イベントレポート
NVIDIA、ノート向けGeForce RTX 20発表、1月29日より搭載製品が出荷
~Adaptive-Syncを、G-SYNCとして使える仕組みも導入
2019年1月8日 00:00
NVIDIAは月8日(米国時間)よりアメリカ合衆国ネバダ州ラスベガス市で開幕するCESに先立って記者会見を行ない、同社が「N18」の開発コードネームで開発を続けてきたGeForce RTX 20シリーズのノートPC向け版を発表した。
GeForce RTX 2080、GeForce RTX 2070、GeForce RTX 2060の3つのSKUが用意され、NVIDIAが「Max-Q Design」と呼んでいる、半導体の耐性、ソフトウェアと熱設計のノウハウを組み合わせて、性能と消費電力のバランスを取ることで、dGPU搭載ノートPCでも薄型軽量なデザインが可能になる仕組みにも対応している。
また、G-SYNCのブランドで提供してきたディスプレイのリフレッシュレート同期機能に関するアップデートも行ない、新しいG-SYNC対応ディスプレイが今後登場する予定であること、さらにはHDMIの規格としてもサポートされているVESAのAdaptive-Sync(大本はAMDのFreeSync)に対応しているディスプレイを、G-SYNCディスプレイとして利用する仕組みとなる「G-SYNC Compatible」を発表し、その適応対象となるAdaptive-Sync対象ディスプレイを明らかにした。
開発コードネームN18がノートPC版GeForce RTX 20シリーズとして投入される
NVIDIAが発表したのは、同社が「N18」(エヌエイティーン)の開発コードネームで開発してきた、GeForce RTX 20シリーズのノートPC向けバージョン。NVIDIAは昨年(2018年)の8月にGeForce RTX 20シリーズを発表したが、デスクトップPC版だけになっていた。
今回発表されたのはモバイル版のGeForce RTX 2080、GeForce RTX 2070、GeForce RTX 2060の3製品で、スペックは以下のとおりだ。
GeForce RTX 2080 | GeForce RTX 2070 | GeForce RTX 2060 | |
---|---|---|---|
CUDAコア | 2,944 | 2,304 | 1,920 |
RTX-OPS | 37T~53T | 31T~38T | 26T |
Giga Rays/秒 | 5~7 | 4~5 | 3.5 |
ブーストクロック(MHz) | 1,095~1,590 | 1,185~1,440 | 1,200 |
ベースクロック(MHz) | 735~1,380 | 885~1,215 | 960 |
メモリスピード | 最大14Gbps | 最大14Gbps | 最大14Gbps |
標準メモリ構成 | 8GB GDDR6 | 8GB GDDR6 | 6GB GDDR6 |
メモリバス幅 | 256ビット | 256ビット | 192ビット |
メモリ帯域幅 | 最大448GB/秒 | 最大448GB/秒 | 最大336GB/秒 |
GSP(Graphics Subsystem Power) | 80~150+W | 80~115W | 80~90W |
別記事で紹介したデスクトップPC向けGeForce RTX 20シリーズのスペックと比較するとわかるが、CUDAコアこそ、それぞれの同じ名前のデスクトップ版と同じになっているが、クロック周波数は全体的にノートPC版が低めになっており、かつ、OEMメーカーによってどれだけの電力量で設計するのかで仕様が異なってくるため、ベースクロックも幅広く取られていることが違いになる。
また、ノートPC版には「Max-Q Design」という特別版も用意される。このMax-Qは、半導体の耐性と、ソフトウェア、熱設計を組み合わせて、dGPUを薄型ノートPCの筐体入れる枠組みのこと。Max-Q未対応の場合に比べれば、絶対的な性能は落ちるが、性能と消費電力のバランスは通常版よりも優れるため、わずかな性能の犠牲で、薄型軽量なノートPCにdGPUを入れることが可能になる。
今回別途OEMメーカーから発表されたノートPC版GeForce RTX 20シリーズ搭載ゲーミングPCでも、このMax-Qを採用することで、薄型/軽量を実現したモデルも多数発表されている。
1月6日に行なわれた記者会見では、フアンCEOが、GeForce RTX 2080を搭載したGIGA-BYTEのゲーミングPCを披露し、「すでに40を超えるノートPC版GeForce RTXのデザインウインを獲得している。GeForce RTX 2080は、デスクトップPC版のGeForce GTX 1080よりも高速で、PlayStation 4 Proに比べて2倍高速だ」と述べ、その性能に自信を示した。
また、フアン氏はノートPC向けのGeForce RTX 2060は、デスクトップPC版のGeForce GTX 1070よりも高速で、PlayStation 4 Proよりも1.6倍高速だと説明した。
Adaptive-SyncもG-SYNCディスプレイと同じように使えるG-SYNC Compatible
続いて、同社のリフレッシュレート同期技術となるG-SYNCに関するアップデートを行なった。昨年NVIDIAがBFGDとして構想を明らかにした4Kで、高いリフレッシュレートに対応した65型ディスプレイの現実の製品として、HPが65型HDR/144Hz対応液晶「OMEN X Emperium 65」を製品として発表したことなどに言及した。
そして、そのG-SYNCに対応したディスプレイを増やす取り組みの1つとして「G-SYNC Compatible」を発表した。
歴史的な経緯をいうと、もともとこうしたリフレッシュレート同期技術は、NVIDIAがG-SYNCとして発表し、その対抗規格としてAMDがFreeSyncという、機能の本質的には同じ規格を作って対抗してきた。
NVIDIAが品質を担保するため、G-SYNCの規格をガチガチに固め、NVIDIAの認証が必要という仕組みを採用したのに対して、AMDのFreeSyncは、AMDが規定する仕様を実装すれば良いという緩やかな仕組みにしたため、後者の用例が相次ぎ、最終的にはPCグラフィックスのインターフェイスを規定するVESAでAdaptive-Syncとして標準規格化されたのだ。これにより、現状多くのディスプレイがAdaptive-Syncに対応しているという状況になっている。それに対してG-SYNCは対応しているディスプレイは少なく、全体的にやや高価になっている状況だ。
そこで、Adaptive-Syncに対応したディスプレイを、G-SYNCディスプレイに見えるような仕組みをドライバレベルで実装し、Adaptive-SyncをまるでG-SYNCディスプレイのように使えるようにする仕組み、それがG-SYNC Compatibleになる。
ただし、フアン氏は「Adaptive-Syncディスプレイの中には揺れが発生したりとG-SYNCディスプレイの代わりに使えるクオリティではない製品が多い」と述べ、すべてのAdaptive-Sync対応ディスプレイでG-SYNC Compatibleが使えるようになるのではなく、NVIDIAがテストして条件を満たした製品だけでサポートするという。フアン氏によれば400にも及ぶディスプレイをテストし、Acer、ASUS、AUO、BenQののべ12製品のみでサポートすることになったという。
NVIDIAとしては最高の体験はG-SYNCディスプレイで、それに近いレベルをG-SYNC Compatibleでという形にしたいと思われるのだが、市場でどうなるかはこれからの動向次第となる。ユーザーがやや高めな製品であるG-SYNCディスプレイを今後も選び続けるのか、それともG-SYNC Compatibleでも十分と考えるのか、それによってはG-SYNCの未来がどうなっていくのかを左右していくのではないだろうか。