである。

 今回のIDFで発表されたAtomはモビリティというカテゴリについて新しい可能性をもたらすものであると同時に、ソフトウェア開発者にとっては新しい挑戦でもあるとする。そのもっとも大きな課題となるのは、デバイス間の互換性問題である。さまざまなMID端末、携帯端末のすべてにおいて問題なく動作することが求められる。

 そして、こうした課題を解消し、マーケットを拡大していくためには、ソフトウェア開発者が大きな負担を感じることなくアプリケーションやサービスを提供できるようにするため、この新しいカテゴリにおいても、エコシステムを確立することが重要であると述べている。

 そのための取り組みが、昨年9月に立ち上げた「moblin.org」である。これは、MIDアプリケーションのためのオープンソースプロジェクトで、すでに500社以上のパートナーとコラボレーションを展開。Linux向けのソフトウェアスタックを提供している。

 このプロジェクトに参加するAsianuxのスタッフも登壇し、「mobilin.orgでは異なるデバイス間での互換性を持ったソフトウェアが多数開発されており、包括的なエコシステムを形成。これが、プラットフォームとして機能している」とする。Asianuxはこのmoblin.orgの“プラットフォーム”によって作られたアプリケーションもデモンストレーション。LinuxベースのaigoやBenQのMIDで動作するSkypeや株式ソフト、ナビゲーションシステムなどを紹介した。

Mobin.orgに参加するAsianuxのスタッフ。異なるメーカーのMIDを用いて、さまざまなアプリケーションをデモした Linuxを用いたMID上で動作するSkypeのデモ こちらはMID上で動作するトレーディングアプリケーション

 人々が持つ期待に関する、もう1つのカテゴリがビジュアルコンピューティングに対するものだ。レニー氏は、よりフォトリアリスティックな画像、ハイクオリティなオーディオ・ビデオ、インタラクティブなユーザーインターフェイスを求めており、Intelはそれらに対する取り組みを何年も続けてきたとアピール。そして、今日、このビジュアルコンピューティングを推進しているのはオンラインゲームであるとした。

 オンラインゲームというのは、パフォーマンスの観点からもとても良いカテゴリの製品で、ハードウェアに対する要求も高い。このオンラインゲームへの取り組みで協力関係を築いているパートナーの製品として、Kingsoftのオンラインゲームが紹介された。

 ここでは、3Dのオンラインゲームをクアッドコア、デュアルコアそれぞれで稼働させ、ビジュアルエフェクトやフレームレートの面で差がついていることを示している。

 このデモでは10個のスレッドを走らせていると述べられているが、パラレルプログラミングやスレッディングプログラミングに適応した変更を加えるだけで、性能は大幅に引き上げが可能であることをアピールし、これからのデベロッパ養成に欠かせない要素であるとしている。

 ジェームズ氏は最後に、ビジュアルコンピューティングにおいてもIntelがイニシアティブを握っていきたいとアピール。昨年9月に買収した物理演算エンジンを持つHavokの例に止まらず、ゲームエンジンやレンダリングエンジンなどに対して多額の投資を継続的に行なっていることを説明した。

 そして、すでに投入されているパラレルコンピューティング用の開発ツールに続く、ビジュアルコンピューティング用の開発ツールの投入など、向こう1年間で、このカテゴリに対する積極的な取り組みをしていくとした。

 本誌では取り上げていないが、昨年秋のIDFでもソフトウェアに関する基調講演が行なわれており、最近のIntelは、ソフトウェアに対する取り組みや、開発者へのアピールを積極的に行なっている。

 それは当たり前のことで、MIDからHPCまでIAアーキテクチャで展開していくことを“メリット”としてアピールするためには、そのアーキテクチャに最適化されたアプリケーションの存在が不可欠だからだ。多額の投資をしつつ、ソフトウェアスタックの提供の場はオープンソースプロジェクトとして立ち上げ、無償で開発者へ提供する姿勢を取るのもソフトウェア開発者をIAアーキテクチャに囲い込むためである。

 ジェームス氏は基調講演の終盤に「開発者と世界各地で関わり合いを持って、Intelのハードウェア・プラットフォームの可能性を引き出し、有利に展開していきたい」と述べた。言い回しはフォーマルだが、本音が感じられる印象的な言葉だ。

 このソフトウェアに関する講演は今年の秋のIDFでも行なわれることが表明されている。ソフトウェア開発に関わる人に限らず、Intelのこうした取り組みについては今後も目が離せないのではないだろうか。

Kingsoftによるオンライン3Dゲームのデモ。こちらはクアッドコア環境での動作デモで60FPSを超えるフレームレートを出している こちらはデュアルコア環境のデモ。50FPS程度に留まるうえ、ビジュアルエフェクトも抑え気味になっている NehalemやLarabeeの登場を控え、今後はパラレルコンピューティングをビジュアルコンピューティングへ適用していく取り組みが強化される。物理演算エンジンのHavok買収に代表されるよう、多額の投資を継続して行なっていくとしている

□Intelのホームページ(英文)
http://www.intel.com/
□IDFのホームページ(英文)
http://www.intel.com/idf/
□関連記事
【2007年9月18日】Intel、物理演算エンジンメーカーのHavokを買収
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0918/intel.htm

(2008年4月4日)

[Reported by 多和田新也]

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