イベントレポート
東芝メモリ、DRAMと同等性能のSSDを披露
2019年8月14日 14:25
東芝メモリはフラッシュメモリに関する世界最大のイベント(講演会兼展示会)「Flash Memory Summit(FMS)」(2019年8月6日~8日、米国カリフォルニア州サンタクララコンベンションセンター)の展示会に、超高速のフラッシュメモリ「XL-FLASH(エックスエルフラッシュ)」を内蔵する2.5インチ型SSDの試作品を出品し、DRAMと同等の読み出し性能(スループット)があることを実演してみせた。
「XL-FLASH」は、96層の3D NANDフラッシュ技術「BiCS4」をベースに、SLC(1bit/セル)技術や16分割(シリコンダイにおける物理的な分割)のメモリプレーンなどによって読み書きを高速化したフラッシュメモリである。昨年(2018年)のFMSで東芝メモリは、「XL-FLASH」のコンセプトや推定性能などをキーノート講演で明らかにしていた。今年のFMSでは「XL-FLASH」の実チップとその性能を披露した。また合わせてニュースリリースでサンプル出荷の開始を発表した(参考記事:「東芝メモリ、SLC技術でTLC比10倍高速なストレージクラスメモリ」)。
「XL-FLASH」技術によって製品化したメモリの記憶容量は128Gbitである。パッケージに収容したメモリのシリコンダイは1枚。将来は、2枚、4枚、さらには8枚のメモリダイを1個のパッケージに収容した大容量品を製品化できるという。
ページサイズは4KB(バイト)と、128Gbitのメモリとしてはかなり小さい。メモリセルアレイを16個と数多くプレーン(サブアレイ)に分割したことともに、ページサイズを小さくしたことが、読み書きの高速化に寄与していると見られる。
読み出しの遅延時間(レイテンシ)は5μs未満である。標準的なTLC(3bit/セル)技術の3D NANDフラッシュのレイテンシは約50μsなので、「XL-FLASH」のレイテンシは10分の1と短い。言い換えると、読み出しが10倍速い。
128Gbitメモリを8個搭載したSSDを試作
前述のように、フラッシュメモリサミット(FMS)の展示ブースで東芝メモリは、SSDの試作品を展示していた。SSDは128Gbitの「XL-FLASH」メモリを8個搭載している。合計すると記憶容量は1Tbit(128GB)となる。「XL-FLASH」メモリのコントローラはFPGAで組んだ。入出力インターフェイスはPCIeである。
展示ブースでは、キーバリュー型データベースのキーからバリューを読み出すトランザクションの実行性能を、試作した「XL-FLASH」とDRAMで比較していた。同じ構成のPCで、キーをDRAMに格納しておく。バリューは「XL-FLASH」またはDRAMに格納する。両者の記憶容量は厳密には同じではないものの、基本的な違いはないという。この構成で実行性能(トランザクション/秒)をリアルタイムで比較してモニターに表示していた。モニターをしばらく眺めたところ、「XL-FLASH」はDRAMとほぼ同等の性能をつねに出しているように見えた。
なおToshiba Memory Americaが「XL-FLASH」の開発と出荷を発表した2019年8月5日付けのニュースリリースによると、「XL-FLASH」メモリは当初は高速なSSDに使われるものの、将来は不揮発性DIMM(NV-DIMM)にも応用される可能性があるとする。ただし現時点では「XL-FLASH」の書き換え可能回数が不明なので、NV-DIMMでDRAMと同様に使われるかどうかは不明だ。将来の情報公開を待ちたい。