イベントレポート
高い性能/電力効率を武器にAI普及を後押しするArm。次世代製品もチラ見せ
2025年5月20日 09:31
Armは19日、COMPUTEX 2025の開幕に先駆けて「Arm Executive Session」を開催。AI時代に向けた同社のビジョンや技術などについて説明した。
冒頭では、同社FAE(Field Application Enginner) Directorを務めるDavid Hsu氏が登壇。1981年の初回のCOMPUTEXから約40年間で技術が急速に進化し、今やすべてのものにコンピュータが使われるようになった説明。その上で、AIの登場でさらなるスピードで革新が進み、人々の生活に影響をもたらすだろうと語った。
また、台湾は40年以上に渡ってグローバルテクノロジーの原動力となっており、次の40年間に向けてもあらゆる面でそのリーダーシップがこれまで以上に重要になるとした上で、Armは台湾との協力関係を維持し、エコシステムパートナーとともに業界の発展や社会の改善に貢献していくと語った。
続いて、同社Senior Vice President and General Manager, Client Line of BusinessのChris Bergey氏が登壇し、主にAIを中心とした同社の取り組みについて紹介した。
同社ではこれまで、性能や電力効率を追求しつつ、世界規模のArmエコシステムを構築してきたが、AIが急速な進化を遂げている今は大きな転換点になっていると説明。クラウドからエッジ、オンデバイスへのAIの移行や、エージェンティックAI、フィジカルAIなどの登場により、AIはあらゆる場所に存在するようになっていくとした。
一方で今後のAIには、普遍的なプラットフォーム、世界最高クラスの電力効率、パワフルな開発エコシステムの3つの基礎的要素が欠かせないと考えていて、これらがまさにArmがこれまで取り組んできた核心的な領域であると述べた。
同社では、ハードウェアからソフトウェアまですべてをカバーするArmプラットフォームを構築。2024年に発表したソフトウェア最適化ツールのKleidiは、MicrosoftのONNX、GoogleのLiteRT、MetaのExecutorch、TencentのHunyuanといった主要なAIフレームワークと統合され、AIワークロードの高速化を実現。インストール数は80億件以上にのぼるという。
採用事例については、Amazon AWSの「Graviton」、NVIDIAの「Grace」といったデータセンター製品に加えて、NVIDIAの小型AIワークステーションの「DGX Spark」、MediaTakのChromebook向けSoC「Kompanio Ultra」などを紹介した。
特にクラウド/データセンター製品においては、主要各社で採用され、40%以上の電力効率改善を達成。昨今ではAI向けにカスタムシリコンを設計するトレンドもあり、2025年末までに新規出荷されるハイパースケーラー向け製品の50%がArmベースになるという。一方、PCおよびタブレットについても、2025年に出荷される製品の40%以上がArmベースとなる見込みだとした。
また、今後投入予定の次世代IP群となる「Lumex CSS」についても紹介した。さらなる情報は今年後半に追って明らかにするとしたが、AIをより広範囲で利用可能にするプラットフォームになるとしている。
CPUの「Travis」は、従来比で2桁クラスのIPC向上を達成。加えて、行列演算処理を高速化するScalable Matrix Extensions(SME)を搭載し、AIワークロードなどもより効率的に処理できるという。
GPUの「Draga」は、コンソール機並みのグラフィックスをモバイル端末で実現できるとし、没入感の高いゲームプレイができるとする。レイトレーシング関連の機能も追加し、ゲームの開発をしやすくするための改良も施したという。
Bergey氏は、「AIがあらゆる場所に存在するなら、Armもあらゆる場所に存在する(AI truly is everywhere. Arm is everywhere.)」と語り、これまで顧客とともに数十年に渡って築き上げてきたものがこれを可能にしたのだと締めくくった。