イベントレポート

AMD、「Radeon RX 5600は究極の1080pゲーミング用GPU」

AMDのRadeon RX 5600を搭載したASUSの「ASUS TUF Gaming X3 Radeon RX 5600 XT EVO OC edition」

 AMDは1月7日~1月10日に米国ネバダ州ラスベガス市で開催された「CES 2020」の開幕前日に行なわれたプレスデーで記者会見を開催し、同社のデスクトップPC向けの新製品としてRadeon RX 5600シリーズを発表した。

 Radeon RX 5600シリーズには2つ製品が用意されており、自作PC/チャネル向けのRadeon RX 5600 XTと、OEMメーカー向けのRadeon RX 5600が用意されており、自作PC/チャネル向けのRadeon RX 5600 XTは、ASUS、MSIなどのビデオカードメーカーから1月21日に、市場想定価格279ドルで販売開始される計画だ。

 AMD 製品管理シニアマネージャ ミトゥン・チャンドラシーカ氏によれば「Radeon RX 5500シリーズを1080p向けのプラットフォームとして位置づけてきたが、Radeon RX 5600 XTは究極の1080p用ゲーミングGPUだ」と表現し、NVIDIAが同価格帯で提供しているGeForce GTX 1660 Tiと比較して同価格でより高性能だと説明した。

Radeon RX 5600 XTはNavi10のメモリコントローラ1つを無効にしたバージョン

Radeon RX 5600 XT(出典:AMD)

 AMDは、同社の最新GPUアーキテクチャ「RDNA」ベースの製品として、昨年(2019年)の6月に行なわれたE3に合わせてRadeon RX 5700 XTなどのRadeon RX 5700シリーズ(別記事参照)を、そして昨年の10月にRadeon RX 5500 XTなどのRadeon RX 5500シリーズ(別記事参照)をそれぞれ発表し、製品の発売を開始した。

 RDNAは同社の従来のGPUアーキテクチャであるGCN(Graphics Core Next)の後継となるアーキテクチャで、GCNに比べて効率が改善するなどの特徴を備えている。

 AMDは昨年投入したこうした2製品のうち、上位製品となるRadeon RX 5700シリーズを1,440p向けゲームに最適、下位モデルとなるRadeon RX 5500シリーズを1080p向けのゲームに最適と位置づけてきた。

RDNAアーキテクチャを採用(出典:AMD、Radeon RX 5600 XT)
5700、5600、5500の位置づけ(出典:AMD、Radeon RX 5600 XT)

 今回のその2つのシリーズの中間となるモデルとして投入されたRadeon RX 5600シリーズについて、AMD 製品管理シニアマネージャ ミトゥン・チャンドラシーカ氏は「Radeon RX 5600シリーズは、"究極の1080pゲーミング向け"という位置づけになる」と説明する。1440pでのゲームを意識したRadeon RX 5700シリーズほどの性能はないが、1080p向けのRadeon RX 5500よりは高性能という位置づけだ。

【表1】Radeon RX 5700 XT、Radeon RX 5600 XT、Radeon RX 5500 XTの違い(AMDの資料より筆者作成)
Radeon RX 5700 XTRadeon RX 5700Radeon RX 5600 XTRadeon RX 5500 XT
Navi10Navi10Navi10Navi14
アーキテクチャRDNARDNARDNARDNA
Cu(コンピュートユニット)40363622
SP(ストリームプロセッサ)2,5602,3042,3041,408
処理能力最大9.75TFLOPS最大7.95TFLOPS最大7.19TFLOPS最大5.2TFLOPS
メモリ8GB GDDR68GB GDDR66GB GDDR68GB GDDR6
メモリクロック幅256bit256bit192bit128bit
メモリ帯域幅448GB/s448GB/s288GB/s224GB/s
ブースト時最大クロック1,905MHz1,725MHz1,560MHz1,845 MHz
ゲームクロック1,755MHz1,625MHz1,375MHz1,717 MHz

 Radeon RX 5600シリーズは、Radeon RX 5700シリーズ向けのダイとなるNavi10ベースになっている。メモリコントローラ1つと、いくつかのブロックをオフにしているが、Radeon RX 5700と同じダイだとなる。

 最大の違いは、4つあるメモリコントローラ(Navi10には64bitのメモリコントローラが4つある)のうち1つが無効にされており、192bitのメモリコントローラとなっている点。このため、搭載されているメモリもRadeon RX 5700 XT/5700の8GBから4分の1減って6GBになっている。

 下位モデルのRadeon RX 5500 XTが8GBメモリ搭載モデルを用意しているのに、Radeon RX 5600 XTが6GBと少なくなっているのは、そのためだ。

 たしかにメモリは5500 XTの8GBよりも少なく6GBになっているが、メモリのバス幅は5500 XTの128bitよりも広い192bitになっているため、メモリ帯域幅は29%向上しており、CUの多さと相まって、性能はRadeon RX 5500 XTよりも高い性能を発揮するということだった。

同価格帯のNVIDIAのGeForce GTX 1660 Tiと比較して高い性能を発揮

GeForce GTX 1660 Tiとの比較(出典:AMD、Radeon RX 5600 XT)

 AMDが公開したベンチマークデータによれば、多くのゲームで同じ市場想定価格帯(279ドル)になっているGeForce GTX 1660 Tiとの比較で同等か上回っているという。また、NVIDIAはGeForce GTX 1660 SUPERという、オリジナルのGeForce GTX 1660の高性能版を出しているが(市場想定価格は229ドル)、そのオーバークロック製品との比較データも公開し、いずれもRadeon RX 5600 XTが上回っているとした。

 なお、このデータはRadeon RX 5600 XTのオーバークロック機能は利用していないそうで、仮にオーバークロック機能を有効にするとさらに差は開くということだった。

今もインストールベースとしては多いGeForce GTX 1060との比較(出典:AMD、Radeon RX 5600 XT)
GeForce GTX 1660 SUPER OCとの比較(出典:AMD、Radeon RX 5600 XT)

 Radeon RX 5600 XTはASRock、ASUS、GIGABYTE、MSI、PowerColor、Sapphire、XFXといったAIB(Add-in-Board)パートナー各社からだけ提供され、AMDのリファレンスカードは提供されない。

 これに関して「リファレンスカードの役割は新しいプラットフォームを立ち上げるときの参考となる製品として提供している。今回はすでに各AIBパートナーはNavi10でのボードを持っており、リファレンスカードを提供する必要がないので提供しない」とのことだった。

 なお、XTがつかないRadeon RX 5600に関しては、仕様に関してはほぼ同じで、唯一の違いはCUがXTが36なのに対して無印は32になり、OEMメーカー向け専用になるということだった。

Radeon RX 5600 XTはABIパートナーからだけ提供(出典:AMD、Radeon RX 5600 XT)
ASRock Radeon RX 5600 XT Phantom Gaming(写真提供:AMD)
Gigabyte Radeon RX 5600 XT(写真提供:AMD)
MSI Radeon RX 5600 XT(写真提供:AMD)
PowerColor Red Dragon Radeon RX 5600 XT(写真提供:AMD)
SAPPHIRE Pulse Radeon RX 5600 XT(写真提供:AMD)
XFX 5600 XT THICC II Pro(写真提供:AMD)

 提供開始は既報のとおり、1月21日が予定されており、市場想定価格は279ドルとされている。

市場想定価格は279ドル(出典:AMD、Radeon RX 5600 XT)